マーケティングニュースまとめ(2025年12月3日〜12月9日)

マーケティングニュースまとめ(2025年12月3日〜12月9日)

 
マーケティング分野では、データとAIを軸にした施策設計の高度化、動画による情報接点の拡張、そして越境ECや新しい還元手段の台頭が同時に進んでいます。2025年12月3日〜12月9日に公表された国内ニュースを振り返ると、ドコモ・インテージ・サイカの共同プラットフォーム開発、新日本製薬のデータ統合を伴うOne to One強化、TikTok Shopを活用した東南アジア向け支援の本格化、テキスト資産を動画へ変換する生成AIの実装、ステーブルコインを活用した新しいインセンティブ設計の試みが目立ちます。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、データ統合とブランド/CRMの進化動画と生成AIの実務活用海外販路と新しい顧客還元の選択肢です。限られた人員・予算でも成果につなげるヒントが含まれているため、ポイントを整理して確認していきましょう。
 

目次

1. ドコモ・インテージ・サイカがブランドロイヤリティ強化を支援する新プラットフォーム開発へ

概要

NTTドコモ、インテージ、サイカの3社は、ブランド選択率の向上やブランドロイヤリティ強化を目的としたマーケティングプラットフォームの共同開発を開始しました。ドコモの「dポイントクラブ」会員データをシングルIDで統合した基盤に、インテージの購買データ分析や効果検証の知見、サイカの消費者意識データ分析技術を組み合わせ、顧客分析から施策実行、購買効果を含む効果検証までを一括で支援する構想です。初期機能として広告クリエイティブのブリーフィング案を生成するAIガイダンス機能を用意し、2026年度早期の提供を目指すとしています。データとクリエイティブの距離を縮め、ブランド施策の意思決定をより科学的にする狙いがうかがえます。
 

中小企業への影響

大企業向けの取り組みに見えますが、実際には中小企業にも波及効果が期待できます。ポイント会員データや購買データ、意識データを横断して活用する設計思想は、規模の大小を問わず「限られた予算で確度の高い施策を回したい」という課題に直結するからです。将来的に類似サービスが外部提供されれば、これまで勘や経験に頼りがちだったブランド施策を、データとAIを軸に設計できる選択肢が増える可能性があります。広告の効果測定だけでなく、ブランド好意や想起の変化を定量的に追える環境が整えば、無駄な出稿やメッセージのズレを早期に修正しやすくなるでしょう。一方で、データ活用の前提となる顧客同意やプライバシー対応の重要性がさらに高まる点には注意が必要です。
 

経営者の視点

このニュースは「巨大データを持つ企業の話」と切り離すのではなく、自社のデータ整備の遅れを点検するきっかけとして捉えるのが得策です。まずは、顧客情報や購買履歴、問い合わせ履歴が部門ごとに分断されていないか、どの指標でブランド価値や継続率を見ているかを整理しましょう。小規模でも、アンケートや会員制度、POSやECの購買ログなど手元のデータを統合し、クリエイティブや訴求の仮説検証を短いサイクルで回す体制を作れば、こうした業界の流れに乗り遅れにくくなります。外部の調査やSNS上の声を合わせて見るだけでも、ブランドの強み・弱みを早期に察知できます。
 

参考リンク

Web担当者Forum:ドコモ・インテージ・サイカがブランド選択率向上などのためのマーケティングプラットフォーム開発へ
 

2. いつもグループ、東南アジア向けTikTok Shop支援を本格化

概要

EC支援を手がける株式会社いつもは、シンガポールおよびマレーシアで「TikTok Shop Partner(TSP)」と「TikTok Affiliate Partner(TAP)」の認定を取得し、日本ブランド向けに東南アジアでのTikTok Shop運営支援を本格的に開始すると発表しました。国内でも複数の公式パートナー認定を得てきた実績を基盤に、商品戦略から運用、インフルエンサーマーケティングまでを包括的に支援する体制を海外にも広げる狙いです。東南アジアのEC市場は成長が続き、ショート動画とライブ配信を起点に購買へつなげる「ディスカバリーEコマース」の存在感が増しています。TikTok Shopを軸にした海外販売のノウハウが、より体系化されていく流れといえます。
 

中小企業への影響

海外販売に興味はあるものの、言語や物流、現地の広告運用に不安を抱える中小企業にとって、TikTok Shopのように「コンテンツ×購買」が一体化したプラットフォームは挑戦のハードルを下げる可能性があります。特に、動画で商品の世界観や使い方を伝えやすい商材は相性が良く、ニッチな日本ブランドでも熱量の高いファンを獲得できる余地があります。国内の価格競争に疲弊している企業にとっては、海外の新しい需要を開拓する選択肢にもなり得ます。一方で、越境ECは返品対応や現地規制、決済手数料、配送料の変動などの影響を受けやすいため、国内販売と同じ感覚で拡大を急ぐと収益が崩れるリスクがあります。
 

経営者の視点

海外展開を検討する場合、まずは「現地の生活者がどこで情報を得て、何を信頼して買うのか」を小さく検証する姿勢が重要です。TikTok Shopは広告と販売が近接しているため、少額のテスト予算でも仮説検証がしやすいのが利点です。自社で完結させるのが難しいなら、現地に強い支援会社やクリエイターと組み、短期のテスト販売から学びを得る設計にしましょう。国内の販促素材をそのまま流用するのではなく、現地の文化や使われる言葉に合わせて動画の構成を調整することが成功確率を左右します。さらに、海外販売を始める前に、利益が出る価格設計と在庫・物流のシミュレーションを必ず行うことが安全策です。
 

参考リンク

PR TIMES:いつもグループ、TikTok Shop SEA公式パートナーに認定 日本ブランドの東南アジア地域におけるTikTok Shop運営支援サービスを本格的に開始
 

3. 動画生成AI「NoLang」、既存テキスト資産を営業・マーケ動画へ転換

概要

動画生成AI「NoLang(ノーラン)」を提供する株式会社Mavericksは、営業・マーケティング現場に特化した動画生成ソリューションの本格展開を発表しました。導入事例記事、ホワイトペーパー、メールマガジンなど既存のテキスト資産を、アバター同士の対話形式などを用いた短尺動画へ素早く変換し、顧客ごとにパーソナライズした提案や情報提供を支援するというものです。長文を読む負担を下げつつ、Webサイト滞在時間やメルマガのクリック率向上、資料請求前の不安軽減などを狙い、受注率やCVRの改善につなげる設計が特徴です。テキスト中心のBtoBマーケに、動画という新しい入口を低コストで追加できる点が注目されます。
 

中小企業への影響

動画活用の重要性は理解していても、撮影・編集・台本作成に時間とコストがかかるため手が回らない企業は少なくありません。こうした自動生成型の仕組みが広がれば、中小企業でも「文章中心の資産」を低コストで動画化し、サイトやSNS、広告に横展開する道が開けます。特にBtoBでは、導入事例やホワイトペーパーを動画で要約して見せるだけでも、初回接触の心理的ハードルを下げられる可能性があります。採用広報やパートナー募集など、営業以外の文脈にも応用できるため、限られた人員で複数の目的を達成したい企業ほど恩恵が大きいでしょう。一方、AI生成動画は内容の正確性や表現のトーン管理が欠かせないため、公開前のチェック体制は必須です。
 

経営者の視点

この動きをきっかけに、自社の「テキスト資産の棚卸し」を行うと良いでしょう。過去の事例記事、FAQ、社内で蓄積したノウハウ資料は、再編集しなくても動画化の素材になり得ます。重要なのは、動画を作ること自体ではなく、どの顧客に何を見せると商談が前に進むかの設計です。まずは、問い合わせ前に読ませたい1本、商談後に送る1本など用途を絞り、小さく試して反応を測定することで、無理なく動画マーケティングの型を作れます。動画の中身は「結論→理由→次の行動」の順に短くまとめ、テキストとの併用で理解度を高める運用が現実的です。
 

参考リンク

PR TIMES:株式会社Mavericksが営業、マーケティング現場に特化した動画生成ソリューションを本格展開。売上拡大と営業効率化に貢献
 

4. アライドアーキテクツとJPYC、ステーブルコイン活用の新マーケ連携

概要

アライドアーキテクツはJPYCと連携し、日本円ステーブルコイン「JPYC」を活用した次世代マーケティングの可能性を探る取り組みを開始しました。ブロックチェーンを用いたデジタル通貨を、ポイントやクーポンの延長線ではなく、新しい顧客体験とデータ連携の基盤として活用する構想です。両社は、少額のインセンティブを大量かつ瞬時に配布できる特性を生かし、デジタルウォレットを通じた新しい施策を検討するとしています。第一弾として、企業のマーケティング・経営企画担当者向けにステーブルコインの基礎と活用可能性を学ぶオンラインセミナーを12月19日に共同開催する予定です。国内ではまだ実例が少ない領域で、早期にユースケースを整理しようという動きが具体化した形です。
 

中小企業への影響

キャッシュレスやポイント施策はすでに一般化していますが、ステーブルコインは「配布・回収・分析」の柔軟性が高く、既存の仕組みでは難しい小口のインセンティブ設計を可能にするかもしれません。例えば、来店やレビュー投稿、コミュニティ参加など、短い行動に対して即時に還元する設計が現実味を帯びます。中小企業にとっては、顧客との接点を増やしながらデータを蓄積できる新しい武器になり得る一方、法規制や会計処理、セキュリティの理解が追いつかないと実装コストが膨らむリスクもあります。取引先や地域の顧客に対して「分かりやすく安全」な説明ができるかどうかが、導入可否を左右するでしょう。
 

経営者の視点

現時点では「すぐに導入すべき技術」というより、2026年に向けた普及フェーズを見据えて情報収集を進めるテーマと捉えるのが現実的です。まずは、既存のポイント・クーポン施策の目的を整理し、どこに限界があるのかを言語化しましょう。その上で、少額インセンティブやコミュニティ施策など、ステーブルコインと相性が良さそうな領域を想定し、実験的に学べる場へ参加するのが安全です。新しい決済・還元手法は、顧客体験の設計力が成果を左右するため、技術だけに目を奪われない姿勢が重要です。将来を見据えて、社内の法務・経理・マーケの連携を早めに整えておくと検討がスムーズになります。
 

参考リンク

PR TIMES:アライドアーキテクツがJPYC社とステーブルコインを活用した次世代マーケティングで連携を開始
 

5. 新日本製薬が「b→dash」採用、One to Oneの高度化を狙う

概要

化粧品・健康食品メーカーの新日本製薬は、データXが提供するデータマーケティングクラウド「b→dash」を導入すると発表しました。複数ブランドを展開する同社はLTVの最大化を重視しており、分散していた顧客データとWeb行動データを統合し、AIを活用した施策設計と分析の精度向上、運用効率の改善を図る方針です。b→dashは解約予兆の検知やロイヤル顧客の行動パターン分析などを通じて、One to One施策を高速に回すことを支援するとされています。セキュリティ面でも国際認証やクラウド基盤を活用した体制を整えている点が導入判断の後押しになったと説明されています。データ統合とAI活用が「攻め」と「守り」の両面で重要になってきたことを示す事例です。
 

中小企業への影響

大手メーカーの事例は、同じツールを利用するかどうかに関わらず、中小企業にとって学びが多いです。特にECやD2Cを手がける企業では、広告費の高騰や市場の成熟で「新規獲得だけでは伸びない」局面が増えており、継続率やアップセル・クロスセルの改善が成長の鍵になります。顧客データの統合とAI分析は、そのための土台となります。小規模企業でも、顧客の行動を可視化できれば、休眠の兆しや再購入のきっかけを早めに掴める可能性があります。一方、ツール導入だけでは成果は出にくく、顧客セグメント設計や配信シナリオ、クリエイティブの改善といった運用力が問われる点は忘れてはいけません。
 

経営者の視点

自社が小規模でも、LTVを伸ばすための基本は同じです。まずは、顧客を「初回購入」「リピート」「休眠予兆」などシンプルな状態で分類し、各段階で何を伝えるべきかを整理しましょう。次に、メール、LINE、同梱物、SNSなど既存チャネルの役割分担を明確にし、少数のシナリオから改善を始めると着地が良くなります。データ統合は大掛かりに見えますが、最初はECと問い合わせ履歴をつなぐ程度でも十分価値があります。小さく始め、計測できる指標を増やしながら段階的に高度化する考え方が現実的です。顧客の声を拾う仕組みを同時に整えることで、AIの分析結果に現場の納得感が生まれ、改善のスピードが上がります。
 

参考リンク

Web担当者Forum:新日本製薬が「b→dash」採用、顧客データを統合してOne to Oneマーケの強化狙う
 

まとめ

 
2025年12月3日〜12月9日に公開されたマーケティング関連の動きからは、「データを統合して顧客理解を深める流れ」と、「コンテンツと購買・還元を近づける流れ」がより鮮明になりました。大手企業の事例は規模が違っても、取り組みの順番や考え方は中小企業にも応用できます。
 
まずは、社内に散らばる顧客データを最小単位で統合し、継続率やLTVなど改善したい指標を決めて小さく実験してみてください。次に、既存の事例・FAQ・メルマガなどのテキスト資産を活用し、短い動画や図解に変換して顧客接点を増やすと、営業・採用・カスタマーサポートまで広い範囲で効果が期待できます。さらに、海外販売や新しい還元手段に関心がある場合は、まずは少額のテストでリスクを抑えながら学ぶ姿勢が重要です。
 
マーケティングは「新しい手法を知ること」よりも、「自社の現場で再現できる形に落とし込むこと」が成果を左右します。この期間のニュースをヒントに、自社のデータ、コンテンツ、顧客体験の3点を見直し、次の成長につながる小さな改善から始めていきましょう。

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