DXニュースまとめ(2025年4月25日〜5月1日)

DXニュースまとめ(2025年4月25日〜5月1日)

2025年4月25日〜5月1日は、中小企業経営者が注目すべきDX(デジタルトランスフォーメーション)関連ニュースが多数発表されました。
政府の白書ではデジタル化推進の重要性が示され、地方自治体ではDX支援ネットワークが拡充されています。また、地方銀行が社内のペーパーレス化と生成AI活用で驚異的な成果を上げ、クラウドサービス企業は経費精算システムにAIエージェント機能を導入する組織を新設しました。さらに製造業でも、設計から保守までデータ連携する取り組みにより生産効率を飛躍的に高めています。以下では、これら5つのトピックの概要と中小企業への影響、経営者の視点を整理します。

目次

1. 政府「2025年版中小企業白書」公表:積極的なDXと価格戦略の重要性を強調

概要:
経済産業省・中小企業庁は4月25日、2025年版「中小企業白書・小規模企業白書」を閣議決定しました。
本白書では、円安・物価高・金利上昇・人手不足など厳しい経営環境下で、中小企業が持続的に成長するための戦略が分析されています。特に積極的なデジタル化と適切な価格設定(価格転嫁)の推進によって付加価値や労働生産性を高める経営への転換が重要と強調されています。単なるコスト削減には限界があり、デジタル技術への投資や業務効率化とともに、原価上昇分を価格に反映して収益性を確保する経営力が求められるとしています。

中小企業への影響:
中小企業白書の提言は、政府の支援策や今後の補助金の方向性とも連動します。
デジタル化推進は今後ますます重要な経営課題となり、例えば業務のIT化やDX人材の育成に対する支援策拡充が予想されます。また、価格転嫁の必要性が示されたことで、自社の商品・サービスの価格見直しや交渉力強化にも関心が高まるでしょう。白書には各地の中小企業のDX成功事例も紹介されており、他社の取り組みが有益な参考となります。経営者にとって、自社のデジタル化レベルや収益構造を改めて点検する契機となるニュースです。

経営者の視点:
経営者はこの白書を踏まえ、自社のDX推進計画を加速させることが求められます。
具体的には、紙やアナログ作業が残る業務を洗い出してITツールに置き換えたり、社員にデジタル研修の機会を提供するなど業務効率化への投資を検討しましょう。また、仕入れ価格や人件費の上昇に対しては、価格設定を見直し適切に転嫁できているかを確認する必要があります。国が強調する「経営力」とは、環境変化を見据えた戦略策定力と実行力です。他社事例や専門家の助言も活用しながら、デジタル技術と収益改善策の両面で自社の経営力強化に取り組むことが重要です。

参考リンク:
経済産業省: 「2025年版中小企業白書」公表


2. 常陽銀行、“デジタルアレルギー”克服で全社DXを徹底:ペーパーレス&生成AI活用

概要:
茨城県の地方銀行である常陽銀行が、社内DXの徹底ぶりで注目を集めています。
EnterpriseZineの取材によれば、同行は「DXの民主化」をキーワードに、紙の書類を排除した全社ペーパーレス化、スマートフォン向けアプリの独自開発、そして全行員による生成AIの活用といった施策を次々と実現しました。他行から視察が相次ぐほどの成果を上げており、社内には当初あった「デジタル嫌い(デジタルアレルギー)」を克服する文化が根付いたと言います。銀行取引のデジタル化が避けられない潮流の中、常陽銀行は旧来の慣習にとらわれずDXを推進しているのが特徴です。

中小企業への影響:
地方銀行のDX成功例は、中小企業にも示唆に富みます。
銀行は地域企業にとって身近な存在であり、そこがデジタル対応を徹底することで企業間取引や金融サービスも一層オンライン化が進むでしょう。例えば融資手続きや各種相談がデジタル化されれば、企業側の手間も減り業務効率化につながります。また、「今さらペーパーレス?」と思われがちな環境でも、トップ主導でやり抜けば成果が出ることを常陽銀行の例は示しています。自社内に残る非効率な紙文化やIT活用への抵抗感を見直すきっかけとして、多くの中小企業にとって刺激となるニュースです。

経営者の視点:
経営者は常陽銀行の事例から、DX推進には経営トップの強い意志と全社的な巻き込みが不可欠だと学べます。
社内にITリテラシーの差や抵抗がある場合でも、まずはペーパーレス化など分かりやすいテーマから着手し、小さな成功体験を積み重ねることが有効です。また、生成AIの活用についても、まず社員が試行できる場を作り可能性を探る姿勢が大切です。「うちの業界では難しい」と決めつけず、新しいデジタルツールを社内教育や業務改善に取り入れてみましょう。重要なのは目的を見失わずビジネス価値の向上に繋げることです。経営者自ら旗を振り、現場と伴走しながらDXを推進することで、自社の競争力強化に繋げられるでしょう。

参考リンク:
EnterpriseZine記事: 常陽銀行の徹底したDX事例


3. 楽楽精算にAIエージェント機能――ラクスが専門組織を新設しバックオフィス効率化へ

概要:
中小企業向けクラウドサービス提供企業のラクスは5月1日付で、社内にAIエージェント開発の専門組織を新設しました。
この5名体制のチームでは、同社の主力サービスである経費精算クラウド「楽楽精算」などにAIエージェント(自律的に業務を遂行する人工知能)機能を実装することを目指します。第1弾として、経費精算業務における入力チェックや仕分けなどの手間をAIが代行し処理時間を短縮できる新機能の開発に着手、年内の導入を予定しています。生成AIや深層学習の知見を持つエンジニアを集めた専門部署を設けることで、サービスの使い勝手向上と競争力強化を狙う動きです。

中小企業への影響:
多くの中小企業で利用されている「楽楽精算」にAIエージェント機能が加わることで、日常のバックオフィス業務がさらに効率化される可能性があります。
例えば、経費の領収書チェックや科目分類の自動化が実現すれば、経理担当者の負担軽減やミス削減につながるでしょう。また、ラクスの動きは他のクラウドサービス各社にも波及する可能性が高く、受発注管理・人事労務・顧客対応など様々な業務領域でAIアシスタントの導入が進むことが予想されます。これは中小企業にとって、最新ITを手頃なクラウドサービス経由で享受できるチャンスと言えます。現場の担当者不足やテレワーク推進にも追い風となるでしょう。

経営者の視点:
経営者は、自社が利用する業務システムに新たなAI機能が追加された際には積極的に活用を検討すべきです。
まずは経理や総務の担当者から意見を聞き、AIエージェント機能で何が効率化できるかを見極めましょう。導入初期は戸惑いもあるかもしれませんが、社内ルールの見直しや社員研修を行いスムーズな定着を図ることが重要です。また、今回のラクスの発表に限らず、IT業界の動向として生成AIをビジネスソフトに組み込む流れが加速しています。経営者自身も日頃からITベンダーからの情報提供やニュースをチェックし、業務改善のヒントを積極的に取り入れる姿勢が求められます。最新デジタルツールを適切に使いこなすことが、生産性向上と競争力維持のポイントになるでしょう。

参考リンク:
日本経済新聞: ラクス、経費精算にAIエージェント機能導入へ


4. 大阪府、中小企業DX支援「DX推進パートナーズ」に新たに45社を追加加盟

概要:
大阪府は4月30日、府内中小企業のDX推進を支援する産官学プラットフォーム「大阪府DX推進パートナーズ」に新たに45の企業・団体が参画したと発表しました。
同パートナーズは、大阪府と連携協定を結んだ企業群で構成され、データやデジタル技術に関する知見を活かして中小企業のDX化支援を行う取り組みです。今回の追加により参画企業は合計126社となり、IT企業やコンサル、金融機関、大学など多様なプレーヤーが名を連ねます。大阪府は今後、大阪産業局や金融機関、商工会議所などとも連携しながら、このプラットフォームを通じて府内中小企業の生産性向上・収益力強化・新ビジネス創出を後押しするとしています。

中小企業への影響:
大阪府のDX推進パートナーズ拡充は、地域の中小企業にとって心強いニュースです。
専門知識を持つ企業がパートナーとして加わることで、身近な相談先や支援メニューが増えることになります。例えば、「自社のDXをどこから始めれば良いか分からない」「適切なITベンダーを紹介してほしい」といったニーズに対し、府が仲介してパートナー企業から助言やソリューション提供を受けられる可能性があります。また、大阪府がDX支援に積極的な姿勢を示したことで、他の自治体でも同様の取り組みが拡大する期待があります。中小企業にとっては、自社所在地の自治体のDX支援策にも目を向け、利用できる補助金・相談窓口などを積極的に活用することが重要です。

経営者の視点:
経営者は自治体主導のDX支援を上手に活用すべきです。
まず、自社が大阪府内にある場合は今回のパートナーズにどんな企業が参画したかを確認し、該当分野の相談先がないか探ってみましょう。例えば、製造業ならIoT導入に強い企業、サービス業ならDXの事例に詳しいコンサル企業など、パートナー一覧から有益な繋がりを見つけられるかもしれません。また府外の企業であっても、自社の地域で似たような支援策がないか調べる価値があります。経営者にとって、公的機関の支援は低コストで専門知識を得るチャンスです。DX推進は自社だけで抱え込まず、行政や支援機関とも協力して進めることで、より円滑かつ効果的に成果を上げられるでしょう。

参考リンク:
大阪府報道発表: 「大阪府DX推進パートナーズ」45事業者の新規参画


5. アマダ:統合BOMで設計〜保守データを連携、サービス停止時間を大幅短縮

概要:
金属加工機械大手のアマダが、製造業のDX事例として注目されています。
同社は労働力不足や多品種対応など製造業共通の課題に対し、統合BOM(部品表)の活用による部門間データ連携や、新たな生産方式の導入、サプライヤーとの情報共有強化といった手法で解決を図っています。具体的には、設計部門と製造部門が密接に連携し、設計情報の変更がリアルタイムで生産・保守に反映される仕組みを構築しました。その結果、保守サービス時のマシン稼働停止を大幅に短縮することに成功しています。たとえば以前は設計変更後にも旧設計の部品を手配してしまい現場で合わない、といった非効率が生じていましたが、統合BOMにより常に最新情報で部品調達・保守対応できるようになったといいます。これによりサービス品質と生産効率の向上を同時に実現している点が評価されています。

中小企業への影響:
製造業を営む中小企業にとって、アマダの取り組みはデータ活用による業務改革の好例です。
自社規模ではと尻込みしがちですが、BOMの一元管理や社内システムの連携強化は、中小製造業でも導入可能なDX施策と言えます。例えば、設計図面・部品リスト・在庫情報をデジタルで統合管理すれば、設計変更ミスの削減や在庫最適化につながるでしょう。また、現場経験の浅い作業者でも成果を出せる生産方式の工夫(マニュアルのデジタル化や作業支援ツール活用など)は、人手不足対策として他社でも応用可能です。アマダのような大企業の事例からは、一見ハードルが高そうに見える施策もありますが、要素を分解すれば中小企業が取り入れられるヒントが多数あります。ポイントは自社の課題を明確化し、データの流れを可視化してボトルネックを潰すことにあります。

経営者の視点:
中小企業経営者は、製造業に限らず自社内の情報の断絶をなくすことを意識してみましょう。
部署間でデータや情報が分断されていないか、属人的な業務になっていないかを点検し、必要に応じてITシステムの導入・統合を検討します。予算や人材に限りがある場合は、例えば簡易なクラウドERPや在庫管理システムを使い始めるなど、小規模からのスタートでも構いません。重要なのは、現場のムダな時間を削減し顧客対応を迅速化することです。アマダのケースでは結果的に顧客の機械停止時間を短縮し信頼性向上につながりましたが、これはどんな企業でも「顧客満足度向上と効率化」のヒントになります。経営者は自社のバリューチェーン全体を見渡し、デジタル技術で強化できる部分を見極めて段階的に投資していくことが求められます。

参考リンク:
DIGITAL X: アマダの統合BOM活用によるDX事例


まとめ:DXの潮流を捉え、中小企業経営に活かそう

今回取り上げた5つのニュースからは、あらゆる領域でDXが加速している現状が読み取れます。
政府はデジタル化と経営改革を強く後押しし、地方自治体も企業支援の枠組みを拡充しています。大企業だけでなく地方銀行までもが社内DXで成果を上げ、中小企業向けサービスにもAIの波が押し寄せています。経営者として重要なのは、これらの流れを自社の経営にどう活かすかです。まずは自社の現状を客観的に分析し、DXによって解決できる課題を洗い出しましょう。幸い、公的支援策や先行事例も増えており、参考にできる情報源は豊富です。自社単独で難しい場合は行政や専門家の力を借りることも視野に入れ、スピード感を持って小さな成功を積み重ねることが肝要です。デジタル化による業務効率化や新技術の活用は、中小企業にとって人手不足や競争激化を乗り越える武器になります。今回のニュースをヒントに、ぜひ自社のDX推進に向けた次の一手を検討してみてください。

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