DXニュースまとめ(2025年4月18日〜4月24日)

DXニュースまとめ(2025年4月18日〜4月24日)

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、日本国内でも行政から民間まで様々な動きが見られました。
この期間には、中小企業にも関係深い補助金制度の開始や、新サービスの提供発表、さらには現場でのDX実践例まで幅広いニュースが報じられています。
忙しい中小企業経営者の皆様に向け、以下に主要な5件のDX関連ニュースを厳選し、その内容、中小企業への影響、経営者としての活用策を解説します。

目次

1. 観光DX推進事業で補助金の公募開始

概要
観光庁が4月16日より「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」の公募受付を開始しました。
この事業では、観光地域全体の収益向上や生産性改善を目的に、(1) デジタルツール導入支援(販路拡大・マーケ強化、収益・生産性向上)と (2) 専門人材の伴走支援 の二本柱で支援が行われます。
補助金額は上限800万円(定額)で、下限はなく、複数人の専門家派遣でも合計800万円が上限です。

中小企業への影響
観光業に関わる中小・小規模事業者にとって、DXツール導入や専門家の支援を受ける絶好の機会です。
例えば、予約システムや多言語SNS発信ツールの導入費用を補助金で賄えるため、これまで資金面で躊躇していたデジタル化に踏み切りやすくなります。
観光客対応や販路開拓の効率化によって、人手不足の緩和や売上増加が期待できるでしょう。
また、地域ぐるみの取り組みであるため、周辺の関連業種(飲食・宿泊・土産品販売など)にも波及効果が及び、地域全体でDXが進む可能性があります。

経営者の視点
該当する事業者はこの公募に積極的に応募し、自社の課題に合ったDXプロジェクトを計画すべきです。
補助金を活用することで導入コスト負担を大きく軽減できるため、例えばオンライン予約導入や顧客データ分析のような施策も前向きに検討できます。
また観光業以外の経営者にとっても、政府がDX推進に本腰を入れている兆候として注目すべきニュースです。
自社業界でも類似の支援策が出ていないかアンテナを張り、DX推進の追い風として活かしましょう。

参考リンク
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業、2025年4月公募開始 | ツギノジダイ

2. 請求・支払い業務を一括デジタル化する「DX Connect Gate」提供開始

概要
IT企業のTISと日本ICS、広島銀行は4月21日、請求書受領から銀行振込による支払までをデジタル化するプラットフォーム「DX Connect Gate」を共同で発表しました 。
2025年6月から提供開始予定のこのサービスは、請求書の受取・経理処理・振込指示に至る一連のバックオフィス業務を一元管理し、銀行への振込指示もAPI連携で自動化する仕組みです。

中小企業への影響
多くの中小企業では、請求・支払・資金管理といった経理業務のデジタル化が不十分で、依然として手作業が残っています。
「DX Connect Gate」を利用すれば、請求書情報の取り込みから支払いまでを一貫処理できるため、経理担当者の作業負荷軽減やミス防止につながります。
さらに請求・支払データが一元化されることで資金繰りの見通しが立てやすくなり、経営判断の迅速化にも寄与するでしょう。
地域金融機関(広島銀行)との連携サービスである点は、地方の中小企業にもDXの恩恵が行き渡る動きとして注目されます。

経営者の視点
経営者にとって、経理業務の効率化は喫緊の課題です。
新サービスのように銀行やITベンダーが提供するソリューションを活用すれば、自社で大規模なシステム投資をせずともDXを進められます。
まずは自社の請求・支払フローを見直し、紙中心や二重入力の作業があれば、こうしたクラウドサービス導入を検討しましょう。
特に地方企業の経営者は、地域の銀行が主導するDX支援策(例:広島銀行の取り組み)がないか確認し、信頼できるパートナーとともにバックオフィス改革を進めることが重要です。

参考リンク
広島銀行・TISら3者、請求書業務から決済までをデジタル化するプラットフォームを6月提供開始へ

3. 横浜の町工場、DXで職場改革 平均年齢50代→30代に若返り

概要
創業60年以上になる横浜市の町工場「日鉄工営」が、5年をかけた大胆なDXと職場改革によって社内を一新しました。
同社は塗装ロボット事業などを展開する老舗ですが、改革前は「現場が最優先でルール無用」という風土から深夜残業や無断の高額出費が横行する“無法地帯”だったと言います。
基幹システムを刷新し、同時に労務管理と人材育成の改善も推進。その結果、従業員の平均年齢は50代から30代へと大幅に若返り、社内の規律と活気が取り戻されています。

中小企業への影響
中小製造業にとって、この事例はDX導入が人材面にも好循環をもたらす好例です。
単にITツールを導入するだけでなく、現場の働き方改革とセットで進めることで、生産性向上と職場環境の改善を両立できると示されました。ベテラン頼みだった企業も、デジタル化で業務を見える化し標準化すれば、若手が活躍しやすい環境を整えられ、人手不足や事業承継の課題に対応できます。
また、残業削減やミス防止につながる社内ルールの整備は、従業員の健康や会社の法令遵守にも寄与します。

経営者の視点
自社の古い慣習や属人的な業務を見直すことは容易ではありません。
しかしこの町工場のように、DXをテコに思い切った改革を行えば、中小企業でも劇的な変化を起こせる可能性があります。ポイントは「技術」と「人」の改革を両輪で進めることです。
例えば、生産管理ソフトやIoTセンサーで現場のムリ・ムダを可視化すると同時に、就業規則の見直しや社員教育への投資によって従業員のスキルと意識を高めることを実践しました。
DXの成果を出すには時間がかかるため、自社の5年後を見据えた計画を持ち、段階的に改革を実行していくリーダーシップが求められます。

参考リンク
無法地帯だった「横浜の町工場」が大激変、5年かけた「職場と人材」の大改革とは

4. フジテック、生成AI活用「第2ラウンド」へ 本格DXに向け課題整理

概要
エレベーター大手のフジテックは、自社DX戦略の中で生成AI(Generative AI)活用を新たな段階に移行させています 。
汎用的な業務効率化利用から踏み込み、社内の多様なデータを横断活用し、将来的には基幹システム開発への応用も視野に入れた取り組みを進めています。
しかしその実現には、レガシーシステムに蓄積した技術的負債の解消や、基幹系システムの柔軟な「疎結合化」といった下地作りが不可欠だと指摘されています。

中小企業への影響
大企業の事例ですが、生成AIのビジネス活用は中小企業にとっても他人事ではありません。
チャットボットによる問い合わせ対応や文章自動生成など、既に多くの企業が業務効率化に生成AIを使い始めています。一方で、フジテックが指摘する既存システムとの連携問題は中小企業にも共通します。古い会計ソフトや顧客データが散在したままでは、新しいAIツールを導入しても十分な効果が得られないでしょう。
要するに、AIを本格的に業務変革に組み込むには、自社のIT基盤を見直し、必要に応じてクラウド化やデータ統合を進めることが不可欠です。

経営者の視点
まず、自社のDX推進度合いを客観的に点検しましょう。
重要データが社内のあちこちに分散していないか、旧式システムに依存して業務が停滞するリスクがないかを確認します。
フジテックのケースから学べるのは、土台を整備してから新技術を乗せる重要性です。例えば、最低限必要な基幹システムの更新やデータベース統合を行い、その上でチャットGPT等の生成AIを試験導入して業務効率や意思決定にどう活かせるかを検証しましょう。

参考リンク
“第2ラウンド”を迎えた生成AI活用、技術的負債の解消と基幹システム疎結合化がカギ

5. 「DX銘柄2025」発表 SGホールディングスなど31社が選定

概要
経済産業省・東京証券取引所・情報処理推進機構(IPA)は4月18日、「DX銘柄2025」の選定結果を公表しました。
今年度は31社がDX先進企業として選ばれ、その中からSGホールディングス(物流)とソフトバンク(通信)が「DXグランプリ企業2025」に選定されています。
DX銘柄は、企業価値の向上に資するDXを推進する企業を選ぶ企画であり、単なるIT投資ではなくデジタル技術を前提にビジネスモデルや経営を変革し続けている点が評価されます。

中小企業への影響
対象は大企業とはいえ、選定企業の動向は業界全体に影響を与えます。
例えば、DX銘柄企業がサプライチェーン上で取引先に電子化対応を求めたり、新サービスを展開すれば、中小企業も対応や協業を迫られるでしょう。また、政府がこうした表彰制度を通じ「DXに積極的な企業が評価される」というメッセージを発信したことで、中小企業にもプレッシャーであると同時にチャンスが生まれています。
自社が属する業界で選定された企業の事例を研究し、どのようなDXが価値向上につながっているかを学ぶことで、自社のデジタル戦略立案のヒントにできます。

経営者の視点
中小企業の経営者も「うちは規模が小さいから」とDXを後回しにすべきではありません。DX銘柄企業に共通するポイント(経営戦略へのDX組み込み、データ活用による業務改革、新技術への積極投資など)は企業規模を問わず参考になります。
自社でも経営方針にデジタル活用の視点を取り入れ、トップ自らDX推進の旗振り役となることで、取引先や顧客から選ばれる存在へと成長できるでしょう。

参考リンク
DX銘柄2025が決定 DXグランプリ企業にSGホールディングスとソフトバンク

まとめと今後に向けたアクション

4月18日〜4月24日のDX関連ニュースを振り返ると、「政府による支援」「新サービスの登場」「現場からの変革事例」「技術的土台の重要性」「優良事例の可視化」といった5つの軸で、DXの動きがますます実践的になってきていることが分かります。

特に注目すべきは、補助金制度や金融機関と連携したツール提供のように、「今すぐに活用できるDX支援策」が具体的な形で提示されている点です。これは、中小企業にとって「後回しにしてきたDX」を現実の一歩として踏み出す絶好のタイミングであることを意味します。

また、横浜の町工場のように、業務改革と職場環境改善をセットでDXに取り組む姿勢は、全国の小規模事業者にも大きな示唆を与えるでしょう。単にシステムを導入するだけでなく、「人」「組織」「仕組み」をどう変えていくかが、これからの成否を分けるカギです。

さらに、生成AIやDX銘柄に見られるように、「技術の進化」はとどまることを知らず、企業規模に関わらずIT基盤の強化とデータ活用戦略の見直しが不可欠となっています。

実践すべき3つのアクション

  1. 補助金や自治体支援を調査・活用する
     観光業や製造業など、自社業種に合った公的支援がないか今すぐ確認しましょう。
  2. 業務の中で「紙」「手作業」が残っている箇所を洗い出す
     請求書処理や勤怠管理など、簡易なツール導入から始めるのが効果的です。
  3. DXは“技術”だけでなく“経営”そのものの再設計だと捉える
     IT導入だけで終わらせず、組織文化や従業員の意識も変えていく視点が重要です。

変化のスピードが速い今こそ、「動いた企業が次のフェーズに進める時代」です。今回のニュースをヒントに、自社にとっての最初の一歩をぜひ踏み出してみてください。

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