マーケティングニュースまとめ(2026-09-16〜2026-09-22)

2026年9月16日から9月22日までに公開された、マーケティング関連のニュース5本をまとめます。テレビ広告の取引基準が「割合」から「人数」へ動き出した実証実験、価格表示をめぐる行政処分、話題への即応で注目を集めた自治体の広報、生成AIを発想源にした商品開発、そして16年ぶりに復刊した学習雑誌。いずれも大企業や行政の話に見えますが、中小企業の日々の判断にそのまま置き換えられる要素を含んでいます。各ニュースについて、事実の整理、中小企業への影響、経営者としての打ち手という順に解説します。

目次

1. 電通、テレビ広告を「ターゲット視聴者数」で取引する実証実験を発表

概要

2026年9月15日、電通は在阪の民放3局と共同で、テレビ広告を「ターゲット視聴者数」基準で取引する実証実験を発表しました。名称は「CONNECTED VIEW」、期間は2026年6月から7月、対象は近畿広域圏です。従来の視聴率という「割合」ではなく、狙った層に実際に何人届いたかという「人数」でCMを売買できるかを検証しました。テレビ個人視聴データ「COSMOS DATA」と統合マーケティング基盤「STADIA360」を活用し、全国約1700万人規模のデータベースと約16万項目の掛け合わせで計測します。15秒のスポットCMで検証した結果、3局合計で発注したターゲット視聴者数に対し154%を獲得しました。広告接触者のサイト来訪率は非接触者の約1.1倍、指名検索を経由した来訪率は約1.4倍でした。複数の放送局をまたいで統一した指標で運用と検証を行った点が新しい試みです。

中小企業への影響

評価軸が「率」から「人数」へ移ると、中小企業の見え方も変わります。これまでは視聴率という業界内の物差しが前提で、自社の客層に何人届いたかを検算しづらい状態でした。ターゲット視聴者数なら「40代女性に延べ何人」という共通の物差しで見積もりを比較できます。デジタル広告とテレビ広告を同じ土俵に乗せ、予算配分を数値で議論することも可能になります。府県単位や広域圏に限った出稿の判断もしやすくなります。指名検索(会社名や商品名そのもので検索されること)の増減が効果の目安になるため、自社の検索データを見る価値も上がります。代理店任せにせず「どの層に何人」と条件を指定して発注する余地が生まれ、少額でも到達人数で成果を約束してもらう交渉の切り口ができます。テレビとネットの重複到達が見えれば、同じ予算でムダ打ちを減らせます。

経営者の視点

まず、狙う客層を性年代に加えて購買行動のレベルまで1枚の紙に言語化しておきましょう。発注時は「延べ何人に届けるのか」を必ず数値で確認します。出稿の前後で自社名や商品名の指名検索数を記録し、サイト来訪の流入経路別データを最低3か月分そろえておくと判定がぶれません。地元局や代理店に「ターゲット視聴者数ベースの提案はできますか」と尋ねてみる価値もあります。ただし今回は実証実験の段階で、全国どの放送局でもすぐ使える取引方式ではありません。発注比154%も実験条件下の結果であり、自社で同じ数字が出る保証はありません。来訪が約1.1倍という差も他の施策の影響が混ざるため、テレビ単独の効果と断定しないことが大切です。1か月・1エリアで小さく試し、合否基準を出稿前に決めておく進め方が現実的です。

参考リンク

マイナビニュース TECH+:電通、ターゲット視聴者数基準の地上波テレビ広告取引を実証 – 在阪民放3局で

2. 「10.45万円~」の家族葬CMに措置命令、消費者庁が有利誤認と判断

概要

2026年9月18日、消費者庁は株式会社金宝堂に対し、景品表示法第7条第1項に基づく措置命令を行いました。同社は東京都渋谷区道玄坂二丁目25番12号 道玄坂通4階に所在し、代表者は仲村和明氏です。対象は屋号「小さな森の家」で提供する、貸切ホールを使った家族葬の葬儀サービスで、問題となった表示の媒体は地上波のテレビコマーシャルでした。表示は令和7年3月1日から5月31日にかけての複数の期間に行われています。CMでは「家族葬 10.45万円~(税込)」という最低料金を示し、あわせて「1日1組貸切ホール」「選べるホールがこんなに」「お得なプラン」と表示していました。しかし実際には、わずかな場合を除き30万8000円以上が必要で、差は約3倍、金額にしておよそ20万3500円です。適用条項は第5条第2号の有利誤認表示にあたります。命令の内容は、違反内容の消費者への周知徹底、再発防止策の策定と従業員への周知、同様の表示の差止め、実施内容の文書報告です。

中小企業への影響

この事例が示すのは、「〇〇円~」という最低価格表示が広く使われている以上、他人事ではないという点です。自社のサイトやチラシに同じ構図の表示がないか、点検が必要になります。最低価格で実際に成約している割合が極端に低ければ、それ自体がリスクです。「初回限定」「今だけ」「お得」といった強調語も、根拠となる資料を保存していることが前提になります。広告制作を外注していても、責任を負うのは表示した事業者自身です。措置命令は社名が公表されるため信用への実害が大きく、消費者への周知まで求められて対応コストも発生します。業界内の1社が処分されると、同業他社の表示も行政の注目対象になりやすくなります。一方で、価格表示を正直に直すことは、問い合わせ後の成約率を高める方向に働くことも期待できます。

経営者の視点

最初の一手は、自社サイト・チラシ・CM・SNS・見積書まで全媒体の価格表示を洗い出し、一覧表にすることです。そのうえで「〇〇円~」表示ごとに、その価格で成約した実件数と全体に占める割合を集計します。最低価格で実際には成立しないなら、総額の目安と追加費用の内訳を同じ画面・同じ見やすさで併記してください。「※別途費用がかかります」といった打ち消し表示は、小さい文字や一瞬の表示では有効と認められません。文字サイズと表示秒数を、強調表示に見合う水準まで引き上げる必要があります。強調表示の根拠資料は最低5年保管する社内ルールを作り、広告制作会社との契約書にも表示根拠の確認責任を明記しましょう。「知らなかった」「制作会社の判断だった」は免責の理由になりません。年1回の点検日を決め、記録を残す運用が有効です。

参考リンク

消費者庁:株式会社金宝堂に対する景品表示法に基づく措置命令について

3. 鳥取県が砂30トンを東京へ、『VIVANT』便乗広報の設計

概要

2026年9月19日、宣伝会議のAdverTimes.が、鳥取県による人気ドラマ『VIVANT』への便乗広報を報じました。県は鳥取砂丘の砂を約30トン東京へ輸送し、西新宿の新宿住友ビル三角広場で9月19日から23日まで開かれたイベント「TBS SPORTS & VIVANT PARK」に搬入しました。砂は国立公園外のエリアから採取したもので、風の条件がそろうと「風紋」ができるサラサラの質感が特徴です。この質感の訴求は観光戦略課が担当しました。9月13日放送回の、堺雅人が演じる乃木憂助のシーンに関連づけた投稿も企画しています。月曜に放送を視聴し、火曜に構想・撮影・編集を行う流れで、県庁から砂丘まで約10分、撮影に1時間、合計およそ2時間で投稿を完成させ、9月16日にXへ公開しました。過去には平井伸治知事らが砂丘で「VIVANTごっこ」を行い、阿部寛が演じる野崎守に似た県職員を取り上げた投稿は145万回表示を記録しています。

中小企業への影響

予算をほとんどかけずに、人気コンテンツの注目を自社の商品へ引き込めるという点が最大の学びです。撮影から投稿まで2時間という「軽い制作」でも十分に届く実例が示されました。自社に1つでも他にない物理的な資産があれば、それを発信の核にできます。ドラマやスポーツのように放送日程が決まっている題材なら、事前に準備することも可能です。担当者が定例で話題をチェックする仕組みを作れば、属人化せずに続けられます。イベント会場への出展は、SNS上の話題を実際の体験や接触に変える有効な手段です。大企業の大型施策に相乗りすれば、自社単独では届かない客層にも接触できます。失敗しても損失が小さいため、試行回数を増やして当たりを探せる点も中小企業に向いています。

経営者の視点

まず、自社にしかない「物・場所・人」を3つ書き出し、発信の素材として登録しておきましょう。放送・スポーツ・季節行事の年間カレンダーを作り、便乗できる日程を先に押さえておくと動きが速くなります。「話題が起きてから24時間以内に投稿する」を社内ルールとして明文化し、撮影・編集・投稿の決裁を担当者に委譲して承認者を1人までに減らすことが要点です。15分程度の短い定例の場を設け、担当者が世の中の話題を持ち寄る運用も効きます。一方で便乗広報は権利者の意向次第で問題化するため、作品名やロゴの使い方などNGラインを事前に整理しておく必要があります。スピードを優先しすぎて内容が雑になれば、かえって品位を損ないます。反響は表示回数だけでなく、来店・問い合わせ・指名検索まで追って記録してください。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):鳥取砂丘の砂30トン、東京へ行く 『VIVANT』便乗広報を展開する県の狙い

4. ローソンが売れ筋を学習させない生成AIで商品開発、「AIが考えた!?」を販促にも

概要

2026年9月22日、AdverTimes.はローソンが生成AIを起点にした商品開発を進めていると報じました。生成AIが発案したコンセプトをもとに3つの商品を開発し、9月29日に関東・甲信越地区で発売します。2026年4月には一部地域で実験販売をすでに実施しています。最大の特徴は、AIに過去の販売実績や売れ筋の市場データを「あえて学習させない」ことです。与えた条件は「今までにない組み合わせや味」「見た瞬間になんだこりゃと思われる」「食べてみたらおいしい」の3点だけでした。生まれたのは「レモンタルト(ピクルス風味)」「酒種あんバターヨーグルトパン」「混ぜて食べる和風パフェサラダ(ビーフン入り)」の3品です。試作・味の検証・実現性の担保は人間の開発担当者が行っています。店頭の販促物には「AI発案」「AIが考えた!?」と明記し、開発プロセス自体を販促材料として使います。今後は販売動向と反響を検証したうえで、販売実績や市場データも併用して広げる方針です。

中小企業への影響

高価なAIを導入しなくても、市販の生成AIで新商品案を短時間に大量に出せることが示されました。「データを与えない」というプロンプト設計は、自社の思い込みを外す手段として使えます。「AIが考えた」という開発背景は、それ自体が費用ゼロの話題づくりになります。小ロット・期間限定で試すなら、外れても損失は小さく済みます。社内の企画会議で意見が出ないときも、AI案をたたき台にすると議論が動き出します。人間側は味・品質・原価・法令の担保に集中できるため、企画にかける時間を圧縮できます。実験販売から限定エリア、そして本展開へという段取りは、規模を問わずそのまま真似できます。AI活用を対外的に打ち出すこと自体が、先進的な会社という印象づけにもつながります。

経営者の視点

試すこと自体は今日からでも可能です。生成AIに「過去の売れ筋は参考にしないでください」と明示した企画出しを、まず1回やってみましょう。AIへ与える条件は3つ程度に絞って言語化します。出てきた案のうち、自社で本当に作れるものだけを人間が3案に絞り込み、1店舗・14日間・小ロットの実験販売から始めるのが現実的です。店頭のPOPやSNSに「AIが考えた」と明記し、反応を数値で記録します。販売数や再購入率といった合否基準は、発売前に決めておいてください。ただし意外性だけでは一度きりの購入で終わる可能性があり、定番に育つかは別の問題です。AIが出した案が既存商品や他社商品と酷似していないか、発売前の確認も欠かせません。食品の味・安全性・表示の責任は、すべて事業者が負います。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):過去の売れ筋、あえて学習させず ローソンが生成AI起点の商品開発、「AIが考えた!?」を販促にも

5. 『学研の学習』が16年ぶり復刊、第1号のテーマは「はにわ」

概要

2026年9月22日、AdverTimes.は『学研の学習』復刊の経緯を報じました。同誌は2026年7月、16年ぶりに復刊し、復刊第1号のテーマは「はにわ」です。『学研の科学』『学研の学習』は1946年に刊行が始まり、ピークの1979年には月販670万部を記録しました。しかし2010年に休刊するという経営判断に至ります。復刊を率いたのは、学研の科学/学習統括編集長の吉野敏弘氏です。付録は社内で「原理教材」と呼ばれ、シンプルながら何かの原理を含み、子どもの本質的な興味を引き出すものという方針が貫かれています。休刊の背景としては、1980年代以降にテスト成績の向上へ直結しない教材が選ばれにくくなったことが挙げられています。保護者の進学志向の高まりに対応しきれず、部数の減少が進みました。そして今回の復刊の狙いは、懐かしさではなく「新しさ」を求めることに置かれています。

中小企業への影響

過去にやめた商品やサービスでも、市場が変われば再開の余地があると分かる事例です。ブランドの「名前の記憶」は無形の資産であり、広告費の代わりになりえます。ただし復活させる際は、懐かしさだけでなく今の顧客の課題に合わせ直す必要があります。かつての顧客が今は親や決裁者になっている場合、届け先そのものが変わっている点にも注意が要ります。一貫した商品哲学を言語化しておけば、復活のときの判断軸になります。撤退時の理由が市場の変化だったのか、商品自体の弱さだったのかを記録しておくと、再開の判断材料として使えます。16年という長い空白でも成立する例がある以上、「もう遅い」と決めつける必要はありません。復活の物語そのものが、広報で語れる素材にもなります。

経営者の視点

具体的には、過去に終了した商品・サービスの一覧と終了理由を1枚にまとめるところから始めます。そのうち終了理由が「市場の変化」だったものを抜き出し、今の市場でもう一度評価してみてください。旧顧客のリストが残っていれば、その人たちの現在の年齢と立場を推定し直します。復活させる場合は「懐かしい」以外の購入理由を1つ言語化し、自社商品に一貫した哲学を短い言葉で定義しておくことが軸になります。進め方は、限定数・期間限定で小さく復刻して反応を測り、その後に本格再開を決める形が安全です。当時と同じ仕様に戻すと、現在の安全基準や価格感に合わない恐れもあります。休止中のブランド名や商標の権利が維持されているか、第三者に取得されていないかの確認も忘れないでください。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):あの「学研の学習」が帰ってきた 復刊第1号の「はにわ」で16年ぶりに復刊したワケ

まとめ

5本を並べると、共通する軸が見えてきます。電通の実証実験とローソンの商品開発は、どちらも「小さく試して、数字で合否を決める」という進め方でした。鳥取県の事例も、損失が小さいからこそ試行回数を増やせるという構造です。学研の復刊は、いったん終えた判断を市場の変化に合わせて見直す例といえます。そして金宝堂への措置命令は、表示の根拠を自社で説明できるかという土台の問題を突きつけています。つまり、攻めの打ち手は小さく速く、守りの土台は記録と根拠で固める。この2つを同時に回すことが、限られた資源で成果を出す近道になります。まずは自社の価格表示の点検と、生成AIを使った企画出しの1回目から始めてみてはいかがでしょうか。

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