生成AIニュースまとめ(2025年6月16日〜6月22日)

生成AIニュースまとめ(2025年6月16日〜6月22日)

先週(2025年6月16日〜22日)は、生成AIに関する注目ニュースが日本国内でいくつも報じられました。中小企業の経営者にとっても見逃せないトピックスばかりです。今回は、その中から信頼できる情報源による5つのニュースをピックアップしました。それぞれの概要とポイント、そして中小企業にとっての影響や経営判断のヒントをわかりやすくまとめました。生成AIの最新動向を把握し、ビジネスにどう活かすか考える際の参考にしてください。

目次

1. 日本企業の生成AI導入率は4割止まり、米国では8割超【調査】

概要

日本企業で「自分の業務に生成AIを導入済み」と答えた人は3~4割程度にとどまり、米国の7~9割と比べ大幅に低いことが分かりました。この調査は求人大手インディードの研究所が日米約4,000人ずつに実施したもので、日本では営業・事務系職種で特に導入が遅れ気味でした。生成AIが話題になって約2年半経ちますが、日本企業での活用はまだ道半ばといえます。社員が自ら時間を使ってAIスキルを習得する「主体性」の違いや、AI活用の知識不足が日米差の要因と指摘されています。私生活も含めた生成AIの利用率に日米で大きな差があり、日本人はAIに触れる機会自体が少ない現状も浮き彫りになりました。

中小企業への影響

日本の中小企業では、生成AIの利活用による生産性向上への期待はあるものの、導入は進んでいない状況です。「どのAIを選べばよいか分からない」「使いこなせるか不安」など現場の戸惑いが壁となっています。その結果、米国企業に比べ業務効率化の面で後れを取るリスクがあります。逆に言えば、今なら競合より一歩リードして導入し、生産性アップにつなげるチャンスが大きいとも言えます。

経営者の視点

経営者としては、自社で生成AIを活用できる業務領域を洗い出し、社員が積極的に使える環境づくりを進めることが重要です。社内研修や簡単なガイドラインを設けてAIツールの使い方を共有し、社員の主体的な活用を後押ししましょう。生成AIで業務効率が上がれば、人手不足解消や新しいサービス創出にもつながります。米国の先行事例を参考に、自社でも試行と学習を重ねる姿勢が求められます。

参考リンク

Bloomberg「生成AIの業務への導入は日本で4割程度、米国を大幅に下回る」

2. NTT Com、中小企業向け生成AIサービス「Stella AI for Biz」提供開始

概要

NTTコミュニケーションズとスタートアップ企業SUPERNOVAが連携し、社内で生成AIをフル活用できる中堅・中小企業向けプラットフォーム「Stella AI for Biz」を6月16日から提供開始しました。月額約2,000円で利用でき、ChatGPTやClaude、Geminiなど複数の最新AIモデルを業務内容に応じて使い分け可能です。ブラウザやWord、Excelと連携した拡張機能でワンクリック要約・翻訳ができるなど、初心者でも簡単にAIを日常業務に取り入れられる工夫がされています。入力データがAIの学習に使われない設計で、セキュリティ面の不安にも配慮しています。

中小企業への影響

これまで「どの生成AIを選べばいいか分からない」「導入後に使いこなせるか不安」といった理由で二の足を踏んでいた中小企業にとって、オールインワンのこのサービスは強い味方です。専門知識がなくてもすぐ使えるUIや導入後のサポート体制が用意されており、専任担当者がいない会社でも現場にAI活用が根付く可能性が高まります。低コストで複数の生成AIを試せるため、業務効率化やアイデア出しのツールとして導入のハードルが大きく下がるでしょう。

経営者の視点

経営者は、このようなサービスを活用して自社のDX(デジタル変革)を加速させる戦略を検討すべきです。社員が日常で使う業務(文章作成やデータ整理など)からAI導入を始め、小さな成功体験を積み重ねましょう。社内のAI利活用ルールを整備し、データの取り扱いを明確にすることで安心して使える環境を作ることも大切です。こうしたツールで生産性を上げ、人材不足や長時間労働の課題解決にもつなげていきましょう。

参考リンク

Impress Watch「約2000円の法人向けAI生成サービス『Stella AI for Biz』」

3. NTT Com、業務特化型AIエージェント20種を提供開始

概要

NTTコミュニケーションズは6月19日、AI企業エクサウィザーズとの提携により、業務内容に特化した20種類のAIエージェントを組み合わせて使う新ソリューションの提供を開始しました。これは、企業ごとの業務プロセスにAIを組み込むための「AIの同僚」のようなものです。提案書作成やデータ分析、監視業務など役割ごとに訓練されたAIが揃っており、企業は自社の業界知識やルールを掛け合わせてカスタマイズ導入できます。その結果、ゼロからAIシステムを開発するよりも低コスト・短期間で、自社業務に合った生成AIツール群を使い始めることが可能になります。

中小企業への影響

業務特化型のAIエージェントは、専門のIT人材や大きな開発予算がない中小企業でも、自社の課題に直結するAI活用を実現しやすくしてくれます。経理作業や顧客対応などに特化したAIを必要な分だけ導入し、既存業務に組み込めます。一般的な生成AIツールを試したけれど業務に活かしきれなかったという企業でも、このような特化型ソリューションなら実務に直結した成果を出しやすいでしょう。導入が進めば、日々の定型作業をAIに任せ、人間はより創造的な業務や意思決定に集中できるようになります。

経営者の視点

経営者は、自社の業務プロセスごとにどの部分をAIに任せられるかを見極め、優先順位をつけて導入を検討することが求められます。パッケージ化されたサービスを利用すれば、自前で開発せずに済み、導入後すぐに効果を測定できます。まずは効果の高そうな領域(問い合わせ対応の自動化やデータ分析支援など)でパイロット導入し、成功事例を社内展開するとよいでしょう。AIエージェントを「デジタルな同僚」と考え、人材育成と同じように計画的に増やしていくことが、中小企業の競争力強化につながります。

参考リンク

マイナビニュース「NTT Com、人と協働し業務を支援する20種のAIエージェントを提供開始」

4. 日銀が生成AI導入、日々のデータ分析を効率化

概要

日本銀行もついに生成AI活用に踏み出しました。報道によると、日銀は物価や経済情勢などのデータ分析業務に生成AIを導入し、日々の調査や資料作成の効率化を図る方針です。具体的には、金融政策に関する海外論文の翻訳・要約といった調査業務や資料作成などでAIを活用し、職員がより高度な分析に注力できるようにします。日銀が業務に生成AIを活用するのは初の試みであり、金融機関のAI導入を後押しする象徴的な動きとなりました。

中小企業への影響

中央銀行である日銀が生成AIを採用したことは、AI活用が信用に足る段階に来たことを示す象徴的な出来事です。保守的な機関ですら日常業務にAIを使うことで効率化を図ろうとしている背景には、データ分析やレポート作成といった定型業務はAIに任せ、人間は戦略立案など付加価値の高い仕事に集中したいという狙いがあります。これは中小企業の業務にも通じる考え方であり、各社でもより現実的な導入プランを検討できる段階に入ったと言えるでしょう。

経営者の視点

経営者は、AIの活用が「攻めの経営」に繋がると認識することが重要です。社内のルーティンワークを洗い出し、AIによる自動化や効率化の余地を探りましょう。まずは小規模なトライアルから導入を始め、結果のチェック体制やセキュリティに配慮しながら、効果を測定して全社展開に備えるのがおすすめです。信頼性を確保しつつ業務効率を高め、浮いたリソースを事業拡大やサービス向上に振り向けることが理想的です。

参考リンク

日刊スポーツ「日銀、データ分析にAI導入 日常業務の効率化図る」

5. TOPPAN、「デジタル分身サービス」提供開始 – AIで本人そっくり対話

概要

大手印刷会社のTOPPANが6月20日、生成AI技術を活用して実在の人物そっくりのアバターと対話できる「デジタル分身サービス」を開始しました。対象人物の顔立ちや声の特徴をAIでリアルに再現し、その人の膨大な知識や経験データを学習させることで、まるで本人が話しているかのように応答するデジタルアバターを作成できます。マーケティング分野での活用を想定しており、有識者やベテラン社員の“分身”が24時間対応で問い合わせに答えたり、人気キャラクターがファンと対話したりといった使い方が可能です。

中小企業への影響

社員一人ひとりの知見や人脈が貴重な資産である中小企業にとって、デジタル分身はその資産を有効活用する新たな手段になるかもしれません。例えば、ベテラン営業担当のノウハウをAIに継承させておけば、その人が不在でもAI分身が顧客対応や後進への教育役を果たせます。限られた人材で多くの顧客に対応しなければならない場面でも、AI分身を通じて双方向のコミュニケーションや情報提供が可能になります。もっとも、初期構築には本人のデータ収集やプライバシーへの配慮が必要であり、現時点で導入できる企業は限られるでしょう。

経営者の視点

経営者としては、自社の強みである「人」の力をテクノロジーで増幅できないか検討してみる価値があります。人気講師の分身を使ったオンライン相談サービスや、創業者の想いを伝えるバーチャルガイドなど、中小企業ならではの活用アイデアも考えられます。ただし、実施にあたっては本人の了承と監修を得て、発言内容の正確性や倫理面にも注意する必要があります。自社の信用を高める方向でクリエイティブに活用しつつ、人間らしい温かみや信頼感を損なわないようバランスを取ることが肝心です。

参考リンク

マイナビニュース「TOPPAN、生成AIで現存する人物をリアルに再現する『デジタル分身サービス』」

まとめ

今回取り上げた5つのニュースから、中小企業経営者が押さえるべきポイントを整理します。

  • 生成AI導入の現状: 日本では導入率がまだ低く、競合国に遅れを取るリスクがある一方、今から準備すれば大きな伸びしろがあります。
  • 導入ハードルの低下: 中小企業でも手軽に使えるAIサービスが増えており、専門知識がなくても安価に導入できる環境が整いつつあります。
  • 活用範囲の拡大: 銀行など保守的な組織やマーケティング分野でも活用が広がり、効率化だけでなく新規事業や顧客体験向上にもつながっています。

経営者としては、「小さく試し、大きく育てる」 戦略でAI活用に臨むことをおすすめします。まずは社内のどこでAIが役立つかを見極め、スモールスタートで導入・検証を行い、効果が確認できたら全社的に展開しましょう。AI活用によるリスク管理(情報漏えい・誤情報など)にも十分配慮しつつ、生成AI時代の波に乗り遅れないよう、経営トップ自らが関心を持って試行錯誤する姿勢が、これからの中小企業の成長を左右すると言えるでしょう。

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