マーケティングニュースまとめ(2025年9月10日〜9月16日)

マーケティングニュースまとめ(2025年9月10日〜9月16日)

中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、価格表示の適正化強化プレミアム動画広告の運用型解禁Pinterest連携でのEC集客強化YouTube×アプリの獲得最適化ローカル検索のAI計画化の5点です。価格・広告・集客導線の“基礎体力”を見直す好機です。本文では経営判断に直結する実務ポイントを、すぐに使える視点とともに解説します。

目次

1. おせち「通常価格」表示で措置命令——景品表示法違反と判断、通販各社は価格訴求の見直し必須

概要

消費者庁は9月12日、ジャパネットたかたの「【2025】特大和洋おせち2段重」の広告表示が景品表示法の有利誤認に当たるとして措置命令を出しました。キャンペーン期間中に「通常価格29,980円から1万円引き」と打ち出した一方、期間後に通常価格で販売する合理的計画が認められなかった点が問題視されています。事業者には周知徹底、再発防止策、同様表示の禁止が命じられました。企業側は反論を示していますが、行政判断として価格比較の根拠性が厳格に問われた事案です。過去実績の引用可否だけでなく、将来価格の実施可能性と計画証跡の有無までチェックされる傾向が明確になりました。 また、キャンペーンの開始・終了の周知方法や、在庫状況の表示タイミングも審査対象になり得ます。自社の「値下げの根拠」を第三者に説明できる状態を常に用意しておくことが、景表法時代のマーケティング基盤だといえます。

中小企業への影響

値引きや「通常価格」を用いた二重価格表示は、ECやチラシでよく行われます。今回のポイントは「将来適用する通常価格」や「比較対照価格」の根拠性です。完売前提の短期キャンペーンでも、終了後の販売計画や実績が裏付けられないと有利誤認と見なされるリスクがあります。特にシーズン商材や予約販売では、表示と販売実態の整合、根拠資料(販売計画・在庫・仕入・台本・価格表)の保存、社内承認フローの明文化が重要です。広告代理店や制作会社に任せきりにすると、証拠保全が分散しがちです。誤表示は返金等の直接コストに加え、SNS炎上やレビュー低下による間接損失、検索面での露出低下など、中長期的なブランド毀損につながります。

経営者の視点

①価格表示ガイドラインを再確認し、LP・広告・台本・カタログを横断監査する、②「通常価格」「参考価格」「期間限定」の定義と証拠(販売計画、在庫・仕入計画、過去販売実績、社内決裁)を文書化、③制作・運用・法務の三者決裁を必須化、④A/Bテスト時も表示の一貫性を担保、⑤表示のスクショと販売ログを少なくとも1年間保存、⑥比較広告は出典と条件を明記——を即時実施しましょう。販促は「割引の大きさ」よりも「価値の具体性(内容・数量・保証・体験)」で訴求する設計への転換も有効です。顧客にとっての“お得の根拠”を、数字と言葉で明確に示すことが信頼獲得の近道です。

参考リンク

消費者庁:株式会社ジャパネットたかたに対する景品表示法に基づく措置命令について


2. Amazon Ads×Netflixが日本でも運用型を解禁——プレミアム動画在庫がDSPで一気に身近に

概要

9月12日、Amazon AdsとNetflixが、Netflixの広告付きプラン在庫をAmazon DSP経由で運用型提供すると発表しました。従来は限定的な販売形態でしたが、今後は運用型での直接アクセスが可能になり、データ活用や最適化の柔軟性が増します。視聴環境は大画面テレビからモバイルまで広がり、ブランドリフトやフルファネルでの測定設計も取りやすくなります。プレミアム動画の在庫が運用型化する流れは、CTV/OTTバイイングの標準化をさらに押し進める布石です。今後はリテールデータや購買データとの連携も加速し、映像文脈でのコマース誘導が一般化する可能性があります。 加えて、家族視聴の多いリビング画面では“音声+字幕”の二重訴求が有効で、認知だけでなく検索・店舗来訪・ECカート投入までの増分効果の可視化が鍵になります。KPI設計時は、CTVならではの無効在庫やブランドセーフティの監視も織り込みましょう。

中小企業への影響

これまで「テレビ品質の動画広告」は最低出稿額や買い付けの複雑さが障壁でした。DSP経由での在庫アクセスが可能になれば、地域・興味関心・世帯属性などのセグメントを用いたスモールスタートがしやすくなります。商品紹介の短尺動画と視聴完了リマーケティングを連携させ、ECや実店舗送客まで一気通貫で設計する余地が拡大します。オーディエンス重複や頻度過多は費用対効果を悪化させるため、YouTubeやTVer等とのクロスプランニングが不可欠です。一方、プレミアム在庫は単価が相対的に高く、クリエイティブ品質がCPAに直結します。

経営者の視点

まずは上限付きでテスト。①30秒以内の“音声なしでも伝わる”構成、②冒頭3秒の訴求一発明快、③商品利用のビジュアル証拠、④明確なCTAと着地点(LP/店舗)を用意。ブランドリフト調査か、少なくともビューアビリティと完了率、増分指名検索をKPIに据え、P-MAXやリスティング、SNS広告の既存投資とカニバらないよう配分を見直しましょう。クリエイティブは4パターン以上でABCDテスト、頻度上限を週3回程度から調整し、夜間帯や週末など“視聴余力のある時間”の入札を厚めにするのがコツです。

参考リンク

Web担当者Forum:「Amazon Ads」とNetflixが運用型で提携(日本でも)


3. Wixストア×Pinterest連携——中小ECでも“発見から購買”の導線を省工数で実装

概要

Webサイトビルダー「Wix」のネットショップ機能「Wixストア」が、ビジュアル検索SNS「Pinterest」と公式連携しました。ダッシュボードから数クリックでアカウント接続し、商品カタログを自動同期。価格更新や在庫追加もWix側の操作がPinterestに反映され、ターゲットを絞った商品広告の掲載が可能になります。多言語対応も謳われ、ソーシャルコマースでの新規流入獲得と購買導線の短縮を、小規模事業でも実現しやすくなります。画像主導の探索行動を取り込めるため、新作や再入荷の告知も“保存”を起点に継続的なタッチポイント化が可能です。 一方で、画像の権利処理や誤情報の拡散リスクには注意が必要です。モック写真や生成画像には明確な表記を添え、サイズや素材、配送日数など“買う前の不安”を画像内テキストで先回り解消すると、保存から購入までの転換率が上がります。 加えて、検索キーワードの季節変動(例:入学式、母の日、夏フェス)に合わせたピンの更新カレンダーを作ると、広告費に頼らずに発見面での露出が積み上がります。ピン間の“物語の連続性”を設計し、複数商品を回遊させることで客単価の引き上げも狙えます。

中小企業への影響

画像・動画起点の「発見型需要」を自社ECに取り込むハードルが下がります。特に、ファッション、雑貨、ライフスタイル系ではPinterestの検索意図(アイデア探索・保存)と相性が良く、カタログ連携により手作業の運用負荷を抑えつつ、在庫回転を速められます。季節催事やコーデ提案など“集合体コンテンツ”を用意しておくと、関連商品への回遊も自然に生まれます。従来のInstagramショッピング偏重から、検索性の高いPinterestを組み合わせることで、季節需要や指名外キーワードの取りこぼしを補完できます。

経営者の視点

①売れ筋10SKUから“保存されやすい”縦長画像を用意、②ピンのタイトルは「用途×ベネフィット×素材」でSEO、③ボードは「イベント別・季節別」で棚作り、④Pinterest広告はCPC上限を設定し、CPAが閾値を超えたら即オフ、⑤Wix側で構造化データ(価格・在庫・返品)と配送情報を明記、⑥在庫切れ時は代替提案ピンへ自動遷移——の運用基本を押さえましょう。口コミやUGCの二次利用同意も早めに取り付け、権利面のリスクを回避します。

参考リンク

Web担当者Forum:WixストアがPinterestと公式連携


4. YouTube広告でも「Web to App Connect」——Web⇄アプリ横断の獲得最適化が平易に

概要

Google 広告は、Webとアプリをつなぐディープリンク機能「Web to App Connect」の対応面を拡大し、YouTube広告でも利用可能にしました。これにより、YouTube視聴からアプリの特定画面(商品詳細・カート・会員登録など)へ直接遷移させ、測定・最適化までを一貫運用できます。管理画面のUIもアップデートされ、導入・検証のハードルが下がりました。Webファネルとアプリファネルのサイロが崩れ、LTV前提の設計が現実的になります。動画在庫の運用型比重が高まる中、アプリ回遊データを活用したクリエイティブ自動最適化も視野に入ります。 また、LTVに寄与するイベント(会員登録後の初回購入、定期申込の継続)を優先最適化に組み込み、目先のインストール数だけを追わない設計が重要です。動画×アプリの相乗効果は、大幅なスケールと同時に計測の厳密さを要求します。 導入フェーズでは、限定的な地域・端末・OSで小さく始め、リンク遷移率や初回体験の離脱ポイントを観察しながらクリエイティブと遷移先を磨き込むと、短期間で学習が安定しやすくなります。

中小企業への影響

サブスクやリピートが鍵の事業では、Web起点の広告接点からアプリ行動へ“最短導線”を引くことで、ROASと継続率の両立が狙えます。既存ユーザー向けには休眠復帰やカゴ戻しのディープリンク、新規獲得では初回体験の摩擦を最小化するオンボーディング遷移が有効です。動画接触後にアプリのクーポン画面へ飛ばす等、体験の即時性も高められます。一方、計測設定の不備はCV欠損や過大評価を招きます。MMPやFirebase連携、SKAdNetworkやプライバシー対応を含めた実装品質が成否を分けます。

経営者の視点

①最重要イベント(購入・申込・来店予約)に紐づくアプリ画面を洗い出す、②Deferred Deep Linkで未インストール層も捕捉、③Web版LPとアプリ版体験の内容・特典を統一、④YouTube短尺とカスタムインテントの併用でスキップ前訴求、⑤指名検索の増分寄与をベイズモデル等で検証、⑥配信前後でアプリ内ファネルの離脱率をモニタリング——までを最小構成の実装計画に落とし込みましょう。小額からの段階配信と、サーバーサイド計測の準備もおすすめです。

参考リンク

Web担当者Forum:YouTube広告でも「Web to App Connect」が利用可能に


5. Yahoo!検索の「おでかけAIアシスタント」開始——生成AIで観光コース提案、検索体験の“計画化”が進む

概要

LINEヤフーは、Yahoo!検索上で対話しながら観光モデルコースを作る「おでかけAIアシスタント」の提供を開始しました。ユーザーの嗜好に合わせて飲食・観光・移動時間まで提案し、これまでの「情報検索」から「計画生成」へと役割を広げます。検索面の進化は、地図・レビュー・予約といった周辺タッチポイントとの連携を前提に、クチコミ要約など既存機能ともシームレスに動く設計です。ローカル検索の商機は、より“意図に近い瞬間”へ凝縮していきます。将来的にはパーソナライズ度の高いレコメンドと、来店・予約データの循環で、地域事業者の可視性が大きく変わる可能性があります。 さらに、SNSや地元メディアと連動した“今日使える情報”の更新頻度が選ばれる要因になります。写真は“食べたい/行きたい決定打”になりやすいので、最新の実物写真と価格の一致を徹底し、AIが拾いやすいテキスト説明を添えておきましょう。 観光地に限らず、住宅や医療、美容、教育など“来店/来場型”の事業でも、説明の順序や所要時間の提示が意思決定を後押しします。FAQや予約条件の“機械可読化”は、AI時代の集客における新しい衛生要件です。

中小企業への影響

飲食・小売・観光関連の店舗では、営業時間・価格・空席・混雑・決済手段など、AIが参照する構造化データの整備が重要性を増します。体験型・回遊性の高い業態ほど、ストーリー性のある商品設計(周遊パス、時間帯限定メニュー、親子向けプランなど)と、レビューの質・鮮度が送客に直結します。検索広告やディスプレイ広告も、AI提案の文脈に合わせたメッセージ(“朝の子連れ向け”“雨の日プラン”など)に細分化すると効果が高まります。地域の観光協議会や商店街との連携で、複数店舗横断の特典設計も検討の価値があります。

経営者の視点

①GoogleビジネスプロフィールとYahoo!プレイスの両面でデータを最新化、②レビュー返信テンプレと写真更新を月次運用、③メニューや料金・所要時間を構造化データで表示、④雨天・混雑時の代替プランを用意、⑤クーポンは“行程内の次の行き先”とセット訴求、⑥店舗間の回遊導線をハッシュタグや地図ピンで提示——を実行しましょう。ローカル広告は地域×時間帯×目的別でABテストし、CVは「地図経由の来店」と「予約完了」で二軸管理すると改善が進みます。

参考リンク

Web担当者Forum:「Yahoo!検索」おでかけAIアシスタント開始


まとめ

今回のポイントは、表示の根拠性(法対応)動画在庫の運用型活用発見型チャネルの棚作りWeb⇄アプリの体験接続ローカル検索の“計画生成”対応の5つでした。まずは価格表示とレビュー・店舗情報の“基礎データ”を整え、動画とPinterestの軽いテスト配信、アプリのディープリンク設定の試行までを短期スプリントで回すのが近道です。
次回も、実務に効く国内マーケティング動向を掘り下げます。日々の意思決定に役立つチェックリスト化も進めていきます。

目次