マーケティングニュースまとめ(2025年6月11日〜6月17日)

マーケティングニュースまとめ(2025年6月11日〜6月17日)

中小企業経営者に押さえてほしい、2025年6月11日〜17日に日本国内で報じられたマーケティング関連の注目ニュースを5件ピックアップしました。それぞれ信頼性の高いメディアの情報であり、中小企業の経営にも活かせる示唆が得られます。社会課題解決型のマーケティング施策が表彰された業界アワード、新たなデジタルコミュニケーション手段の拡充、SNSプラットフォームの新機能、生成AIを用いたマーケットリサーチの革新的サービス、大企業のマーケティング戦略成功事例など、多岐にわたるトピックを網羅しています。以下、各ニュースの概要と中小企業にもたらす影響、経営者の視点をまとめます。

目次

1. 第17回日本マーケティング大賞、社会課題解決型プロジェクトが多数受賞

概要

公益社団法人日本マーケティング協会(JMA)は6月12日、「第17回日本マーケティング大賞」の表彰式を開催し、グランプリ1件を含む計10件の優れたマーケティング事例を発表しました。グランプリに輝いたのはアサヒビールの「未来のレモンサワー」で、缶に本物のレモンスライスが入った世界初の商品開発とそのマーケティング施策が高く評価されています。また準グランプリにはマイナビの「座ってイイッスPROJECT」(レジ業務に椅子を導入する働き方改革キャンペーン)が選ばれるなど、新しい価値創造や社会課題の解決に資するマーケティングが目立った点が今年度の特徴でした。

中小企業への影響

大企業中心の表彰ではありますが、選出された事例からマーケティングのトレンドを読み取ることができます。社会課題(例:環境、働き方)に向き合いながら自社の商品・サービスの独自性を打ち出す戦略や、五感に訴えるような革新的な商品体験の提供など、消費者の心を動かすマーケティング手法は中小企業にとっても示唆に富むものです。自社規模では難しいと感じるテーマでも、小さな範囲で社会貢献を意識したり、地域や既存顧客に密着した新しい試みを導入することで、ブランドの価値向上や話題喚起につながる可能性があります。一方で、斬新な施策にはリスクも伴うため、無理のない範囲で自社ならではの創意工夫を凝らすことが重要です。

経営者の視点

経営者としては、自社のマーケティング活動を振り返り「社会や顧客の課題を解決する視点」が盛り込まれているかをチェックする良い機会です。今回の大賞で評価されたような先進事例からヒントを得て、自社の商品開発や販促において単に売上追求だけでなく社会的な価値提供や体験価値の向上を意識することが求められます。例えば地域のニーズに応えるサービス展開や、お客様の驚きや感動を生む演出づくりに投資してみるのも一策でしょう。ただし自社のリソースに見合った範囲で小さく試し、成果を検証しながら段階的に拡大するアプローチで挑戦することが肝要です。

参考リンク

第17回日本マーケティング大賞 受賞10件を発表 ― 表彰式を6月12日に開催

2. LINE公式「通知メッセージ」が大幅リニューアル、配信可能通知が約70種類に拡大

概要

LINEヤフー株式会社は6月16日、法人向けサービス「LINE通知メッセージ」の機能拡充と新料金プランの提供開始を発表しました。「LINE通知メッセージ」は企業が自社のLINE公式アカウントを通じて、友だち登録していないユーザーにも荷物の発送案内や予約確認など重要なお知らせをSMS代わりに送れる仕組みです。今回のリニューアルで、これまで22種類に限定されていた配信可能なメッセージの種類が約70種類に拡大され、たとえば商品の発送完了通知や会員登録完了のお知らせなどより多様な用途で利用できるようになりました。またメッセージ作成用の新API提供により、定型テンプレートを使って審査を簡略化し、導入までの時間を短縮できるよう改善されています。さらに料金体系も見直され、月10万通まで定額利用できるプラン(月額50万円)など3段階のプランが新設されています。

中小企業への影響

店舗ビジネスやECを展開する中小企業にとって、顧客への連絡手段が充実するメリットは大きいでしょう。これまでメールやSMSで行っていた発送連絡・予約確認・支払い通知などをLINE上で届けられるため、顧客の目に触れやすく反応率向上が期待できます。特に若年層を中心に「連絡手段=LINE」というユーザーも多いため、機会損失の防止につながります。また、友だち登録していない相手にもリーチできる点は新規顧客フォローに有効です。一方でコスト面のハードルも注意が必要です。最安プランでも月額50万円と小規模事業には高額なため、現状は大量通知を行う中堅以上の企業向けと言えます。中小企業の場合は、自社にとって本当に必要な通知かを精査し、無理なく活用できる範囲で導入を検討することになるでしょう。

経営者の視点

経営者としては、新しい顧客コミュニケーション手段としてLINE通知メッセージを顧客体験向上に活かせるかを検討したいところです。たとえばECサイト運営企業なら発送通知やフォローアップ連絡に活用すれば、顧客に安心感を与えリピート購入促進につながる可能性があります。導入する場合は費用対効果を見極め、送信内容が顧客にとって有益かつ適切な頻度かを管理することが重要です。過度な通知は逆効果になり得るため、「必要な情報をタイムリーに届ける」方針を徹底しましょう。また利用にはLINE公式アカウントの開設や認証が前提となるため、自社のデジタル施策全体の中でLINEをどのように位置付けるか、マーケティング戦略の一環として計画的に取り入れる視点が求められます。

参考リンク

LINEヤフー、法人向け「LINE通知メッセージ」を大幅刷新。発送関連、注文完了のお知らせなど拡充+新API提供+新料金まとめ

3. Instagramが投稿グリッドの並べ替え新機能を検討発表、ブランド発信の自由度向上へ

概要

6月12日、Instagramの運営元Meta社はプロフィール画面上の投稿表示順をユーザーが自由に並べ替えられる新機能について検討中であると公式発表しました。従来、プロフィールに表示される投稿(グリッド)は時系列の固定順でしたが、この「グリッド並べ替え」機能が実装されれば、過去の投稿を含め好きな順番に配置し直すことが可能になります。例えば、自社アカウントであればキャンペーン告知の投稿を常にグリッド最上部に置いて目立たせたり、ブランドカラーや世界観に沿って投稿の配置順を調整することで、プロフィールページ全体を一種のショーウィンドウのように演出することができます。現在は検討段階でリリース時期は未定ですが、近い将来正式に導入される見込みです。

中小企業への影響

SNSマーケティングにInstagramを活用している中小企業にとって、この新機能はアカウント訴求力を高めるチャンスとなりえます。プロフィール画面は訪問者が最初に目にする自社の「顔」です。投稿順を自由に編集できれば、伝えたいメッセージを効果的に配置し直したり、季節の商品やキャンペーン情報を目立つ位置に固定したりできるため、フォロワーや訪問者に対し訴求力の高い見せ方が可能になります。特にビジュアル重視のブランドでは、カラートーンを揃えた画像を連続で並べるなど世界観を統一して魅せることで、ブランド印象の向上が期待できます。一方で注意すべきは、時系列が入れ替わることによる混乱です。ユーザーが最新情報を把握しづらくなる恐れもあるため、重要なニュースや日付に依存する投稿は並べ替えない、または別途ストーリーズや説明文で補足する工夫が必要でしょう。

経営者の視点

経営者としては、Instagram上での情報発信力を強化する観点からこの機能に注目すべきです。特に店舗やEC商品を扱う企業では、SNS上でのブランディングが売上に直結するケースも増えています。プロフィールの並べ替え機能が実装された際には、自社アカウントの過去投稿を棚卸しし、看板商品や強みとなる投稿をトップに配置するなど戦略的なリニューアルを検討しましょう。またこの機能はクリエイティブな活用も可能なため、担当者に任せきりにせず経営者自らアカウントを確認し、「自社らしさ」がより際立つプロフィール設計になっているか目を配ることも大切です。ただし、どんなに見栄えを整えても肝心なのは投稿内容の質です。並べ替え機能の導入に浮足立つことなく、引き続き有益で共感を得られるコンテンツ作りに注力する姿勢を忘れないようにしましょう。

参考リンク

Instagramの新機能“グリッド並べ替え”発表で投稿戦略は変わるのか

4. DNP、100人の仮想ペルソナとチャットで対話できる生成AIマーケティングサービス発表

概要

大手印刷・マーケティング企業のDNP(大日本印刷)は6月16日、生成AIと国内統計データを活用して仮想の生活者にチャットでリサーチができる新サービス「DNP生成AIマーケティングサービス(ペルソナインサイト)」を開発し、2025年6月30日から提供を開始すると発表しました。このサービスでは総務省の統計データに基づき、日本人の年齢・性別・職業・価値観などの分布を反映した100体の仮想人物モデル(ペルソナ)を構築。企業のマーケターはチャット上でこれらペルソナに質問を投げかけ、あたかもグループインタビューをしているかのように意見や本音を引き出せます。従来は時間と費用がかかった消費者モニター調査を代替する形で、いつでも手軽にターゲット像の深層心理やニーズを探れることが売りです。DNP独自技術により、表層的な回答だけでなく欲求・感情といった深いインサイトの把握も支援するとされています。

中小企業への影響

十分な市場調査予算や専任マーケティングスタッフを持たない中小企業でも、このようなサービスを利用すれば手軽に顧客理解を深めるヒントを得られる可能性があります。例えば新商品のアイデアに対する消費者の反応や、広告コピーに対する印象などを仮想ペルソナに問いかけることで、企画段階から軌道修正したり訴求ポイントを見直したりできるでしょう。リアルな調査では難しい大人数の声を短時間で収集できる点もメリットです。また統計データに基づいているため、偏った意見ではなく多様な層の視点を俯瞰できる利点もあります。一方で、AIによる仮想回答には限界や誤差があることも留意しなければなりません。あくまでシミュレーションであるため、現実の顧客全てを完全に代替するものではありません。中小企業が活用する際は、このツールで得られた示唆を参考にしつつも、最終判断前には実際の顧客フィードバックも確認するなどバランスを取ることが重要です。

経営者の視点

経営者としては、最新テクノロジーを自社のマーケ戦略に取り入れる柔軟性が求められます。生成AIを使った仮想顧客との対話は一見難しそうに感じるかもしれませんが、使いこなせば自社のマーケティング精度を高める強力な武器となり得ます。例えば新サービス投入前に仮想ペルソナから意見を聞き商品コンセプトを修正したり、広告表現に対するネガティブな反応を事前に炙り出しておくことで、施策の失敗リスクを減らせるでしょう。経営者は担当者にこうしたツールの活用を促しつつ、得られたインサイトを経営判断に反映できるよう議論の場を設けると良いでしょう。ただし、AIの回答を過信しすぎるのは禁物です。仮想の声と現場のリアルな声との差異を常に意識し、「仮説検証を素早く行うための参考情報」と位置付けて活用する姿勢が大切です。

参考リンク

生成AIと国内統計データを活用して仮想の生活者にリサーチ可能なサービスを提供開始

5. JTBがBtoBマーケティング大賞の部門賞受賞、営業支援強化の戦略が評価

概要

旅行大手JTBは、日経BP社の専門誌「日経クロストレンド」が主催する「BtoBマーケティング大賞2025」において、「ストラテジー部門」の部門賞を受賞しました。同賞は国内企業の先進的なBtoBマーケ施策を表彰するもので、JTBのビジネスソリューション事業本部によるマーケティング戦略が高く評価されたものです。JTBではコロナ禍を契機に従来の属人的な営業スタイルを見直し、マーケティング部門と営業現場が一体となってデータに基づく戦略立案と顧客提案力の強化に取り組んできました。その結果、リアルイベントの活用やターゲット分析に基づく効率的なリード創出、営業人材の育成などで成果を上げ、大企業ながら組織的なマーケティング体制を構築した点が評価ポイントとなりました。7月末には受賞企業として事例発表も行う予定です。

中小企業への影響

大企業の事例ではありますが、マーケティングと営業の連携強化による成果向上という点は中小企業にも通じるヒントです。JTBの取り組みでは、マーケティング部門が分析した顧客データを元に見込み客を絞り込み、営業部門がその情報を活用して提案の質と効率を高めています。中小企業でも規模なりに、自社の顧客データ(問い合わせ履歴や販売データなど)を活用して有望度の高い見込み客に集中したアプローチをすることで、限られた営業リソースの有効活用が可能です。また、マーケティング視点での発信(例えば専門ブログやセミナー開催による見込み客育成)と、従来型の営業(直接訪問や関係構築)を組み合わせることで相乗効果を出す発想も大切です。一方で中小企業では人員が限られマーケ専任担当を置けない場合も多いため、外部支援サービスの活用や営業担当がマーケ知識を習得する社内教育などで補完する工夫が求められるでしょう。

経営者の視点

経営トップとしては、自社の売上拡大のために「マーケティング=販促」以上の役割を持たせることを検討すべきです。今回JTBが示したように、マーケティング活動を通じて営業の効率と成果を上げるには、組織横断的な戦略と仕組みが必要です。経営者はまず営業現場の声とマーケ的視点(市場や顧客分析)を統合し、「見込み客を育ててから営業する」プロセスを整備できないか検討しましょう。例えば顧客データベースを活用して定期フォローやニーズ喚起を行い、反応があったところに営業がアプローチする体制づくりなどは有効です。予算や人材に限りがあっても、小規模な仕組みから始めてPDCAを回すことが重要です。また経営者自身がマーケティング施策の成果指標(問い合わせ数、成約率など)をチェックし、営業とマーケ双方の活動を評価・支援する姿勢を示すことで、社内に一体感が生まれ施策が定着しやすくなるでしょう。

参考リンク

JTBが「ストラテジー部門」部門賞を受賞(日経クロストレンドBtoBマーケティング大賞2025)

まとめ

以上、直近1週間(6月11日〜17日)のマーケティング関連ニュース5件を振り返りました。業界表彰に見る最新トレンドから、デジタルプラットフォームの新機能、生成AIを活用したマーケ支援サービス、大企業の成功事例まで、多角的な話題が登場しました。中小企業の経営者の皆さまには、自社のマーケティング活動にこれらのニュースから得られる示唆をぜひ取り入れていただきたいと思います。顧客視点に立った課題解決型の発想や、新しいツール・機能の積極活用、組織体制づくりの工夫など、自社の状況に応じてできることから実践することが重要です。マーケティングの環境は日々変化していますので、今後もアンテナを高く張りながら柔軟に戦略をアップデートしていきましょう。

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