生成AIニュースまとめ(2025年7月7日〜7月13日)

生成AIニュースまとめ(2025年7月7日〜7月13日)

生成AI(ジェネレーティブAI)分野で中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、日本のAI利用実態、最新AIモデル競争、そして国内企業の技術革新やサービス開始など多岐にわたりました。総務省の白書から日本企業の出遅れが浮き彫りになり、海外ではイーロン・マスク氏の新AIモデルが「世界最強」を名乗りを上げました。また、国内中小企業の調査ではAI導入による業務効率化と人員削減の動きが明らかになり、NTTによる画期的な技術開発や、日本語対応の新しいAIサービス開始といった朗報も出ています。以下、注目の5つのニュースとそのポイントを、中小企業にとっての意味合いとともに解説します。

目次

1. 日本の生成AI利用率は26.7%、米中に大きく遅れ(情報通信白書)

概要

総務省が発表した2025年版「情報通信白書」によれば、日本で生成AIを「使ったことがある」人の割合は2024年度で26.7%にとどまりました。前年から約3倍に増えたものの、中国(81.2%)や米国(68.8%)と比べ依然低水準で、企業でも生成AI活用の方針があると答えた企業は日本は約半数に過ぎず、中国(9割超)や米国(8割超)との差が大きい状況です。また、日本のデジタル分野の貿易赤字(クラウド利用料など含む)はここ5年で倍増し、2024年には約6.7兆円に達しています。政府は国内課題解決のためにデジタル新技術の徹底活用を促しています。

中小企業への影響

この白書は、日本の企業、とりわけ中小企業でのAI導入の遅れが浮き彫りになったことを示しています。競合国が生成AIを積極活用して効率化や新事業創出を進める中、日本の中小企業が様子見を続ければ、国際競争力で一層不利になる恐れがあります。裏を返せば、国内でAIを活用した業務効率化やサービス改善に乗り出す余地が大きいとも言えます。今後、中小企業にも利用しやすい国産AIソリューションや支援策が増える可能性があり、この遅れを取り戻すチャンスも生まれるでしょう。一方で、海外製クラウドAIサービスへの依存が高まるとコスト増や情報流出リスクもあるため、慎重な導入計画が求められます。

経営者の視点

経営者として、自社がAI活用で出遅れないようアンテナを高く張ることが重要です。まずは自社業務でAIが使える部分(例えば問い合わせ対応の自動化や在庫管理の最適化など)を洗い出し、小さくても導入を試みる姿勢が求められます。また公的機関や業界団体が提供する生成AI関連セミナー、助成金情報にも目を配りましょう。白書の結果から危機感を持ちつつ、社員へのAIリテラシー教育や社内の活用ルール整備を進めることで、「使えるところから使ってみる」素早い実践ができます。国のデジタル支援策も活用しながら、自社の競争力向上にAIを役立てていく戦略を今こそ検討すべきです。

参考リンク

ANNニュース:AI活用で世界に遅れ実態明らかに 情報通信白書を公表(総務省)

2. イーロン・マスク氏のxAI、新モデル「Grok 4」発表 – “世界最強”をアピール

概要

米起業家イーロン・マスク氏率いる新興AI企業xAIは7月10日、最新の大規模AIモデル「Grok 4」を発表しました。同社はGrok 4について「世界で最も賢いAI」と謳い、従来モデル(Grok 3)より学習データ量を10倍に増やし大幅な性能向上を達成したとしています。実際、学術ベンチマークテストでOpenAIのGPT-4やグーグルのGeminiなど既存トップモデルを上回る高スコアを記録し、ツール使用時には他モデルを大きく引き離す成果(正答率44.4%)を示したと発表されています。さらに上位版の「Grok 4 Heavy」を月額300ドルのプランで提供し、本格的な商用利用を視野に入れています。Grok 4は既にAPI経由でも利用可能で、今後はコード生成特化モデルやマルチモーダルAI(画像・動画対応)エージェントの投入も計画中とのことです。

中小企業への影響

「世界最強」の触れ込みは宣伝的な側面もありますが、Grok 4の登場は生成AIの性能競争がさらに過熱していることを意味します。大企業だけでなく新興企業も次々に高性能モデルを送り出すことで、今後AIサービスの選択肢は増え、価格競争も進むでしょう。中小企業にとっては、より安価で高機能なAIツールが手に入るチャンスが増える可能性があります。例えば、これまではコストや精度面で導入を躊躇していたAIの活用(自動翻訳、契約書レビュー、自社データを使ったチャットボット等)が、新しい強力なモデルの登場で現実的になるかもしれません。一方で、性能が向上するほどAIへの依存度やリスクも増え得ます。最新モデルは情報漏えいや誤作動のリスク管理、適切な使いどころの見極めがより重要になるでしょう。

経営者の視点

経営者として、派手なキャッチコピーに飛びつくのではなく冷静に技術の中身と自社メリットを見極める姿勢が大切です。Grok 4のような新モデルが話題になったら、その性能評価や事例を注視しましょう。自社で使う場合は、まず小規模テストで本当に業務改善につながるか検証するのがお勧めです。また、OpenAIやグーグル以外にも有力なAI提供者が出てきたことで、特定企業への過度な依存を避け、複数サービスを比較検討することも可能になります。競争が激化するAI業界では、「どのAIを使うか」も経営戦略の一部です。社内のIT担当者や信頼できるAIベンダーに相談しながら、性能だけでなくコストやサポート体制も含め最適なツール選定を行いましょう。新技術を取り入れる柔軟性と同時に、導入後のセキュリティ対策や社員教育も忘れずに進めることが肝要です。

参考リンク

PC Watch:「世界で最も賢いAI」イーロン・マスクが「Grok 4」を発表

3. 中小企業の半数がAIで人員削減を計画、事務職で顕著に

概要

民間調査により、中小企業の約半数(48.9%)がAI導入に伴い人員削減を実施済み、または実施予定であることがわかりました。この調査は製造業・サービス業など中小企業経営者1,000人超を対象に行われたもので、AI導入が必ずしもリストラに直結するわけではないものの、人手不足やコスト圧力を背景に「AIでできる業務はAIに任せ、人員を減らす」傾向が浮き彫りになっています。実際に、AI導入によって削減・縮小された(または検討中の)業務・職種としては、「データ入力・管理」(47.0%)が最も多く、次いで「事務・総務」(35.6%)、「会計・経理」(31.8%)と定型的・反復的なバックオフィス業務が上位を占めました。一方で、調査からは中小企業がAI導入を進める上での課題も浮かんでおり、コスト面の制約、AI人材の不足、使い方が分からない不安といった要因が導入の壁になっているとの指摘があります。

中小企業への影響

この結果は、中小企業における業務の自動化ニーズの高さを示すものです。人手不足に悩む企業では、AIで単純作業を代替し、省力化する動きが加速しています。特に事務・経理などはAIツールの成熟で効率化しやすいため、今後もこうした職種から業務内容が変容していくでしょう。ポジティブな側面として、煩雑な事務作業が減れば従業員はより付加価値の高い業務に注力できるようになります。また、人材採用が難しい分野をAIで補完できれば、中小企業の生産性向上につながります。しかしネガティブな側面として、拙速な人員削減は残った社員の負担増や士気低下を招く恐れがあります。さらに「AIがあれば人はいらない」という誤解が広がると、将来の人材確保や育成にも影響しかねません。導入コストやノウハウ不足の問題も、結局は適切な投資を怠ると競争力低下に直結するリスクがあります。

経営者の視点

AI導入で得られる効率化メリットを最大化する一方、人材戦略とのバランスを取ることが経営者の腕の見せ所です。まず、AIで代替できる業務(データ入力・集計作業など)は積極的にツールを導入し、人手を省きましょう。ただし、その際に浮いた人員を解雇するだけでなく、別の業務へ配置転換したり、新たな価値創出に振り向けたりする発想が重要です。従業員には「AIを味方につけて生産性を上げる」方針を示し、リスキリング(学び直し)の機会を提供することで、AIと人が協働できる組織づくりを目指してください。また、コストやノウハウの課題に対しては、安価に始められるクラウドAIサービスの利用や、自治体・支援機関の補助事業を活用するといった対策が考えられます。導入前にはROI(投資対効果)をシミュレーションしつつ、導入後は業務フローの見直しも並行して行いましょう。経営者自らがAIの有効性と限界を正しく理解し、社員と対話しながら進めることで、AIによる効率化と人材活用の両立が実現できます。

参考リンク

PR TIMES:AI導入で削減・縮小が進む業務・職種は? 中小企業の人材戦略が変化

4. NTT、生成AIモデルの再学習コストを大幅削減する新技術「ポータブルチューニング」開発

概要

NTTは7月9日、生成AIモデルの運用コストを抜本的に低減する画期的な技術「ポータブルチューニング」を開発したと発表しました。通常、企業が自社の用途にAIモデルをファインチューニング(追加学習)すると、土台となる基盤モデルがアップデートされる度にその特化モデルも再学習が必要でした。しかしNTTの新技術では、基盤モデルの出力を補正する独立した「報酬モデル」を学習し再利用することで、異なる新しい基盤モデル上でも追加学習なしで以前の学習成果を引き継げるようになります。言い換えれば、モデルを乗り換えても一から学習をやり直す必要がなくなり、特化AIの保守コストが大幅に下がるということです。NTTによると、この技術により再学習コストを数十分の一に削減できる可能性があり、詳細な技術成果は7月中旬開催の国際会議ICML 2025で発表予定とのことです。

中小企業への影響

最先端の研究開発ですが、実用化されれば中小企業にも恩恵は大きいでしょう。例えば、自社独自の生成AIモデル(顧客対応用の対話AIや業界特化の文章生成AIなど)を運用する際、モデル更新のたびに巨額の再学習費用を負担するのは中小企業には現実的ではありません。この技術が確立され普及すれば、AI導入後の維持費用が大幅に低減し、中小企業でも最新のAIモデルに追随しやすくなります。さらに、将来的にはAIベンダー各社がこの手法を取り入れることで、提供されるAIサービスの価格引き下げや更新頻度の向上につながる可能性もあります。要するに、「AIを使い始めた後」のコスト障壁が下がることで、これまで導入に慎重だった企業も前向きに検討できる環境が整ってくるかもしれません。一方で、技術が高度化するほど中小企業側にはそれを使いこなすITリテラシーが必要になります。安価になってもブラックボックスなAIを扱うリスクは残るため、技術動向とともに適切なガバナンス体制も重要です。

経営者の視点

NTTの発表は、「AI活用にはランニングコストもかかる」というこれまでの常識を覆す可能性を示しました。経営者としてこのニュースから得られる教訓は、AI導入を長期的視野で考えることです。初期費用や目先の効果だけでなく、モデル更新やメンテナンスまで含めたトータルコストでAI活用を捉える必要があります。今回の技術のように、今後はAI運用コストが下がるトレンドが期待できるため、「今は高いから無理」と決めつけず将来を見据えて準備を進めましょう。具体的には、まず小規模でもAI導入経験を積んでおき、社内にノウハウを蓄えておくことです。NTTの技術が一般に利用できるようになれば、自社AIを持つことも夢ではありません。その際に備え、自社データの蓄積や活用スキルの底上げを図っておきましょう。また、このニュースは国内企業の技術力の高さを示すものでもあります。信頼性やサポートの観点から、国産AIソリューションにも目を向けてみる価値があります。いずれにせよ、技術革新によってAI活用のハードルは下がりつつあるため、「いつでも飛び乗れる」よう準備しておく経営判断が求められます。

参考リンク

IT Leaders:NTT、基盤モデル更新時の再学習を不要にする「ポータブルチューニング」技術

5. 日本語特化の画像生成AIサービス「Result+AI」提供開始 – マーケ領域で手軽に活用

概要

マーケティング支援を手掛ける国内企業ピアラが、日本語で直感的に操作できる画像生成AIサービス「Result+AI」を7月9日にリリースしました。このサービスはユーザーインターフェースが日本語対応で、英語のプロンプト(AIへの指示文)を考える必要がなく、誰でも簡単に高品質な画像を作り出せる点が特徴です。また決済も日本円に対応し、利用者サポートも日本語スタッフが行うなど、中小企業や個人事業主でも安心して導入できるよう配慮されています。価格プランもお手頃で、チーム全員で使えるユーザー数無制限のライセンス形態を採用しており、スタートアップから大企業まで柔軟に利用可能とのことです。用途としては、広告用の画像作成、商品写真の生成、販促素材のデザインなどマーケティングDXを支援する幅広いシーンが想定されています。

中小企業への影響

このサービス開始は、クリエイティブ制作のハードルが下がっていることを象徴しています。従来、広告バナーや商品画像の制作にはデザイナーのスキルや外注費用が必要でしたが、Result+AIのようなツールを使えば社内の誰もがアイデア次第でプロ並みの画像を作成できる可能性があります。特に「日本語でOK」「マニュアルやサポートも充実」という点は、中小企業にとって大きな利点です。英語が障壁となり最新AIツールの導入を諦めていたケースでも、このような国産サービスなら安心して試すことができるでしょう。結果として、宣伝物制作の効率化とコスト削減、さらには表現の幅の拡大が期待できます。一方で、誰でも扱えるがゆえに社員が無秩序に生成AIを使い始めると、ブランドイメージと合わないビジュアルが出回ったり、著作権・肖像権のチェック漏れといったリスクもゼロではありません。社内でツール利用のルールを決め、デザインの最終確認プロセスを設けるなどの対策は必要です。

経営者の視点

経営者はまず、このサービスのような「すぐ試せるDXツール」を前向きに受け入れる姿勢を持つことが重要です。マーケティング分野は競合との差別化がカギですから、AIでクリエイティブ制作を効率化しつつクオリティも向上できれば、自社の宣伝効果を高める大きな武器になります。例えば、新商品のプロモーション画像を短時間で多数作りA/Bテストする、SNS投稿用の魅力的なビジュアルを社内で量産するといったことも可能になるでしょう。導入にあたっては、まず少人数のチームでトライアルし、有用性を確認した上で全社展開するのがおすすめです。その際、社員への研修や成果物のチェック体制を整えることも忘れないでください。便利なツールほど使い方一つで結果が変わるため、良い事例を社内共有し、ナレッジを蓄積しましょう。さらに、コスト面でも外注削減や作業時間短縮による年間経費の見直しを行い、浮いたリソースを他の戦略投資に回すことも可能です。総じて、身近で実践しやすい生成AIサービスを積極的に取り入れることで、スピーディーかつ創造的な経営判断につなげていくことができます。

参考リンク

PR TIMES:日本語特化の画像生成AIツール「Result+AI」サービス提供開始(ピアラ)

まとめ

今週のニュースから浮かび上がるのは、生成AIを巡る技術革新と活用動向の両面で大きな変化が進んでいるという点です。総務省の白書が示したように、日本では利用経験者こそ急増しているものの、世界と比べ企業での活用は遅れが見られます。これは裏を返せば、中小企業にとってAI活用の伸びしろが大きいことを意味します。実際、住友商事のような大企業では全社的にAIツールを導入し年間十数億円規模の効率化効果を見込む事例も出ていますし、中小企業でも約半数が単純業務を中心にAIで省人化を図り始めています。重要なのは、こうした動きを他人事と捉えず自社の経営課題に置き換えて考えることです。「うちは規模が小さいから関係ない」ではなく、技術動向をキャッチアップし、自社で何が活用できるか積極的に模索する姿勢こそが競争力の分かれ目になります。

幸い、今週のニュースには希望の持てる話も多くありました。NTTの新技術は将来、費用や技術面でのハードルを下げてくれるかもしれません。また、日本語対応の生成AIサービス開始は、言語や使い方の不安を減らし、中小企業がDXに踏み出す後押しとなるでしょう。海外でも最先端モデルが次々登場し、今後はAIの性能向上と価格低下が加速しそうです。こうしたチャンスを取り込むために経営者がすべきは、「まずは試して学ぶ」ことです。小さく始めて効果と課題を検証し、うまくいけばスケールさせる、一方でリスクは社員教育やルール整備で備える――そのような素早く柔軟な経営判断が求められます。

生成AIの波は今後もビジネスの在り方を大きく変えていくでしょう。来週以降も国内外で新たな発表や施策が続く見込みです。中小企業の皆様は引き続きアンテナを高く張り、最新情報をウォッチしながら、自社の成長にどう活かせるか前向きに考えていきましょう。新しい技術を味方につけ、俊敏かつ賢明に行動する企業こそが、これからの市場で存在感を発揮できるはずです。

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