2026年7月29日から8月4日までに発表されたマーケティング関連のニュースから、中小企業の経営に役立つ5本を選んでご紹介します。今回は「顧客をどう分けるか」「顧客の本音をどう聞くか」「どこで伝えるか」「投稿前にどう守るか」「お客様の声をどう活かすか」という、販促の入口から出口までが一通り並びました。いずれも大手企業の発表ですが、考え方だけを取り出せば、社員数名の会社でも今日から真似できるものばかりです。専門用語は都度かみくだいて説明しますので、マーケティング担当者がいない会社の経営者の方もそのままお読みいただけます。
1. 電通プロモーションが買い物客を8つのグループに分類、購買データと生活者の声をAIで分析
概要
電通プロモーションが2026年7月30日、買い物客を8つのクラスター(似た者どうしのグループ)に分類したと発表しました。元になったのは、全国122店舗の食品スーパーから集めた約60万件のID-POSデータです。ID-POSとは、レジの販売記録に会員IDを紐づけたデータのことで、「何が売れたか」だけでなく「同じ人が何度買ったか」まで追える点が普通のレジデータとの違いです。今回はここに、生活者の価値観やライフスタイルを聞き取った定性データ(数字にならない、言葉のデータ)を組み合わせ、AIで分析しています。商品バーコードの番号が判明している商品の購買実態がベースのため、「誰が・何を・いつ買ったか」を実データで追える形です。従来の「30代女性」「50代男性」といった属性による区分では見えなかった購買スタイルを、価値観や購買時の判断軸まで含めて可視化した点が新しいところです。特定した8つのグループは「AIショッパーペルソナ」として対話型AIサービスに搭載され、担当者がAI相手に質問できる形で使えます。1対1の深掘りだけでなく、複数のペルソナを同時に呼び出すグループインタビュー形式にも対応します。狙いは、店頭や小売向け販促の企画を速く、精度高く進めることにあります。なお、8つのグループそれぞれの具体的な名称や構成比は公開されていません。
中小企業への影響
このニュースで中小企業が真似すべきは、8つという分類そのものではなく「自社の顧客を年代・性別以外の軸で切り直す」という考え方です。レジのデータや顧客名簿、通販サイトの購入履歴があれば、規模が小さくても発想はすぐに実行できます。たとえば「まとめ買い派」「その都度買い派」「特売追随派」といった買い方の軸で分けるだけでも、案内状やクーポンの当て方は変わります。購買データがほとんどない会社でも、常連のお客様への短時間の聞き取りを10件から20件積むだけで「なぜ買うのか」の軸は作れます。通販サイトを持つ会社なら、購入履歴から「初回のみのお客様」「定期的に買うお客様」「セール時だけのお客様」の3分類を作るだけでも効果が出ます。分類を少なく保つことも大切です。分け方が多すぎると運用が回らず、結局は全員へ同じ販促を打つことになります。小売店に商品を卸している会社は、取引先がこうした分類を使い始める可能性があるため、提案書の書き方を合わせる準備をしておくと安心です。
経営者の視点
まずは、自社の顧客データがどこに何件あるかを棚卸しするところから始めてください。レジ、通販の管理画面、名刺、LINE公式アカウントなど、散らばっているはずです。次に、顧客を購入頻度・購入単価・買うきっかけといった軸で3つから5つに分けます。あわせて上位のお客様10人に15分ずつ電話やチャットで「最初に買った理由」「他社と比べた点」を聞き、購買理由のメモを作ります。分けたグループごとに直近1年の売上構成比を出し、売上の大半を占めるグループを1つ特定します。そのグループ向けに、次の販促の文面を1本だけ作り分けてテストします。テストは必ず後から数えられる形にしてください。クーポンコードを分ける、専用のページを使うなど、測る仕組みを先に用意します。3か月後に反応率を比べ、効果が出た軸だけ残して他は捨てます。注意点も押さえておきましょう。AIが作った顧客像はあくまで過去データからの推定であり、実在のお客様の生の声そのものではありません。AIの答えだけで大きな投資判断をしないでください。今回のグループ分けは食品スーパーの購買データが元のため、業種や商圏が違えばそのまま当てはまるとは限りません。顧客データを外部サービスに入れる際は、個人情報の利用目的や同意の範囲を必ず確認します。そして「AIで分析した」こと自体を成果と誤解しないことです。売上や反応率が動いて初めて意味があります。
参考リンク
Web担当者Forum(インプレス):電通プロモーションが8つのショッパークラスターを特定、ID-POSデータと生活者の定性データをAI分析
2. 楽天インサイトが海外生活者へのインタビュー調査を最短5営業日で実施できるサービスを開始
概要
楽天インサイトが2026年7月30日、海外の生活者に向けた調査サービス「AIチャットインタビュー for Global」の提供を開始しました。最大の特徴は調査完了までの期間で、最短5営業日でインタビュー調査を実施できます。対応エリアは世界40以上の国と地域、1つの市場あたり100人規模のインタビューが可能です。調査に協力してくれる人を登録した名簿(パネル)は1億人以上の規模があります。仕組みは、AIチャットボットが調査対象者と1対1の自然な対話を重ね、企業が求めるインサイト(本人も明確に意識していない本音や動機)を集めるというものです。従来は調査担当者が1人ずつ実施していたインタビューを、多数の対象者に対して同時並行で進められる点が、期間を短くできる理由です。文字だけでなく画像データも受け取り、文字に変換して分析に使えます。たとえば冷蔵庫の中身の写真から、購入している食品メーカーや商品を推定するといった使い方です。海外の定性調査(少人数に深く話を聞き、理由や気持ちを探る調査)は、通訳や現地調査会社の手配が必要で、費用は数百万円規模、期間は数か月かかるのが一般的でした。そのため中小企業は「現地に行かずに雰囲気で判断する」か「調査を諦める」かの二択になりがちでした。今回のサービスは、そこを解消することを狙いとしています。
中小企業への影響
越境ECや海外展開を検討している会社にとって、現地に行かずに現地の生の声を集められる意味は小さくありません。価値の本質は「安くなった」ことより「速くなった」ことにあります。最短5営業日なら、商談や展示会出展の前に結果が間に合います。渡航費や在庫を投じる前に「現地でどう受け取られるか」を確かめられるため、判断のリスクを下げられます。40以上の国と地域に対応しているので、進出先を絞り込む前に「どの国が有望か」を比べる用途にも使えます。海外に出ない会社でも、訪日外国人向けの商品設計に、その出身国の生活実態データを活かせます。商品名やパッケージが現地で違う意味に取られないかを、事前に確認できる点も実務的です。ただし、AIが聞き手を務めるため、何を聞くかという質問設計の巧拙が結果を大きく左右します。ここは自社で考える必要があり、丸投げはできません。1市場100人規模は従来の定性調査より桁違いに多く、定性と定量の中間の使い方ができる点も覚えておきたいところです。
経営者の視点
進め方はシンプルです。まず海外展開の候補国を、現在の問い合わせ実績や越境ECの購入国データから3か国に絞ります。その3か国について「何が分かれば投資判断できるか」を紙1枚に書き出します。価格の受け入れられ方、競合、使われる場面などが候補です。次に楽天インサイトへ問い合わせ、1市場100人規模の見積もりと納期を確認します。記事に価格の記載がないため、ここは必ず自社で確認が必要です。予算が合わない場合の代替として、既存の海外顧客10人にオンラインで直接聞く案も並行して用意しておきましょう。調査で聞く質問は5問から7問に絞ります。「買いますか」ではなく「前回どう選んだか」を聞く形にすると、実態に近い答えが得られます。結果が出たら、進出するかどうかだけでなく、商品名・パッケージ・価格帯の3点を直す必要があるかまで判断してください。結果は社内で共有し、1か月以内に次の行動を1つ決めます。注意点もあります。AIによるインタビューは、熟練の聞き手のような臨機応変な深掘りが難しい場合があり、想定外の本音を取りこぼす可能性があります。調査対象は登録者であり、その国の一般生活者を完全に代表しているとは限りません。ネット利用に積極的な層に偏りやすい点は織り込んでおきます。100人規模でも統計的に厳密な市場規模の推計には向かず、方向性をつかむ目的に使うのが適切です。翻訳や要約の過程でニュアンスが失われる可能性もあるため、重要な判断では原文の確認も検討してください。
参考リンク
ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):海外生活者へのインタビュー調査を最短5営業日で実現「AIチャットインタビュー for Global」、楽天インサイトが提供開始
3. 企業の6割超が広告・プロモーションに課題、今後強化したい媒体の1位はSNS
概要
タレント広告サービス「ACCEL JAPAN」を運営するブランジスタエールが、広告・プロモーションに関する実態調査の結果を公表しました。調査時期は2026年6月、対象は同サービスの導入企業で、有効サンプル数は197件です。結果を見ると、プロモーション(商品やサービスを知ってもらい、買ってもらうための働きかけ全般)に何らかの課題を抱えている企業は61.7%にのぼりました。課題の内訳で最も多かったのは「認知拡大ができない」で17.6%、次いで「広告パフォーマンスが上がらない」が15.9%、「効果的な出稿媒体が分からない」が15.3%と続きます。大きく分類すると、認知・集客に関する課題が計30.5%、広告運用に関する課題が計31.2%でほぼ拮抗していました。現在活用している媒体はオンラインが53.1%、オフラインが45.4%で、オンラインがわずかに上回ります。オンラインの内訳は1位が公式サイトで20.8%、2位がSNSで11.8%、3位がWebバナー7.5%、4位がポータルサイト7.4%です。オフラインはチラシ8.3%、パンフレット5.2%、DM4.1%、折り込み広告4.1%となっています。一方、今後強化したい媒体では1位がSNSで14.1%、2位が公式サイトで12.4%となり、現在の順位が逆転しました。動画配信サイトは4.3%にとどまります。オフラインで今後強化したい媒体はチラシ6.7%、パンフレット6.5%、ポスター4.8%の順でした。
中小企業への影響
6割超が課題を抱えているという事実は、自社だけが上手くいっていないわけではないという安心材料になります。焦って媒体を追加しない根拠として使えます。数字の読み方も押さえておきましょう。「認知拡大できない」と「パフォーマンスが上がらない」がほぼ同率で並ぶのは、入口(知られていない)と出口(成果が出ない)の両方で詰まっている会社が多いということです。「効果的な出稿媒体が分からない」が15.3%あるのは、選択肢が増えすぎたことの裏返しで、媒体を増やすより絞る判断が求められている状況を示します。今後の強化先1位がSNSということは、競合他社もSNSに来るということです。参入が増えれば投稿は埋もれやすくなります。ただし公式サイトが現在の1位である以上、SNSを始める前に自社サイトが受け皿として機能しているかの確認が先です。チラシとパンフレットは今後の強化先にも残っており、地域商圏の会社が紙を捨てる必要はありません。動画への投資は全体的に低いため、体力のある会社にとっては相対的に空いている領域と言えます。
経営者の視点
最初にやるべきは、自社の課題が「認知(知られていない)」なのか「成果(見られているが売れない)」なのかを1つに特定することです。両方と答えないでください。次に直近12か月の広告費を媒体別に書き出し、それぞれの問い合わせ件数や売上への寄与を並べます。分からない媒体には正直に「不明」と書きます。その「不明」の媒体には、まず測る仕組みを付けます。専用電話番号、クーポンコード、専用ページなどです。改善はその後で構いません。使っている媒体が5つ以上ある場合は、成果を説明できない媒体を2つ止め、その予算を残りに寄せます。SNSを強化するなら、始める前に「誰が・何回・何を投稿するか」を決めてください。担当者が決まらないまま始めないことです。自社サイトについては、スマートフォンで見て3秒で「何屋か」が分かるかを、経営者自身が確認してください。地域商圏のビジネスなら、チラシに専用のページやQRコードを載せ、紙の効果を数えられるようにしたうえでSNSと組み合わせます。四半期に1度、媒体別の成果を並べて見直す会議を30分設けると、やりっぱなしを防げます。注意点として、この調査の対象は特定サービスの導入企業197件であり、日本企業全体の縮図ではありません。数値をそのまま自社業界に当てはめないでください。各項目が10%台と低いのは選択肢が多いためで、「17.6%しかいない」と軽視するのは誤読です。また「強化したい1位がSNS」を根拠に安易に始めると、投稿が続かず放置された状態になり、かえって逆効果になります。SNSでの広告表現は2023年10月に施行されたステマ規制の対象で、依頼して書いてもらった投稿には広告である旨の表示が必要です。そして媒体を増やすことと成果が出ることは別問題であり、商品そのものに問題がある可能性を先に潰しておく必要があります。
参考リンク
Web担当者Forum(インプレス):企業の6割超が「広告・プロモーション」に課題! 今後強化したい媒体1位はSNS【アクセルジャパン調べ】
4. コムニコがSNS運用ツールに投稿前のAIコンプライアンスチェック機能を搭載
概要
ラバブルマーケティンググループの子会社であるコムニコが、2026年7月31日にSNS運用ツール「comnico Marketing Suite」への新機能搭載を発表しました。追加されたのは、SNS投稿のAIコンプライアンスチェック機能です。コンプライアンスチェックとは、法律や社会のルールに反していないかを投稿前に点検する作業を指します。投稿作成画面に「AIチェック」タブが設けられ、そこでチェックを実行する仕組みです。判定は12のカテゴリに分けて行われます。観点は大きく3つあり、①表現そのものにリスクがあるもの、②受け取られ方によって炎上につながりうるもの、③運用ミスの可能性があるもの、という分け方です。判定は言語を問わず、日本の慣習に基づいて行われます。ただし制限もあり、TikTokの投稿とInstagramのストーリーズでは本機能を利用できません。狙いは、予期せぬ誤解や批判を防ぎ、投稿の品質とアカウントの安全性を保つことにあります。背景には、SNS運用をめぐる法的なチェック負荷の高まりがあります。2023年10月にステマ規制が施行され、広告であることの明示義務が生じました。化粧品や健康食品は薬機法、価格や効果の訴求は景品表示法と、投稿ひとつでも関係する法律が複数あります。なお、料金やチェック所要時間、判定精度の具体的な数値は公表されていません。
中小企業への影響
中小企業ではSNS運用が1人担当であることが多く、投稿前のダブルチェックが物理的に難しいのが実情です。確認役を機械が代われる意味は大きいと言えます。炎上は売上減より信用の毀損による被害が大きく、防止にかけるコストは保険と同じ考え方で捉えるのが妥当です。化粧品、健康食品、飲食など、薬機法や景品表示法に触れやすい業種ほど恩恵は大きくなります。ツールを導入しない会社でも、価値の中心は真似できます。この機能が見ているのは法律違反だけでなく「受け取られ方による炎上」までであり、ここは目視だと担当者ごとにばらつきが出やすい領域です。12の観点に分けて確認するという考え方だけを、自社のチェックリストに転用すれば費用はかかりません。SNS運用を外部に任せている場合は、代行会社がどんなチェック体制を持っているかを確認する材料にもなります。TikTokを中心に運用している会社は対象外のため、その分は人の目による確認体制を残す必要があります。副次的な効果として、担当者が「これを出していいか」と経営者に確認する回数が減り、投稿のスピードが上がる点も見逃せません。
経営者の視点
まず、自社のSNS投稿が現在は誰の確認を経て出ているかを、実態のまま紙1枚に書き出してください。担当者から上長へ、あるいは確認なし、といった具合です。確認者が1人だけ、または確認がない状態なら、投稿前チェックリストを紙1枚で作ります。項目には最低限、効果を断定していないか、他社を貶めていないか、無断で写真や音楽を使っていないか、広告なら広告と書いたか、の4つを入れます。あわせて自社が関係する法律を特定します。化粧品や健康食品なら薬機法、価格や効果の訴求なら景品表示法です。過去半年の投稿を50件ほど遡って読み、今のチェックリストに引っかかるものがあれば削除・修正してください。外部に委託している場合は、契約書でチェックの責任がどちらにあるかを確認します。ツール導入を検討するならコムニコへ見積もりを依頼し、自社が主に使うSNSが対象かどうか、特にTikTokの利用有無を確認してください。あわせて、万が一炎上した場合の連絡順序を先に決め、社内で共有しておきます。注意点も明確です。AIチェックは万能ではありません。通過したから安全と考えず、最終判断は人が行う体制を残してください。判定は日本の慣習に基づくため、海外向けや多言語の投稿にひそむ文化的なリスクは検出できない可能性があります。ツールを入れたことで担当者の確認が甘くなる「安心の副作用」にも注意が必要です。薬機法の効能効果のように法的な最終判断が必要な表現は、AIではなく専門家に確認してください。
参考リンク
Web担当者Forum(インプレス):コムニコが「マーケティングスイート」にSNS投稿のAIコンプライアンスチェック機能を搭載
5. 家具ECのLOWYAが、お客様の投稿写真とインタビューを組み合わせた連載企画を開始
概要
家具・インテリアECの「LOWYA(ロウヤ)」を運営するベガコーポレーションが、2026年7月30日に新しいコンテンツ企画を開始しました。企画名は「Hello! MY ROOM」で、掲載場所は自社の公式ECサイト内です。素材となるのは、SNS上に投稿された約3万件のUGC(お客様自身が作って投稿した写真や動画、レビューのこと)です。この約3万件の中から、部屋の広さ・間取り・暮らし方・インテリアの好みという基準で実例を選んでいます。選んだ実例に対してはユーザーインタビューを行い、商品が実際の住まいでどう使われているかを紹介する構成です。コンテンツは読み物記事とSNS投稿のギャラリーを組み合わせた形になっています。公開時点の掲載事例は「12畳・二人暮らし」「9畳・一人暮らし」「11畳・一人暮らし」の3本です。LOWYAの公式SNSの総フォロワー数は260万人を超え、自社アプリ「おくROOM」は2026年4月時点で累計100万ダウンロードを突破しています。狙いは、ECで家具を買う際のサイズ感や生活動線への不安をやわらげ、購入判断を後押しすることです。掲載記事から商品詳細ページへ移動できる導線(訪問者が目的のページにたどり着くまでの道筋)も設計されています。なお、購入率や売上への効果を示す数値は公表されておらず、効果の検証はこれからと読めます。
中小企業への影響
この企画は約3万件のUGCとフォロワー260万人超という土台があって成立していますが、仕組み自体は規模を問わず作れます。お客様に写真投稿をお願いするだけなら、費用はほとんどかかりません。注目すべきは選定基準です。「部屋の広さ・間取り」という、購入前に一番不安な軸で切っている点が実務的に優れています。「うちに入るか」「使ってみてどうか」という不安は家具に限らず、高額な商品やサイズのある商品すべてに共通します。事例を3本から始めている点も中小企業の参考になります。大量に用意しなくても始められるということです。お客様の声を並べるだけでなく、短いインタビューを足すだけで内容の深さは変わります。1人15分の電話で十分です。写真を提供してくれるお客様は熱心なファンになりやすく、掲載自体が関係強化につながります。広告費をかけずに既存顧客の資産で購入前の不安を解消できるため、費用対効果の高い施策になり得ます。BtoBでも同じ構造が使え、導入事例に「なぜ選んだか」の短いインタビューを足すだけで説得力が上がります。
経営者の視点
着手の順番は明確です。まず自社商品を使っているお客様の写真がSNS上に何件あるかを、ハッシュタグや商品名で検索して数えます。次に、お客様が購入前に一番不安に思っていることを1つ特定します。サイズ、使い方、耐久性、設置の手間などが候補です。その不安に直接答える事例を、まず3本作ります。多く作ろうとしないことが続けるコツです。写真を提供してもらう際は、必ず書面やメッセージで掲載許可を取り、サイト・SNS・チラシといった利用範囲を明記してください。掲載者へのお礼も先に決めておきます。割引クーポンや次回サービスなどです。無償での依頼は続きません。1事例あたり15分のインタビューで「買う前の不安」「決め手」「使ってみた感想」の3点だけを聞けば十分です。事例ページからは必ず商品ページへのリンクを置き、読んで終わりにしない導線を作ってください。更新頻度は月1本など続けられる範囲で決め、担当者と締切をカレンダーに入れます。注意点もあります。お客様の投稿を掲載するには本人の許可が必須で、無断転載は著作権侵害となり、SNS上でのトラブルにも発展します。商品提供や謝礼をして投稿を依頼する場合は、2023年10月施行のステマ規制の対象となり、広告である旨の表示が必要です。お客様の部屋の写真には、表札や窓の外の景色、家族の顔など個人が特定される情報が写り込む可能性があるため、掲載前の確認を徹底してください。連載型は更新が止まると「放置されている店」という印象を与えます。また、良い事例だけを選ぶと現実味が薄れるため、狭い部屋や失敗談も交えた方が信頼されやすくなります。素材が少ない段階で無理に始めず、まず投稿してもらう仕掛けから着手するのが順序です。
参考リンク
ネットショップ担当者フォーラム(インプレス):家具ECの「LOWYA」、UGC+ユーザーインタビューの連載型コンテンツ企画をECサイト内で展開
まとめ
今回の5本を通して見えてくるのは、「顧客を深く知り、正しく届け、慎重に発信する」という流れです。電通プロモーションの8分類と楽天インサイトの海外調査は、顧客の実態と本音をつかむ話でした。アクセルジャパンの調査は、媒体を増やすより絞り、測る仕組みを先に作るべきだと教えてくれます。コムニコのAIチェックは発信を守る話であり、LOWYAの連載企画はお客様の声を売上につなげる話でした。いずれも大手の取り組みですが、中小企業が真似すべきは道具ではなく考え方です。顧客を年代・性別以外で分ける、聞く前に何を知りたいかを決める、効果を後から数えられる形にする、投稿前に指差し確認する、お客様の声に15分のインタビューを足す。どれも今日から無料で始められます。まずは1つだけ選び、3か月続けてみてください。

