マーケティングニュースまとめ(2026-10-21〜2026-10-27)

2026年10月21日から10月27日に公表されたマーケティング関連のニュースから、中小企業の経営判断に関わる5本を取り上げます。国内EC市場の最新統計、Web業務の外注先選定に関する実態調査、政府機関のフォーム経由で起きた個人情報漏えいの可能性、AI検索への危機感と社内共有のギャップ、そして自社データを活用したAIサービスの立ち上げ事例です。いずれも「数字をどう読み、自社の何を決めるか」という視点でまとめています。

目次

1. 2025年のBtoC-EC市場規模は27.6兆円で5.5%増、物販系のEC化率は9.8%

概要

経済産業省が2026年10月21日に公表した電子商取引市場調査によると、2025年の国内BtoC-EC市場規模は27兆5580億円で、前年比5.5%増となりました。内訳は物販系が15兆8233億円(前年比3.97%増)、サービス系が8兆9362億円(同8.64%増)、デジタル系が2兆7985億円(同4.52%増)です。物販系のEC化率は9.8%で、前年からの伸びは0.02ポイント増にとどまりました。カテゴリ別の金額首位は食品・飲料・酒類の3兆3332億円(前年比6.96%増)ですが、EC化率は4.66%と最も低い水準です。衣類・服装雑貨等は2兆8941億円でEC化率24.08%、生活家電・AV機器・PC等は2兆8829億円でEC化率43.08%、生活雑貨・家具・インテリアは2兆6258億円でEC化率31.73%でした。書籍・映像・音楽ソフトは1兆8495億円で唯一のマイナス成長(1.14%減)ながら、EC化率は57.93%と最高です。

中小企業への影響

この統計で押さえるべきは、伸び率とEC化率がまったく別の指標だという点です。物販系の3.97%増は「市場が伸びたぶん」であり、自社の売上がこれを下回っていれば実質的には後退しています。一方のEC化率は、ネット経路への移行がどこまで進んだかを示します。食品・飲料・酒類はEC化率4.66%と低く、地場の食品製造や小売にとっては開拓余地が大きく競合もまだ少ない領域です。衣類・雑貨・家具のようにEC化率が20〜30%台のカテゴリでは、ECを持たないこと自体が構造的な機会損失になります。生活家電・AV・PC等はEC化率43.08%で、実店舗専業では市場の4割に届きません。サービス系が8.64%増と最も伸びており、予約・来店・体験を扱う業種ではオンライン予約と決済の整備がそのまま売上機会になります。

経営者の視点

まず自社の主力カテゴリの市場伸び率とEC化率を1枚にメモし、次期の売上計画の前提値として明文化してください。そのうえで自社のEC売上比率を算出し業界のEC化率と比較すれば、大きく下回っていれば伸びしろ、上回っていれば既存チャネルの守りが課題と判断できます。EC化率が低く伸びているカテゴリであれば、モール1本や自社ECの最小構成など小さく始められる販売チャネルを1つ立ち上げる判断を今期中に下します。逆にEC化率の高いカテゴリでは、新規獲得よりリピート・単価・粗利を主戦場に置き、広告費配分を見直す方が合理的です。ただしこの数値は国内全体の統計であり、自社の商圏や価格帯とは一致しません。そのままKPIへ転用せず、年次比較が取れる形で社内に蓄積する担当者と保存場所を決めておくことをおすすめします。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):【2025年のBtoC-EC】市場規模は27.6兆円で5.5%増。物販系は15.8兆円で3.97%増、EC化率は9.8%

2. Web外注先選びで「費用」より重視されるのは対応スピードと専門知識

概要

OSIEが「企業のWeb関連業務に関する実態調査2026」を実施し、2026年10月22日にその結果が報じられました。調査はWeb関連業務に関与する20〜69歳の会社員・経営者・役員等を対象に、2026年10月9日にFreeasyを用いたインターネット調査として行われ、有効回答は120人です。外注先選びで重視される項目は、1位が「対応スピード」48.3%、2位が「専門知識・ノウハウ」46.7%で、「費用」は37.5%の3位にとどまりました。現在発生している課題は「サイト更新・改善の遅れ」40.8%が最多で、「SEO施策が不十分」32.5%、「Web広告の改善・検証が不十分」26.7%、「SNS更新・運用が不十分」23.3%が続きます。施策が進まない要因は「社内の人員・時間不足」28.3%と「社内の専門知識・ノウハウ不足」27.5%が上位で、「何から取り組むべきか分からない」も9.2%あります。担当体制は専任45.0%、他業務との兼任28.3%で、外注状況は複数社へ依頼32.5%が最多でした。

中小企業への影響

注目したいのは、課題の最上位が高度な施策ではなく「サイト更新・改善の遅れ」だという点です。約4割の企業が同じ状態にあるため、自社だけが遅れていると焦る必要はありません。逆に言えば、更新を止めずに回せるだけで上位層に入る余地があります。ボトルネックが人員・時間不足と知識不足の合計55.8%、つまり予算ではなく体制側にあることも重要です。専任を置けない企業では、兼任担当者に丸投げするとWeb施策が最初に後回しにされます。また、最安値の1社を選ぶ発想は本調査の傾向と逆方向で、「安いが進まない」状態を招きやすい点にも注意が必要です。複数社への分散発注は社内の調整工数を増やすため、担当が兼任の企業ほど窓口を1社に寄せる方が実務的に回ります。SEOや広告が「やっているつもりで検証されていない」状態は、そのまま費用のムダにつながります。

経営者の視点

最初にやるべきは、自社サイトの最終更新日を確認することです。半年以上動いていなければ、更新停滞は課題ではなく既に発生している損失として扱ってください。次に、担当が専任か兼任かを確認し、兼任であれば「月に何時間をWebに充てるか」を経営として明文化して確保します。外注の比較では、価格だけでなく「初回返答までの時間」「月内に実施できる更新件数」「担当者の専門領域」を同じ条件で聞き取ってください。外注先が複数に分散しているなら、窓口を1社に寄せるか、社内に一次窓口を1人固定して調整工数を減らします。現在の広告やSEO費用については、直近3か月の問い合わせ件数と対比した検証資料を1枚で提出させましょう。なお本調査は有効回答120人の小規模調査であり、断定的な根拠にはせず傾向をつかむ参考値として扱うのが適切です。

参考リンク

Web担当者Forum(インプレス):Webサイト更新に手が回らない…外注先選びで「費用」よりも重視されることは?【OSIE調べ】

3. デジタル庁サイトの問い合わせフォームから個人情報が漏えいした可能性

概要

デジタル庁は2026年10月22日、同庁ウェブサイトの問い合わせフォームに入力された個人情報が外部に漏えいした可能性があると公表しました。原因は、ウェブサイト制作ツール「Studio」のサービスが不正アクセスを受け、クラウド環境上の情報が外部から取得できる状態にあったことです。デジタル庁がこの事実を把握したのは2026年10月16日で、サービス提供企業からの報告によるものでした。対象期間は2021年5月から2023年3月までです。対象件数は、一般的なご意見・ご要望8,833件、接種証明書アプリ関連3,661件などで、採用関連250件も含まれます。漏えいした可能性のある情報は、氏名・メールアドレス・問い合わせ内容が共通項目で、種別によっては電話番号・所属・住所も含まれます。現時点で情報が悪用されたなどの二次被害は確認されておらず、デジタル庁は対象者に注意を呼びかけています。

中小企業への影響

これは自組織が攻撃されたのではなく、利用していた外部サービスが侵害されて自組織の預かった情報が流出し得たという、委託先経由の情報漏えいです。自社サイトの問い合わせフォームや採用フォームも、ほぼ確実に外部のフォームツール、CMS、MA、チャットツールなどを経由しており、同じ構造のリスクを抱えています。「大手サービスだから安全」という前提は成り立たず、本件は政府機関が使うツールで発生しました。さらに影響を広げたのは、対象期間が約2年にわたり、送信データがサービス側に残り続けていた点です。フォームに届いた問い合わせを「とりあえず全部残す」運用をしていると、事故時の被害件数と説明責任がそのまま膨らみます。自社に落ち度がなくても、顧客から見れば「あの会社に預けた情報が漏れた」になり、謝罪・通知・窓口対応の実務負担は自社に発生します。

経営者の視点

最も効果が大きい対策は、保存期間のルール化です。問い合わせフォーム経由で受け取った個人情報について「対応完了後1年で削除」のような基準を定め、無期限保存をやめてください。あわせて、自社サイトの各種フォームがどの外部サービスを使い、データがどこに保存されるのかを数日以内に一覧化させます。外部サービスが侵害された場合の社内フロー、つまり誰が一次判断し、誰が公表文を書き、誰が顧客窓口になるかをA4一枚で先に決めておきましょう。新規ツール導入時の最低確認項目をチェックリスト化すれば、現場判断での無断導入も抑えられます。二次被害が未確認という発表は安全宣言ではなく、流出情報は時間差でなりすましに使われる可能性があります。実際に漏えいが起きた場合は報告や本人通知の判断が絡むため、自己判断で済ませず専門家に確認してください。

参考リンク

Web担当者Forum(インプレス):デジタル庁サイトの問い合わせフォームに入力した個人情報が外部に漏えいした可能性

4. AI検索による流入喪失に9割が危機感、全社で共有できているのは2割未満

概要

GMO NIKKOが実施した調査で、AI検索による流入・接点の喪失に危機感を持つ企業担当者が合計93.5%に達しました。内訳は「非常に危機感」42.1%、「やや危機感」51.4%です。一方で、その危機感を「会社全体で共有できている」と答えたのは16.5%にとどまり、2割未満でした。共有状況の内訳は「部署レベルでの認識・共有」44.2%、「個人レベルでのみ認識」39.3%です。AIO(生成AI最適化)/LLMO対策は「本格的に実施」36.1%、「一部で実施」54.4%で、合計90.5%が何らかの対策を講じています。実施している具体的施策の上位は「一次情報・専門性の高いコンテンツ発信」46.9%、「AIに引用されやすいコンテンツ制作」45.3%、「FAQ・ナレッジコンテンツの整備」37.9%でした。調査はマーケティング・広報・Web領域の担当者および責任者1,003人を対象に2026年8月10日から12日に実施され、9月29日に発表されました。

中小企業への影響

検索結果の上部に生成AIが回答を直接表示する形式が普及し、ユーザーが検索結果からサイトへ移動せずに答えを得る場面が増えています。これは「順位が下がった」のではなく「クリックされる機会そのものが減る」変化なので、順位管理型の指標では把握しづらいという難しさがあります。サイト流入の大半を検索に依存する中小企業では、調べられても訪問されない状態が増えると、まず問い合わせ件数が減ります。一方で、有効施策とされる「一次情報・専門性の高いコンテンツ」は、現場の実例や数値を持つ中小企業にとって、むしろ大手より出しやすい領域です。FAQ・ナレッジ整備は追加投資が小さく、既にある問い合わせ対応の蓄積を記事化するだけで着手できます。逆に、記事量産やキーワード詰め込み型のSEOに費用をかけ続けている企業は、投資方針の見直しが必要になります。

経営者の視点

最初に、検索経由の流入と問い合わせ件数を直近12か月で月次比較した資料を提出させ、減少の有無を事実として確認してください。あわせて、主要な生成AIやAI回答付き検索に自社名・主力サービス名・「地域+業種」を実際に入力し、自社がどう紹介されるかを経営者自身が確かめることが有効です。そのうえで、AI検索対応を担当者任せにせず経営会議の議題として一度持ち出し、誰が担当し、いくら使い、何で成果を測るかを決めます。指標は順位やPV単独ではなく、問い合わせ件数・指名検索数・AI回答での言及有無へ広げます。なお影響度は業種や検索意図で大きく異なり、流入減をAI検索のせいと決めつけると季節要因や広告停止、サイト不具合といった本来の原因を見落とします。効果測定の方法が示されない高額提案にも注意が必要です。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):「AI検索で流入・接点喪失」企業の9割が危機感 全社共有は2割未満

5. ファンケルが肌専門AIを発表、店舗新規120%増をアプリでの継続接点へ

概要

ファンケルは2026年10月27日、肌専門AIサービス「FANCL SKIN MATE」を公式アプリで無料提供開始しました。チャットでの会話と顔画像の解析を通じて、利用者の肌悩みに応じたケア方法を提案する機能で、2026年3月に開始した先行サービス「FANCL SKIN PATCH」の解析データと連携できます。先行サービスの体験者は10月までで累計10万人を超え、体験時の満足度は99%、店舗の新規顧客数は前年比120%増を記録しています。AIには45年以上の皮膚科学研究の知見と、直営店舗で培った100万人以上のカウンセリング知見が集約されています。10月27日のローンチ発表会には代表取締役社長の三橋英記氏が登壇し、Mrs. GREEN APPLEがゲスト出演して公式YouTubeの生配信でAIを実演体験しました。今後は得られたデータを肌研究・商品開発に活かす方針です。

中小企業への影響

この事例で学ぶべきは、タレント起用やアプリ開発の規模ではなく「体験→継続接点→データ還流」という設計の順序です。店舗で新規顧客を前年比120%増まで伸ばしても、再接触の手段がなければ一過性で終わります。また、AIの説得力の源泉が汎用的な技術力ではなく、45年の研究と100万人分のカウンセリングという自社固有の蓄積に置かれている点も示唆的です。相談記録や現場事例、測定結果といったまねしにくい資産は、中小企業にも必ず存在します。専門知識があれば、無料診断や無料チェックという形は小規模でも成立し、価格以外の理由で選ばれる接点をつくれます。顧客の悩みを聞く仕組みそのものが商品開発や品揃えの判断材料になる点も見逃せません。小さく出して満足度と体験者数を測ってから広げるやり方は、予算が限られる企業にそのまま応用できます。

経営者の視点

まず、店頭や現場で新規に接触した顧客のうち、再接触できる連絡手段を取れている割合を算出させてください。取りこぼしている接点を1つ選び、LINE登録特典や点検リマインド、会員化といった継続接点の仕組みを今期に1つだけ導入します。並行して、自社に蓄積された相談記録・現場事例・測定データを棚卸しし、顧客向けの簡易診断やチェックリストに転用できるものを1つ特定しましょう。新サービスは必ず体験者数と満足度を測る設計にし、数値が出てから広告投資を増やす順序を社内ルールにしてください。注意点として、顔画像や健康に関わる情報を扱う仕組みは取得目的・保存期間・第三者提供の有無を明示する必要があり、医療や安全に関わる領域では断定的な表現を避けるべきです。公表されている満足度99%等は自社発表の数値であり、参考値として扱ってください。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):店舗新規120%増からアプリへ ファンケルが肌専門AI発表、Mrs. GREEN APPLEが実演体験も

まとめ

5本を通じて見えるのは、数字を自社の判断に翻訳する作業の重要性です。EC市場の統計では、伸び率とEC化率のどちらを見るかで取るべき打ち手が真逆になります。Web業務の調査では、手が止まる原因が予算ではなく体制側にあることが示されました。デジタル庁の事案は、どこに何を預け、いつまで持ち続けるかの把握が最大の防御になると教えています。AI検索への危機感は9割に達する一方で全社共有は2割未満であり、経営が議題に挙げない限り動かない構図が浮かびます。ファンケルの事例が示すのは、自社に蓄積された知見こそが差別化の原資であり、小さく検証してから広げる順序が有効だという点です。いずれも、最終更新日の確認、保存期間の設定、担当と予算の明示といった、今から着手できる小さな決定から始められます。

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