生成AIニュースまとめ(2025年6月2日〜6月8日)
2025年6月2日〜8日には、生成AIに関する注目ニュースが日本国内で多数報じられました。本記事ではその中から、中小企業の経営に役立つ5つのトピックを厳選してご紹介します:
- 国の政策強化:政府がAIと知的財産に関する新たな国家戦略を打ち出しました。
- 広告の自動化:海外大手企業がAIで広告制作を完全自動化する計画を発表し、中小企業のマーケティングにも影響を与えそうです。
- 新たな活用事例:老舗企業が公式VTuberを生成AIで進化させ、顧客との対話に挑戦しています。
- サービス開始:スタートアップ企業が人材採用に役立つ画期的なAIサービスをリリースしました。
- リスク対策:AI技術の急速な発展に伴うセキュリティ上の懸念と、その対策の重要性が浮き彫りになっています。
各ニュースの概要とポイントをわかりやすく解説します。経営者の皆さんが生成AIを活用しつつリスクに備えるヒントになれば幸いです。
1. 政府、「知的財産推進計画2025」を決定
概要
政府は6月3日、知的財産戦略本部にて「知的財産推進計画2025」を閣議決定しました。この計画の柱は、急速に進歩するAI技術の活用と知的財産権の適切な保護を両立させ、日本の競争力を強化することです。具体的にはデジタルやAIなど8つの分野を戦略領域に定め、2035年までに世界4位以内の知財競争力を目指す目標が掲げられました。また、ネット上での国際的な特許侵害への対応策検討など、法整備も含めた包括的な取り組みが進められます。
中小企業への影響
本計画では、中小企業やスタートアップの知的財産活用支援も強化されています。研究開発の成果をしっかり権利化しつつ、自社の技術ノウハウやブランドなどの無形資産を経営の核とするよう促しています。国の後押しにより、特許取得や知財戦略の相談体制が充実すれば、中小企業でもアイデアや技術を武器に新規事業を展開しやすくなると期待できます。
経営者の視点
自社の強みとなる技術やノウハウを洗い出し、積極的に知財戦略を検討する好機です。補助金や支援策の情報をチェックし、専門家の助言を得ながら特許出願や商標登録を進めましょう。なお、中小企業向けの知財相談窓口や支援策も拡充される見込みですから、積極的に情報収集して活用してください。また、AIを活用する際には、開発した成果物の権利保護や契約面の取り決めを明確にしておくことも重要です。
参考リンク
日本の知的財産の国際競争力強化へ 政府が「知的財産推進計画2025」決定 2024年13位まで後退…世界4位以内目指す
2. Meta社、AIによる広告制作の完全自動化を計画
概要
FacebookやInstagramを運営する米Meta社が、2026年末までに生成AIを活用して広告制作と配信を完全自動化するロードマップを発表しました。広告主は製品画像と予算を入力するだけで、AIが画像・動画・コピーを自動生成し、ターゲット選定から広告配信まで行う構想です。この発表を受け、Metaの株価は小幅ながら上昇し、市場もAIによる広告革命への期待を示しました。広告制作のスピードと効率が飛躍的に向上する一方で、クリエイティブの質や差別化への懸念の声も専門家から上がっています。
中小企業への影響
煩雑だったオンライン広告運用がシンプルになり、少ない手間で高度な広告展開が可能になると期待されます。中小企業でも専門のマーケ担当者がいなくても、AIの力で効果的な広告を打ち出せるチャンスです。一方で、誰もが似たようなAI生成広告を使うようになると、広告表現が画一化してブランド独自性を出しにくくなる可能性もあります。
経営者の視点
AI自動化された広告ツールが実現した際には、ぜひ試用してみる価値があります。広告予算に応じて最適化されたキャンペーンを短時間で立ち上げ、効果測定までAIに任せられるため、小規模な企業でも敏捷なマーケティングが可能になるでしょう。ただし、完全に任せきりにせず、自社らしさが失われていないかを人間の目でチェックすることが大切です。AIが生成した広告素材に最後のひと工夫を加えるなど、創意工夫で差別化を図りましょう。
参考リンク
3. 老舗企業、生成AI搭載のデジタル人間「NEOココロ」を万博で公開へ
概要
老舗製薬メーカーのロート製薬は、自社の公式VTuberキャラクターを生成AIで進化させたデジタルヒューマン「NEOココロ」を大阪・関西万博(6月開催)で公開予定です。NEOココロは来場者とリアルタイム対話できるバーチャルアシスタントで、日本語・英語・中国語の三カ国語に対応し、目の健康やスキンケアに関する専門知識を分かりやすく案内します。単に情報を伝えるだけでなく、生成AIとの双方向コミュニケーションによって、よりパーソナライズされた「対話体験」を来場者に提供することを目的としています。ヘルスケア×エンタメの新しい切り口のプロジェクトで、企業ブランディング戦略としても注目を集めています。
中小企業への影響
顧客対応やプロモーションに対話型AIを活用するヒントになります。例えば店舗やウェブサイト上で、AIキャラクターが製品案内や質問対応をしてくれれば、人的リソースが限られる小規模企業でも24時間顧客対応が可能です。多言語対応のデジタル接客はインバウンド対応にも役立つでしょう。ただし導入コストやシナリオ設計の手間もあるため、自社の商品知識をどこまでAIに学習させるかなど、準備は必要です。
経営者の視点
技術への投資対効果を見極めつつ、顧客体験の向上にAIを取り入れる姿勢が求められます。まずは簡易的なチャットボットや問い合わせ対応AIから試し、効果を検証してみましょう。自社の強みやストーリーをAIキャラクターに語らせることで、ブランド親和性を高めることも可能です。重要なのは、AI任せにせず人間によるフォローやコンテンツ監修を行い、ユーザーに安心感を与えることです。
参考リンク
生成AI技術を活用し、Vtuber「根羽清ココロ」が進化!ロート製薬×ULTRA SOCIAL、万博会場で新たな対話体験を提供
4. ハックツAI:生成AIでエンジニア採用を効率化
概要
東京のスタートアップ企業DELTA社は6月5日、生成AIを活用した採用支援ツール「ハックツAI」のクローズドβ版リリースを発表しました。このサービスは企業の求人情報をAIが解析し、条件に合うエンジニア候補者をネット上から自動で洗い出すというものです。具体的には、求人票の必須スキルや経験を読み取り、GitHubや技術ブログ(Qiitaなど)に公開されたエンジニアの成果物・投稿を横断的に検索します。その結果、今まで人事担当者が手作業で作っていた「潜在的な転職候補者リスト」を自動生成し、一元管理できるようになります。これにより、採用の効率が大幅にアップし、企業は“応募を待つ”従来型から“優秀な人材に働きかける”攻めの採用が可能になります。
中小企業への影響
慢性的なエンジニア不足に悩む中小企業にとって、こうしたツールは採用活動の負担軽減につながります。知名度の低い企業でも、埋もれた有能な人材にアプローチできるチャンスが広がります。特にIT人材は求人を出しても応募が少ないことが多いため、AIが候補者を探し出してくれるのは大きなメリットです。ただし、抽出された候補者にアプローチする際のコミュニケーションや、最終的な見極めは人間の判断が必要です。
経営者の視点
最新テクノロジーを人事戦略に取り入れる好例と言えます。自社でも試験的にハックツAIのようなサービスを利用し、採用候補のリストアップに要する時間を削減できないか検討しましょう。浮いた時間を面談や社内育成に充てることで、組織力の強化につながります。また、AIに頼るだけでなく、社内のエンジニア社員から人材像の意見を募るなど、人間とAIの協働でより良い採用活動を目指すことが重要です。
参考リンク
株式会社DELTA、生成AIで転職潜在層エンジニアの発掘を行える「ハックツAI」のクローズドβ版をリリース
5. AI急速発展へのリスク、7割の企業が懸念
概要
AIの急速な普及に伴い、そのリスク対策にも注目が集まっています。フランスの大手セキュリティ企業タレスが発表した調査によると、企業の約7割が「ChatGPTのような生成AI技術の急速な発展」がセキュリティ上の最大の懸念事項だと回答しました。また、AIを悪用したサイバー犯罪への警鐘も鳴らされています。高度なAIが巧妙な詐欺メールや偽情報を生み出すリスクもあり、AIを適切に管理するガバナンス(ルール整備)の重要性も指摘されています。
中小企業への影響
サイバー攻撃の脅威は大企業だけでなく中小企業にも及びます。むしろリソースの限られた中小企業ほど、AIを使った高度なフィッシング詐欺や情報漏えいのリスクに晒されやすいと言えます。例えば、一見自然な日本語で書かれた偽メールに社員が騙され、機密情報が漏洩するケースも考えられます。また、生成AIを業務利用する際に、対話内容から機密データが外部に流出してしまう危険性も指摘されています。
経営者の視点
情報セキュリティ対策の見直しが急務です。具体的には、社員に対するセキュリティ研修で最新のAI詐欺手口を周知し、不審なメールやメッセージへの警戒心を高めましょう。また、業務でChatGPTなどを利用する際の社内ルールを整備し、機密情報を入力しないよう徹底することが重要です。併せて、データ暗号化やアクセス権限の管理など基本的なセキュリティ対策も再点検しましょう。必要に応じて、防御側もAIによる監視システム導入を検討することが肝心です。
参考リンク
企業の約7割がAI技術の急速な発展をセキュリティ上の最大の懸念点に、仏タレスの調査
まとめ
今回の生成AI関連ニュースから、中小企業経営者にとって知っておきたい5つのトピックを紹介しました。国策の後押しもあり、生成AIのビジネス活用は今後ますます加速しそうです。一方で、リスク対策や差別化の工夫も欠かせません。経営者として、最新動向にアンテナを張りつつ、自社の状況に合わせてAIを活用する戦略を描いていきましょう。小さく試して効果を検証し、良いところは積極的に取り入れ、危険な面には備える——このバランス感覚が、これからの時代に求められる経営判断と言えます。