マーケティングニュースまとめ(2026-09-09〜2026-09-15)

2026年9月9日から9月15日までに公表されたマーケティング関連のニュースから、中小企業の経営に直結する5本を選びました。Yahoo!ショッピングでAI経由の注文が2割に達した話、若者の生成AI利用実態調査、シニア市場の最新動向、推し活の二極化、そして生活用品メーカーのAI販促改革です。いずれも、大きな投資をせずに明日から手をつけられる論点を含んでいます。数字の背景と、自社で何を点検すべきかまで踏み込んで解説します。

目次

1. AI経由の注文が2割に。Yahoo!ショッピングのAIエージェントが示す新しい入口

概要

Yahoo!ショッピングで、AIエージェント経由の注文比率が2026年7月時点で全体の約20%に達しました。2026年5月20日時点では約15%でしたので、約2カ月で5ポイント上昇した計算です。AIエージェントとは、利用者の代わりに商品を探したり比べたりしてくれる仕組みで、秘書のように買い物を手伝う存在とお考えください。LINEヤフーは2026年2月にこの機能を始め、想起から探索、比較検討、意思決定、配送までの流れをAIで作り直す方針を掲げています。「おトクな日を提案する機能」と「AIおまかせ比較」は来訪者の約37%が利用し、「AIお買い物メモ」は利用率22%で、提供開始から1カ月で利用者数が約12倍に伸びました。AI機能を使った人の購入率は、使わなかった人のおよそ1.5倍です。

中小企業への影響

この数字が示すのは、AIが買い物の入口になり始めたという事実です。AIの比較候補に入らない商品は、店頭の棚から外れたのと同じ状態になります。出店者向けの支援ツール「Yahoo! EC Pilot」は2026年3月に始まり、すでに出店ストアの約半数が利用しています。使っているストアは、使っていないストアより前年比の取扱高成長率が15ポイント高いと公表されました。ここまで差が開くなら、用意されたAIツールを使わない判断は実質的な機会損失です。インナーウェアを扱う「白鳩」では、AI活用で購入率が40%増、月間販売数が20%増になりました。広告費を増やさず情報整備だけで売上が動いた例といえます。鍵はスペックの羅列ではなく「誰が・何のために・いつ使うか」という文脈情報です。

経営者の視点

最初に手をつけるのは、主力商品10点の商品名と説明文の点検です。「誰が・何のために・いつ使うか」が書かれているかを、数日のうちに確認してください。出店中であれば、ストアクリエイターPro内のEC Pilotを開き、改善提案を一覧にして優先順位をつけます。送料、納期表示、サイズ表記など、コストをかけずに直せる項目から着手するのが現実的です。分析の質より、提案に即応できる速さが成果を分けます。AI経由の流入と購入は、月次で追う指標に加えてください。見ていない数字は改善できません。ただし、この比率はプラットフォーム側の発表値で、算出の定義を外部から検証できない点には留意が必要です。特定モールに最適化しすぎるとルール変更で露出を失う依存リスクもありますので、楽天やAmazon、自社ECへの横展開も同時に計画しておくと安全です。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム:AIで「売れる」は本当だった! 進化するLINEヤフー「Yahoo!ショッピング」のAIエージェント、AI経由の注文は20%に

2. 生成AI利用は高校生がピーク。若者の使い方が示す情報発信の変化

概要

サイバーエージェント次世代生活研究所が、「若者の生成AI利用実態調査」の第1回を発表しました。2026年7月13日から31日のインターネット調査で、本調査は1,648サンプル、15歳未満は保護者が代理で回答しています。生成AIを日常的に使う割合は、小学生29.0%、中学生47.6%、高校生83.3%、大学生(Z世代)82.4%でした。ところが社会人になると下がり、Z世代社会人56.7%、ゆとり世代社会人54.6%と、高校生をピークにした山型になっています。ChatGPTは小学生20.0%から中学生39.0%、高校生68.8%へ急伸し、Geminiも小学生12.3%から高校生40.3%まで伸びました。3種類以上を使い分ける割合は、高校生15.5%、大学生19.9%です。

中小企業への影響

注目したいのは、使う量だけでなく疑う姿勢も高校生で伸びている点です。「AIの情報には嘘や間違いがあると常に意識している」割合は、中学生56.1%から高校生71.1%へ15.0ポイント上昇しました。裏取り行動も増え、SNSの口コミで確認する割合は41.5%から62.2%へ、公式サイトで仕様を確認する割合は38.6%から59.8%へ伸びています。AIの答えをうのみにせず、最後は公式情報で確かめる人が6割前後に達したということです。自社サイトの仕様や価格、営業情報が古いままだと、AIが誤った説明をし、確かめに来たお客様が離れてしまいます。逆に社会人の利用率が50%台にとどまる以上、いま社内で使いこなせば同業他社に差をつけやすい局面でもあります。

経営者の視点

まず、公式サイトの「価格」「営業時間」「対応エリア」「スペック」が最新かを点検してください。ここはAIが参照する一次情報にあたります。次に、自社名と自社商品を主要な生成AIに質問し、どう説明されるかを実際に確かめます。30分あれば終わる作業です。誤った説明や古い情報が返ってきたら、どのページを直せば改善するか当たりをつけて修正します。社内向けには、生成AIを使ってよい範囲をA4一枚で決めます。禁止ではなく「入れてはいけない情報」を列挙する形が現実的です。若手社員に何にどのAIを使っているかを聞き、有効な使い方を共有する場を月1回つくると、現場の知見が貯まります。留意点もあります。インターネット調査のため、ネット利用に積極的な層が多めに答えている可能性があります。「高校生が最大層だから高校生に投資」と短絡すると、購買力のある社会人層を取りこぼします。

参考リンク

サイバーエージェント:サイバーエージェント次世代生活研究所、「若者の生成AI利用実態調査」を実施 第1回は「学齢別に見る生成AIの使い方」を発表

3. シニア市場は「今活」へ。団塊世代の後期高齢化で変わる消費

概要

矢野経済研究所が2026年4月から6月にシニア関連市場を調査し、その結果を2026年9月11日付で公表しました。対象はシニア関連の12分野・65サービスで、市場規模の把握対象年は2024年です。12分野は介護・リハビリ、住宅、宅配、支援サービス、旅行、スポーツ、娯楽、趣味・習い事、食品・外食、衣料品・日用品、家電・情報機器、流通で構成されます。市場規模はコロナ禍前を大きく上回る水準まで回復・拡大し、主要分野はいずれもプラス成長となりました。背景には、2025年に団塊世代(1947年から1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者へ移行した構造転換があります。注目トレンドとして挙げられたのが「今活(いまかつ)」です。将来に備えるより元気な今を楽しむ消費を指し、クルーズやオペラ鑑賞、高級レストラン、海外旅行が伸びています。

中小企業への影響

この動きの土台には、健康寿命と平均寿命の差があります。2022年時点で男性が約9年、女性が約12年とされ、動けるうちに使うという意識が働いています。一方で、公的年金への不安や医療・介護費用への懸念、物価上昇から生活防衛意識も強く、商品やサービスを厳選する傾向が強まりました。つまりシニア市場は一枚岩ではなく、積極的に使う層と支出を絞る層に分かれています。どちらを狙うかで打ち手はまったく変わります。中小企業にとって現実的なのは、新規開発ではなく既存商品の調整です。訴求を「いま体験できること」に寄せれば、高価格でも受け入れられる余地があります。地元のシニア層は移動範囲が限られるため、商圏の狭い事業者ほど相性が良い点も強みです。

経営者の視点

最初にやるべきは現状把握です。顧客名簿を年代別に分け、60代以上の比率と購入単価を集計してください。すでに主要な客層になっている場合が少なくありません。次に、シニア層に届きそうな既存商品を3つ選び、訴求文を「いま楽しむ」視点に書き換えて反応を試します。店舗やサイトでは、文字サイズ、色のコントラスト、電話番号の見つけやすさを点検します。これはすぐ直せる改善です。常連のシニア顧客5人に、何にお金と時間を使っているかを直接聞くと、想定とのずれが見えてきます。近隣の高齢者向け施設や自治会との接点づくりも、広告費ゼロの集客経路になります。「シニア向け」と前面に出すと敬遠されますので、言い回しを3案つくって比較してください。購入を決めるのが子世代である場合も多く、40代から50代向けの贈答や代理購入の導線も1つ用意しておくと取りこぼしが減ります。

参考リンク

矢野経済研究所:シニア関連市場に関する調査を実施(2026年)

4. 推し活は二極化。人数は減っても支出は増えるという構造

概要

インテージが2026年1月14日から19日に、15歳から79歳の男女5,000人を対象に「推し活」の調査を実施しました。サンプルは国勢調査に準拠して性別・年代・地域を割り付けています。推し活をしている人は全体の33.6%で、およそ3人に1人にあたります。最も実施率が高いのは女性15歳から19歳で75.9%に達しました。一方、シニア層では減少しており、男性60代が前年比マイナス3.8ポイント、男性70代がマイナス10.5ポイントです。ジャンル上位は国内アイドル9.4%、ミュージシャン・バンド8.3%、アニメ7.4%でした。注目すべきは支出額で、ゲームが14,116円から36,698円へ2.6倍、アニメが11,259円から22,584円へ2.0倍に増えています。

中小企業への影響

人数は減っているのに支出は増える。この二極化が今回の中心的な発見です。支出が増えた理由は「グッズ購入が増えた」45.7%、「ライブ参加が増えた」37.3%が上位で、物価高を理由とする回答は16.3%にとどまりました。値上げではなく活動量そのものが数字を押しているということです。この構造は、薄く広くではなく深く狭く売る設計が有利になることを意味します。少数のファンが深く使うのであれば、小さな会社でも熱心な顧客を数十人つかめば事業として成立します。しかも支出増の主因であるグッズとリアルイベントは、どちらも小規模事業者が参入しやすい領域です。価格より「その推しならでは」が優先されるため、値引き競争から離れられる点も見逃せません。

経営者の視点

まず、自社顧客のうち購入頻度が上位10%の人が売上の何割を占めているかを集計してください。深く狭くという構造が自社にもあるかが、そこで分かります。次に上位顧客10人へ直接連絡し、何が決め手で繰り返し買っているかを聞きます。ここで出た言葉が、次の商品づくりの材料になります。限定品、数量限定、名入れなど「ここでしか手に入らない」商品を1つ試作するのも有効です。あわせて、顧客が集まれる場を月1回設けてください。オンラインの配信でも実店舗のイベントでも構いません。物販と体験の両輪がそろうと単価が上がります。業界の発売日や公開日、記念日を並べた年間カレンダーをつくり、企画を紐づけると外部の山場を追い風にできます。男性15歳から19歳ではアニメが16.2%から22.1%へ伸び、初めて首位になりました。関心の移り変わりは速いため、熱心なファンへの依存度を高めすぎない設計も併せて考えてください。

参考リンク

インテージ:推し活二極化。推し減も支出増。ゲーム2.6倍、アニメ2.0倍

5. メルマガ開封率が2倍に。サンコーがAIで実現したEC販促改革

概要

和歌山県海南市に本社を置く生活用品メーカーのサンコーが、生成AIを使ったEC販促改革の成果を公表しました。楽天市場でのメールマガジン開封率は約20%から45%へ、2倍以上に改善しています。開封率とは送ったメールのうち実際に開かれた割合で、20%なら100通送って20通開かれた計算です。メルマガ1本あたりの制作時間は3時間から1時間へ、約3分の1に短縮されました。LINE配信の頻度は月4回から月7回に増え、訪問数は1.7倍、転換率は約20%です。ペットを使った撮影にかかる手間は従来の約5分の1まで減りました。導入したのはGoogleの「Gemini」の正式契約と、クラウド型の顧客対応システムです。EC部門はわずか6人で、EC売上は全社売上の約30%を占めています。

中小企業への影響

この事例で最も重要なのは、時間短縮そのものではなく、空いた時間の使い道です。商品ページの改善対象は主力の約25%から、準主力を含む約50%へと倍に広がりました。開封率が2倍以上になった要因も、件名のたたき台を複数つくって試せるようになり、試行回数が増えたことにあります。メルマガ制作が3時間から1時間になれば、月4本で月8時間、年間96時間の余力が生まれる計算です。開封率が20%から45%になるということは、同じ名簿で届く人数が2倍以上になるのと同じで、広告費をかけずに露出が増えます。生活用品は新商品の投入頻度が低い業種ですが、既存商品の見せ方と用途提案で売上を伸ばせることを示した点にも意味があります。EC部門6人という小さな体制での成果ですので、人員の少ない会社でも再現しやすい事例です。

経営者の視点

見習うべきは線引きの明確さです。同社は問い合わせやレビューの返信について「必ず人が確認する」ルールを守り、AIは文案作成の補助に徹しています。速さより信頼を優先する判断で、信頼が資産である小さな会社ほど守るべき原則です。実務では、販促業務にかかっている時間を工程ごとに書き出し、短縮できる工程を3つ特定するところから始めてください。メルマガの件名をAIで5案つくり、2案に絞って配信を比較する運用は次回から試せます。大切なのは、生まれた時間の使い道を先に決めることです。商品ページ改善に月8時間といった形で決めておかないと、余った時間は消えてしまいます。留意点として、公表値は自社発表であり、比較期間や測定条件の詳細は示されていません。配信頻度を増やしすぎると解除やブロックが増え、名簿を痩せさせる恐れもあります。

参考リンク

ネットショップ担当者フォーラム:メルマガ開封率は約20%→45%、制作時間は3分の1。生活用品メーカーのサンコーがAIで実現したEC販促改革

まとめ

今回の5本を貫いているのは、情報の整え方が売上を左右するという共通点です。Yahoo!ショッピングのAIエージェントも、若者が公式サイトで裏取りする行動も、行き着く先は「自社の情報が正確で分かりやすく置かれているか」という一点にあります。シニア市場の今活消費と推し活の二極化は、価格ではなく価値で選ばれる余地が広がっていることを示しました。そしてサンコーの事例は、AIで生まれた時間をどこに再投資するかで成果が決まることを教えてくれます。共通しているのは、どれも大きな投資を必要としない点です。商品説明に「誰が・何のために・いつ使うか」を書き足す、公式サイトの価格と営業情報を最新にする、上位顧客10人に話を聞く。まずは一つ選んで、数日のうちに着手してみてください。

目次