マーケティングニュースまとめ(2025年6月4日〜6月10日)
2025年6月4日から6月10日にかけて、日本国内では中小企業経営者が押さえておきたいマーケティング関連の重要ニュースがいくつも報じられました。消費者行動の新たな動向や最新テクノロジーの活用、マーケティング手法の革新など、ビジネス戦略に影響を与えるトピックが目白押しです。それぞれのニュースが示す変化やトレンドを理解することで、中小企業は自社のマーケティング戦略に適切に対応し、競争力を高めるヒントを得られるでしょう。本記事では、上記期間に公開された5つのマーケティング関連ニュースを取り上げ、その概要と中小企業への影響、経営者の視点をまとめました。
女性の66.6%が同居男性のために日用品を代理購入【購買行動調査】
概要
日用品の購入に関する最新調査で、女性の66.6%が同居する男性(夫やパートナー)のためにシャンプーやボディソープなど日用品を代理購入した経験があることが明らかになりました。対象は全国の男女約2,400名で、代理購入される商品カテゴリーはシャンプー・コンディショナー(68.8%)が最も多く、次いでボディソープ・石鹸(66.8%)と報告されています。女性側からは「自分の買い物のついでに頼まれるから」という理由が多く挙げられ、日常の買い物の延長線上で男性の生活必需品を購入するケースが多数派であるようです。
中小企業への影響
この調査結果は、家庭用日用品マーケットにおける購買決定者の傾向を示唆しています。男性向け商品であっても、実際の購入者は女性(妻やパートナー)である割合が高いことから、マーケティング戦略のターゲット設定や広告メッセージの方向性を見直す必要があるでしょう。例えば、男性用グルーミング商品や生活用品を扱う中小企業は、商品の性能や魅力を男性本人だけでなく、その身近で購入を担う女性にも伝わるようなプロモーションを展開すれば販路拡大が期待できます。商品のパッケージや広告でも、男性向けでありながら女性にも共感や好感を持たれるデザイン・コピーを取り入れることで、購買代理となる女性顧客層の心をつかめる可能性があります。
経営者の視点
経営者として、顧客の“実質的な購買者”を見極めることの重要性を再認識させられるニュースです。特に家庭向け商品の場合、ユーザーと購入者が必ずしも同一ではないため、マーケティング施策では購入の意思決定に関与する人物を意識する必要があります。中小企業の経営者は自社商品の購買プロセスを分析し、影響力の大きい層(この場合は同居家族の女性など)にリーチできる販促活動を強化すべきでしょう。また、こうした購買行動の背景には家事の役割分担や消費習慣も関係すると考えられるため、商品開発やサービス提供の際にも、誰が買い物をしているのかという観点を取り入れると差別化につながります。例えば、販売員とのコミュニケーションやオンラインストアのUXにおいて、代理購入者が情報収集しやすい工夫を凝らすといった対応も考えられます。経営判断として、市場調査データを積極的に活用し、マーケティング戦略に反映させる姿勢が求められるでしょう。
参考リンク
【調査発表】日用品の購買決定権は女性にあり 約7割の女性が夫のシャンプーやボディソープを購入
TikTok Shopついに日本上陸、動画から直接購買への新潮流
概要
6月、ショート動画プラットフォーム「TikTok」内で直接商品を販売・購入できるEC機能「TikTok Shop」が日本でサービス開始となります。TikTokは日本国内で月間アクティブユーザー3,300万人以上を抱えており(その62%が18~34歳)、1日平均利用時間が96分とYouTubeやInstagramを上回る規模です。欧米や東南アジアで先行提供されてきたこの機能では、ユーザーは動画やライブ配信を視聴しながら商品を購入できるのが特徴です。従来の日本のEC利用では、消費者がECサイト内検索で欲しい商品を探すスタイルが主流でした。しかし、TikTok Shopの登場により、動画コンテンツから直接購入へ誘導する新たな手法が日本のEC市場に導入されます。この手法が日本の消費者にどこまで受け入れられ定着するか、そして企業側がこのプラットフォームを活用して新たなビジネスチャンスを掴めるかが注目されています。
中小企業への影響
TikTok Shopの日本上陸は、中小企業にとってもECやマーケティングの新しいチャネルの登場を意味します。これまで自社ECサイトや既存の通販モールで集客していた企業も、ショート動画を通じた販売という流れに対応する必要が出てくるでしょう。特に、若年層を中心とするTikTokユーザー層にリーチしやすくなるため、10代~30代向けの商品やサービスを扱う企業には大きなチャンスです。動画を活用した商品のデモンストレーションや口コミ拡散が購買に直結しやすくなるため、映像コンテンツ制作やインフルエンサーマーケティングの重要性が一段と増すと考えられます。中小企業でも創意工夫次第でバズる動画を作り、広告予算に頼らずとも商品の認知拡大と売上向上を図れる可能性があります。一方で、リアルタイムのライブコマースでは在庫管理やカスタマー対応の即応性も求められるため、販売体制の整備も必要です。
経営者の視点
経営者はTikTok Shopを単なる一時的な流行ではなく、消費行動の変化として捉えるべきでしょう。若者を中心に動画プラットフォームで商品情報を得て購買する流れは、今後他のSNSやプラットフォームにも波及する可能性があります。そこで、中小企業のトップは自社商品のプロモーション戦略において動画コンテンツの活用を検討することが求められます。具体的には、自社で公式TikTokアカウントを開設して商品の使い方動画や顧客レビューを発信したり、影響力のあるクリエイターと提携してライブコマースを実施したりする施策が考えられます。また、プラットフォーム依存のリスク管理も重要です。TikTok上で得た顧客との接点を自社のファンコミュニティ形成につなげるなど、一過性の売上だけでなく長期的な顧客化を見据えた戦略を立てましょう。経営者自身が最新のデジタルマーケティング動向にアンテナを張り、新しい販売チャネルのメリットと課題を正しく評価して意思決定することが大切です。
参考リンク
TikTok Shop、日本におけるサービス提供開始の見通し(ジェトロ)
コニカミノルタ、製品デモ強化でコンバージョン率向上【新マーケ施策】
概要
大手企業のコニカミノルタジャパンは、自社サービスのマーケティング施策としてデモプラットフォーム「PLAINER(プレイナー)」を導入しました。同社が運営するオンラインマニュアル作成サービス「COCOMITE(ココミテ)」の魅力を効果的に伝えることが目的で、従来の動画やPDF資料による紹介では限界があった部分を補完する取り組みです。具体的には、「製品の魅力が十分伝わらない」「アップデートに合わせたコンテンツ更新に時間がかかる」という課題に対し、PLAINER上で実際の画面を操作できるインタラクティブなデモを提供することで解決を図りました。導入後はサービス紹介サイト上にデモコンテンツを掲載し、その結果デモ閲覧者のコンバージョン率が非閲覧者に比べ約3.7ポイント向上したことが確認されています。このように、顧客自身が操作感を試せる体験型のマーケティング施策が奏功した事例と言えます。
中小企業への影響
このニュースは、中小企業にも製品・サービスの伝え方を工夫する重要性を示唆しています。特に、自社の商品やサービスの価値が一見して伝わりにくい場合や、機能が多岐にわたる場合、ただ文章や動画で説明するだけでは顧客に魅力が十分届かないことがあります。インタラクティブなデモや体験型コンテンツを活用すれば、顧客は自ら触れて理解を深めることができ、購買意欲を高める効果が期待できます。例えばソフトウェア企業や機械メーカーのみならず、飲食店でもシミュレーションでメニューをカスタマイズできるウェブ機能を提供したり、ECサイトでバーチャル試着サービスを導入したりといった方法で体験価値を向上させることが可能です。中小企業は大企業ほどマーケティング予算が潤沢でなくとも、このようなツールを比較的低コストで利用できるケースも増えているため、自社規模に合った範囲で取り入れることでコンバージョン向上や問い合わせ増加につながるでしょう。
経営者の視点
経営者にとって、自社商品の価値を顧客目線で理解してもらう工夫は売上に直結するポイントです。今回の事例から学べるのは、「顧客に百聞は一見に如かずの体験を提供する」姿勢です。中小企業のトップも、自社の商品説明方法を定期的に点検し、必要に応じて最新のデジタルツールを活用したり、デモの機会を設けたりすることを検討すべきです。例えば、ウェブサイトに簡易なデモ動画やクイズ形式の紹介コンテンツを置くだけでも、ただ文章を載せるより訴求力は上がります。店頭販売が主力の場合でも、小規模な実演イベントやハンズオン体験会の開催など、顧客参加型のマーケティングを取り入れる余地があります。経営者自らが「お客様に自社製品を試してもらうにはどうすればいいか?」と発想し、部署横断でアイデアを募るなど積極的に関与することで、従業員にもマーケティング思考が浸透します。結果として、商品・サービスの本当の強みを引き出し、顧客の信頼を得る戦略につながるでしょう。
参考リンク
コニカミノルタジャパン、デモプラットフォーム「PLAINER」を導入(プレスリリース)
Meta社、AIによる広告の完全自動化を計画【テクノロジー動向】
概要
FacebookやInstagramを傘下に持つ米Meta社(メタ)は、人工知能(AI)を活用して広告の制作から配信までを完全に自動化する事業を2025年内にも開始する見通しです。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、広告主が製品画像や予算など最低限の情報を提供するだけで、AIが最適な広告クリエイティブを生成し、ターゲティング設定から配信スケジュールまで自動で行うシステムを目指しているとのことです。Meta社は2024年にもAIを活用した広告ツールを段階的に導入してきましたが、2025年末までに広告作成プロセスのフルAI化を実現する計画で、これが実現すれば広告業界に大きなインパクトを与えると見られます。なお、こうした動きの背景には、個人の興味関心に高度に合わせ込んだパーソナライズ広告のニーズ拡大や、人手によるクリエイティブ作成の効率限界を打破する狙いがあります。
中小企業への影響
このニュースは、将来的に中小企業の広告運用のあり方も大きく変わり得ることを示唆しています。AIによる広告自動生成・運用が実用化されれば、専門のデザイナーや広告代理店に頼らなくても効果的な広告配信を安価かつスピーディーに実施できる可能性があります。中小企業にとってハードルが高かった高度なターゲティング広告も、AIが自動で最適化してくれるならば、限られた予算で高精度なマーケティングが可能になるでしょう。例えば、これまでデジタル広告に踏み出せなかった小規模店舗でも、AIツールに商品写真と販促目標を入力するだけで、その店に適した広告をSNS上に配信できるようになるかもしれません。反面、すべての企業が同様のAI広告を活用できるようになると競合も乱立するため、広告の質が均一化し差別化が難しくなる懸念もあります。ひとたびAI主導の広告運用が一般化すれば、広告枠の競争が激化し広告コストが上昇する可能性や、アルゴリズムに依存しすぎるリスクも考慮すべきです。
経営者の視点
経営者としては、AIによる広告自動化の波をチャンスと捉えつつ、自社のブランド戦略とのバランスを考える必要があります。AIに任せられる部分(データ分析に基づく訴求最適化など)は積極的に活用しつつ、人間にしかできないクリエイティブの差別化要素をどこに残すかが重要になるでしょう。中小企業は大企業に比べブランド知名度で劣る分、広告の瞬発力頼みになりがちですが、AI時代には逆に企業の個性や物語性がより響く可能性もあります。画一的なAI生成広告が氾濫すれば、逆に手作り感や人間味のあるメッセージが目立つという状況も起こり得ます。経営トップは、最新テクノロジー動向を学びつつ、自社らしさを失わないマーケティングとは何かをチームで議論することが大切です。また、データプライバシーやAI倫理への配慮も経営課題となります。AI広告運用に頼るほど、取得する顧客データの管理や透明性の確保が求められるため、信頼性あるブランド作りという視点も忘れてはなりません。要するに、攻めの技術活用と守りのブランド醸成を両立させる舵取りが経営者に求められるでしょう。
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マーケティング本大賞2025、ノミネート作品発表【業界トレンド】
概要
日本マーケティング学会は6月10日、同学会が選定する「日本マーケティング本 大賞2025」のノミネート9作品を公表しました。この賞は2024年4月から2025年3月までに国内で刊行されたマーケティング関連のオリジナル書籍(翻訳書を除く)を対象に、学会員による投票で選ばれるもので、今年は当初候補の44作品から上位得票の9作品がノミネートされています。選ばれた書籍には、マーケティングの最新知見や実践ノウハウが詰まった多彩なラインナップが含まれています。例えば、不確実性下での機会創出を探る『エフェクチュアル・シフト』、流通業の変革を描いた『岡田卓也の時代』、現場従業員が起こすイノベーションに注目した『企業内リードユーザー』、効果的な戦略立案を指南する『君は戦略を立てることができるか』、ブランドと顧客の関係性に迫る『ブランド・リレーションシップ』、重要顧客との関係構築を説くABM(アカウント・ベースド・マーケティング)本、マーケティング教育のあり方を問う書、知的財産をマーケティングに活かす手法を説いたものや、新しい消費概念「リキッド消費」を論じたものなどが名を連ねています。大賞および準大賞の発表・表彰は2025年10月12日に開催予定のマーケティングカンファレンスにて行われる予定です。
中小企業への影響
マーケティング本大賞のノミネート作品は、現在マーケティング分野で注目されているテーマや課題を反映しています。中小企業の経営者やマーケティング担当者にとって、最新の知見をインプットする絶好の指針と言えるでしょう。例えば、「リードユーザーによるイノベーション」という考え方は自社の現場スタッフの声を商品開発に活かすヒントになりますし、「知財をマーケティングの武器に」という発想は中小企業ならではの独自技術やブランド資産の活用を促します。また、「リキッド消費(流動的な消費形態)」に関する議論は、消費者の価値観変化に合わせたビジネスモデル転換の示唆を与えてくれます。本から得られる示唆を自社の規模や業界に合わせて応用することで、大企業に負けない創造的なマーケティング戦略を打ち出せるかもしれません。ノミネート作品は専門的な内容も多いですが、平易な事例紹介や具体策も書かれているものがあり、中小企業でも実践可能な手法が見つかるでしょう。マーケティング知識のアップデートはそのまま競争力につながるため、経営資源としての「知」を積極的に取り入れる姿勢が重要です。
経営者の視点
経営トップとして、社内に学習する文化を根付かせることは長期的な成長に寄与します。マーケティング本大賞の候補に挙がるような良書は、経営者自身はもちろん社員のスキル向上にも役立つでしょう。経営者が率先して最新のマーケティング理論や事例を学ぶことで、自社の戦略立案に新たな視点を加えることができます。例えば、ノミネート作品の中から自社に関連深いテーマの本を選び、幹部社員と内容を共有・討議する場を設けるのも有効です。本に書かれた知見を現場の課題と照らし合わせることで、具体的な改善アイデアが生まれるかもしれません。また、「マーケティング教育学」のように人材育成に焦点を当てた内容からは、社員のマーケティング思考を育むヒントが得られます。経営者の役割として、常に学び続ける姿勢を示すことは組織に良い影響を与えます。今回の候補作リストは、経営環境の変化に対応するために何を学ぶべきかを教えてくれる指標とも言えます。忙しい中小企業経営者ほど意識的に時間を作り、良書から戦略のヒントを得て、それを現場で試すというサイクルを回していきましょう。
参考リンク
日本マーケティング学会、「日本マーケティング本 大賞2025」ノミネート9作品を発表
まとめ
今回のマーケティング関連ニュースからは、消費者の購買行動の変化、新しいデジタルプラットフォームの台頭、先端技術の広告分野への応用、そしてマーケティング知識の深化といった多方面のトレンドが浮かび上がりました。中小企業にとって重要なのは、これらの動きを自社の経営にどう活かすかです。例えば、日用品市場の調査結果はターゲット戦略の見直しにつながり、TikTok Shopの登場は新チャネル開拓のヒントとなります。製品デモの改善事例からは顧客体験向上の手法を学べ、AI広告のニュースからは今後のマーケティングオートメーションへの備えを考えさせられます。さらに、マーケティング本大賞の候補作に目を通すことで得られる知見は、経営判断の質を高める糧となるでしょう。
刻一刻と変化する市場環境の中で、中小企業が持続的に成長するためには、敏捷性(アジリティ)と学習意欲が不可欠です。今回取り上げたニュースをきっかけに、自社のマーケティング戦略をアップデートし、新たな施策にチャレンジしてみてください。小回りの利く中小企業だからこそ、トレンドを素早く採り入れて実験・改善を繰り返すことで、大企業には真似できない独自のポジションを築くことができます。重要なのは、得た情報をもとに具体的な行動に移すことです。顧客の動向を注視し、デジタルツールや最新理論を賢く活用しながら、自社ならではの価値を効果的に伝えていきましょう。それが競争市場で生き残り、発展していくための確かな指針となるはずです。