2026年2月4日から2月10日にかけて発表されたマーケティング関連の注目ニュースをお届けします。電通グループとOpenAIの戦略連携、スマートニュースの新広告プロダクト、AI時代のデジタル広告運用、SEOトレンド予測、そしてキリンのコーポレートサイトリニューアル事例まで、中小企業経営者の皆様に役立つ情報を厳選してまとめました。
1. 電通グループとOpenAIが戦略連携、ChatGPTでマーケティング支援を本格化
概要
2026年2月9日、dentsu Japan(電通グループ国内事業統括)とOpenAIが戦略連携を発表しました。この提携はChatGPT Enterprise上での実装を対象としており、電通、電通デジタル、電通総研が中心となって順次展開されます。電通は2025年6月からAIエージェントの研究開発を進めており、同年12月にはApps in ChatGPTでの開発サポートも発表していました。今回の連携では、電通のコピーライターやプランナーが持つ知見をChatGPT上に実装し、大規模調査に基づくAIペルソナを顧客体験設計に活用する取り組みが進められます。WebサイトやアプリへのChatGPT組み込みにより顧客接点を拡張し、マーケティング活動とAI体験の融合によるROI向上を目指します。
中小企業への影響
この戦略連携は、中小企業にとって大きなチャンスとなる可能性があります。従来は大手企業のみがアクセスできたプランニングノウハウが、AIを通じて民主化される見込みです。ChatGPT Enterpriseの法人プランは中堅企業でも導入検討が可能な価格帯であり、大手代理店を経由しなくてもAIペルソナを活用したマーケティングが実現できるようになります。また、APIを使ったソフトウェア実装支援サービスへのアクセスや、伴走支援プログラムにより導入のハードルが低下することが期待されます。
経営者の視点
経営者として検討すべき事項は多岐にわたります。まずChatGPT Enterprise導入の費用対効果を試算し、自社マーケティング業務におけるAI活用方針を策定することが重要です。営業やカスタマーサービス領域へのAI展開も視野に入れつつ、AI推進のための社内体制構築を検討してください。ただし、AIペルソナとは大規模調査データに基づいて構築された架空の顧客像であり、導入には組織体制の整備が前提となります。教育・浸透・定着化のプログラムなしに導入すると形骸化するリスクがあるため、予算確保と既存ベンダーとの関係見直しを含めた計画的なアプローチが求められます。
参考リンク
AdverTimes:電通グループとOpenAIが戦略連携、ChatGPTでマーケティング支援
2. スマートニュースが専念視聴を軸にした新広告プロダクトを発表
概要
2026年2月4日、スマートニュースが新しい広告コンセプト「Deep Attention & Deep Moments」を発表しました。この新ソリューションでは、インパクトスクエアと呼ばれる正方形フォーマットを導入し、250以上のチャンネルに対応したチャンネルターゲティングを提供します。注目すべきは、ユーザーの79%が他媒体と併用せずニュース閲覧に集中しているという専念視聴率の高さです。提携媒体は3000以上、日次掲載記事は40万件以上に達しており、運用型フォーマットで予算や期間を柔軟に設定できます。現代は複数デバイスを同時に使う「ながら見」が常態化していますが、集中力を伴う接触環境が広告効果に直結するという認識が広まっています。
中小企業への影響
中小企業にとって、この新プロダクトは広告戦略の選択肢を広げる機会となります。運用型フォーマットの採用により、少額予算でも出稿が可能になりました。チャンネルターゲティングでは経済、スポーツ、テクノロジーなどのニュースカテゴリを指定して広告を配信できるため、無駄な配信を削減しながらターゲット層にリーチできます。中小ブランドでも大手と同じ視認性の高い枠に出稿でき、テスト配信から段階的に予算を拡大できる柔軟性があります。専念視聴とは他のデバイスやメディアと併用せず単一メディアに集中して接触している状態を指し、広告の認知や記憶に好影響を与えます。
経営者の視点
経営者としては、ニュース媒体での広告戦略を見直す良い機会です。文脈ベースのターゲティング戦略を構築し、ブランドセーフティ環境を重視した媒体選定基準を策定することが推奨されます。専念視聴データを活用した効果測定KPIの設計も重要で、チャンネルターゲティングで自社商材に最適なカテゴリを選定してください。既存のSNS広告とニュース広告の予算配分を再検討することも有効です。金融商品であれば経済ニュースチャンネル、新車発表であれば自動車チャンネルというように、商材と親和性の高いチャンネルへの集中配信が効果的です。生成AI技術導入時のプライバシー保護への配慮や、AI判断の精度検証プロセスも忘れずに進めてください。
参考リンク
DIGIDAY日本版:スマートニュースが専念視聴を軸にした新広告プロダクトを発表
3. AI時代のデジタル広告は「運用しない」が新常識、クッキー規制への備え
概要
デジタル広告の世界で大きな変革が進んでいます。Google P-MAXとMeta Advantage+が自動化の主流プロダクトとなり、従来の手動運用から機械学習ベースの運用への転換期を迎えました。一方で課題も顕在化しており、iPhoneアプリ内ブラウザでは27.2%ものデータ欠損が発生しています。サーバー発行クッキーの導入により約27%のコンバージョン計測差が確認されており、データ取得環境の厳格化が進んでいます。2018年のGDPR施行がターニングポイントとなり、2022年の改正個人情報保護法で日本も規制強化の流れに入りました。Cookie規制とデータ保護法の強化により、AI学習に使えるデータが大幅に減少しているのが現状です。
中小企業への影響
中小企業、特にBtoB企業やコンバージョン数が少ないビジネスでは、P-MAX導入に慎重な検討が必要です。P-MAXとはGoogleの究極の自動化広告プロダクトで、検索・ディスプレイ・動画など複数配信面をAIが自動最適化しますが、十分な学習データがないと効果を発揮しにくい特性があります。メール配信やデータ管理体制の整備にはコストが発生し、外部計測ツールへの依存度も高まる可能性があります。一方で、自社顧客データベースの構築が競争力の源泉となる時代が到来しています。法的リスクを回避するためのプライバシーポリシー整備は必須であり、ログインID活用など代替手法への対応力が問われます。
経営者の視点
経営者が取り組むべき施策として、まずコンバージョン定義を明確化して計測設計を見直すことが挙げられます。プライバシーポリシーの法的整備を専門家と進め、サーバーサイド計測の導入可否を検討してください。サーバーサイドGTMとは、自社サーバー経由でクッキーを発行しブラウザ制限による削除を回避してデータ保持期間を延長する技術です。顧客データ管理体制の構築または強化も重要で、メール取得時の同意取得プロセスを法的に確認する必要があります。ECサイトであればログイン会員を増やしてコンバージョン計測精度を維持する、メールマガジン登録時に広告配信への同意を取得するなど、法的リスクを回避しながらデータを活用する仕組みづくりが求められます。
参考リンク
Web担当者Forum:AI時代のデジタル広告は運用しないが新常識、クッキー規制への備え
4. 2026年のSEOトレンド予測、コンテンツ戦略とSERP機能の変化
概要
SEO専門家20人による2026年のトレンド予測が発表されました。LLM(大規模言語モデル)の普及により、検索とコンテンツ戦略に大きな変化が生じています。2025年に起きた「大いなる分離」によりオーガニッククリックが減少し、AIによる概要導入で検索エンジン経由の流入が落ち込む傾向が続いています。コンテンツ戦略はRAG向けと非RAG向けに二極化しており、トップオブファネルが検索ビジビリティからモデル影響力へとシフトしています。Web Guideがインフォメーション型クエリの標準になりつつあり、Gemini APIでグラウンディング確認が可能になりました。ユーザー生成コンテンツプラットフォームの検索順位上昇も顕著で、外部プラットフォームでの存在感がこれまで以上に重要になっています。
中小企業への影響
中小企業にとって、オーガニックトラフィック減少への対応は喫緊の課題です。AIプラットフォームでのビジビリティ獲得が新たな競争優位となり、ソートリーダーシップコンテンツへの投資が差別化につながります。RAGとは外部データベースから関連情報を取得してAIの回答精度を高める技術であり、情報の根拠を明示できる特徴があります。グラウンディングとはAIの出力を検証可能な情報源に紐付ける仕組みで、信頼性向上と誤情報防止に寄与します。Redditなど外部コミュニティでの情報発信が効果的になっており、構造化データの明確な定義がAI時代の基盤となります。
経営者の視点
経営者として取り組むべき施策は明確です。まず、グラウンディングをトリガーするプロンプトを特定し、質問・定義形式での情報発信を増やすことが効果的です。自社の専門領域についてFAQ形式のコンテンツを充実させれば、AIの回答ソースとして引用されやすくなります。ソートリーダーシップコンテンツの拡充も重要で、業界の最新動向を解説するウェビナー開催などが認知向上に寄与します。AI向けに構造化データを明確に定義し、外部プラットフォームでの発信戦略を構築してください。ストーリーテリングが機械生成との差別化要因となるため、人間ならではの視点や経験を盛り込んだコンテンツ制作を心がけてください。
参考リンク
Web担当者Forum:2026年のSEOトレンド予測、コンテンツ戦略とSERP機能の変化
5. キリンが全社を巻き込み進めたコーポレートサイトリニューアルの全貌
概要
キリンホールディングスが2025年6月25日に公開したコーポレートサイトリニューアルの事例が公開されました。前回リニューアルは2021年で、2024年1月に部内検討を開始し同年7月に正式キックオフしています。プロジェクトチームは20名以上でほぼ全部署から参加する大規模なものとなりました。リニューアルの背景には、グロナビの二段目にパーパス等の専門用語が大きく表示され、企業情報などアクセスの多いカテゴリが小さく表示されていた課題がありました。海外デジタル代理店からは「多くの訪問者にとって一目で明確ではない」との評価を受けており、グローバルスタンダードとの乖離が指摘されていました。結果としてサステナビリティサイトランキング2025で6位を獲得する成果を上げています。
中小企業への影響
この事例は中小企業にも多くの示唆を与えます。グロナビとはWebサイト上部に常設される主要メニューで、サイト全体の構造を示す案内板の役割を果たします。グローバルスタンダードに適した情報構造の重要性が示されており、多部署の合意形成プロセスが実証された成功事例でもあります。オウンドメディアが経営資産になり得ることを示した点は見逃せません。社内説得には外部コンサルタントの活用が効果的であり、ユーザー視点のサイト設計がブランド評価向上に直結することが明らかになりました。CSVとは社会と共有できる価値の創造を意味し、事業活動を通じて社会課題を解決しながら経済価値も生み出す考え方です。
経営者の視点
経営者として参考にすべき点は多くあります。まず自社サイトのグロナビが初見ユーザーにとって分かりやすいかどうかを点検してください。外部視点でのサイト評価を定期的に実施し、社内用語と一般用語の乖離をチェックすることも重要です。全社的な理解者・味方を増やすプロセスを構築し、サイトリニューアル時は多部署参加型で進行することが成功の鍵となります。オウンドメディアを各SNSのハブとして位置づけ、コンテンツを集約して発信効率を高めることも有効です。ただし、社内承認後の議論の蒸し返しリスクや、専門用語の社内浸透と社外理解のギャップには注意が必要です。コーポレートサイトへの投資は採用・IR両面で効果を発揮するため、経営資産として位置づける視点を持ってください。
参考リンク
Web担当者Forum:キリンが全社を巻き込み進めたコーポレートサイトリニューアルの全貌
まとめ
今回取り上げた5つのニュースに共通するのは、AI技術の進展がマーケティングのあらゆる領域に影響を及ぼしているという点です。電通とOpenAIの連携はAI活用の民主化を、スマートニュースの新プロダクトは専念視聴という価値の再発見を示しています。クッキー規制への対応とSEOトレンドの変化は、データ活用とコンテンツ戦略の抜本的な見直しを迫るものです。そしてキリンの事例は、デジタル資産としてのコーポレートサイトの重要性を改めて認識させてくれます。中小企業経営者の皆様には、これらの動向を自社の状況に照らし合わせ、優先順位をつけて段階的に対応を進めていただければ幸いです。

