DXニュースまとめ(2026年1月16日〜1月22日)

DXニュースまとめ(2026年1月16日〜1月22日)

この期間に中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、①“安全性を前提にしたクラウド×産業AI”の実装が進んだこと、②特許など知的財産(知財)の仕事にもAIが入り始めたこと、③サイバー対策が「専門家がいなくても回る形」へ近づいたこと、④パスワードに頼らない認証が産業領域でも現実解になってきたこと、⑤自治体の現場でも生成AIを使った業務変革が動き出したことです。

DXは「ITを入れる」ではなく、「儲け方と働き方を変える」取り組みです。大企業や自治体の動きは、数カ月〜数年遅れて中小企業の現場にも降りてきます。いま何が起きているかを短時間で把握し、自社の打ち手に変えるヒントをまとめます。

目次

1. “安心してつなげる”国内向けクラウド×産業AIで、基幹業務のDXが現実段階へ

概要

NECは、企業向けアプリケーションを提供するIFSと連携し、日本市場向けのクラウドサービスと産業用AIで基幹産業のDXを後押しすると発表しました。ポイントは「経済安全保障」です。海外依存のリスクやサプライチェーンの分断が現実味を増す中で、データの置き場所や運用体制まで含めて“安心して使える”仕組みを整え、まず製造業を中心に実践モデルを作る方針です。単にクラウドへ移すのではなく、現場の設備・人・物流データをつなげ、計画変更や部品不足への対応を速くするところまで狙っています。
また、基幹領域は一度止まると事業が止まります。だからこそ「止まらない」「漏れない」「改ざんされない」を前提に、運用とガバナンス(守るルール)をセットで設計する流れが強まっています。監査対応や委託先管理まで含めた“設計図”が価値になります。

中小企業への影響

大手が安全性を前提に基幹領域のクラウド化を進めると、取引先にも同じ水準のデータ連携が求められやすくなります。見積・受発注・在庫・品質情報など、紙やExcel中心のままだと「つなげない会社」になりやすいです。一方で、受発注や工程の情報がデータで流れるようになると、少人数でも生産計画や原価の見える化が進み、リードタイム短縮に直結します。注意点は、クラウド導入=DX完了ではないこと。現場の入力負担が増えたり、マスタ(品目・取引先など)の整備が甘いと、数字が合わず混乱します。さらに、取引先ごとに形式が違うと二重入力が増えるので、標準化の意識も重要です。

経営者の視点

最初にやるべきは「外部とやり取りしている情報」の棚卸しです。受発注、納期回答、検査成績、請求など“外部とつながる情報”を先に整えると効果が出やすいです。そのうえで、いきなり全社刷新ではなく、1領域(例:在庫だけ、工程進捗だけ)に絞って運用を回し、数字で効果を確認しましょう。移行時は、①誰が入力するか、②入力の締め切りはいつか、③例外処理はどうするか、の3点を決めるだけでも定着率が上がります。
経済安全保障という言葉は難しく聞こえますが、要は「重要データを安全に扱い、止まらない体制を作る」ことです。攻めのDXほど、守りの設計が価値を支えます。

参考リンク

NEC:国内向けクラウド×産業AI(1/16)


2. 特許・契約の判断を速くする、知財DXが“兼務でも回る”形に近づく

概要

NECは、企業の知的財産(知財)業務の効率化と高度化を支援する「知財DX事業」を立ち上げたと報じられました。事業の入口として、日米欧の特許データを知識として使い、知財管理業務に特化したAIツールとコンサルティングを提供する計画です。知財の仕事は、先行技術の調査、特許性の判断、明細書作成、権利の維持管理など、専門性が高く時間もかかります。そこにAI(SaaSとして使える形)を当て、作業のスピードを上げつつ、判断の質を揃える狙いがあります。
RAG(必要な情報を検索してから回答を作る仕組み)のように、根拠となる文献に当たりやすくする工夫も示されています。現場感覚で言うと「ゼロから書く」より「叩き台を作って直す」仕事に変えていくイメージです。契約書の条項チェックなど周辺業務にも波及しそうです。

中小企業への影響

中小企業でも、製造業のコア技術、ソフトウェア、ブランド、営業ノウハウなど「守るべき強み」を持っています。しかし知財担当は兼務が多く、調査や契約確認が後回しになりがちです。AIで調査や下書きの負担が減れば、限られた人数でも“攻めの知財”に時間を回せます。例えば、新製品の企画段階で類似特許の当たりを早めにつけ、無駄な開発を減らす。共同開発の前に、発明者・成果物・利用範囲を整理して揉め事を減らす。M&Aや事業提携の際に、相手の特許の強み・弱みを素早く把握する。こうした意思決定が速くなります。
一方で、AIの出力は誤りや抜けを含みます。最終判断は専門家が確認する前提で、社内のチェック手順を作ることが欠かせません。

経営者の視点

知財DXは「特許を取るか」だけの話ではありません。自社の強みを言語化し、守る範囲と公開する範囲を決め、収益につなげる経営の仕組みです。まずは、過去の提案書・設計書・研究メモなど、散らばっている“強みの材料”を一箇所に集めましょう。次に、①新規開発の前に簡易調査をする、②共同開発の契約前に権利の棚卸しをする、③重要なノウハウは「営業秘密(社内限定の知識)」として管理する、の3ルールを決めるだけでも事故は減ります。
AIはそのルール運用を速くする道具として使うのが安全です。小さく試し、効果が出た領域から広げましょう。

参考リンク

IT Leaders:NECの知財DX事業(1/21掲載)


3. セキュリティも“毎日まわす”時代へ、低価格の常時監視が選択肢に

概要

GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、中小企業向けに新サービス「GMOサイバー攻撃 ネットde診断 Lite」を2026年1月22日に提供開始しました。WebサイトやVPNなど、外部から狙われやすい入口を対象に、脆弱性診断を日次で自動実行し、レポートも自動生成するSaaS型の常時監視サービスです。専門家を雇えない、予算が限られるという現場の壁を前提に、「必要なところに絞って、毎日守る」設計を打ち出しています。
DXが進むほど、クラウド利用やリモートワークが増え、攻撃対象も増えます。だから「攻めのDX」と同じ熱量で「守りのDX」を設計する流れが強まっています。入口が増えるほど、守りは“継続運用”が勝負です。

中小企業への影響

サイバー被害は、売上の機会損失だけでなく、取引停止や信用失墜にも直結します。特に取引先からのセキュリティ要求が強まる中で、「最低限の対策を継続できる」ことが重要になっています。常時監視が手頃な価格で選べるようになると、従来は年1回の診断すら難しかった企業でも、入口対策を習慣化しやすくなります。さらに、診断結果が“見える化”されると、外注先や制作会社との調整もしやすくなります。
一方で、ツールを入れただけでは被害はゼロになりません。診断結果を放置すると意味がないため、誰が、いつまでに、何を直すかの運用が必須です。加えて、バックアップ(復旧用のコピー)や社員教育(フィッシング対策)など、基本が抜けると穴になります。

経営者の視点

経営者が最初に決めるべきは、「優先順位」と「責任者」です。おすすめは、①外部公開している資産(Web、VPN、メールなど)の一覧を作る、②使っていない入口を閉じる、③更新(パッチ)を月1回の定例にする、の順です。加えて、メールの多要素認証は最優先で有効化しましょう。ここまで整うと、常時監視サービスの効果が一気に上がります。次に、被害が起きた時の初動を決めておきましょう。連絡先、停止判断、取引先への説明の流れを紙1枚にしておくだけで、混乱を大幅に減らせます。
DXは“つなぐ”ほど価値が出ますが、“守る”設計がないと一発で止まります。守りを回せる会社は、結果的に攻めのスピードも上がります。

参考リンク

GMO:ネットde診断 Lite(1/22)


4. パスワードから卒業する動きが加速、ID管理が“取引の前提”になっていく

概要

NSWは、半導体業界向けの開発・デザインサービスのセキュリティ基盤として、パスワードレス認証プラットフォーム「Keyper」を採用したと発表しました(2026年1月22日)。半導体はサプライチェーン全体でセキュリティ要件が高まっており、開発環境にアクセスする“人”と“端末”を確実に識別し、権限を細かく管理することが求められます。
パスワードは漏えい・使い回し・だまし取り(フィッシング)に弱く、運用負担も大きいです。そこで、端末や本人確認情報を使ってログインする「パスワードレス」を採用し、なりすましを減らす流れが産業領域にも広がっています。パスワードの再発行や問い合わせ対応が減り、運用コストが下がる点も見逃せません。要は、IDをしっかり管理できないと、DX以前に共同作業が成立しにくくなるということです。最近は端末側に鍵を持たせる「パスキー」も普及しています。

中小企業への影響

半導体に限らず、設計図、顧客情報、見積原価など「漏れると致命傷」のデータを扱う会社ほど、ID管理の弱さがリスクになります。パスワードレスの考え方が広がると、取引先から多要素認証(複数の確認で本人確認する仕組み)やログ管理を求められるケースが増えます。これは負担に見えますが、逆に言えば、先に整えた会社は安心して共同作業ができ、受注機会が増えやすいです。
注意点は、認証を強くすると現場が「面倒」と感じて、共有アカウントや紙メモなどの抜け道が生まれやすいことです。仕組みだけでなく、使い方のルールをセットにしないと逆効果になります。

経営者の視点

最短で効果を出すなら、「重要データに触れる入口」から守るのが現実的です。共有アカウントを減らすだけでも事故が減ります。例えば、メール、クラウドストレージ、基幹システムの管理者アカウントを優先し、そこだけでも多要素認証を必須にします。次に、退職者・外注先のアカウントを放置しない仕組み(棚卸し日を決める)を作る。最後に、端末紛失や持ち出し時のルールを簡単に決める。この3点だけでも、被害確率は大きく下がります。
ID管理は“保険”ではなく“土台”です。ここが固まるほど、クラウド共有や在宅作業など、攻めのDXが安全に広がります。

参考リンク

NSW:Keyper採用(1/22)


5. 自治体でも生成AIの伴走支援が進む、定着の鍵は「運用」と「現場の安心」

概要

沖縄タイムス+プラスは、元市役所職員が、生成AI「コモンズAI」を通じて自治体の働き方改革に取り組む動きを紹介しました(2026年1月21日)。記事では、自治体の担当者と日々やり取りしながら、導入の伴走支援をしている点が描かれています。自治体は住民対応や制度改正対応で業務が増えやすい一方、人手は増えにくいです。そのため、文書作成、議事録、問い合わせ対応、資料の要約など、定型的で量が多い仕事を中心に、生成AIで負担を減らす期待が高まっています。
ここで重要なのは、ツールだけではなく、現場の不安を減らし、使い方を定着させる「伴走」がセットになっていることです。DXは現場の納得がないと止まる、という当たり前を思い出させる事例です。自治体の試行錯誤は、民間の運用づくりにも参考になります。

中小企業への影響

自治体が生成AIを業務に組み込み始めると、申請・照会・調達などの手続きもデジタル前提に変わりやすくなります。これは取引企業にとって、書類作成や確認作業の負担が減るチャンスです。また、自治体がDXを進める過程で、地域企業とのデータ連携や共同実証が増える可能性もあります。特に、住民向けFAQ、窓口の案内、内部文書の整備などは、地域の事業者にも応用しやすい領域です。社内の業務改善にも直結します。
一方で、自治体側のルール(個人情報、持ち出し制限など)は厳格です。対応できる会社とできない会社で差がつきます。生成AIは誤りを混ぜることがあるため、チェック体制がないまま使うとトラブルになります。

経営者の視点

生成AIを「万能な答え」ではなく「下書きの相棒」と位置づけるのが安全です。まずは、社内のよくある問い合わせ、見積の説明文、議事録、手順書など“定型文章”から試すと失敗が少ないです。次に、社内ルールを3つだけ決めましょう。①個人情報や機密を入れない、②出力は必ず人が確認する、③使った結果を共有して改善する。さらに、使う場面ごとに“正解の形”を決めておくと、ブレが減ります(例:回答の長さ、敬語の有無、必ず入れる注意書きなど)。
自治体の事例が示す通り、定着の鍵はツール選びより運用です。小さく試し、うまくいった型を横展開することが、無理のないDXになります。

参考リンク

沖縄タイムス+プラス:コモンズAIの伴走(1/21)

まとめ

この期間のDX関連ニュースを通して見えるのは、「クラウド化」「AI活用」「セキュリティ強化」「定着支援」がセットで進んでいる現実です。DXは派手な新規投資よりも、日々の業務の流れを整え、数字で効果を確認しながら積み上げる会社が強いです。

中小企業の経営者が今日から取り組める行動はシンプルです。

  1. 取引先とやり取りする情報を棚卸しし、データで渡せる形を作る
  2. 生成AIは“下書き用途”から小さく試し、ルールを決めて横展開する
  3. セキュリティは入口対策とID管理から始め、運用を回す責任者を決める

DXは一度で完成しません。まずは「一つの業務」「一つの入口」「一つのルール」から始め、変化に強い会社の土台を作っていきましょう。

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