マーケティングニュースまとめ(2026-08-26〜2026-09-01)

2026年8月26日から9月1日までのマーケティング関連ニュースを5本にまとめました。ECモールの大型投資、AIによる接客の実用化、サイバー攻撃被害の深刻化、生成AIのブランド広告、そして体験型のPR施策と、話題は幅広く並びます。いずれも大企業の事例ですが、中小企業がそのまま真似できる部分と、注意しておきたい落とし穴が含まれています。自社の販路づくり、接客の自動化、守りの体制づくりを考えるための材料としてお読みください。

目次

1. eBayのECモール「Qoo10」が流通総額5000億円へ、1000億円を投資

概要

Qoo10を運営するeBay Japanが、2026年に約3500億円の流通総額(GMV=そのモールで売れた商品の合計金額)を、2029年に5000億円超へ引き上げる目標を掲げました。今後3年間で1000億円以上を投資します。会員数は3000万人超、利用者の約7割が10〜30代で、若年層に強い基盤を持ちます。2026年5〜6月の大型セール「メガ割」の流通総額は605億円で前年比12%増でした。注目すべきは国内公式ブランドの売上が前年比47%増と、国内セラー全体の22%増を上回った点です。出店ブランド支援策「メガデビュー」には累計268ブランドが参加し、参加前後で売上は約15倍に伸びました。限定品マーク「Q ONLY」の対象商品は全体売上の約4割を占め、コンバージョン率(=見た人のうち実際に買った人の割合)は約3倍です。2027年9月末には原宿駅前に約2500平方メートルの旗艦店を開き、オンライン一本足からの脱却を図ります。

中小企業への影響

モール側が国内ブランドの支援を強化している点は、中小メーカーにとって好機です。国内ブランドの支援プログラム参加率は現在6%にとどまり、2029年に50%へ引き上げる計画があります。参加前後で売上が約15倍という数字は、初速づくりに直結しうることを示しています。限定品マークの対象商品はコンバージョン率が約3倍で、専用の商品を1つ作るだけで露出と成約が変わる可能性があります。決済面ではモバイル決済比率が55%で、そのうちPayPayが4割超です。対応漏れは購入の取りやめに直結します。レビュー数は美容カテゴリーで国内主要ECの7倍あり、AIがレビューを解析して商品を薦める仕組みのため、レビューの量と質が販売力そのものになります。ライブ配信では1時間で8億円という事例もあり、テレビCMを打てない企業でも短時間で認知を作れます。

経営者の視点

まず自社商材が利用者層(10〜30代が7割)と合うかを棚卸ししてください。合うようであれば支援プログラムの募集要項と手数料条件を取り寄せ、参加コストと想定売上を試算します。次にモール限定の商品を1品だけ設計します。新規開発は不要で、既存品の色違いやセット組みで構いません。大型セールの時期から逆算して在庫・原価・出荷体制を整え、レビュー獲得も同梱カードや購入後メールで仕組み化しましょう。1時間のライブ配信を1本テストし、視聴数と購入数で継続の可否を判断する方法も有効です。注意点もあります。大型セールへの依存は利益率を削るため、値引き原資と広告費を含めた実質利益で採算を検証してください。セール時は在庫切れや出荷遅延が起きやすく、それがレビュー悪化に直結します。他の販路との食い合いや価格崩れを避けるため、モール専用の価格と商品設計を先に決めておくことが欠かせません。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):eBayのECモール「Qoo10」が流通総額「3500億円→5000億円」へ向けて1000億円を投資へ。「メガ割」のGMV605億円、国内ブランド売上47%成長の「次の一手」

2. RANDA公式ECでAIエージェントがスタッフの着こなしを提案

概要

ジェイ・ビーが運営する靴・ファッションブランドの公式EC「RANDA ONLINE STORE」に、AI接客機能が導入されました。導入されたのはecbeingの「AIデジタルスタッフ」で、投稿写真を活用するプラットフォーム「visumo」と連携しています。利用者が質問すると、AIがvisumoに蓄積されたスタッフ投稿から該当する着こなしを選び、チャット画面にカード形式で表示します。1つの提案の中で、靴・トップス・ボトムス・バッグなど複数の商品を関連付けて示す点が特徴です。「夏っぽくて淡い色味」といった曖昧な指定に対応し、「結婚式」「旅行」など場面での相談にも答えます。ここで言うAIエージェントとは、決められた選択肢を返すだけでなく、相手の言葉を理解して自分で情報を探し、答えを組み立てる仕組みのことです。導入効果として、この機能を経由したコンバージョン率は11.4%、提案後の追加質問率は41%、対話数は通常のチャット接客の約1.5倍に拡大しました。アパレルECでは「試着できない」ことが最大の離脱要因で、実店舗の接客をどう再現するかが長年の課題でした。新しいコンテンツを作るのではなく、すでにあるスタッフの投稿資産をAIの回答材料にした点が、この事例の要と言えます。

中小企業への影響

中小のアパレル店や雑貨店でも、スタッフが撮った写真の蓄積があれば、それがそのままAI接客の素材になります。「新しく作る」より「持っている資産を探せる状態にする」方が投資対効果は高く、この考え方は他業種にも応用できます。スタッフ数が少なく店頭の接客に手が回らない事業者ほど、24時間動く接客の代替価値は大きくなります。複数商品をまとめて提案する仕組みは、単品売りにとどまる小規模ECの客単価を上げる直接的な打ち手です。AIとの対話ログには利用者が実際に使う言葉が残るため、商品説明文や広告文の改善材料にもなります。写真にどの商品が写っているかを紐づける運用さえ整えれば、規模が小さくても同じ仕組みは成立しうると考えられます。

経営者の視点

最初にやるべきは自社の写真資産の棚卸しです。スタッフ投稿やSNS投稿が何枚あり、そのうち商品と紐づいているものがどれだけあるかを数えてください。紐づいていないなら、「写真に商品番号を必ず付ける」運用ルールを今月から始めましょう。次に、顧客からよく来る質問の上位20件を書き出し、「雰囲気」や「場面」で聞かれた数を数えれば、AI接客が自社に必要かを判断できます。導入は靴など1カテゴリーに絞って小さく始め、コンバージョン率・対話数・追加質問率の3つで効果を測ります。注意点として、AIが在庫切れ商品を提案すると体験はむしろ悪化するため、在庫データとの連動は必ず確認してください。退職者の写真の扱いや肖像の利用同意といった社内ルールも事前に整えましょう。成果を決めるのは写真と商品情報の整備量です。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):RANDA公式ECサイトでAIエージェントがスタッフのリアルな着こなし提案。ecbeingの「AIデジタルスタッフ」が「visumo」連携で実現

3. ランサムウェア被害の平均額約3.5億円、平均停止期間36日

概要

トレンドマイクロとNPO法人CIO Loungeが「セキュリティ成熟度と被害の実態調査 2026」の結果を公表しました。調査は2026年5月に実施され、対象は過去3年以内にサイバー攻撃被害を受けた従業員500人以上の企業の経営者およびセキュリティ責任者306人です。ランサムウェア(=会社のデータを勝手に暗号化して開けなくし、元に戻す代わりに金銭を要求する不正プログラム)による過去3年累計の被害額は平均約3億4800万円で、前年度調査の約2億2000万円から大きく増えました。さらに深刻なのは復旧までの停止時間で、平均約862.9時間、日数にして約36.0日と、前年度の244.9時間(約10.2日)から大幅に伸びています。一方で「被害なし」と答えた企業の割合は2023年度27.5%、2024年度38.3%、2026年度42.5%と増加しており、対策が進む企業と進まない企業の二極化が進んでいます。全領域で最大の課題に挙がったのは「人的リソースおよび適切なスキルセットの不足」であり、ツールではなく人が足りていないという構図です。

中小企業への影響

調査対象は従業員500人以上の大企業ですが、業務停止と復旧の長期化という被害の型は、規模が小さいほど致命傷になります。36日の業務停止は体力のない中小企業にとって事実上の事業停止に等しく、資金繰りが先に尽きかねません。自社が無事でも、取引先の大企業が被害を受ければ発注停止という形で連鎖します。逆に自社が侵入口になれば、取引先への加害者となり取引そのものを失うおそれもあります。最大の課題が人材不足である以上、専任担当を置けない中小企業には外部サービスへの委託が現実的な解となります。同時に「被害なし企業が42.5%まで増えた」という事実は、基本的な対策を実行すれば防げる攻撃が相当数あることを意味しています。

経営者の視点

CIO Loungeの四本英夫氏は「セキュリティをIT部門に任せきりにせず、経営層が予算や人員配置に直接責任を持つ企業ほど被害を最小限に留めている」と指摘しています。実務としては、まず経営者が予算と責任者を明示することです。次に「何日止まったら事業が終わるか」を計算し、36日という数字を当てはめて耐久日数を出してください。バックアップは本体と切り離した場所に取り、実際に復元できるかを年1回テストします。IDとパスワードには二段階認証を必須化し、まずメールとクラウド会計から着手しましょう。注意点として、バックアップが同じネットワーク上にあると一緒に暗号化され復旧できない事例が多くあります。身代金を支払っても復旧の保証はなく、サイバー保険と事故対応を支援する外部窓口を今のうちに確保しておくことをお勧めします。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):ランサムウェア被害の平均被害額約3.5億円、平均停止期間36日。生成AI活用拡大の一方で外部攻撃対策に遅れ

4. OpenAIが日本初のChatGPTブランドキャンペーンを開始

概要

OpenAIが日本で初となるChatGPTのブランドキャンペーンを2026年8月9日に開始しました。ブランドキャンペーンとは、商品の値段や機能を売り込む広告ではなく、その会社やサービスへの印象や好感を育てるための広告です。展開媒体はデジタル、YouTube、そしてデジタルOOH(=駅や街頭の電子看板に配信する広告)です。作品は「TRANSFER」「HIFI」「DONUTS」の3本で構成されます。「TRANSFER」は転勤による新生活がテーマで、35mmフィルム・4対3の画角で撮影されました。「HIFI」は音楽店の経営を支える物語で、予約・在庫・仕入れ管理の効率化を描きます。「DONUTS」は小規模なドーナツ店の成長物語で、新商品開発・PR・地域とのつながりを描きました。監督は小島央大氏、制作会社はSTINK FILMS JAPANが担当しています。全篇「観たことのない映画のラストシーン」というコンセプトで統一され、テクノロジーの広告でありながら人間の表情と人生を主役に据えました。OpenAIはChatGPTを「人の意図を理解し、考え、支えるパートナー」として位置づけています。

中小企業への影響

3本のうち2本、音楽店とドーナツ店の話は小規模事業者が主人公です。描かれた用途は予約管理・在庫管理・仕入れ管理・新商品開発・PRと、どれも中小企業が日々抱える業務そのものです。「AIは大企業のもの」という思い込みを崩す材料として、社内説明にそのまま使えます。表現手法にも学ぶ点があります。機能や価格ではなく「導入後に顧客がどう変わったか」を描く手法は、規模を問わず真似できます。地元の作り手や地域の楽曲、実在の場面を使う手法は、予算の小さい地域企業ほど相性が良いはずです。AI活用が「効率化」ではなく「やりたかったことができる」という語り口で示されている点も、従業員の抵抗感を下げる参考になります。

経営者の視点

手を付けやすいのは、自社の業務のうち予約・在庫・仕入れの3つでAIに任せられる部分がないかを洗い出すことです。次に、経営者自身が1カ月間、日々の文章作成(メール・告知文・企画メモ)でAIを使ってみてください。使ってみないと判断できない領域だからです。自社の広告やSNSでは、機能説明ではなく「使ったお客様がどう変わったか」を描く投稿を3本作ってみましょう。ただし注意点があります。広告の情緒的な表現をそのまま期待値にすると、実際の導入で「思ったほど楽にならない」という落差が生まれます。顧客情報や取引先情報を無断でAIに入力すると情報漏洩につながるため、入力してよい範囲を1枚のルールにまとめてから全社展開してください。AIが生成した文章は事実の誤りが起きうるため、人が確認する工程を必ず挟みましょう。

参考リンク

AdverTimes.(アドタイ)by 宣伝会議:ChatGPTと過ごした時間の先には何がある? OpenAIが日本初のブランドキャンペーンを開始

5. 「氷のマットレス」で寝よう、コアラが仕掛けた体験型PR

概要

コアラジェイピーが東京・八重洲のイベント「八重洲夜市」で、「氷のマットレス」の展示体験を実施しました。展示期間は2026年8月28日から9月6日まで、時間は午後5時から午後9時までです。氷のマットレスは幅約100センチ、長さ約165センチ、厚さ約25センチ、総重量は約300キロで、氷3枚をつなぎ合わせて作られています。来場者は直接触れたり寝転がったりでき、休日にはコアラのぬいぐるみが入った氷を水鉄砲で溶かす企画も行われました。さらにメールマガジン登録用のQRコード付きうちわを配布し、当選賞品としてマットレスや枕を用意しています。同社は2025年12月に熱を吸収・放散する機能を持つマットレスを発売しており、その「冷たさ」を伝える文脈での施策です。2026年3月には東京・青山でソファーベッドの体験ブースを展開し、205の予約枠が3日で大半埋まる反響がありました。同社は都心東側に直営店を持たず、その地域での認知度向上が課題でした。

中小企業への影響

この事例は、店舗を持たない、あるいは出店の余力がない事業者でも、数日間の体験展示で地域の認知を作れることを示しています。「氷300キロ」という一点突破の仕掛けで、大きな広告費をかけずにSNSと報道で広がる設計は、中小企業でも再現可能です。商品の良さを言葉で説明するより、極端な形にして体験させる方が短時間で伝わるという原則は、業種を問わず使えます。親子連れが楽しめる要素を入れて滞在時間と写真撮影を増やす工夫も、小予算で真似できます。最も持ち帰りやすいのは、うちわ配布とQRコードという原始的な手段で体験を顧客リストに変えている点です。既存の地域イベントに相乗りしているため、自前で集客する必要がないところも小規模事業者に好都合です。

経営者の視点

PR&コミュニケーションズマネージャーの大橋定征氏は「まずは、おもしろいことをやっているなと興味を持ってもらい、覚えてもらえなければ次につながらない」と述べています。自社で応用するなら、まず商品の「一番の売り」を1つに絞り、それを極端な形で見せるとしたら何かを紙に3案書き出してください。次に自社の商圏で開催される既存の地域イベントを調べ、出展条件と費用を確認します。体験を顧客リストにつなぐ導線、たとえばQR付きの配布物やその場登録の特典を先に設計することが重要です。来場者数、QR読み取り数、登録数の3つを測る仕組みも当日までに決めましょう。実施後は14日以内に登録者へ最初の案内を送ります。注意点は3つです。商品名が残らないと費用対効果はゼロになるため、ブランド名の視認性を確保してください。屋外展示は天候に成果が左右されるので代替案を用意します。大型の設営には保険と主催者との取り決めを事前に確認しましょう。

参考リンク

AdverTimes.(アドタイ)by 宣伝会議:「氷のマットレス」で寝よう コアラが仕掛けた “冷たすぎる” 体験型PR

まとめ

今回の5本には、共通する一本の線があります。それは「持っているものを、伝わる形に変える」という発想です。Qoo10は既存商品に限定という枠を与えて成約率を3倍にし、RANDAは蓄積済みのスタッフ写真をAIの回答材料に変えました。OpenAIは機能ではなく使った後の生活を描き、コアラは寝具の冷たさを氷300キロという極端な形に置き換えています。いずれも新しく何かを作ったのではなく、既にある資産の見せ方を変えた事例です。中小企業にとっては、限られた資源のまま打てる手がある、という心強い示唆になります。一方でセキュリティの調査結果は、攻めの施策を支える土台の話です。平均36日の業務停止は、どれだけ良い施策を打っても一度で失いかねない規模の損失を意味します。攻めの一手を1つ決めると同時に、バックアップと二段階認証という守りの基本も同時に着手することをお勧めします。

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