DXニュースまとめ(2026-02-13〜2026-02-19)

2026年2月13日から2月19日にかけて発表されたDX関連ニュースの中から、中小企業経営者が押さえておくべき5つのトピックをピックアップしました。経産省によるDX推進指標の大幅改訂、NECの共同輸配送プラットフォーム、KPMGジャパンのサイバーセキュリティ調査、建設ICT企業の人材育成戦略、そして政府が打ち出したDX重点3分野の政策について、それぞれの概要と中小企業への影響、経営者としての視点をお伝えします。

目次

1. 経産省「DX推進指標」を改訂、デジタルガバナンス・コード3.0に対応

概要

経済産業省とIPA(情報処理推進機構)は2026年2月13日、DX推進指標の改訂を発表しました。DX推進指標とは、企業がDX推進状況を自ら診断するためのフレームワークとして2019年7月に策定されたもので、今回が初の大幅な見直しです。最大の変更点は、従来の「経営」と「ITシステム」の2軸構成を廃止し、デジタルガバナンス・コード3.0に基づく構成へ移行したことです。デジタルガバナンス・コード3.0とは、企業のデジタル化推進に求められる経営のあり方を体系化した最新の指針で、その5つの柱に沿って設問分類が改編されました。成熟度レベルも再定義され、レベル0から4は企業内の取組水準、レベル5は社会的価値を創出する水準とされています。生成AIをはじめとする技術の急速な進展に対応するための改訂であり、定量指標の見直しにより実践的な自己診断が可能になりました。改訂版の自己診断フォーマットは2026年4月3日からDX推進ポータルで提出受付が始まります。

中小企業への影響

中小企業にとって最も注目すべきは、DX推進指標を提出することで日本政策金融公庫の設備投資資金について金利優遇が受けられる点です。提出自体は無料で行えるため、コスト面のハードルは低いといえます。さらに、DX推進指標への取り組みを通じてDX認定制度の認定基準の一部を満たせるようになり、認定取得のハードルが下がります。DX認定を受ければ企業の信用力向上や取引先からの評価向上にもつながるため、経営基盤を強化する手段として有効です。自己診断ツールの活用により、DX推進の現在地と課題を可視化できる点も見逃せません。改訂で設問がより実践的になり、中小企業でも取り組みやすくなる見込みです。経営判断に役立つフィードバックが得られる仕組みでもあるため、まだ利用したことのない企業はこれを機に着手する好機といえるでしょう。

経営者の視点

経営者としてまず取り組むべきは、DX推進指標の自己診断を通じて自社のDX成熟度を把握することです。4月3日の提出受付開始に備え、社内の現状把握を今から進めておくことが望まれます。診断結果は経営会議で共有し、全社的なDX推進の方向性を議論する材料にしてください。金利優遇を活かした設備投資計画の見直しも検討に値します。適用条件を事前に確認し、必要書類の準備を進めておくとスムーズです。中長期的にはDX認定制度の取得を経営目標に設定し、段階的に取り組む戦略が有効でしょう。デジタルガバナンス・コード3.0を参照しながら、経営戦略とDXの連動を強化していくことが求められます。ただし、自己診断の実施だけで満足せず、結果をもとにした実行計画の策定と実行が何より重要です。改訂で求められる水準が変わるため、既存のDX推進計画の見直しも必要になる可能性がある点にご留意ください。

参考リンク

経済産業省:経産省「DX推進指標」を改訂、デジタルガバナンス・コード3.0に対応

2. 持続可能な物流を目指すNECの「共同輸配送プラットフォーム」

概要

NECは「ロジスティクスソリューションフェア2026」にて、共同輸配送プラットフォームを出展しました。グルーピング・プランニング・オペレーションの3機能で構成されており、デジタル技術で異なる業種・企業間の荷物マッチングを実現します。飲料品やIT機器・家電、日用品、医療機器、自動車部品まで幅広い商材に対応しています。2024年9月から東名阪を中心に約10社で共同幹線輸送を開始し、2027年3月には約70社まで拡大する計画です。背景には、2024年4月の働き方改革関連法によるドライバーの時間外労働上限規制、いわゆる「2024年問題」の顕在化があります。トラック運転手の高齢化と人手不足が深刻化し、個社単独の効率化には限界が見えるなかで、業界横断の共同輸配送が不可欠となっています。荷主と物流企業の双方が参加できるオープンな仕組みを目指しており、積載率と実車率の向上によりCO2排出削減と物流コスト低減の両立を図ります。

中小企業への影響

このプラットフォームの登場により、中小の荷主企業でも単独では実現が困難だった共同輸配送に参加できる道が開けます。自社でシステムを構築する必要がなく、プラットフォームに参加するだけで済むため、導入コストを大幅に抑えられます。物流コストの削減は商品価格の競争力維持に直結するため、経営へのインパクトは大きいでしょう。ドライバー不足に起因する配送遅延リスクの軽減も、事業継続の観点から重要なメリットです。また、大手企業の物流網に相乗りする形で配送範囲の拡大も期待できます。CO2削減への貢献は、ESG経営やサプライチェーン全体の環境対応としてアピール材料にもなります。一方で、共同輸配送には配送スケジュールの柔軟性が制約されるというデメリットがある点は認識しておく必要があります。プラットフォーム運営者への依存度が高まることで、料金交渉力が低下する可能性も指摘されています。

経営者の視点

経営者として最初に着手すべきは、自社の物流コストと配送効率の現状を数値化し、改善余地を把握することです。物流費が経営をどの程度圧迫しているかを明確にすれば、プラットフォーム参加の費用対効果を正確に判断できます。参加はまずトライアルから始めることをお勧めします。物流パートナーとの情報共有体制を構築し、デジタル化の基盤を整えることも並行して進めてください。2024年問題への対応策として、自社の物流戦略にプラットフォーム活用を明確に位置づけることが重要です。CO2削減目標との整合性を確認し、環境経営の取り組みとしても位置づける価値があります。物流コスト増加分を価格転嫁するだけでなく、効率化による吸収を経営目標に掲げるべきでしょう。ただし、プラットフォームへのデータ提供が囲い込みにつながるリスクも業界で指摘されているため、契約条件の精査は欠かさないでください。

参考リンク

マイナビニュース:持続可能な物流を目指すNECの「共同輸配送プラットフォーム」

3. KPMGジャパン「サイバーセキュリティサーベイ2026」発表

概要

KPMGジャパンは、国内上場企業424社のセキュリティ責任者・担当者を対象とした「サイバーセキュリティサーベイ2026」の調査結果を発表しました。8回目となる本調査では、被害額10億円以上の企業が初めて確認され、サイバー攻撃の被害規模の大型化が浮き彫りになりました。1億円以上の被害企業は全体の10.1%に達し、前回8.0%、前々回6.7%から増加が続いています。業務被害が発生した攻撃手法はランサムウェア6.9%、DDoS攻撃4.3%が上位です。ランサムウェアとは、データを暗号化して身代金を要求する攻撃で、事業停止や情報漏洩を引き起こします。体制面の課題も深刻で、セキュリティ予算不足が63.2%、推進組織未設置が39.4%、ツール不足が約8割に達しました。AI活用が進むなかでシャドーAI対策のポリシー策定は59.7%にとどまり、監査・レビューの実施率は2割強という状況です。

中小企業への影響

大企業のサプライチェーンに属する中小企業にとって、セキュリティ対策の要求水準は確実に高まっています。取引先からセキュリティチェックシートの提出を求められるケースが増え、対策の不備は取引停止や信頼低下に直結します。ランサムウェアの被害は企業規模を問わず発生しており、中小企業も対岸の火事ではありません。専任のセキュリティ担当者の確保が困難な中小企業には、外部のSOCサービスやマネージドセキュリティサービスの活用が現実的な選択肢です。国内委託先からのインシデント発生が最多の10.8%を記録していることからも、サプライチェーン全体でのセキュリティ管理が急務です。AI導入に伴うシャドーAI(企業が把握・管理していない状態で従業員が利用するAIサービス)のリスクは、ITリテラシーにばらつきのある中小企業でより深刻化する可能性があります。対策の不備が損害賠償請求や訴訟リスクにつながるケースも増えており、経営課題として捉える必要があります。

経営者の視点

経営者として最優先で取り組むべきは、自社のセキュリティ予算がリスクに見合った水準かの見直しです。人員不足の企業ほど高額被害が発生する傾向が確認されており、投資を怠るリスクは明確です。パッチ適用やバックアップといった基本対策の実施状況を早急に確認してください。インターネット公開システムでも約5割が適時にパッチ未適用という結果は見過ごせません。セキュリティ推進組織の設置が難しい場合は、外部サービスの導入を検討しましょう。サプライチェーン全体のセキュリティ管理体制を構築し、取引先にも対策を求める姿勢が重要です。AI利用に関するポリシーの策定も急務であり、シャドーAIのリスクを管理する仕組みを整えてください。加えて、インシデント発生時の事業継続計画を整備し、定期的な訓練を実施して、万が一の際にも事業への影響を最小限に抑える体制を築いておくべきです。

参考リンク

KPMGジャパン:サイバーセキュリティサーベイ2026の主要な調査結果を発表

4. シーティーエス、建設DXを支える次世代デジタル人材育成へ6年ぶりに新卒採用を再開

概要

建設ICT専門企業のシーティーエスが、6年ぶりに新卒採用を再開しました。同社の社員は平均年齢45歳で、約6割を40代・50代が占めており、デジタルネイティブ世代の知見を取り込むことで建設DXの推進力を強化する狙いです。文系・理系を問わず未経験者向けの充実した研修制度を整備しており、営業・技術・企画・サポートなど多様な職種で間口を広く設定しています。待遇面でも4期連続のベースアップを実施し、有給取得率80%、月平均残業時間5時間、育休取得率100%と働きやすさを数字で示しています。建設業界ではICT施工やBIM/CIM(3次元モデルを活用した設計・施工・維持管理の効率化手法)の導入が加速しており、これらを扱える人材の需要は増す一方です。2024年4月の時間外労働上限規制の適用で建設業の働き方改革が本格化するなか、デジタル技術による生産性向上が業界全体の急務となっています。

中小企業への影響

建設業の中小企業にとって、ICT化への対応は取引条件に組み込まれつつあり、デジタル人材の確保が喫緊の経営課題となっています。BIM/CIMやドローン測量といったデジタルツールの導入には、操作できる人材が不可欠ですが、DX人材の獲得競争が激化するなか、中小企業は待遇面で大手に見劣りしやすいのが現実です。シーティーエスの事例は、残業時間の削減や育休取得率100%といった具体的な待遇改善が人材確保に有効であることを示すモデルケースといえます。また、文理不問・未経験者歓迎という方針は、中小企業にとっても参考になるアプローチです。未経験者を育成する研修体制を整えることで、採用の間口を広げる道が開けます。建設DX関連の補助金やIT導入補助金を活用すれば、人材育成コストの軽減も可能です。技術の進化は速く、既存社員のスキルアップだけでは対応が困難になっている側面もあるため、新しい世代の力を組織に取り込む戦略が求められています。

経営者の視点

経営者としてまず着手すべきは、自社のDX人材の年齢構成と将来のスキルギャップの分析です。現在の人材構成でどこまで対応でき、何年後にどのスキルが不足するかを可視化すれば、採用・育成計画を策定できます。未経験者を育成できる研修体制の整備は、採用の間口を広げるうえで有効です。待遇改善とワークライフバランスの向上で人材の定着率を高めることも、長期的な競争力確保に欠かせません。デジタルネイティブ世代が活躍できる環境と適切な権限を付与し、DX推進の原動力としてください。IT導入補助金やDX関連助成金の活用でコスト負担を軽減することも検討に値します。新卒採用に限らず、副業・兼業人材やフリーランスの活用も視野に入れるべきでしょう。ただし、デジタルスキルだけでなく建設業の実務知識との融合が求められるため、育成には一定の期間が必要な点も計画に織り込んでおいてください。

参考リンク

PR TIMES:シーティーエス、建設DXを支える次世代デジタル人材育成へ6年ぶりに新卒採用を再開

5. 政府が仕掛ける「DX 3分野」、建築・交通・製造業は何が変わる?

概要

高市政権が建築・都市、交通インフラ、製造業の3分野をDXの重点領域に定めました。成長型経済への移行を目指す政策の一環です。建築分野では不動産ID制度の導入が進みます。不動産IDとは不動産に固有の識別番号を付与しデータ連携を可能にする制度で、取引の透明性向上や防災に活用されます。交通分野ではMaaS2.0が打ち出されました。MaaSとは複数の交通手段を統合して検索・予約・決済を一括で行える概念です。製造業ではAIロボティクスで熟練工の技術をAIに継承し、生産ラインの自動化を推進します。推進手法は補助金・規制改革・標準化の3つが柱です。

中小企業への影響

政府のDX推進策に沿った投資は、補助金や税制優遇の対象となる可能性が高まります。不動産ID制度への対応は不動産関連の中小企業にとって新たな収益機会です。MaaS2.0は地域の交通事業者にデジタル対応を迫りますが、利用者拡大の恩恵も受けられます。製造業のAIロボティクス導入はサプライチェーンを通じて中小企業にも波及するため、早期の準備が重要です。規制改革で新市場が生まれ、デジタル対応した中小企業はビジネス拡大の好機を得られるでしょう。一方で、業界標準の変化が加速するため対応の遅れは競争力低下に直結します。

経営者の視点

経営者として重要なのは、政府のDX推進策をモニタリングし対応計画を策定することです。補助金や税制優遇の情報を収集し、DX投資の原資として活用してください。業界団体の動向を把握し、先行対応で競争優位を確保しましょう。AI・ロボティクスの導入は段階的に進め、効果が高い工程から着手するのが現実的です。DX認定やIT導入補助金の申請準備も進めておくと施策の恩恵を早期に受けられます。ただし補助金依存は持続性に課題があり自立的な判断も必要です。重点3分野以外も間接的影響を受けるため、自社との関連性を見落とさないようご注意ください。

参考リンク

ビジネス+IT:政府が仕掛ける「DX 3分野」、建築・交通・製造業は何が変わる?

まとめ

今回取り上げた5つのニュースに共通するのは、DXが企業の自主的な取り組みから、制度・プラットフォーム・政策によって加速される段階へと移行しつつあるという点です。経産省のDX推進指標改訂は、自己診断と金利優遇という具体的なインセンティブで中小企業のDX着手を後押しするものであり、NECの共同輸配送プラットフォームは物流という経営の根幹に関わる領域でデジタル化の恩恵を共有する仕組みを提供しています。KPMGジャパンの調査が示すサイバーセキュリティの脅威は、DX推進と表裏一体の課題として避けては通れません。シーティーエスの新卒採用再開は、DX人材の確保が業界を問わず喫緊の課題であることを象徴しています。そして政府のDX重点3分野の政策は、補助金や規制改革を通じて産業構造の転換を促すものです。いずれのテーマも中小企業の経営に直結する内容ですので、自社の状況に照らし合わせながら、優先度の高い施策から着手することをお勧めします。

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