DXニュースまとめ(2025年5月9日〜5月15日)

DXニュースまとめ(2025年5月9日〜5月15日)

中小企業経営者が注目すべきDX(デジタルトランスフォーメーション)関連のニュースが相次いでいます。注目のニュースは、政府によるDX先進企業の発表、DX推進を支援する補助金、AI活用による業務効率化、新たなDX成功事例、脱炭素時代のDX対応の5件です。それぞれのニュースの概要とポイントを、中小企業への影響や経営者の視点と合わせて解説します。

目次

1. 政府が「DX銘柄2025」を発表:31社のDX先進企業を選定

概要:
経済産業省は東京証券取引所やIPA(情報処理推進機構)と共同で、上場企業から 「DX銘柄2025」 に31社(うちDXグランプリ企業2社)、「DX注目企業2025」に19社を選定しました。特に優れたDX推進で SGホールディングス(物流)と ソフトバンク(通信)がDXグランプリ企業に選ばれました。政府が毎年DX銘柄を公表する狙いは、デジタル技術の活用による企業価値向上の好事例を示し、経営層の意識改革を促すことにあります。

中小企業への影響:
大企業中心の表彰ではありますが、中小企業にも間接的な影響があります。大企業がDXに本気で取り組み成果を上げていることは、取引先である中小企業にもデジタル対応やデータ連携を求める流れにつながるでしょう。また、DX銘柄で評価されるポイント(社内のDX推進体制やビジネスモデルの変革など)は、中小企業にとっても自社のデジタル戦略を見直すヒントになります。政府がDXを重要施策と位置付けているため、今後中小企業向けの支援策やガイドラインも充実していく可能性があります。

経営者の視点:
経営者としては、自社もデジタル技術を活用して付加価値向上や業務効率化に挑戦する姿勢が重要です。他社の成功事例から学び、自社の規模に合ったDX推進計画を策定しましょう。例えば、社内にDX推進の責任者を置き、経営戦略にデジタル活用を組み込むことは大企業でなくとも可能です。また、経産省の提供するセルフ診断ツールや専門家派遣など公的支援も積極的に活用し、自社のデジタル成熟度を高めていくことが求められます。

参考リンク:
経済産業省「『DX銘柄2025』・『DX注目企業2025』を選定しました」


2. 沖縄県、DX推進に最大1000万円補助:3コースで課題解決を支援

概要:
沖縄県は企業や団体のデジタル化による業務効率化や課題解決を支援する 「沖縄DX推進支援事業」 の公募を開始し、申請受付を行っています。この補助金では事業内容に応じて、1件あたり最大1000万円(補助率90%)の支援を受けることが可能です。応募期限は5月30日正午までで、県内企業のDX促進を図る狙いです。

中小企業への影響:
中小企業にとって、まとまった資金をDX投資に充てられる絶好の機会です。ITツール導入やシステム開発、人材育成など、本来コストが障壁となる取り組みも補助金で後押しされれば挑戦しやすくなります。また、自治体がDX支援に乗り出すことで、地域におけるデジタル化の温度感が高まり、取引先や顧客からの期待も高まるでしょう。補助金を有効活用するには自社の課題を的確に見極め、限られた期間で成果を出す計画が必要となるためです。

経営者の視点:
自社が補助対象となり得る場合、ぜひ前向きに活用を検討しましょう。経営者はまず自社の課題(例えば在庫管理の非効率、アナログ業務の多さ、顧客対応の遅れ等)を洗い出し、その解決策としてどんなデジタル施策が有効かを考えることが重要です。補助金申請には具体的な計画が求められるため、専門家や支援機関のアドバイスを受けつつ事業計画を練ると成功率が上がります。また、沖縄県以外の地域でも類似のDX支援策が展開されている可能性があるため、自治体や国の施策情報を定期的にチェックする姿勢も大切です。

参考リンク:
沖縄タイムス:企業のDX推進 沖縄県が最大1000万円補助 課題解決へ3コースで支援


3. freee、新AIエージェントを発表:経費精算や請求書発行など業務を自動化

概要:
クラウド会計ソフト大手の freee(フリー)は5月14日、AIエージェント「freee AI(β版)」を発表しました。これは同社の業務プラットフォーム「統合Flow」と生成AI技術を組み合わせたもので、経費精算、年末調整、請求書発行、勤怠管理、工数管理などバックオフィス業務の自動化・効率化を図る機能を提供します。例えば「まほう経費精算」では上司とのチャット内容から出張申請を自動作成し、経費使用予定日に社員へ通知、領収書を撮影するだけで経費申請が完了する仕組みです。

中小企業への影響:
人手不足に悩む中小企業にとって、経理・総務の負担軽減は喫緊の課題です。freeeのAI機能はそうした日常業務を効率化し、人為的ミスの削減や申請漏れ防止にもつながります。特別なIT知識がなくても既存のクラウドソフト上で使えるため、小規模事業者でも導入ハードルが低いでしょう。今後、他の会計・労務ソフトベンダーからも類似のAI機能が登場すれば、中小企業全体で事務作業のDXが一気に進む可能性があります。一方、AIに業務を任せることで社員の役割も変わってくるため、従業員への周知徹底や新たな業務フローの整備も必要になりそうです。

経営者の視点:
経営者はこうした最新ツールの動向にアンテナを張り、自社に有益なものは積極的に取り入れるべきです。特にfreeeを利用中の企業はβ版に申し込んで試してみる価値があります。定型業務をAIに任せることで浮いた時間を本業や戦略立案に振り向けることができれば、生産性向上と競争力強化につながります。また、他社の動向もチェックしておきましょう。競合が先にAIで効率化を進めればコスト面で劣勢になりますし、取引先から電子請求やデジタル経費処理を要求されるケースも増えるかもしれません。変化に対応できる柔軟な組織づくりが求められます。

参考リンク:
Impress Watch:freee、AIエージェントを導入 経費精算や請求書発行など


4. 中小企業がノーコードAIで水質予測モデル開発:年間500時間の業務を削減

概要:
山口県の産業廃棄物処理企業 住吉工業は、NTTコミュニケーションズのノーコードAIツール「Node-AI」とデータサイエンティストの伴走支援を受け、社内担当者自らが最終処分場の放流水の水質を予測するAIモデルを開発しました。その結果、年間約504時間の作業時間と100万円以上の人件費を削減できる見込みという試算が得られています。現場担当者がプログラミング知識なしでビッグデータ解析と予測モデル構築に成功した事例として注目され、NTTコミュニケーションズはこの取り組みをモデルケースとして他の中小企業へのDX支援を加速する方針です。

中小企業への影響:
このニュースは「自社でもAI活用ができるかもしれない」という希望を中小企業にもたらします。従来、高度なデータ分析は大企業や専門IT企業の専売特許のように思われがちでした。しかしノーコード型のツールと適切な支援があれば、現場を熟知した社員自身が問題解決にAIを役立てられることを示しました。特に人手不足や業務効率化に悩む企業にとって、自社の蓄積データを活用して省力化や精度向上を図る余地は大きいでしょう。今回のような成功事例が増えれば、取引先から中小企業へデータ活用の協力を求められるケースも出てきて、産業全体でDXが進展する可能性があります。

経営者の視点:
経営者はまず、自社に眠るデータ(例えば日報、検査結果、売上履歴など)に目を向けてみましょう。それらを分析すれば予測や最適化に役立つかもしれません。今回の事例のように、専門知識がなくても使えるツールや外部専門家の力を借りれば、思わぬ効率化が実現できる可能性があります。自社単独で難しければ、ベンダー企業や大学・支援機関との協業も視野に入れてください。

参考リンク:
クラウドWatch:NTT Comと住吉工業、ノーコードAIツール「Node-AI」を活用した自律的なDX推進の取り組みを実施


5. CO2排出量が不明な製品は選ばれない?脱炭素対応に中小製造業もDXが鍵

概要:
製造業における利益率改善策を紹介する専門記事によれば、自社製品のCO2排出量(カーボンフットプリント, CFP)への対応が中小製造業にも求められており、CFP算定にデジタルツールを活用することが有効だと指摘されています。大手メーカーを中心にサプライチェーン全体で脱炭素への取り組みが進む中、「自社製品の温室効果ガス排出量を明確に示せない製品は取引先や消費者に選ばれなくなる」可能性が高まっています。エクセルや紙での管理では限界があるため、専用ソフトウェアやクラウドサービスを活用して排出量データを見える化・共有する動きが今後加速しそうです。

中小企業への影響:
脱炭素はもはや大企業だけのテーマではなく、中小企業にも具体的な対応が求められる時代になっています。特に製造業や食品・素材産業などでは、大手企業から部品や素材の納入業者に対し、「製品の環境負荷情報を提出してほしい」と要求されるケースが増えてきました。対応が遅れると取引機会を失うリスクがあります。例えば、省エネ機械への投資や生産プロセスの見直しと並行して、排出量計測のDXを進めておけば、環境に配慮する顧客からの評価が高まり、新規ビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

経営者の視点:
経営層は脱炭素対応をコスト負担と捉えるだけでなく、DX推進のチャンスと捉えることが大切です。まずは自社のCO2排出量を把握するために、エネルギー使用量や原材料のライフサイクルデータをデジタルで管理・分析する仕組みを導入しましょう。専門知識がなくても使えるツールやサービスが登場していますので、社内担当者に情報収集させ、小規模な計測から始めてみるのも良いでしょう。環境対応とデジタル化はこれからの経営の両輪であり、持続可能な経営のために両面から戦略を練る必要があります。

参考リンク:
MONOist:CO2排出量が不明な製品は選ばれない? 脱炭素対応が中小製造業の未来を分ける


まとめ

今回取り上げた5つのニュースから、デジタル技術が企業経営にもたらすインパクトの大きさが改めて浮き彫りになりました。政府によるDX先進企業の選定や自治体の補助金制度は、デジタル化が国策レベルで推進されていることを示しています。一方、民間のサービス開発や現場でのAI活用事例は、技術が実際の業務効率や競争力向上に直結することを教えてくれます。また、環境対応とDXの融合は、これからの企業活動において避けて通れないテーマです。

経営者としては、自社の置かれた状況に合わせてこうした潮流を経営判断に取り入れることが求められます。具体的には、利用可能な支援策でDX投資を後押しし、日々進化するデジタルツールを積極的に業務に取り入れ、社員のデジタルリテラシー向上にも注力することです。同時に、脱炭素など新たな要請にもアンテナを高く持ち、デジタルの力で対応策を講じましょう。今回のニュースを踏まえ、ぜひ自社のDX推進計画をアップデートし、変化の激しい経営環境に備えてください。

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