生成AIニュースまとめ(2025年5月5日〜5月11日)

生成AIニュースまとめ(2025年5月5日〜5月11日)

生成AI(ジェネレーティブAI)分野では、国内外で重要な動きが相次ぎました。日本政府は中小企業にも恩恵が及ぶ支援策を開始し、海外ではAIモデルの性能向上や新機能追加が発表されています。また、スマートフォン市場や企業の人材育成にも生成AIの波が押し寄せており、中小企業経営者にとって見逃せないトレンドとなっています。注目の5つのニュースとそのポイントを、中小企業にとっての意味合いとともに解説します。

目次

1. 国主導の「生成AIサービス開発」懸賞金プロジェクト開始

概要:
経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は5月9日、生成AIの社会実装を促進するための新プロジェクト「GENIAC-PRIZE」を開始しました。生成AIによる課題解決策を募り、優れた成果には総額約8億円の懸賞金が授与されます。テーマは製造業の技能伝承、カスタマーサポート効率化、行政の審査業務効率化、安全性向上の技術開発など多岐にわたり、2025年末まで実証開発が行われます。

中小企業への影響:
国の後押しにより、生成AIを活用した製品・サービス開発が活発化する見通しです。中小企業でも、自社の業界課題をAIで解決する新サービスが今後登場する可能性があります。特にIT人材や予算が限られる企業にとって、国産の生成AIソリューションが増えることで、手頃な価格や安心のサポートで最新技術を導入しやすくなるでしょう。一方、公的資金が投入されることで市場競争が激化する可能性もあり、自社のビジネス領域に関連する動向を注視する必要があります。

経営者の視点:
経営者としては、国の支援策をうまく活用するチャンスです。自社で開発リソースがある場合、プロジェクトに応募して資金や技術支援を得ることも検討できます。また、自社課題に合った生成AIソリューションが他社から提供される場合に備え、アンテナを高く張りましょう。例えば、業務効率化や顧客対応に関するサービスが出てきたらいち早く試験導入し、自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り入れる積極性が求められます。

参考リンク:
Impress Watch:NEDO、生成AIサービス開発に懸賞金「GENIAC-PRIZE」 総額8億円

2. グーグル、新AIモデル「Gemini 2.5 Pro」を先行公開

概要:
米グーグルは5月6日、次世代の生成AIモデル「Gemini 2.5 Pro」のプレビュー版(I/O Edition)を公開しました。現在開発者向けに早期アクセスが提供されており、特にコード生成能力が大幅に向上しています。チャット形式で要望を伝えるだけでウェブアプリのUI設計に沿ったHTML/CSSやReactコードを出力できるなど、プログラミング支援機能が強化されました。また、動画内容を理解し要約したり、動画から必要な情報を抜き出してコード化するといった動画理解の性能も高まり、関連ベンチマークで高スコアを記録しています。

中小企業への影響:
最先端AIモデルの性能向上により、中小企業でも高度なAI機能を利用しやすくなります。例えば、専門のエンジニアが少ない企業でも、生成AIの支援でウェブ開発やデータ分析を効率良く行える可能性があります。動画資料や監視カメラ映像から自動でレポートを作成したり、複雑なプログラムの一部をAIに任せたりといったことが現実味を帯びてきました。ただし、新機能を使いこなすには社内のITリテラシーも問われるため、導入には社員教育や検証期間が必要です。

経営者の視点:
経営者としては、急速に進化するAIツールを積極的に試し、自社業務への適用可能性を検討すべき時期です。例えば、プロトタイプ開発やデータ処理で外注していた作業を、AIサービスで代替できないか小規模なPoC(概念実証)を行ってみましょう。最新モデルはクラウド経由で利用できるため、大企業だけでなく中小企業でも初期投資を抑えて導入可能です。一方で、ツールに過度に依存しすぎず、結果の検証や人的チェック体制を整えることも忘れずに。新技術を取り入れつつ、人間の創意工夫と組み合わせることで競争力向上につなげましょう。

参考リンク:
Impress Watch:Gemini 2.5 Pro I/O edition公開 Webアプリ開発や動画からコード生成強化

3. スマホの3台に1台が生成AI搭載へ – 普及加速の予測

概要:
市場調査会社カウンターポイントの最新レポートによれば、2025年に出荷されるスマートフォンの3台に1台が生成AI機能を搭載する見通しと発表されました。これは世界全体で4億台を超える規模で、2024年時点の「5台に1台」から大幅に比率が増えることになります。背景には半導体性能の進展により、端末内でAI処理を行える環境が整ってきたことがあります。従来はハイエンド機種が中心でしたが、今後は中価格帯のスマホにもAIチップや大規模言語モデルが搭載され、より幅広い層に行き渡ると予測されています。

中小企業への影響:
スマホのAI対応が進むことで、消費者の身近なデバイス上で高度なAIサービスが利用可能になります。中小企業にとっては、顧客向けサービスやマーケティング手法にも変化が及ぶでしょう。例えば、AI搭載スマホを使った音声アシスタントによる商品案内や、カメラ機能と連動したAR接客など、新しい顧客体験の提供が現実味を帯びます。逆に言えば、従来の手法だけではユーザーの期待に応えられなくなる可能性もあります。また、社員が業務で使うスマホから手軽にAI分析や翻訳などを行えるようになれば、業務効率化のチャンスも広がります。

経営者の視点:
経営者は、自社のビジネスモデルがスマホ上のAI普及によってどう影響を受けるかを考えてみましょう。自社の商品やサービスがスマホのAIアシスタントに推薦されるよう最適化できないか、検討が必要です。具体的には、ウェブサイトの構造化データ整備やレビューの充実など、AIが情報を取得しやすい環境づくりが考えられます。また、社内では従業員に最新スマホを活用した業務改善のアイデアを募り、小さな実験を重ねることも有効です。時代の変化に合わせて柔軟に戦略をアップデートし、スマホAI時代に取り残されないようにしましょう。

参考リンク
Plus Web3:生成AI搭載スマホ、2025年には3台に1台の普及率へ

4. ChatGPTに「ショッピング機能」登場、検索の在り方が変化

概要:
OpenAIは4月29日、対話型AI「ChatGPT」において商品を検索・比較できるショッピング機能の提供を開始すると発表しました。ユーザーはチャット上で欲しい商品の条件を伝えるだけで、AIが該当商品のリストを提示し、価格やレビューを比較しながら購入先リンクを確認できます。表示される商品結果は広告ではなくオーガニック検索に基づいており、無料ユーザーを含むすべてのユーザーが利用可能です。家電やファッションなどを中心に対応しており、対話を重ねることでよりニーズに合った商品を絞り込める点が特徴です。

中小企業への影響:
検索エンジンやECサイト経由が主流だった商品探しに、新たなルートが加わりました。中小の小売・メーカーにとって、広告に頼らずとも良質な商品情報を整備しておけば、AIによる中立的な推薦で消費者の目に留まるチャンスが生まれます。一方、自社の商品がAIに正しく認識されるよう、データ整備や口コミ促進などデジタル上の情報発信が今まで以上に重要になります。また、この動きは今後他社のチャットAIや検索エンジンにも波及する可能性があり、SEOの概念やマーケティング手法にも変革を迫られるかもしれません。

経営者の視点:
経営者としては、まず自社の商品・サービス情報がオンライン上で適切に発信されているか見直しましょう。ChatGPTのようなAIが情報源とするのはウェブ上の公開情報やレビューです。自社サイトの製品ページや説明を充実させ、第三者によるレビュー獲得にも力を入れるべきです。加えて、自社の商品がAIに選ばれるための新たな指標(例えばユーザー評価や話題性)を意識したブランディング戦略も考えられます。AI時代の消費者動向を研究し、「AI時代の買われ方」に対応できる企業体質を整えることが求められます。

参考リンク:
ECzine:OpenAI、ChatGPTにショッピング機能を追加 会話内で商品検索・比較・購入先確認が可能に

5. 新入社員の半数が生成AI研修受講、企業の人材育成に変化

概要:
企業の人材育成にも生成AIブームの影響が現れています。5月8日に公開されたメタリアル社の白書によると、2025年度入社の新入社員に対し生成AI活用研修を「実施している」企業は約5割にのぼり、前年(2024年度入社時)より17.2ポイント増加しました。研修内容の約7割は業務効率化を目的としたものが占めています。また、生成AI研修を受けていない新入社員の多くも「研修があった方が良い」と感じており、AIスキル習得への意欲が高いことが伺えます。さらに就職活動において実際に生成AIを活用した新入社員は昨年より30ポイント以上増えており、若手人材のAIリテラシーが急速に向上しています。

中小企業への影響:
人材面でも生成AIへの対応が企業間の差別化要因になりつつあります。大企業だけでなく中小企業でも、若手社員が積極的にAIツールを使って効率化やアイデア出しを行う場面が増えるでしょう。もし自社内にAI活用の機会や研修機会がなければ、優秀な人材が「AIに理解のある職場」を求めて流出するリスクも考えられます。一方で、中小企業は組織がフラットな分、新しい研修やツールを導入しやすい利点があります。少人数でも効果的なAI研修を取り入れれば、一人ひとりの生産性向上に直結しやすいでしょう。

経営者の視点:
経営者は、人材育成の面からも生成AIを経営戦略に組み込む必要があります。まずは社内でAI研修の機会を設け、例えばChatGPTの使い方やプロンプトの工夫の仕方といった基礎から、業務への応用事例まで教えてみてはどうでしょうか。外部セミナーへの参加やオンライン教材の活用も手軽な選択肢です。新人だけでなく全社員のAIリテラシーを底上げすることで、日々の業務改善や新サービス開発のアイデアが生まれやすくなります。また、社員が安心してAIを使えるようにガイドライン整備やセキュリティ対策にも配慮し、良識あるAI活用文化を育むことが大切です。

参考リンク
PR TIMES:2025年度新入社員への生成AI研修は約5割が導入。生成AI研修を求める声は昨年比15.2ポイント増(メタリアル白書)

まとめ

生成AIをめぐる今週の動きを振り返ると、技術革新と社会実装が同時進行で進んでいることが分かります。政府による支援や大手企業の新技術公開によって、最新AIがより身近で実用的な存在になりつつあります。一方で、その恩恵を生かすためには企業側の準備も不可欠です。中小企業の経営者は、技術動向をキャッチアップし、自社で何が活用できるか積極的に模索する姿勢が求められます。例えば、公的プロジェクトへの参加や新サービスの試験導入、社内研修の充実など、できることから着手しましょう。

今後、生成AIはさらにビジネスのあらゆる場面に浸透していくでしょう。以降も各社の発表や政策の展開が続く見込みです。チャンスとリスクを正しく見極め、自社の成長に結び付けていくために、引き続きアンテナを張って最新情報を追いながら、俊敏かつ柔軟な経営判断を行っていきましょう。

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