マーケティングニュースまとめ(2025年10月1日〜10月7日)
生成AIやSNSの活用が進む中、日本のマーケティング分野でも“買われ方・伝え方・越境”の地殻変動が続いています。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、訪日客向けイベント検索の始動(Peatix)、ショート動画の保証型拡散(ベクトル)、ユニクロが全世代で好感首位という消費インサイト、LINE上のAIキャラ接客(オプト)、そしてメルカリの越境アプリ提供です。いずれも「少ない投資で広く届ける」「体験価値で選ばれる」「国外に売る」を実現する具体策につながります。
1. 訪日客を逃さない!Peatixが多言語イベント検索「Visiting Japan」を開始
概要
イベントプラットフォームのピーティックスが、訪日外国人に日本各地のイベントを多言語で探して予約できる新サービス「Visiting Japan」を開始しました(10月1日提供)。英語などでの検索やキャッシュレス決済に対応し、滞在中の“今週末に行ける催し”を時間・場所・カテゴリで横断検索できます。旅行者の可処分時間にフィットしたUIで、地元の祭り、ライブ、アート展示、工場見学、ワークショップなどの集客を後押しします。主催者は既存のPeatix管理画面から多言語ページを用意でき、即日掲載も可能です。
中小企業への影響
観光地の飲食・小売・体験型サービスにとって、広告費を大きくかけずにインバウンド需要の刈り取りがしやすくなります。紙のチラシや日本語サイトだけでは届かなかった層に、イベント登録だけで露出できる点が魅力です。予約・決済の一本化は当日のキャンセルや問い合わせ対応の負荷軽減にもつながり、現場オペレーションの安定に寄与します。旅行者レビューの可視化は信頼形成にも貢献し、地域の回遊性(飲食・土産・宿泊への波及)を高めます。自治体やDMOが主導するナイトタイムエコノミー施策とも親和性が高く、商店街単位の共同企画にも展開しやすいでしょう。
経営者の視点
まずは小規模でも構いません。店内ライブ、職人の実演、朝市ツアーなど「体験化」したメニューを1つ作り、写真と言語対応の説明を整えて登録しましょう。季節・曜日で価格を変えるダイナミックプライシングや、体験+物販のバンドル設計も有効です。効果測定は、来店時アンケートで「予約経路」を必ず取得し、LTV(再訪・物販連動)まで追います。社内に英語人材がいない場合は、自動翻訳+定型テンプレで最低限の品質を担保し、FAQは短文で用意して誤訳リスクを抑えましょう。店頭・客室・空港案内でQRコードを掲出し、SNS公式と連携した告知導線を早めに整えることをおすすめします。
参考リンク
MarkeZine:ピーティックス、訪日外国人向けイベント情報サービス「Visiting Japan」開始
2. 低コストで瞬発的に広める──ベクトルが「ショート動画取材班」PRプラン
概要
総合PRのベクトルが、複数のSNSメディアを束ねて商品・店舗・イベントを取材し、ショート動画で一斉拡散する新プランを開始しました。美容・トレンド・おでかけ等の特化アカウント群を活用し、撮影から編集・投稿までワンストップ。5媒体10万リーチ保証で20万円、10媒体20万リーチ保証で35万円、20媒体100万リーチ保証で150万円という分かりやすい料金設計で、最短“即日掲載”にも対応します。媒体はTikTok、Instagram、YouTubeショート等が中心で、地域・属性に近いアカウントを束ねて当該商圏へ届けるのが特徴です。
中小企業への影響
テレビCMや大型インフルエンサーに頼らなくても、短期間での可視化と来店喚起が狙えます。特に新店オープン、季節メニュー、ポップアップ、採用広報など“話題化の山”を作りたい局面に適します。制作・配信の手離れが良い半面、保証の対象はあくまで「リーチ」であり、来店・購買は別設計が必要です。店舗動線の最適化やクーポン連動、Googleビジネスプロフィールの即時更新など、転換施策と必ずセットで考えましょう。また、リーチは延べ人数である点に注意し、重複視聴や頻度を加味した評価が不可欠です。季節波動がある商材は、投稿の曜日・時間帯もテストし、即時の反応差を把握しましょう。
経営者の視点
初回は限定オファー(先着○名、期間限定特典等)を組み込み、「視聴→予約/来店」までの導線を明確に。撮影では“映える”画角よりもベネフィットの一言(価格・量・時短・体験価値)を最初の2秒で伝える台本を指示します。効果測定は来店時の口頭合言葉やLP専用クーポンで判別し、1リーチあたりCPAを把握。生成した動画は自社SNSや店内サイネージ、広告クリエイティブとして二次活用できるよう、著作権・使用期間を契約で明記しておきましょう。景表法・ステマ規制順守のため、タイアップ表記やアカウント選定のブランドセーフティにも留意してください。
参考リンク
MarkeZine:ベクトル、「ショート動画取材班」活用の新PRプランを提供
3. 生活者の“好き”が可視化—全世代で「ユニクロ」が好きなブランド1位(ロイヤリティ マーケティング調査)
概要
共通ポイント「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティングが「ファッションに関する調査」を公表し、「好きなファッションブランド」でユニクロが全性年代で1位となりました。あわせて「よく購入するブランド」「憧れのブランド」も集計され、現実の購買と心理的好意、理想との三層構造が示されています。全体では「よく購入する」でユニクロ34.6%、GU22.4%、「好きなブランド」でユニクロ26.6%、GU16.7%が上位という結果でした。ユニクロは「よく購入する」でも上位を維持し、価格・品質・入手性の総合力が支持を支えていることがうかがえます。
中小企業への影響
指名買いが強い大手ブランドが存在しても、好きと購買のズレにチャンスがあります。たとえば憧れはハイブランドでも、日常の購入は価格・着回し・近さで決まる層が一定数いるため、近隣立地や即日受け取り、裾上げ・修理といった利便性価値で勝負できます。逆に、好きだが購入頻度が低い層には、限定色・コラボ・セット割など購入トリガーを設計して背中を押せます。アパレル以外でも、日用品や食品の“定番化”を目指すなら、サイズ・価格・在庫のブレない安心感がロイヤルティ形成の土台になります。
経営者の視点
自社でも三つの指標(よく買う/好き/憧れ)を簡易アンケートで継続計測し、店頭・ECの打ち手に反映させましょう。1)「よく買う」を増やすには品切れ率低減とサイズ拡充、2)「好き」を高めるにはレビュー・ストーリー訴求、3)「憧れ」からの取り込みには限定企画・体験イベントが有効です。SNSではコーデ提案のUGCを促し、週次で売れ筋と在庫の“差”を埋める棚替えを行うと、回転が改善します。地域密着型のコラボ(学校・部活・企業)も検討ください。反応が薄い施策は2週間で見切り、小刻みなABテストで勝ち筋だけを残す運用が重要です。
参考リンク
ロイヤリティ マーケティング:年代別のファッション意識に関する調査(ユニクロが全世代で1位)
4. 会話する“キャラ接客”が現実に—オプトがAIキャラクターCX「Soulful AI」を提供開始
概要
デジタルマーケティングのオプトが、LINEミニアプリ上で企業・ブランドの公式キャラクターがAIで自動会話し、クーポン配布や案内を担うCXソリューション「Soulful AI」を正式提供しました(10月2日)。キャラクターの“人格”や世界観に沿ってメッセージを生成し、ユーザーの質問への回答、来店促進、会員化の導線づくりまでを支援。機能価値に加え、情緒的価値でのエンゲージメント向上を狙います。LINEという生活インフラ上で動くため、利用のハードルが低いのも特徴です。既存の友だち配信に“会話性”が加わることで、従来の一方向配信よりも滞在時間や満足度の伸びが期待できます。
中小企業への影響
人手不足の接客やアフターサポートを、等身大の会話体験で補完できます。テキストFAQよりも印象に残りやすく、スタンプやクーポンとの相性も良好です。一方で、トンマナ逸脱や誤回答のリスク、生成AIコストの管理といった注意点があります。メニュー説明、予約変更、在庫照会、修理受付など、電話や店頭で滞留しがちな問い合わせを肩代わりすれば、従業員は高付加価値業務に集中できます。会員ID連携や来店ポイントと組み合わせたLTV設計を進めやすいのも利点です。
経営者の視点
導入前に、キャラクター設定(口調・NG話題・回答範囲)とエスカレーション設計(人手の切替条件)を明文化しましょう。KPIは開封率よりも「会話完了率」「クーポン利用率」「来店/購買寄与」に置き、会話ログ分析で回答の改善を継続。まずはFAQの上位10件から始め、週次で意図分類とテンプレ更新を回します。クレームや返金が絡む話題は必ず有人へ切替えるルールを設定。季節イベントでは限定ボイス・フォトフレームなど体験ギミックを差し込むと、再訪とUGCが伸びやすくなります。個人情報の取り扱いはプライバシーポリシーに追記し、取得目的を明記してください。
参考リンク
MarkeZine:オプト、AIを活用したキャラクターによるCXソリューション「Soulful AI」の提供を開始
5. 越境ECの追い風—メルカリが世界共通「グローバルアプリ」提供、事業者向け基盤も拡充
概要
メルカリが越境取引事業の新戦略を発表し、海外の購入者が日本の「メルカリ」「メルカリShops」の商品をそのまま閲覧・購入できる世界共通アプリの提供を開始しました(台湾・香港から、内容は10月1日に更新)。AIのリアルタイム翻訳、各国通貨・決済への対応、国際配送の最適化などで“言語と決済の壁”を下げます。さらに2026年1月以降は全品検品を導入し、決済〜配送追跡までをアプリで完結させる方針です。3年以内に50以上の国・地域へ展開を目指します。事業者の海外展開を支えるグローバルEC基盤も整備され、海外決済(Stripe予定)、国際配送・通関、外国語対応までを機能側でサポート。販売国の選択設定や、2026年上半期のあんしん鑑定導入も予告されています。
中小企業への影響
国内からの出品だけで海外需要に直接アクセスできるため、特にホビー・アニメ・伝統工芸・中古良品といった日本発コンテンツに追い風です。一方で、権利処理・禁制品・返品ポリシーなど越境特有のリスク管理は不可欠。価格設定は関税込み/別の二重表示や、送料高騰への対策(同梱割・最適箱)を検討しましょう。公式バッジやテーマページの予定も示されており、認知の獲得→信頼の担保→継続購入の設計がしやすくなります。
経営者の視点
まずは“海外で売れる既存在庫”の棚卸から。英語名・型番・素材など検索に効く情報を商品名と説明に盛り込み、サイズ表記の単位も併記します。配送・通関はプラットフォーム標準に乗り、問い合わせはテンプレ化して時差対応を整備。為替変動に備え、原価率の高いSKUは自動価格調整や最低利益ラインの設定を。売れ筋が見えたら、出品をShopsに移し、リピート設計(バンドル購入、ニュースレター)でLTVを伸ばしましょう。観光地の実店舗は、越境向け在庫と店頭体験を連動させる“ショールーミング”も有効です。
参考リンク
PR TIMES:メルカリ、越境取引事業の新戦略を発表 世界共通アプリ「メルカリ グローバルアプリ」の提供開始
まとめ
今回のポイントは、①体験を商品化して“予約”で売る、②動画で瞬発的に露出し転換施策で刈り取る、③「好き・購買・憧れ」を分けて測る、④会話型の顧客体験で継続率を上げる、⑤越境で市場を広げる、の5つです。まずは小さく試し、データで勝ち筋を見極めましょう。

