マーケティングニュースまとめ(2025年7月30日〜8月5日)
マーケティング分野では国内外で重要な動きが相次ぎました。国内ではデジタルマーケ支援企業の地域進出や、若手社員による経営層へのAI教育といった取り組みが始まり、技術と組織両面で変革が進んでいます。一方、広告制作を高速化するAIツールの登場や、SNS大手による約3,000億円規模の安全対策投資、そして海外観光プロモーションの新キャンペーンなど、グローバルなマーケティングの潮流も見逃せません。中小企業経営者が押さえておくべき5つのニュースとそのポイントを、それぞれ解説します。
1. マイクロアド、北海道に新拠点開設で地域マーケ支援を強化
概要
デジタル広告企業のマイクロアドが北海道支社を新設し、8月5日付で営業を開始しました。これにより同社の国内拠点は東京・大阪などを含め7箇所となり、地方企業や自治体へのマーケティング支援を一段と強化します。マイクロアドは膨大な消費行動データを活用したプラットフォームを持ち、今回の札幌拠点開設で北海道エリアに密着した迅速なサービス提供が可能になるとしています。
中小企業への影響
地方の中小企業にも高度なマーケティング支援が身近になるメリットが期待されます。これまで首都圏中心になりがちだったデジタルマーケ施策が、地域の実情に合わせて提供されれば、小規模企業でもデータに基づく効果的な広告・販促に取り組みやすくなるでしょう。一方で、マーケ支援企業が地方展開を進めることで地域内の競争も活発化する可能性があります。地元市場で埋もれていたニーズに対しても最新のソリューションが提供されるため、自社のマーケティングを見直す良い機会とも言えます。
経営者の視点
経営者としては、地域のマーケティングパートナーを積極的に活用することを検討すべきです。例えば北海道の企業なら、新設された支社から市場データの提供や広告運用のノウハウを得られるでしょう。自社だけでは難しいデジタル施策も、専門企業のサポートで実践可能になります。また他地域の経営者も、この動きをヒントに自社の地元密着の強みを再評価したり、近隣地域向け施策に力を入れることが考えられます。地方市場でもデジタル活用が進む今、自社のマーケ戦略に最新技術と地域特性の両方を取り入れる姿勢が求められます。
参考リンク
RTB SQUARE:マイクロアド、北海道支社を新設 国内7拠点目
2. 博報堂DYグループ、若手が経営陣にAI指南「AIメンタリング制度」
概要
大手広告グループの博報堂DYホールディングスが8月4日付で「AIメンタリング」制度を導入しました。この制度では、生成AIを使いこなす若手社員がメンターとなり、経営層に対してAI活用のトレーニングやサポートを定期的に行うものです。経営層は実際にAIツールを操作しながら学び、若手側も経営視点や意思決定の考え方を学べる双方向の研修プログラムとなっています。試行段階では、経営層の月間AI利用回数が約3倍に増加し、業務効率や意思決定の質向上に効果があったと報告されています。
中小企業への影響
大企業の取り組みですが、世代間ギャップを埋めてAIを組織に根付かせる工夫として中小企業にも示唆があります。ITリテラシーは若手ほど高い傾向があり、反対に経営層にはAI活用への戸惑いが残る場合があります。こうした中で、経営トップ自らが最新技術を学ぶ姿勢は、社内全体のデジタル活用推進に繋がります。中小企業でも規模に合わせ、デジタルに詳しい社員から経営者が学ぶ場を設ければ、DX(デジタルトランスフォーメーション)のスピードを上げられるでしょう。また、AI活用が当たり前になる業界動向を踏まえれば、社員研修や採用においてもAIスキルを重視する必要性が増すと考えられます。
経営者の視点
経営者として重要なのは、「自ら学ぶ」姿勢です。忙しい中小企業の社長も、AIによる業務効率化やアイデア創出の可能性に目を向け、若手社員や外部専門家に教えを乞うことを躊躇すべきではありません。例えば、自社の20代社員にChatGPTなど生成AIツールの使い方を教わったり、一緒に業務で試したりするだけでも得られる知見は大きいでしょう。トップが先頭に立ってAI活用に取り組めば、社員も安心して追随できます。また、「逆メンター制度」のように社内コミュニケーションを活性化する施策は、人材育成やエンゲージメント向上にも寄与します。限られたリソースの中小企業だからこそ、オープンな学びの機会を作り、組織全体で新技術への適応力を高めていくことが肝要です。
参考リンク
博報堂DYホールディングス:経営層と若手社員によるペアワークでAI活用を加速化
3. 電通デジタル、AI搭載の「∞AI Ads2」で広告制作の高速PDCAを実現
概要
電通デジタルは7月30日、デジタル広告制作支援ツール「∞AI Ads(ムゲンAI アズ)」を大幅アップデートし、「∞AI Ads2」の社内運用を開始しました。この新システムには3種類の特化型AIエージェント(効果予測AI・提案AI・生成AI)が搭載されています。広告担当者がAIと対話しながら作業を進めると、AIが適宜これらのエージェントを呼び出し、バナー広告の効果予測からクリエイティブ作成、改善提案までを高速に行う仕組みです。例えば、少ないデータでも高精度に成果を予測し(予測エージェント)、顧客企業ごとの情報を学習して効果的な改善案を提示し(提案エージェント)、その内容に沿ったバナー画像を短時間で10パターン生成します(生成エージェント)。これにより広告クリエイティブのPDCAサイクルを飛躍的に短縮し、広告効果の最大化を支援することが可能になるといいます。
中小企業への影響
大手広告会社の先進事例ですが、マーケティングの自動化・効率化が今後あらゆる企業に波及していく兆候と言えます。将来的には、中小企業でも広告プラットフォーム提供のAIツールを使って少人数で多数の広告案を試し、データに基づき改善していくことが一般的になるかもしれません。競合他社がAIで広告運用を最適化すれば、限られた予算でもより高い成果を上げてくるでしょう。中小企業にとっては、従来以上にクリエイティブの質とスピードが求められる環境になります。一方で、AIが下支えすることで専門知識がなくてもある程度の広告制作が可能になる利点も考えられます。広告代理店に頼らずとも、自社で簡易的に広告デザインや効果予測を試せるサービスが今後増える可能性があり、マーケティングの民主化が進むでしょう。
経営者の視点
経営者は、AI活用によるマーケティング効率化の波に乗り遅れないよう意識すべきです。まず現在利用している広告プラットフォーム(例えばGoogleやFacebook等)にAIベースの最適化機能があれば積極的に試してみましょう。また、社内のマーケ担当者に新しいツールの情報収集を促し、必要なら研修や外部支援を受けることも大切です。AIが提案したクリエイティブをチェックするには最終的に人の判断も要りますので、社内で人間が付加価値を出す部分(ブランドの文脈に合っているか等)にリソースを集中する発想も必要です。小規模な組織ほど、最新テクノロジーを活用して「少人数で高速に回すマーケティング」に取り組むことで、大企業に引けを取らない効果を生み出せる可能性があります。
参考リンク
コマースピック:電通デジタル、AIエージェント搭載の「∞AI Ads2」を本格運用開始
4. TikTok、約3,000億円の安全対策投資 新機能で信頼性向上へ
概要
ショート動画SNS大手のTikTokが、安全性向上のため年間20億ドル(約3,000億円)もの予算を投じていることを明らかにし、併せて利用者の信頼性と安全性を高める複数の新機能を発表しました。発表された内容では、未成年ユーザーと保護者を対象にした「ペアレンタルコントロール」の強化や、長時間利用を健全に管理する「デジタルウェルビーイング」機能の拡充、さらにクリエイターを保護するためのコメントフィルタリング機能などが含まれています。これらの施策は、若年層ユーザーが安心して創造性を発揮できる環境作りや、クリエイターが安心して活動できる場の整備を目的としており、TikTokがコミュニティの信頼を維持・向上させることに巨額の投資とエフォートを注いでいることが示されています。
中小企業への影響
ユーザー数の多いプラットフォームの安全性が高まることは、そこでマーケティング活動を行う企業にとってもプラスです。たとえばTikTok上のブランドアカウント運用では、不適切なコメントが減りコミュニティガイドラインが強化されれば、企業側も安心して情報発信しやすくなります。また、若年層ユーザーやその保護者の信頼が得られれば、プロモーション動画がより好意的に受け取られるでしょう。一方で、このニュースから読み取れるのは「安心・安全」が今やマーケティング上重要な価値であるという点です。大企業だけでなく中小企業においても、自社サイトやSNSでの情報発信においてユーザーからの信頼を損なわない工夫(コメント管理やデマ対策など)が一層求められます。プラットフォーム任せにせず、自社でも倫理的な発信とカスタマーサポートに取り組む姿勢が必要です。
経営者の視点
経営者はマーケティング活動における「信頼醸成」の重要性を再認識すべきです。TikTokの動きは、自社のブランド発信にも通じます。どんなに優れた商品・サービスでも、ユーザーが不安や不快感を抱けば支持には繋がりません。SNS運用ではコメントポリシーを定め迅速に対応したり、万一炎上の兆しがあれば速やかに対処する準備が大切です。また、家族やコミュニティと良好な関係を築けるブランドが選ばれる時代です。例えば地元密着の中小企業であれば、地域のイベント情報を発信したり顧客との双方向コミュニケーションを丁寧に行うことで、「安心感のある企業」という評価を得られるでしょう。大手プラットフォームが安全投資を重ねる背景には、ユーザーの信頼なしに成長はないという教訓があります。中小企業も顧客からの信頼という無形資産を守り育てることが、長期的なマーケティング成功の鍵といえます。
参考リンク
PR TIMES:TikTok、信頼性と安全性を高める新機能を発表
5. 米国観光局(ブランドUSA)、日本向け新キャンペーンで地方誘客を促進
概要
アメリカ合衆国の政府系観光促進団体「ブランドUSA」が、日本市場向けに新たなグローバルマーケティングキャンペーン「America the Beautiful(アメリカ・ザ・ビューティフル)」を開始すると発表しました。今年秋から日本で展開されるこのキャンペーンでは、ニューヨークやロサンゼルスなど主要都市だけでなく「ビヨンド・ゲートウェイ(主要玄関都市以遠)」の魅力を訴求し、地方都市や自然豊かな地域への誘客を図るのが特徴です。具体的には、全米各地で開催される建築・アート・文化をテーマにした大型イベントや、新しくオープンする注目施設などを日本人旅行者向けに紹介し、多様な体験ができるアメリカの魅力を積極的に発信します。ブランドUSAはこうした情報を公式ポータルサイト「AmericaTheBeautiful.com」上で特集し、日本語でも順次案内する予定です。
中小企業への影響
このニュースは旅行業界の話題ですが、マーケティング手法としての示唆が多く含まれています。ブランドUSAは「豊富な体験価値」という視点でデスティネーション(旅行先)の魅力を伝え、日本人旅行者の新たな需要を喚起しようとしています。中小企業も、自社の商品・サービスの宣伝において機能や価格だけでなく、顧客が得られる体験やストーリーを強調することで差別化できるでしょう。また、主要市場以外にも目を向ける「ビヨンド・ゲートウェイ」の発想は、中小企業がニッチなターゲット層や未開拓の地域市場を開拓する戦略にも通じます。さらに、今回のキャンペーンは各種メディアやSNS、旅行会社との連携を含む大規模なものとなる見込みで、今後日本でもアメリカ旅行のプロモーションが活発化すれば、旅行関連ビジネスだけでなく一般消費者の間でも米国文化への関心が高まる可能性があります。それに伴い、米国発のトレンド商品やサービスへの注目が集まるなど、関連市場に波及効果が及ぶことも考えられます。
経営者の視点
経営者は、自社マーケティングにおいて「物語性」と「体験価値」をいかに伝えるかを改めて考えてみましょう。ブランドUSAのように、大きな予算がなくても地域の文化やイベントと結び付けて発信するアイデアは参考になります。例えば、自社の商品がある土地の伝統や流行と関連していれば、それをブログやSNSで紹介し付加価値を高めることができます。また、今回のキャンペーンからはコラボレーションの重要性も読み取れます。観光局が自治体や企業と連携しているように、中小企業も地元の他企業や団体と協力し合うことで、新たな顧客層にリーチする機会が生まれるでしょう。最後に、海外マーケットの動向にもアンテナを高く張ることです。海外からの需要喚起策は国内市場にも影響を与える場合があります。グローバルなマーケティング事例に目を向け、自社の発信方法や戦略をブラッシュアップしていく柔軟性が、これからの経営に求められます。
参考リンク
トラベルボイス:ブランドUSA、今秋から日本でも新キャンペーン展開
まとめ
今回取り上げたニュースから見えるのは、マーケティングの世界がテクノロジーと創意工夫によって急速に進化しているということです。国内ではAIやデータを駆使したサービス展開や人材育成が進み、地方企業にもその恩恵が及び始めています。海外では安全・信頼を重視したプラットフォーム運営や、大胆なプロモーション戦略による需要喚起が行われ、消費者の心を掴もうとしています。中小企業の経営者にとって重要なのは、これらの動向を自社の経営にどう活かすかです。
まず、技術面ではAIやデジタルツールを恐れず取り入れる姿勢が求められます。効率化できる部分はAIに任せ、人間はより創造的な業務に注力することで少ないリソースでも高い成果を上げることが可能です。また、組織面では柔軟な学習文化を醸成し、社内外の若い知見を積極的に取り入れてください。「学び続ける組織」は変化の激しい市場で生き残る強みとなります。
次に、マーケティングの基本である信頼関係と顧客体験を再確認しましょう。安全・安心に配慮した情報発信やコミュニティづくりは、お客様から選ばれるブランドになるための土台です。さらに、自社の商品・サービスが提供する体験を物語として伝えることで、大手には真似できない共感を呼ぶこともできます。地域資源や独自のストーリーは中小企業の宝です。それを磨き、デジタルの力も借りて発信していけば、必ず支持者は増えていくでしょう。
変化のスピードが速い時代ですが、ポイントを押さえた対応を続ければ中小企業にも大きなチャンスがあります。最新情報にアンテナを張りつつ、自社らしさを活かしたマーケティングで顧客との信頼と絆を深めていくことが、成長への近道と言えます。今後も新たな動きを注視し、自社の戦略に役立てていきましょう。