DXニュースまとめ(2025年11月21日〜11月27日)

DXニュースまとめ(2025年11月21日〜11月27日)

DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する動きが、政府・大企業・専門ベンダーのあいだで一気に加速しています。中小企業の現場に直結する「無料のDXロードマップ公開」や「設備保守のリモート化」、「動画×AIによる新しい販売手法」、さらに「行政DXやクラウドERPの最新事例」など、見逃せないトピックが続きました。

中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、①中小製造業向けDXロードマップ公開、②国土交通省のリモートメンテナンスDX、③電通の動画×AIコマース、④デジタル庁の行政DX関連調達、⑤富士通のDX・AI表彰事例です。これらがどのように自社の経営とDX戦略に関係してくるのか、解説していきます。

目次

1. 中小製造業向け「DX変革ロードマップ」が無料公開

概要

岐阜県のIT企業・株式会社テクノアが、中小製造業向けに「DX変革ロードマップ」を無料公開しました。ニュースによると、このロードマップは「守りのDX(業務効率化)」から「攻めのDX(ビジネス変革)」へ進むための5ステップで構成されており、多くの中小企業が止まりがちな「ペーパーレス化のその先」を具体的に示した内容になっています。背景には、中小企業白書2025年版で示された「デジタル化は進んでいるが、本格的な業務変革まで到達している企業はまだ少ない」という課題があります。

中小企業への影響

このニュースが意味するのは、「DXの進め方」を外部の専門家がわかりやすく整理し、誰でもたどれる“道筋”として公開してくれた、ということです。

特に次のような企業にとって役立ちます。

  • 生産管理や在庫管理をいまだにExcelや紙で運用している製造業
  • 「システムは入れたけれど、現場のやり方はあまり変わっていない」と感じている企業
  • DXの必要性は理解しているが、「どこから手をつけるか」で止まっている経営者

自社内だけでDXの全体像を描こうとすると、どうしても視野が狭くなります。外部のロードマップをベースにすることで、「自社の現在地」と「次にやるべきこと」を整理しやすくなります。

経営者の視点

経営者としては、まず「自社は5ステップのどこにいるのか」を把握することが出発点です。

例えば、

  • ①まだ紙が多い → 「ペーパーレス化・情報の一元管理」から
  • ②ツールは入れた → 「データを活用した改善」へ
  • ③改善の成果が見えない → 「投資効果の見える化・KPI設定」へ

というように、ロードマップを経営計画とリンクさせて考えることが重要です。製造業以外の業種でも、「守り→攻め」という考え方や段階的に進める発想はそのまま応用できます。

参考リンク

PR TIMES:〖中小製造業のDX推進を加速〗初期段階からの停滞課題を解決へ|株式会社テクノア、「DX変革ロードマップ」を公開

2. 国土交通省が「リモートメンテナンス実証検討会」を開催 〜インフラ保守のDX加速へ

概要

国土交通省は、電気通信施設の保守業務を対象に、遠隔操作ロボット・センサー・カメラ・AI技術を活用した「リモートメンテナンス」の実証を進めており、その評価と課題整理のために検討会を開催すると発表しました。目的は、施設の維持管理を省人化・効率化し、災害時や障害時の対応を迅速化することです。

中小企業への影響

一見「インフラの話」で自社には関係なさそうに感じるかもしれませんが、影響は次の2つの面で出てきます。

  1. 設備保守ビジネスの変化
  • 設備保守・点検・建設業・インフラ関連の中小企業にとって、リモートメンテナンスは今後のビジネスモデルに大きく関わります。
  • 通常の目視点検や現地常駐から、「センサー+リモート+AI分析」型のサービスへとシフトしていく可能性があります。
  1. 自社設備管理の考え方の変化
  • 工場・倉庫・店舗などを運営する企業にとっても、設備やネットワークの状態を遠隔で監視し、異常があれば自動通知する仕組みが一般的になっていくかもしれません。
  • 結果として、人的ミスや対応遅れによるトラブルを減らし、止まらない事業運営が重要になってきます。

経営者の視点

経営者として意識したいポイントは、「保守・点検・メンテナンスにもDXの波が来ている」という事実です。

  • 自社が設備・インフラ関連の事業をしている場合:
    → いまのサービスに、センサーやカメラ、遠隔監視をどう組み合わせられるか検討してみる価値があります。
  • 自社の設備を管理する立場の場合:
    → 「異常が起きてから対応」ではなく、「異常の兆候をつかんで先に手を打つ」発想に切り替えることが重要です。

いきなり高度なシステムを入れなくても、「まずは点検記録をデジタル化する」「写真や動画で状態を残す」といった小さなDXから始めると、将来のリモートメンテナンスへの布石になります。

参考リンク

国土交通省:リモートメンテナンス実証検討会を開催します ~DXによる電気通信施設の最適メンテナンス~

3. 電通が「偶発購買アーカイブコマース」を提供開始 〜動画×AIで新しい販売のかたち

概要

電通・電通デジタル・電通ダイレクトの3社は、動画コンテンツとAIを組み合わせて「偶発購買」を意図的に生み出す新ソリューション「偶発購買アーカイブコマース」の提供開始を発表しました。これは、企業が作成した動画コンテンツをアーカイブ(資産化)し、視聴データや行動ログをAIで分析して、購買の兆しが高いタイミングで切り抜き動画などを自動配信する仕組みです。

中小企業への影響

これまで動画を活用した販促といえば「一度きりのライブ配信」や「YouTubeにアップしっぱなし」のケースが多く、コンテンツを継続的に活かしきれていない企業がほとんどでした。

この仕組みが示しているのは、

  • 動画は「作って終わり」ではなく、データと組み合わせて長く使い続ける資産になっていく
  • AIの進化により、「どのタイミングで、どの内容を、どの人に見せると買ってもらえるか」を自動でチューニングできるようになる

という方向性です。

中小企業にとっても、動画制作やAI分析そのものを自前で行う必要はありません。今後、こうした考え方を取り入れたマーケティングツールや広告メニューが一般化すれば、規模の小さい企業でも同じ発想で販売力を高められるようになります。

経営者の視点

経営者としては、次の2点を意識しておくとよいです。

  1. 動画コンテンツを「資産」として考えること
  • 商品紹介、導入事例、代表メッセージなど、すでに撮影済みの動画があれば「どこに保管しているか」「再利用できるか」を整理しておきましょう。
  • 将来、AIを使った配信サービスを使うときに、素材があるかどうかが大きな差になります。
  1. データと連動した販売活動を意識すること
  • 「誰が、どの動画を、どのくらい見て、どんな行動につながったか」というデータを取る仕組みを、少しずつ整備しておくと、後々のDXが進めやすくなります。

まずは、自社サイトやSNSに掲載している動画の棚卸しから始めてみるとよいでしょう。

参考リンク

電通:電通と電通デジタル、電通ダイレクト、動画コンテンツとAIで“偶発購買”を創出する「偶発購買アーカイブコマース」提供開始

4. デジタル庁が行政DXに関する調達情報を相次いで公表

概要

デジタル庁のサイトでは、2025年11月21日〜27日にかけて、行政のデジタル化に関わる複数の調達情報が公表されました。具体的には、

  • 国内主要産業の情報システム運用コスト抑制の事例研究(11月27日)
  • 地方公共団体のシステム共通化に関する調査研究(11月25日)
  • 行政文書電子管理システム(新EASY)の機器・ソフトウェア賃貸借(11月21日)

など、行政のDXを支えるシステム整備やコスト最適化に関する案件が並んでいます。

中小企業への影響

この動きは、次のような点で中小企業に影響を与えます。

  • 行政手続きのオンライン化・標準化がさらに進む
  • 申請や届出、補助金申請など、紙ベースの手続きがますます減り、オンラインが標準になります。
  • 自治体向けシステム市場の再編
  • システム共通化・標準化が進むことで、大企業だけでなく、特定領域に強みを持つ中小IT企業にもチャンスが広がる可能性があります。

一方で、事業者側にも「デジタル前提で行政とやり取りできる体制」が求められます。紙の保管・押印・対面依存の運用が残っていると、今後ますます手続きに時間と手間がかかるリスクがあります。

経営者の視点

経営者としては、次の2つの準備を進めておくと安心です。

  1. 自社の書類や帳票のデジタル化
  • 見積書・請求書・契約書・社内申請など、可能なものは順次デジタル化し、検索しやすい形で保管することが重要です。
  1. 行政手続きのオンライン対応力の向上
  • gBizIDやマイナポータルなど、行政のオンラインサービスに早めに慣れておくと、補助金・助成金・各種申請でスムーズに対応できます。

IT企業にとっては、「行政DXに関わる案件にどう参入できるか」を中長期で検討する良いタイミングでもあります。

参考リンク

デジタル庁:調達情報(2025年11月21日〜27日の各案件一覧)

5. 富士通が「2025 Microsoft Japan Partner of the Year」でAI・SAP領域の2部門受賞

概要

富士通は、日本マイクロソフトが優れたパートナー企業を表彰する「2025 Microsoft Japan Partner of the Year」において、

  • AI Innovationアワード
  • Migrate SAPアワード

の2部門を同時受賞したと発表しました。AI Innovationでは、マイクロソフトの「Azure AI Foundry」と小規模言語モデル「Phi」を活用し、日本航空の客室乗務員が機内でチャット形式のレポートを作成できる生成AIソリューションが評価されています。Migrate SAPでは、「RISE with SAP」とMicrosoft Azureを組み合わせたクラウドERPソリューションによる事業変革支援が高く評価されました。

中小企業への影響

このニュースが示しているのは、「クラウド+AI+業務特化」の組み合わせが、DXの主流になってきているということです。

  • 大企業だけでなく、将来的には中小企業向けのクラウドERPや業務システムにも、同様のアプローチが降りてくる可能性が高い
  • 特定の業務(例:レポート作成、問い合わせ対応、在庫計画など)に特化した小さめのAI(SLM:Small Language Model)が現場で使われる流れが強まる

つまり、「なんでも答えられる巨大なAI」ではなく、現場の仕事にピッタリ合わせたAIをどう組み込むかが重要になっていきます。

経営者の視点

経営者としては、次のような観点で自社のIT・DX戦略を見直してみるとよいです。

  • 自社が使っている基幹システムや会計・販売管理システムは、クラウド対応・AI連携の余地があるか
  • ベンダーやパートナーが、AIやクラウドを積極的に活用する方向でサービスを進化させているか
  • 社内で「AIをどの業務に使うか」を議論できる体制(現場の意見を吸い上げる場)があるか

いきなり高度なAIプロジェクトを立ち上げる必要はありませんが、既存システムの更新や入れ替えのタイミングで「AI・クラウド前提」で検討する姿勢が重要になっていきます。

参考リンク

富士通:「2025 Microsoft Japan Partner of the Year」の「AI Innovationアワード」と「Migrate SAPアワード」を同時受賞

まとめ

2025年11月21日〜27日のDX関連ニュースを振り返ると、「道筋の見えるDX」「現場業務へのAI実装」「行政DXの加速」「クラウド+AIの本格展開」という4つの流れがはっきり見えてきます。

  • 中小製造業向けDXロードマップは、「何から始めるか分からない」状態の解消に役立つヒントです。
  • 国のリモートメンテナンスや行政DXの動きは、インフラや手続きがデジタル前提に変わっていくサインです。
  • 大手企業のAI・クラウド活用事例は、少し時間差をもって中小企業向けサービスとして降りてくる可能性が高い領域です。

中小企業の経営者としては、

  1. 自社のDXの現在地を整理する(紙・Excel頼みからどこまで進んでいるか)
  2. 業務ごとに「小さなDX」を決めて、一歩ずつ進める(例:営業の記録をクラウド化する、見積書をデジタル化するなど)
  3. 行政や大企業のDXの方向性を、半年〜数年後の自社の環境変化として意識する

この3つを意識するだけでも、DXの情報を「見るだけ」で終わらせず、自社の行動につなげることができます。

次回以降も、政府の政策・大企業の取り組み・中小企業向け支援策など、経営判断に役立つDXニュースをピックアップしていきます。今回の記事をきっかけに、まずは自社のDXの課題を書き出してみるところから始めてみてください。

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