DXニュースまとめ(2025年11月7日〜11月13日)

DXニュースまとめ(2025年11月7日〜11月13日)

 
DX(デジタルトランスフォーメーション)をめぐって、日本国内では「国の補助金」「政府クラウド基盤」「製造業の調達DX」「大企業のDXストーリー」「現場主導のAI活用」と、実務に直結する動きが続いています。
中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、中小企業省力化投資補助事業(一般型)第4回の公募開始ガバメントクラウドの最新進捗の公表製造業の調達DXとAI活用セミナー日本郵船グループのDXストーリー発表AIソフトセンサー導入支援パッケージの提供開始です。

この記事では、それぞれのニュースが中小企業にとってどんな意味を持つのか、経営者は何を考え、どんな一歩を踏み出せばよいのかをわかりやすく解説します。

目次

1. 中小企業のDX投資を後押しする「省力化投資補助事業」第4回公募開始

概要

中小企業庁は「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」第4回の申請受付を開始したと公表しました。公表日は2025年11月10日で、申請受付は11月4日から11月27日まで行われます。
この補助事業は、業務プロセスの自動化・高度化、ロボット導入、DX(システム構築やソフトウェア導入など)といった、省力化や生産性向上につながる投資を支援するものです。

中小企業への影響

この補助金は、人手不足や長時間労働に悩む中小企業にとって、DX投資のハードルを下げてくれる制度です。
例えば、

  • クラウド型の販売・在庫管理システム
  • 製造現場のIoTセンサーや自動計測機器
  • RPA(定型業務の自動化ツール)
    など、これまで「コストが重くて踏み切れなかった」投資を実現する後押しになります。

一方で、「何となく便利そうだから」という理由でシステムを入れてしまうと、運用負担だけ増えて失敗するリスクもあります。自社の業務プロセスをきちんと棚卸しし、“どの作業をどれだけ減らすのか”を定量的に考えたうえで申請することが重要です。

経営者の視点

経営者としては、まず次の3点を整理するとよいでしょう。

  1. 課題の明確化
     「人が足りない業務はどこか」「ミスが多い工程はどこか」を洗い出します。
  2. 省力化のシナリオ作り
     その課題に対して、システム導入や機械化でどの程度時間・コストを削減できそうかをイメージします。
  3. 投資対効果(ROI)の目安
     補助金が出るとはいえ、自社負担は発生します。3〜5年で回収できるかどうかをざっくり試算しておくと、後悔しにくくなります。

申請にはスケジュールの余裕が必要です。公募要領を一読し、自社だけで難しければ、商工会・商工会議所、支援機関の専門家に早めに相談することをおすすめします。

参考リンク

中小企業庁:中小企業省力化投資補助事業(一般型)第4回の申請受付を開始しました

2. 行政DXの基盤「ガバメントクラウド」進捗公表と中小企業への波及

概要

デジタル庁は、政府共通のクラウド環境である「ガバメントクラウド」のページを2025年11月7日に更新し、さくらインターネットの「さくらのクラウド」に関する開発計画の進捗状況を公表しました。
ガバメントクラウドは、政府・自治体の情報システムを最新のクラウド技術で標準化し、迅速・柔軟かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築するための共通基盤と位置づけられています。

中小企業への影響

一見すると「役所の話」で自社とは関係なさそうに見えますが、実は中小企業にとっても重要なニュースです。

  • 自治体や省庁の手続きがオンライン化・自動化されれば、申請・届出にかかる時間や紙の手間が減る
  • 安定したクラウド基盤のもとで、新しいデジタル行政サービス(補助金申請、各種証明書の取得など)が増える
  • オープンデータやAPIを活用した、新しい民間サービスのビジネスチャンスが広がる

といった変化が期待できます。

特に、BtoG(行政向けビジネス)や、地域の事業者向けサービスを展開している会社にとっては、行政システムとの連携やデータ連携を前提としたサービス設計が重要になってきます。

経営者の視点

経営者としては、次の観点を押さえておくと良いでしょう。

  • 取引先や顧客に自治体が多い場合、公募・入札情報、行政のDX方針を定期的にチェックする
  • 自社サービスが、行政のオンライン手続きやオープンデータと組み合わせられないかを検討する
  • 自社の基幹システムや顧客管理も、クラウド前提で設計を見直す

国・自治体のDXが進むと、「紙でのやりとり」を前提にしたビジネスは少しずつ不利になります。行政DXを“外から眺める”のではなく、自社の競争力を高める追い風としてどう使うかを考えるタイミングです。

参考リンク

デジタル庁:ガバメントクラウド

3. 製造業の競争力を左右する「調達DXとAI活用」セミナー開催

概要

SCSK株式会社は、2025年11月10日付で「製造業の未来を共に創る調達DX戦略とAI活用の最前線 ~坂口氏と考える、AI時代の調達戦略と競争力の再構築~」というイベントを案内しました。
地政学リスクや為替変動、ESG対応、人権デューデリジェンスなど、調達部門を取り巻く課題が増える中、調達DXとAI活用の事例紹介、参加者同士のグループワークを通じて実務に役立つヒントを提供する内容です。後半では、SCSKによる「スマクラ」と「ServiceNow SLO」を組み合わせた調達ソリューションも紹介されます。

中小企業への影響

調達と聞くと「大企業の話」に感じるかもしれませんが、原材料・部品・外注先に依存する中小の製造業にとっても、調達業務のデジタル化は生き残りに直結するテーマです。

  • 仕入価格やリードタイムをデータで見える化できれば、値上げ交渉や代替サプライヤー検討がしやすくなる
  • 発注履歴や在庫推移をAIで分析することで、過剰在庫や欠品リスクを減らせる
  • 調達プロセスを標準化・システム化すれば、属人化の解消や引き継ぎのしやすさにもつながります。

こうした考え方は、専門的なツールをまだ導入していない企業でも、Excelやクラウド会計ソフト、在庫管理アプリのレベルから実践可能です。

経営者の視点

経営者としては、まず自社の調達プロセスを簡単なフロー図にしてみることをおすすめします。

  • 誰が、どの情報を見て、どのタイミングで発注しているのか
  • 価格・納期・品質などの条件を、データとしてどこまで残せているか
  • その情報を、経営判断(値決め、投資判断など)に活かせているか

これを整理するだけでも、「ここをシステム化すべきだ」「ここはAIに任せられそうだ」といったDXのヒントが見えてきます。
今回のようなセミナー情報は、自社だけで考えるのが難しいときに“他社の実例”から学べる場です。製造業に限らず、仕入や外注に依存するビジネスを展開している企業は、調達DXの情報収集を意識してみてください。

参考リンク

SCSK:製造業の未来を共に創る調達DX戦略とAI活用の最前線(イベント案内)

4. 日本郵船グループが「DXストーリー」を公開:大企業DXから学べること

概要

日本郵船株式会社は、2025年11月12日付で「日本郵船グループDXストーリー」を発表しました。
同社は、経済産業省の「DX銘柄」に3年連続で選定され、2023年には「DXグランプリ」を受賞するなど、デジタル時代を先導する企業として高い評価を受けています。今回のDXストーリーでは、既存中核事業の深化と新規成長事業の開拓に向けたデジタル基盤整備の方向性を明確にし、DXを「変革の原動力」と位置づけています。

中小企業への影響

海運大手の話と聞くと遠い世界のようですが、大企業がどのようにDXを“物語”として整理・発信しているかは、中小企業にとっても参考になります。

  • DXを「単発のIT導入」ではなく、中長期の経営ストーリーの一部として語っている
  • 現場とマネジメントの両方から変革を進める「双方向のDX」を意識している
  • 環境・社会への責任(サステナビリティ)とDXを結びつけている

といった点は、そのまま中小企業にも当てはまります。補助金やツール導入に目が行きがちですが、「自社はDXでどんな未来を目指すのか」を社内外に伝えることも重要です。

経営者の視点

経営者として、次のような「自社版DXストーリー」を簡単に文章化してみるのがおすすめです。

  1. 会社として、3〜5年後にどんな姿を目指すのか
  2. そのために、どの業務・どの顧客接点をデジタルで変えていくのか
  3. 社員・顧客・パートナーに、どんな価値を提供したいのか

A4一枚でも構いません。社内ミーティングや採用活動、金融機関との対話の場でこのストーリーを語れると、DX投資の理解も得やすくなります。大企業の事例は、「規模は違っても考え方は真似できる」と捉えて、自社のDX方針づくりに活かしていきましょう。

参考リンク

日本郵船:「日本郵船グループDXストーリー」を発表

5. 現場主導のAI活用を支援する「AI Soft Sensor」導入パッケージ提供開始

概要

NTTドコモビジネス株式会社は、現場主導でAI活用を加速する「AI Soft Sensor」導入支援パッケージを2025年11月12日から提供開始すると発表しました。
AI Soft Sensorは、AI・機械学習を使って、周囲のセンサー情報からリアルタイムに測定が難しい状態や品質を予測する「ソフトセンサー」です。このパッケージは、AIモデル開発の教育プログラムと、導入支援ツールを組み合わせることで、現場担当者が専門知識なしでもAIモデルを自社開発できるよう支援する内容になっています。

中小企業への影響

化学・水処理などのプラントを持つ企業だけでなく、設備産業全般で「センサーはあるが、データを十分に活かせていない」という悩みは多く聞かれます。

この取り組みのポイントは、“AI人材を外から連れてくる”のではなく、“現場の担当者がAIを扱えるようになる”ことを重視している点です。

  • 現場の感覚やノウハウをAIモデルに落とし込むことで、より実務に即した予測ができる
  • 教育プログラムを通じて、現場内にDX人材を育成できる
  • 専門家に丸投げせず、自社で改良し続ける体制を作りやすくなる

これらは、規模の小さい工場や設備産業の中小企業にとっても大きなヒントになります。

経営者の視点

経営者としては、AIやソフトセンサーのような高度な技術を「特別なもの」と捉えるのではなく、“現場改善の延長線上にあるツール”として見ることが大切です。

  • まずは「どの指標(不良率、歩留まり、エネルギー消費など)を予測できると価値があるか」を決める
  • 既に取得しているセンサーデータがあれば、どんな分析ができそうかを専門家やベンダーに相談してみる
  • いきなりフルスケールで導入するのではなく、一つのライン・一つの工程で小さく試す

というステップを踏むと、投資リスクを抑えつつAI活用の感触をつかめます。
今回のように「教育」と「ツール」をセットにしたサービスの登場は、“人に依存しない現場DX”を進めるうえで大きな流れと言えます。自社でも、どの工程にAIを使うと効果がありそうか、一度棚卸しをしてみてください。

参考リンク

NTTドコモビジネス:現場主導でAI活用を加速する「AI Soft Sensor」導入支援パッケージを提供開始

まとめ

 
今回取り上げたニュースを振り返ると、DXは「特別な一部の企業だけの取り組み」ではなく、補助金・行政インフラ・セミナー・大企業の事例・現場向けAIツールなど、あらゆるレイヤーで進んでいることが分かります。
中小企業経営者にとって重要なのは、

  • 国の支援策(補助金・公的プロジェクト)を上手に活用すること
  • 行政DXや大企業の動きを“遠くから眺める”のではなく、自社ビジネスにどう生かすかを考えること
  • 調達や現場改善など、足元の業務から一つずつデジタル化・見える化を進めること

です。

DXは、一度の大きなプロジェクトで完結するものではありません。「小さく試す → 効果を確かめる → 範囲を広げる」というサイクルを回せるかどうかが、最終的な競争力の差につながります。
今回のニュースをきっかけに、まずは自社のどこからDXに着手するか、社内で話し合う場を作ってみてください。そこから次の一手が見えてきます。

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