マーケティングニュースまとめ(2025年8月6日〜8月12日)

マーケティングニュースまとめ(2025年08月06日〜08月12日)

 
マーケティング分野では、広告運用の効率化や支払い手段の拡充、SNSの再投稿機能解禁など、実務に直結する更新が相次ぎました。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは「Yahoo!広告のAI提案機能」「Yahoo!ショッピング広告のシステム刷新」「Yahoo!広告のクレジットカード後払い追加」「Instagramのリポスト機能開始」「イプソスのAIクリエイティブ評価」です。期間中の動向を、経営判断に役立つ観点で解説します。
 

目次

1. Yahoo!広告、生成AIが提案する「クイックリンクアセット」を提供開始

概要

LINEヤフーは8月7日、「Yahoo!広告 検索広告」において、生成AIが自動で候補を提示するクイックリンクアセット(サイト内の関連ページへ誘導する追加リンク)の提案機能を提供開始しました。広告主が入力したLPや既存のサイト情報をもとに、AIがリンク先名と説明文の候補を即時生成し、審査に適した表現へ整えるのが特徴です。これにより、作成時間の短縮に加え、クリック率や来訪後の回遊の改善、広告ランクの向上が期待できます。特にモバイル検索では、メイン見出しだけでなく追加リンクの有無が視認性占有面積に直結するため、成果の差が出やすくなります。既存アカウントでも自動提案が通知されるため、放置アカウントの底上げにも有効です。
 

中小企業への影響

制作リソースが限られる企業でも、アセットの量と質を一定水準でそろえやすくなります。問い合わせ・価格表・事例・採用・アクセスなど目的別の導線を短時間で用意でき、来訪者の迷いを減らせます。導入初期の学習データ不足をAI提案で補える点も利点です。一方で、AI提案のまま掲載すると、ブランドの語調ズレ、古い情報の引用、誇張表現による審査落ちが起きるリスクがあります。また、計測タグやコンバージョン設定が甘いと自動最適化が働かず、見かけのクリック増に終わる懸念もあります。社内承認に時間がかかる企業は、定型句のガイドラインを決めて運用担当の裁量で差し替えできる体制にしておくと工数を抑えられます。
 

経営者の視点

(1)主要キャンペーンでA/Bテストを実施し、AI提案と人手作成を比較。(2)目的別のリンク設計(資料請求、デモ予約、アクセス、FAQ、レビュー)を事前に定義し、LP側の受け皿を最適化。(3)コンバージョンの準備:電話計測、チャット起動、マイクロCV(スクロール、滞在時間)を整備。(4)ガバナンス:表記・価格・在庫・法定表示の最新性を確認する校閲フローを用意し、公開前に必ず人がチェック。(5)運用:週次で検索語句とリンク別CVRをレビューし、低成果リンクは差し替え。(6)レポート:リンク別の貢献CVをダッシュボード化し、商談や来店の実績と突合。これらを実行できれば、少コストで成果の底上げが狙えます。最後に、季節商材など訴求が頻繁に変わる企業は、提案候補をテンプレ化しておき、販促カレンダーに合わせて切り替えると運用負荷を増やさずにフレッシュさを保てます。
 

参考リンク

PR TIMES:【Yahoo!広告 検索広告】生成AIによる「クイックリンクアセット」の提案機能を提供開始
 

2. Yahoo!検索広告(ショッピング)がシステム刷新を告知、8/25夜〜8/26夕まで一時停止

概要

Yahoo!広告の「検索広告(ショッピング)」で、8月8日にシステム刷新と機能変更が告知されました。実施は8月下旬予定で、移行作業のため8月25日22時〜26日17時に配信が一時停止されます。管理ツールや商品フィードの連携は利用可能ですが、一部のパフォーマンスレポートが一時的に取得不可となる可能性があります。刷新後は、入稿・配信の安定性や処理速度の改善が見込まれ、運用基盤の強化が主眼とされています。
 

中小企業への影響

短時間とはいえ配信停止は売上に直結します。とくに週初〜月末の販促や給料日前後の需要期に重なる場合、在庫回転や目標ROASに影響が出る恐れがあります。一方、基盤刷新で入札反映や審査処理の遅延が減るなら、価格改定やタイムセールの打ち手が取りやすくなります。レポート欠損が発生した場合、前日比の変動だけで判断すると誤解を生みます。欠損期間を明示したうえで週次・月次の粒度で評価する姿勢が必要です。
 

経営者の視点

(1)配信停止の前後で在庫・価格・入札を調整。停止中は他チャネル(自社EC、メール、SNS、LINE公式)に予算と訴求を振り替えて機会損失を抑制。(2)レポートの欠損・遅延を想定し、GA4やPOSの売上ログで重複検証できる体制を整備。(3)フィード品質を棚卸し:タイトルの属性順、画像解像度、在庫・価格の鮮度、ユニークIDの整合を確認。(4)移行後1〜2日は学習の揺れを見越し、過度な入札変更を避けて観察重視。さらに、システム刷新は審査基準の解釈やUIの細部が変わるきっかけにもなります。規制の厳しい商材は表現・根拠提示・クチコミの扱いを再点検。SKUが多い企業は売れ筋の優先出稿で復帰をスムーズにし、リフト計画で段階的に予算を戻しましょう。社内共有とFAQの事前整備で混乱を抑えられます。
 

参考リンク

Yahoo!広告 公式:検索連動型ショッピング広告のシステム刷新と機能変更について
 

3. Yahoo!広告、支払いに「クレジットカード後払い」を追加予定

概要

8月12日、Yahoo!広告はクレジットカード後払い方式の支払い手段を追加予定と発表しました(対象:検索広告、ディスプレイ広告〈運用型〉)。従来の前払い/カード即時決済に加え、所定の締め日で利用額をまとめて後日請求できるようになる見込みです。キャッシュアウトの平準化や会計処理の簡便化が進み、広告投資と売上入金サイクルのズレを資金繰り面で吸収しやすくなる点がポイントです。
 

中小企業への影響

最大のメリットはキャッシュフローの柔軟性です。季節商材のピークや新商品ローンチ時に、手元資金を圧迫せず出稿量を確保できます。複数チャネルの費用を締め日で合わせやすいため、月次の原価計上・部門配賦も整理しやすくなります。一方で、後払いは予算超過の心理的ブレーキが弱まりやすい副作用があります。与信枠の範囲内でも、粗利率や在庫回転を踏まえた損益分岐点を超えないよう、運用と経理のガバナンスを強化する必要があります。
 

経営者の視点

(1)広告費の与信枠=売上目標から逆算して設定。CPAと粗利率から許容獲得単価を再確認。(2)ダッシュボードで日々の消化額・残枠・見込み請求額を可視化し、アラート閾値を設定。(3)販促計画と入金サイクル(ECは決済代行、卸は手形・サイト)を突合し、資金繰り表に落とし込む。(4)支払い手段の追加は、与信・不正利用の監視項目も増えるため、権限管理や二重承認を導入。さらに、媒体横断で締め日の不一致が解消しやすくなると、P/Lのタイムラグが小さくなり、チャネル別の真のLTVが測りやすくなります。注意点として、初期設定時は与信審査や利用開始日を確認し、切り替え直後の二重請求/計上漏れをチェック。規程や証憑の更新も忘れずに。最後に、広告費の支払余力が読めると、在庫確保を前倒ししつつも資金の安全域を保てます。
 

参考リンク

Yahoo!広告 公式:クレジットカード後払い方式の追加について
 

4. Instagram、「リポスト・再投稿」機能を順次開始—UGC活用が標準に

概要

Instagramは8月7日から順次、「リポスト・再投稿」機能の提供を開始しました。自分のフィードや発見タブで見つけた他者の投稿を、出典を明示したうえでかんたんに再共有できるようになります。従来のストーリーズ共有や外部ツールに頼らず、アプリ内の標準機能として拡散できるため、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用が容易になります。アルゴリズム面でも、再投稿がもたらすエンゲージメントや滞在が推奨に反映される可能性があり、オーガニック到達の新しい起点になり得ます。
 

中小企業への影響

顧客のレビュー、来店写真、利用シーンの信頼感ある声を、自社アカウントで素早く広げられます。写真・動画制作の内製化が難しい企業でも、二次利用許諾を得たUGCを再投稿するだけで、運用の更新頻度を上げられます。さらに、再投稿はコミュニティ形成に強く、常連客の紹介や地域のイベントを取り上げることで、来店動機や推奨行動を刺激できます。一方で、権利処理やブランド毀損のリスクは残ります。キャプションの責任は自社にあるため、景表法や医療広告ガイドラインに触れる表現は避け、出典表示・リンク先の確認を徹底しましょう。
 

経営者の視点

(1)UGCの利用ポリシーを定め、許諾取得の定型DMと記録台帳を整備。(2)「再投稿に向く投稿」の基準(製品が明瞭、体験価値が伝わる、露出許容が得られる)を共有。(3)再投稿後のハッシュタグとCTA(予約、取り置き、クーポン)を統一し、計測用パラメータで成果を把握。(4)地域の他店・自治体・商店街の投稿を相互に再共有し、露出の相乗を狙う。 また、既存のキャンペーンとも相性が良好です。たとえば「購入後に投稿→再投稿で次回10%OFF」のような仕組みを設計すれば、リピート率と投稿率を同時に伸ばせます。B2Bでも、導入事例の発信者を再投稿し、第三者証明として活用。増える返信・DMにはテンプレや自動応答で備え、体験の質を守りましょう。
 

参考リンク

コムニコ:Instagramの「リポスト・再投稿」機能解説(8/7から順次適用)
 

5. イプソス、AIで広告の効き目を数分で評価「Creative|Spark AI」国内発表

概要

国際調査会社イプソスは8月上旬、広告クリエイティブの効果を数分で可視化できる「Creative|Spark AI」を国内発表しました。事前にアップロードした動画・静止画に対し、AIが注意喚起(アテンション)や理解度、好意度、ブランド想起などの指標を推定し、改善点をレポートします。従来の被験者調査に比べ、スピードとコストを抑えながら、テスト回数を増やせるのが特長です。量産される短尺クリエイティブを制作前後で素早く検証し、勝ち案へ資源を集中できます。
 

中小企業への影響

テレビCMのような大規模検証を行えない企業でも、出稿前の品質担保が現実的になります。LPのファーストビュー、バナーのファーストフレーム、動画冒頭3秒など、離脱が起きやすい箇所をピンポイントで評価し、改善サイクルを回せます。さらに、複数案を同一指標で横比較できるため、社内の好みや思い込みに左右されにくく、意思決定のスピードが上がります。一方、AI推定は「相対評価」が中心で、ターゲットの文脈や季節要因は十分に反映されません。実運用の実測値と組み合わせる前提で活用しましょう。
 

経営者の視点

(1)制作→AI簡易テスト→修正→本番の短いPDCAを設計。(2)KPIを「視認率、クリック率、CVR」だけでなくブランド指標と紐づけ、短期と中長期の両輪で評価。(3)生成AIで量産した案こそ、事前テストでふるいにかけ、媒体審査に配慮した安全な表現へ整える。(4)費用対効果の検証は、AIスコアの改善が実売や商談にどの程度つながるかまで追跡。加えて、導入時はデータの取り扱いにも配慮し、未公開情報は権限・保存期間を明確に。B2Bの静止画改善にも適用し、媒体別KPIとの相関を定点観測して勝ちパターンをガイドライン化すれば、外注品質も底上げできます。
 

参考リンク

PR TIMES:イプソス、広告効果を数分で可視化する「Creative|Spark AI」を発表
 

まとめ

 
今回のポイントは、運用の自動化(AI提案)・基盤強化(システム刷新)・資金繰り改善(後払い)・UGC活用(再投稿)・制作の見える化(AI評価)の5つです。どれも中小企業が抱えがちな「人手不足」「資金制約」「制作負荷」を補ってくれる内容でした。まずは、(1)検索広告でAI提案と人手作成のA/B、(2)ショッピング広告の停止スケジュールを社内共有、(3)広告費の与信枠とアラート設定、(4)InstagramのUGC許諾フロー整備、(5)クリエイティブの簡易評価を試す——の小さな一歩から着手してください。積み上げるほど、同じ予算でも成果の取りこぼしが減るはずです。次回も、経営判断に直結するマーケティングの更新情報を分かりやすく整理してお届けします。

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