マーケティングニュースまとめ(2026-09-23〜2026-09-29)

2026年9月23日から9月29日までのマーケティング関連ニュースから5本を取り上げ、中小企業の経営にどう関わるかという視点で整理しました。買い物の場面で生成AIやAI検索を使う人の実態調査、ローソンによる生成AI発案の商品開発、ネット契約の誘導デザインへの規制強化を求める社説、花王の体験型イベント、物価高のなかで受け入れられる値上げの条件という5つです。いずれも自社の規模に関係なく判断が必要になる論点を含みます。各ニュースは概要、中小企業への影響、経営者の視点の3つに分けて記載し、最後に全体の要点をまとめています。

目次

1. 買い物で生成AI・AI検索を使った割合は約34%、調べたジャンル1位は家電・ガジェット

概要

Itera(AI上での自社の語られ方を可視化する「LLMOチェキ」を運営)が2026年9月29日、消費者調査の結果を公開しました。スクリーニング調査2,000人、本調査300人で、対象はEC・通販でAIを使った経験のある全国18〜70歳です。買い物で生成AI・AI検索を使った経験は合計34.0%、およそ3人に1人が購買にAIを挟んでいます。調べたジャンルは「家電・ガジェット」39.6%、「旅行・ホテル」31.5%、「飲食店」28.0%と高関与カテゴリーに集中し、利用ツールはChatGPTが54.0%、Geminiが49.7%でした。AIの回答が原因で購入をやめた経験は50.3%あり、理由は評判に関するネガティブな記述42.4%が最多です。一方で回答をそのまま採用する人は17.0%にとどまり、信用度は公式サイト42.0%に対しAIの回答8.3%でした。

中小企業への影響

これまで自社サイトに来る前の勝負は検索順位でしたが、今後はAIの回答文に社名や商品名が出るかが最初の関門になります。公式サイトの価格・在庫・営業時間・送料が古いままだと、AIが誤った情報を要約して伝え、機会損失やクレームにつながります。口コミサイトの低評価もAIの要約経由で増幅するため、1件の重みが従来より増します。家電、旅行・宿泊、飲食の事業者はすでにAI経由の来店が起きている可能性が高く、計測していなければ効果を過小評価しています。半面、知名度が低くても条件が明確な商品は大手と同じ土俵で候補に入りやすくなり、逆に仕様をPDFや画像だけで出していると読み取られず候補から漏れます。BtoBも同じ構図で、実績・対応範囲・価格帯の明文化が受注機会に直結します。

経営者の視点

まずChatGPTとGeminiで「自社名」「商品カテゴリー+地域」「おすすめの〇〇」と質問し、回答をスクリーンショットで保存し、月1回繰り返して変化を追ってください。公式サイトの価格・仕様・送料・在庫・保証条件を棚卸しし、古い記載は数日以内に直します。よく聞かれる質問20個はFAQページに本文テキストで書き起こします。画像やPDF内の文字は拾われにくいためです。競合との違いは「誰向けか/何が強いか/いくらか/対応できない条件」の4点で言語化し、比較表の形で置きます。アクセス解析では生成AIサービスからの流入を切り出し、件数と転換率を月次で見ます。なお本調査はAI利用経験者300人ベースで、消費者全体の34%と読むのは誤りです。先行層の実態値として扱ってください。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):買い物で生成AI・AI検索を使った割合は約34%。調べたジャンル1位は「家電・ガジェット」で約4割

2. ローソンが生成AI発案のコンセプトからスイーツ・ベーカリー・サラダの3商品を開発

概要

ローソンが2026年9月24日、生成AIを活用した商品開発に着手したと発表しました。生成AI発案のコンセプトから商品化するのは同社として初です。開発した3商品は2026年9月29日から関東・甲信越地区で発売します。内容は「レモンタルト(ピクルス風味)」税込270円、「酒種あんバターヨーグルトパン」税込181円、「混ぜて食べる 和風パフェサラダ(ビーフン入り)」税込475円で、いずれも約3,800〜4,700店舗で扱います。スイーツにピクルス、サラダにパフェの見立てという、通常の商品会議では通りにくい組み合わせが並びます。役割分担はコンセプトの発案が生成AI、レシピ化・試作・味と品質の検証・量産設計は人の担当者で、AIの案をそのまま売るわけではありません。店頭販促物には「AI発案」と明記し、AIが考えた商品であること自体を購買のフックにしています。

中小企業への影響

商品数が少なく企画会議の参加者も限られる中小企業では、アイデアの幅が特定の人の経験値に依存しがちです。生成AIは無料から低額で「もう一人の発想役」を置ける手段で、1回の指示で数十案を出せるため、初期検討の時間を圧縮して試作と検証に回せます。「AI発案」と明示する手法は、広告予算が小さい事業者でもプレスリリースやSNSで取り上げられやすい話題性をつくれます。一方でAIは原価、仕入れロット、設備、賞味期限、オペレーション時間を知らないため、現場でのフィルタリング工程が欠かせません。飲食以外でもメニュー名、セット構成、キャンペーンの切り口、ネーミング案は相性がよい領域です。ただし自社の原材料・設備・顧客層をプロンプトに入れないと、他社と似た案に落ち着き差別化になりません。

経営者の視点

今期の新商品・新メニュー企画のうち1枠を「AI発案枠」として切り出し、社内の常識で最初から潰さないルールを決めてください。プロンプトには主要な仕入れ食材、原価上限、調理設備、提供時間、主な客層、NG条件の6項目をテンプレート化して必ず入れます。運用はAIに一度で30案出させ、担当者が「奇抜だが実現可能」な3案だけ残す二段階の絞り込みにします。試作の合否基準は事前に数値で決め、社内試食10人中7人が再購入したいと答えたら通過とします。販促物に「AI発案」と書くなら、AIが担当した範囲と人が担当した範囲を1行で説明できる文面を用意します。販売はエリアと期間を限定し、販売数・リピート率・原価率の3指標で1カ月前後に判断します。アレルギーや食品表示法上の表記は人が確認します。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):ローソンが生成AIを活用した商品開発に着手。AI発案の商品コンセプトからスイーツ、ベーカリー、サラダの3商品を開発、店頭販促物もAI発案を訴求

3. ネットでの契約と悪質な誘導、ダークパターンへの規制強化を求める社説

概要

2026年9月27日付の西日本新聞社説が、ネット上の「ダークパターン」への規制強化を求めています。ダークパターンとは、消費者を意図せず不利な選択に誘導する画面設計の手法です。ダークパターン対策協会が2026年8月に公表した試算では、金銭的被害を経験した人は推計2,650万人、直近1年間の被害額は3兆2,000億円で、2年前の約2倍に拡大しています。社説は消費者庁が2026年8月に規制強化の方針を示し、2027年の通常国会での特定商取引法改正を目指している点を伝えています。現行法には通信販売の「最終確認画面」での表示義務がありますが、それだけでは誘導型の設計を防ぎきれていないという整理です。提言は表示義務の徹底、広告・契約・解約の各段階での規制、行政処分の導入検討、相談窓口の充実に及び、正当なマーケティング手法との線引きが課題であるとも指摘しています。

中小企業への影響

2027年通常国会での特定商取引法改正が視野に入り、自社サイトやECの申込・解約画面が規制対象になり得ます。最大のリスクは悪意がなくても該当しうる点です。カートやサブスクASPの初期設定のまま、オプションが最初からチェック済み、解約導線が電話のみという状態は、典型的なダークパターンと見なされやすいです。広告段階の「初回0円」「実質無料」と実際の総支払額の乖離も問題視され、ランディングページの訴求文を作り直す必要が出る可能性があります。行政処分が導入されれば社名公表による信用失墜が売上に直接響き、中小企業は回復余力が大企業より小さいです。半面、解約しやすさや料金の明快さを打ち出すことは、競合が対応しきれないうちは差別化になります。制作を外注していても画面設計の責任は発注者に来ます。

経営者の視点

まず自社の申込フローを、経営者自身がスマートフォンで最後まで操作し、総支払額・契約期間・解約方法が迷わず分かるかを確認してください。オプションやアップグレードの初期状態がチェック済みになっていないかを全ページで点検し、すべて未チェックに直します。「無料」「0円」「最安」といった表現には、初回請求額、2回目以降の金額、最低利用期間を同じ画面の見える位置に併記します。最終確認画面に載せる項目(商品名、金額、支払時期、引渡時期、返品・解約条件)はチェックリスト化し、新しい施策ごとに確認記録を残します。カウントダウンタイマーや残りわずか表示を使っている場合は、それが事実に基づくかを検証してください。法改正前でも景品表示法や消費者契約法で違反になりうるため、消費者庁の公表資料を四半期ごとに確認する担当を決めます。

参考リンク

西日本新聞:【社説】ネットでの契約 悪質な誘導 許さぬ規制を

4. 花王が原宿で「貼る・浸かる・知る」の体験型イベント、炭酸の認識ギャップに挑む

概要

花王が2026年9月28日から10月4日まで、東京・原宿で体験型イベント「ぐったりしたら原宿チャージ!炭酸ジュワカド」を開催します(ASCII.jpが2026年9月28日に報じました)。会場は東急プラザ原宿「ハラカド」で、屋上と地下の「チカイチ」を使う複数箇所での展開です。「浸かる」体験は施設内の銭湯「小杉湯原宿」と連携し、入浴剤を実際に使える場として銭湯を組み込んでいます。訴求商品は「めぐりズム 足に貼る炭酸 ジェルパック」「バブ モンスターバブル」「メルト クリーミーメルトパウダー」の3つで、体験は「貼る・浸かる・知る」の3つのタッチポイントで構成されます。「ぐったり引換所」では原宿を歩いた歩数やアンケート回答に応じて体験や試供品を提供し、疲労度を「ぐったり度」として可視化します。狙いは「炭酸=飲むもの」という固定認識と、入浴剤・ボディケア・ヘアケアに広く使われている実態とのギャップの解消です。

中小企業への影響

自社商品の使い方そのものが誤解されているケースは中小企業にも多く、広告費を増やす前に認識のズレを1文で特定することが先だという示唆があります。店頭で試せない商品を扱う事業者では、体験の場をどう作るかが直接の売上課題になります。注目したいのは自社だけで場を用意しないという考え方で、花王は施設内の銭湯と組むことで通常なら成立しない体験を実現しました。中小企業も既存の施設・店舗・催事に相乗りすれば、低コストで体験機会を作れます。歩き疲れて休みたい、待ち時間がある、子どもを遊ばせたいといった来街者の自然な行動に施策を差し込む発想は、商店街や地方の店舗でも応用できます。歩数やアンケートを引き換え条件にする設計は参加のゲーム化とデータ取得を同時に実現し、紙のスタンプカードでも同じ構造が作れます。

経営者の視点

最初の作業は、自社商品について顧客が誤解している一点を1文で書き出すことです。試せる場がない場合は、近隣の既存施設(銭湯、カフェ、フィットネス、道の駅、催事)と組んで体験させられる場所を1つ探して声をかけてください。体験企画では参加条件にアンケート回答を必ず入れ、聞く項目は今の悩み、その商品の用途認識、買うとしたら何が決め手か、の3問に絞ります。期間は7日間程度に区切り、開始前に体験者数、SNS投稿数、体験者からの購入・問い合わせ数の3指標を決めておきます。終了後は数日以内にアンケートと投稿内容を読み、誤解の内容が変わったかを確認します。変わっていなければ体験の設計ではなく訴求文の問題として作り直します。体験の出口で何の商品でどこで買えるかを伝える設計と、肌に触れる体験での使用上の注意や個人情報の保管ルールの手当ても省略できません。

参考リンク

ASCII.jp:炭酸は「飲む」だけじゃない? 原宿で体験する「貼る・浸かる・知る」――花王が仕掛ける"炭酸チャージ"の狙い

5. 逃れられない物価高、消費者が受け入れられる「値上げ」の条件

概要

マイボイスコムが2026年8月31日に発表した物価高に関する調査結果をもとにした記事です(AdverTimes.が2026年9月29日に公開)。調査期間は2026年8月1日から7日、回答者数は10,877人です。支出の負担感を「負担が大きい」「やや大きい」と答えた人は全体の75%で、その層のうち40〜50代女性が4割強を占めます。価格上昇を感じたカテゴリーは「食品・飲料」86.9%、「菓子・スイーツ類・アイス」71.1%、「日用品・衛生用品」58.0%の順でした。食品・飲料の値上げの影響を「大きい」と答えた人は74.7%、価格が上がっても継続購入したいという回答は66.1%で、理由の約8割が「生活に必要だから」です。値上げを受け入れやすい条件は「価格上昇幅が小さい」43.0%、「包装容器の簡素化などで価格を維持する努力」31.6%、「品質向上を伴う値上げ」17.1%、「ポイント還元・割引施策」16.5%でした。

中小企業への影響

価格転嫁が避けられない中小企業では、いくら上げるかより、どう上げるかが売上維持の分かれ目になります。1回で大幅に上げるより小幅で複数回に分けるほうが受け入れられやすい半面、頻度が高すぎると「また上がった」という印象が強まるため、刻みと間隔の設計が必要です。ポイント還元や割引クーポンで実質負担を下げる施策は評価が16.5%と低く、コストをかけても受容度が上がりにくいため、原資を別の用途に振る判断があり得ます。一方、包装の簡素化、内容量の見直し、サイズ展開の追加といった努力が見える工夫は31.6%が評価しており、中小企業でも実行可能な打ち手です。負担感の中心が40〜50代女性である以上、告知文や店頭表示はこの層が読む場所と言葉に合わせる必要があります。

経営者の視点

値上げを予定している商品は、上げ幅を1回で実施する案と2回に分ける案の両方を計算し、粗利と受容度の両面で比較してから決めてください。上げ幅は金額と比率の両方で書き出し、顧客の1回の買い物における増加額(たとえば1回あたり+30円)に換算して社内で共有します。ポイント還元での実質値下げを検討している場合は、その原資を包装の簡素化や規格の見直しといった見える工夫に振り替えられないか検討します。告知文は原材料費の上昇という理由で終えず、価格を抑えるために実行した工夫を具体的に1つか2つ書き添えます。実施後は1〜2カ月の販売数量・客数・1人あたり購入点数を追い、離脱が数量減か客数減のどちらで起きているかを特定します。内容量を減らして価格を維持する場合は変更を必ず明示してください。隠した実質値上げは発覚時の信用低下が大きくなります。

参考リンク

AdverTimes.(宣伝会議):逃れられない物価高、消費者が受け入れられる「値上げ」の条件とは

まとめ

5本を通して見えるのは、顧客との接点が「企業が完全には管理できない場所」に移りつつあるという共通点です。AIの回答文、レビューや口コミ、申込画面の設計、店頭での体験、値札の見え方。いずれも自社サイトの外側や、細部の設計で結果が決まります。生成AIの調査は、AIが候補の絞り込みを代行し、最終判断は公式情報で行われている実態を示しました。ローソンの事例は、AIを効率化ではなく発想の飛距離に使い、品質担保は人が持つという分業の形を見せています。ダークパターンの論点は、書いてあるかではなく気づかせているかが問われる段階に入ったことを意味します。花王のイベントは、認識のズレは広告量ではなく体験で動くという示唆です。値上げの調査は、消費者が見ているのはその場の支払額であり、目に見える工夫が受容度を上げることを示しました。共通する初動は、自社の情報と画面と表示を経営者自身が顧客と同じ手順でたどり、ズレを書き出すことです。どれも大きな投資を必要とせず、手を動かした分だけ差が出る領域です。

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