2026年2月上旬の生成AI関連ニュースをまとめました。日本発AIスタートアップSakana AIのテスター募集開始、富士通の大規模言語モデル「Takane」による行政業務効率化の実証結果、東京大学メタバース工学部による若年層向け無料AI講座、NTTの国産AI「tsuzumi 2」の好調な滑り出し、そして日本テレビがZIP!で実施したAIエージェント活用事例など、中小企業経営者の皆様に役立つ情報をお届けします。
1. Sakana AI、独自の小規模汎用AIサービスのテスター募集を開始
概要
2023年に設立された日本発AIスタートアップのSakana AIが、独自開発の小規模汎用AIサービスに向けたテスタープログラムの募集を開始しました。同社は2026年1月に約4000万ドル(約60億円相当)の資金調達を完了し、同月にはGoogleとの戦略的提携も発表しています。CEOのDavid Ha氏が率いる同社は、MUFG、GMOなど国内大手企業からの出資を受けており、日本発で世界水準を目指すAIベンチャーとして注目を集めています。大規模モデル一辺倒の潮流に対して小型で効率的な言語モデルの開発に特化しており、Googleの最新技術Geminiを活用した開発体制を構築しています。テスタープログラムの応募締切は2026年2月12日で、実用性検証フェーズに突入した段階です。
中小企業への影響
中小企業にとって、このサービスには複数のメリットが期待できます。まず、小型モデルを採用することで導入・運用コストを抑えられる可能性があります。また、国内発サービスのため日本語対応や商習慣への適合が期待でき、顧客対応向けAIサポート機能による業務効率化も見込めます。テスター参加によって早期に機能を評価し、本格導入の判断材料を得られる点も見逃せません。具体的な活用例としては、問い合わせメールへの返信案を自動生成して担当者が確認・送信する対応時間の短縮や、社内マニュアルをAIに読み込ませて新入社員からの質問に自動回答するチャットボットの構築などが考えられます。
経営者の視点
経営者としては、まず2月12日締切のテスタープログラムへの参加を検討することが重要です。Google提携によるAPI活用の可能性を社内で議論し、自社の顧客対応業務で試験導入できる領域を洗い出すことをお勧めします。競合するAIサービスとの機能・価格比較を実施し、導入時のセキュリティ要件を事前に整理しておくことも必要です。なお、小型言語モデルとは大規模モデルに比べパラメータ数を抑えつつ実用的な精度を維持するAIで、運用コストや消費電力を削減できる利点があります。一方で、ベンチャー企業のため長期的なサービス継続性を確認する必要があります。
参考リンク
ITmedia AI+:Sakana AI、独自の小規模汎用AI「サービス」開始のテスターを募集
2. 富士通、パブリックコメント業務にAI「Takane」活用で大幅な効率化を実証
概要
富士通がCohereと共同開発した大規模言語モデル「Takane」を活用し、中央省庁のパブリックコメント業務で効率化の実証実験を実施しました。約12万文字のパブリックコメントを処理対象とし、従来1カ月以上かかっていた処理が約10分程度に短縮されるという驚異的な成果を達成しています。法令案との整合チェックでは80%超の精度を実現しました。人気テーマのパブリックコメントには数千件から数万件の意見が集まり、職員の過度な負担が発生していたことが背景にあります。意見の十分な精査ができず国民の不信感を招く懸念もあったため、行政のデジタル化推進の一環としてAI活用が検討されていました。2025年中に実証実験を完了して有効性を確認済みで、2026年度中のサービス提供開始を目標としています。
中小企業への影響
行政のAI活用が進むことで、中小企業にもさまざまな影響が及びます。政策形成プロセスが迅速化することで規制環境の変化スピードが上がる可能性があり、業界団体経由のパブリックコメント提出戦略の見直しが必要になることも考えられます。行政手続きへのAI活用が進めば、民間でも類似技術を求められる場面が増えるでしょう。政策動向の早期察知により事業計画への反映がしやすくなり、行政とのやりとりが迅速化すれば中小企業の事業スピードも上がります。具体的な活用例としては、顧客アンケートの自由記述欄を自動分類して賛否や要望のカテゴリ別に集計したり、契約書や規約文書をAIでチェックして自社ポリシーとの整合性を確認したりすることが挙げられます。
経営者の視点
経営者としては、政策動向への監視体制を強化し情報収集ルートを整備することが求められます。自社に関係する法令案のパブリックコメント提出戦略を見直し、行政手続きの効率化に対応できる社内体制を検討すべきです。AIによる文書処理技術を自社の契約書レビュー等に応用できるか検討することも有益でしょう。パブリックコメントとは行政機関が法令案や規制案を公表し国民から意見を募る制度で、民主的な政策形成の手段として定着しています。ただし、精度が80%超に留まるため重要な意見が見落とされる可能性があり、AIの判断結果は職員が必ず点検する必要があります。
参考リンク
富士通:パブリックコメント業務に大規模言語モデル「Takane」を活用し、中央省庁で業務効率化の実証実験を実施
3. 東大メタバース工学部、小中高生向け無料の生成AI講座を3月開催
概要
東京大学メタバース工学部が2026年3月21日にオンラインで3つの生成AI入門講座を開催します。小学生向けは9時から10時、中学生向けは11時から12時、高校生向けは14時から15時の時間帯で実施され、参加費は無料で定員制限もありません。申込は各講座の開始時刻まで受付可能です。ChatGPTやGeminiなどの生成AIについて、技術的な仕組みや社会への影響を学ぶ内容となっており、2025年8月開講の講座の復習・展開版として企画されました。小学生向けは保護者同伴を歓迎しています。次世代のAIリテラシー向上と批判的思考力育成が目的であり、生成AIの急速な普及に対応した情報教育の需要の高まりを受けた取り組みです。年代別に内容を調整し、発達段階に応じたAI教育を提供する点が特徴です。
中小企業への影響
中小企業にとって、この講座にはさまざまな活用価値があります。従業員の子弟が早期にAIリテラシーを習得することで、将来の人材の質向上につながります。無料講座を社内報等で紹介すれば、従業員の子育て支援として活用できます。講座内容を参考に自社のAI研修教材開発のヒントを得ることも可能です。次世代人材のスキル動向を把握して採用計画に反映したり、AIに詳しい若手社員との協働を円滑にするための知識習得に役立てたりすることもできます。地域の教育機関との連携ネタとしても活用できる可能性があります。メタバース工学部とは東京大学が提供するオンライン教育プログラムで、工学系の知識を広く一般に届けることを目的としています。生成AIとはユーザーの指示から新しいテキストや画像を生成する人工知能技術です。
経営者の視点
経営者としては、従業員への情報提供として社内で講座情報を周知することが第一歩です。講座の内容を参考に社内AI研修の企画を検討したり、次世代人材のスキル動向を把握して中長期の採用戦略に反映したりすることも重要です。若手社員にAI学習機会を提供し、組織のデジタル力を底上げすることも検討に値します。具体的な活用例としては、新入社員研修の補助教材として講座録画やスライドを参考にAI基礎知識を教えたり、従業員の子ども向け職場見学会でAI体験コーナーを設置して興味を喚起したりすることが考えられます。ただし、申込期限が講座当日の開始時刻までと短いため早めの対応が必要です。また、講座は入門レベルのため業務活用には追加学習が必要であることも念頭に置いてください。
参考リンク
リセマム:東大メタバース工学部、生成AI講座3/21…小中高生向け全3講座
4. NTTの国産AI「tsuzumi 2」が好調、引き合い2000件を達成
概要
NTTが開発した大規模言語モデル「tsuzumi 2」が好調な滑り出しを見せています。2025年度第3四半期の引き合い件数は約2000件に達し、島田社長がクローズドなAI需要への期待を表明しました。tsuzumi 2は既存tsuzumiの後継版で、パラメータ数300億と従来から70%の削減に成功しています。NVIDIA GPU A100 40GB 1個で実行可能な軽量設計が特徴です。営業利益は前期比3.7%増の1478億円を記録し、年間目標1500億円の達成を見込んでいます。日本語・英語対応に加え、金融・医療・製造など分野別ソリューションを提供しています。データ処理など特定領域に特化したAI開発に注力する戦略を採用し、Azure OpenAI ServiceやMistral AIのモデルとも連携してマルチ・オープン設計を実現しています。
中小企業への影響
中小企業にとって、tsuzumi 2にはいくつかの魅力があります。クラウドベース運用により中小企業でも高度なAI活用が可能になり、軽量設計のため導入時の初期投資を抑えられます。業界別ソリューションがあるため自社業種に適した形で導入しやすく、国産AIのため日本語処理の精度や国内サポート体制に期待できます。データを外部に出さないプライベートAI活用が可能であり、大手通信会社のサービスとして長期的な提供継続も見込めます。LLM(大規模言語モデル)とは数百億以上のパラメータを持ち自然言語を理解・生成するAIで、ChatGPTやtsuzumiなどが該当します。プライベートAIとは組織内のデータを外部クラウドに送らずにAIを活用する形態で、機密情報を扱う企業で需要が高まっています。
経営者の視点
経営者としては、AI導入の具体的活用シーンを社内で洗い出し、データセキュリティとプライバシー要件を整理しておくことが重要です。業界別ソリューションの評価を行って自社適合性を確認し、既存システムとのAPI連携可能性を技術部門に調査させることをお勧めします。競合する国産AI・海外AIサービスとの比較表を作成することも有効です。具体的な活用例としては、社内文書の検索システムにtsuzumi 2を組み込んで過去の提案書や議事録から類似案件を自動抽出したり、コールセンターの問い合わせ対応にAIを導入してオペレーターの回答案を自動提示し応答時間を短縮したりすることが挙げられます。ただし、AIベンダーへの依存リスクを考慮してマルチベンダー戦略を検討すべきです。
参考リンク
ITmedia AI+:NTTの国産AI「tsuzumi 2」の滑り出しは? 「国内で引き合い2000件」と島田社長、クローズドなAI需要に期待
5. 日テレ「ZIP!」がAIエージェント導入、企画から台本作成まで自動化
概要
日本テレビが朝の情報番組「ZIP!」でAIエージェントを導入し、番組制作の効率化を実現しました。2025年10月から12月の期間で実際のテレビ制作に適用され、企画提案から台本作成まで全プロセスにAIを活用しています。ディレクターの経験・知識をAIに学習させ、Google検索など外部情報を活用した情報収集、ナレーション原稿の自動生成、映像構成の自動提案機能を搭載しています。テレビ業界では生成系AIの導入が進展しつつあり、人手不足や制作コスト上昇への対応策として検討が進んでいます。AIエージェントとは複数タスクを自律的に順序立てて実行できるAIシステムで、従来のAIが単発の指示に応答するのに対し、エージェントは目標達成まで継続的に動作する点が異なります。ベテランの暗黙知をAIに移転して組織知化する試みとして注目されています。
中小企業への影響
放送局の事例ですが、中小企業にも応用可能な示唆が多く含まれています。コンテンツ制作コスト削減の可能性が示されたことで、放送局以外の企業でも類似システムの導入が検討対象になります。マーケティング部門での企画立案業務への応用や、社内報やSNS投稿など自社メディア運用の効率化に活用できます。ベテラン社員のノウハウをAIで継承する手法として参考になり、中小企業でも段階的に類似の仕組みを構築できる可能性があります。ワークフローとは業務の流れを定義した手順書で、どの順序で誰が何をするかを明確化したものです。具体的な活用例としては、営業企画書の骨子をAIに作成させて担当者が肉付けと調整を行うことで作成時間を半減させたり、社内イベントの告知文や案内状をAIが下書きして広報担当者が最終調整して配信したりすることが挙げられます。
経営者の視点
経営者としては、AI活用による業務プロセス改革の可能性を社内で検討することが求められます。既存スキルとAIの役割分担を再定義し、まずは小規模な試験導入で効果測定を行うことをお勧めします。ベテラン社員のノウハウ整理とドキュメント化を進め、競合他社のAI活用状況を調査することも重要です。AI導入による品質管理プロセスの設計も必要になります。ただし、AIが生成するコンテンツの品質管理が重要であり、人間による最終確認を省略すると誤情報発信リスクがあります。著作権やプライバシーへの配慮も必要です。日テレの事例でも人間の最終確認を前提としたワークフローを構築しており、完全自動化ではなくAIと人間の協働が前提となっています。この点を理解した上で導入を検討することが成功の鍵となります。
参考リンク
ITmedia AI+:日テレ、「ZIP!」企画にAIエージェント導入 ネタ探しから企画書作成まで
まとめ
今回の5つのニュースからは、生成AIの実用化が着実に進んでいることが見て取れます。Sakana AIやNTTのtsuzumi 2といった国産AIの台頭、富士通Takaneによる行政業務への適用、日テレのAIエージェント活用など、さまざまな分野でAI導入が本格化しています。中小企業にとっては、軽量化・低コスト化が進むAIサービスを活用して業務効率化を図るチャンスが広がっています。一方で、AI導入には適切な品質管理体制の構築やセキュリティへの配慮が不可欠です。まずは無料のテスタープログラムや教育講座を活用して知見を蓄積し、自社に適した活用方法を段階的に検討していくことをお勧めします。

