生成AIニュースまとめ(2025年4月28日〜5月4日)

生成AIニュースまとめ(2025年4月28日〜5月4日)

生成AI(ジェネレーティブAI)を取り巻く動きは、日本国内でもビジネスに直結する重要な変化が相次いでいます。
この週(4月28日~5月4日)も、OpenAIによる最新モデルへの移行国内企業とOpenAIの戦略提携大手企業の新たな生成AI導入の動きAIを巡る法整備の前進、そして災害時における生成AI悪用への警鐘といった注目ニュースが報じられました。忙しい中小企業の経営者にとって、これらのトピックを把握することはビジネスチャンスの活用リスクへの備えに直結します。本記事では主要なニュース5件を厳選し、その内容と中小企業への影響、経営者としての対応策を分かりやすく解説します。

目次

1. ChatGPTのGPT-4提供終了、新モデル「GPT-4o」に完全移行

概要
OpenAIは4月30日をもって対話AI「ChatGPT」でのGPT-4モデルの提供を終了し、後継となる新モデル「GPT-4o」に完全移行しました。
GPT-4oはマルチモーダル対応の高性能モデルで、文章生成やコーディングなど幅広いタスクでGPT-4を上回る性能を持つとされています。なお、GPT-4はAPI経由では引き続き利用可能で、ChatGPTでは今後GPT-4oが標準となります。

中小企業への影響
中小企業にとっては、最新モデルGPT-4oの登場により生成AIの利活用範囲がさらに拡大する可能性があります。
例えば、GPT-4oは画像や音声も処理できるため、これまでテキスト中心だったAI活用が商品画像の分析やデザイン案の提案、動画コンテンツの要約などにも広がるかもしれません。性能向上によって業務効率化やアイデア創出の質が向上する一方、新モデル導入当初は応答の変化や不安定さ(実際、過度にお世辞を言う挙動が指摘され一部アップデートがロールバックされました)も報告されており、経営者は社内で試行する際に出力内容の検証が必要です。

経営者の視点
経営者としては、まず社内でGPT-4oを試用し、その応答傾向や新機能を確認することが重要です。
従来GPT-4を活用していた業務がある場合は、新モデルで結果がどう変わるか検証しましょう。また、GPT-4oが可能にする新たな活用シナリオ(画像データを使ったマーケティング分析や、音声入力による業務記録の要約など)についてブレーンストーミングし、自社の業務プロセスに革新をもたらす余地を探ります。導入初期は社員への周知徹底とガイドライン整備を行い、AIのアウトプットを鵜呑みにしないチェック体制を整えることで、メリットを享受しつつリスクを抑えましょう。

参考リンク
AAPL Ch.:OpenAI、4月30日でChatGPTのGPT‑4提供を終了しGPT‑4oへ完全移行と発表

2. NTTデータがOpenAIと提携、日本初の「ChatGPT Enterprise」提供へ

概要
4月28日、NTTデータグループが米OpenAIとの戦略的提携を発表しました。
5月1日からこの提携を開始し、NTTデータはOpenAIの国内初の販売代理店として企業向け生成AIサービス「ChatGPT Enterprise」の提供を開始します。まずは大手企業100社に対し、生成AIのユースケース創出を支援する「OpenAIアクセラレーションプログラム」を提供し、業界特化型のAIエージェント開発や専門組織「OpenAI Center of Excellence」の新設なども含め、企業の生成AI活用を全面的に支援する計画です。

中小企業への影響
生成AIの法人利用環境が整備されることで、中小企業にも安全に生成AIを導入できる機会が広がります。
ChatGPT Enterpriseはセキュリティやデータプライバシーが強化された企業向けサービスであり、NTTデータの支援により日本語環境でのサポートやカスタマイズが期待できます。これまで情報漏えいや規制面の不安からChatGPT利用を控えていた企業でも、信頼できる国内ベンダー経由のサービスなら導入に踏み切りやすくなるでしょう。また、大企業での導入事例やユースケースが蓄積されることで、中小企業も自社業務への生成AI活用イメージを掴みやすくなり、市場全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速する可能性があります。

経営者の視点
中小企業の経営者は、まず生成AI活用の目的と範囲を社内で明確にすることが先決です。
その上で、NTTデータなど信頼性の高いパートナー企業によるソリューション提供情報を収集し、自社に適したプランやサービスがあるか検討しましょう。例えば、「社内文章の自動要約」「問い合わせ対応の自動化」「専門知識の社内Q&A」など、自社の課題にマッチした活用例が提供されていれば、トライアル導入を検討する価値があります。また、大企業向け支援プログラムの成果やノウハウが公表された際には、それらを中小企業なりに応用する工夫も重要です。今後、政府や業界団体からガイドラインが出る可能性も踏まえ、契約時にはデータの取り扱い範囲や責任分界点を確認しつつ、安全に最新AI技術を取り入れていきましょう。

参考リンク
Web担当者Forum:NTTデータグループがOpenAIと提携、日本初の「ChatGPT Enterprise」販売代理店に

3. マイクロソフト、イーロン・マスク氏の生成AI「Grok」導入を検討

概要
大手IT企業の競争も激化しています。
米マイクロソフト社が、イーロン・マスク氏の新興AI企業xAIが開発した対話型生成AIモデル「Grok(グロック)」を自社サービスに導入する準備を進めていることが報じられました。米テックメディア「The Verge」の報道によれば、マイクロソフトは数週間にわたりxAIと協議し、自社のクラウドサービスAzure上でGrokを利用できるようにする計画だといいます。現時点でマイクロソフトやxAIから正式コメントは出ていませんが、OpenAIのChatGPTに続く新たな生成AIモデルを取り込む動きとして注目されています。

中小企業への影響
これは生成AIプラットフォームの選択肢が増える兆候といえます。
現在、多くの企業はOpenAIのGPTシリーズやGoogleの生成AI(例えばBard)などを活用していますが、マイクロソフトが別のモデル(Grok)を取り入れることで、将来的に利用可能な生成AIサービスの種類や価格競争に影響を与えるかもしれません。中小企業にとっては、特定ベンダーに依存しないマルチAI戦略を検討する契機になります。例えばAzure上でGrokが使えるようになれば、これまでOpenAIモデルでは対応が難しかったニッチな日本語特化機能やカスタマイズが可能になる可能性もあります。また、マスク氏のxAI参入で生成AI市場の競争が活性化すれば、サービス品質向上やコスト低減といった恩恵をユーザー企業が受けられるでしょう。

経営者の視点
経営者は常に複数のAI技術の動向をウォッチし、自社に最適なツールを選べるよう備えるべきです。
今回の報道は、マイクロソフト製品やAzureクラウドを利用している企業にとって特に関心事項です。現時点で具体的なサービス提供開始は未定ですが、既存の業務フローが他社の生成AIモデルでも実現できるか試算しておくと良いでしょう。例えば、これまでChatGPT APIで行っていた文章生成を、将来Azure上のGrok APIでも代替できるかを検討し、パフォーマンスやコストを比較する準備を進めます。また、大手企業同士の競争によって生まれる新サービス(例えば業種特化型のAIソリューションや、より厳格なデータ管理機能付きAIなど)にもアンテナを張り、自社のDX戦略に組み込めるものはないか常に検討する姿勢が求められます。重要なのは特定のAIツールありきではなく、目的(課題解決)を起点に最適な技術を柔軟に選ぶ経営判断です。

参考リンク
ロイター:マイクロソフト、マスク氏のAIモデル「グロック」導入へ=報道

4. 日本初のAI推進法案が衆院通過、生成AIの促進と規制を両立へ

概要
4月24日、人工知能(AI)の研究開発促進とリスク対策の両立を図る「AI推進法案」が衆議院本会議で可決されました。
この法案には、AIによって作成されたディープフェイクポルノへの対策強化を求める付帯決議も付されています。法案は参議院に送られ、今国会中に成立する見通しです。成立すれば、内閣総理大臣をトップとする「AI戦略本部」の設置などが盛り込まれ、政府を挙げて国内の生成AI開発・利活用を推進する体制が整備されます。一方で、国が重大な問題発生時にAI事業者への調査権限を持つことなど、リスク監視の枠組みも規定されています。

中小企業への影響
この法律の成立により、日本国内で生成AIをビジネス活用するための環境整備が進むことが期待されます。
例えば、政府主導のAI戦略本部が発足すれば、中小企業向けの補助金や教育プログラムが展開される可能性があります。実際、各国に比べて遅れが指摘されていた研究開発を官民一体で推進する狙いがあり、中小企業も大学・研究機関との協業やオープンイノベーションの機会が増えるかもしれません。また、リスク対策が明文化されたことで、企業が安心して生成AIを導入しやすくなる効果も考えられます。ディープフェイクなど悪用例への政府の監視強化は、健全な市場形成に寄与し、結果的に真っ当なサービス提供者が報われる環境につながるでしょう。ただし、今後詳細なガイドライン策定や事業者への要請事項が出てくる可能性もあり、常に政策動向をチェックする必要があります。

経営者の視点
中小企業経営者は、国のAI政策の方向性を踏まえて自社の戦略をアップデートすることが求められます。
まず、このAI推進法によって提供される支援策(補助事業、公的な相談窓口、ガイドラインなど)を注視し、自社が活用できるものがあれば積極的に利用しましょう。例えば、新たに創設されるプログラムで社員向けの生成AIリテラシー研修や、業界団体を通じた導入補助金が提供されるかもしれません。また、本法により企業の責務も一定程度示されるため、自社でAIを活用する際の倫理規定や社内ルールを整備するタイミングです。情報漏えい防止策やデータの適正利用について社内ポリシーを明文化し、法の趣旨に沿った形でAIを利活用する姿勢を示すことで、取引先や顧客からの信頼を高めることにもつながります。要は、「攻め」と「守り」の両面でAIを経営に取り込むことが重要であり、この法整備はその追い風になるでしょう。

参考リンク
朝日新聞:AI法案が衆院可決 付帯決議でディープフェイクポルノ対策求める

5. ミャンマー地震で偽の被害動画拡散、生成AI悪用に専門家が警鐘

概要
3月下旬に発生したミャンマー中部の大地震では、SNS上で多数の「被災地映像」が拡散されました。
しかし、その一部には生成AIによって人工的に作られたディープフェイク動画や、実際とは無関係の映像が含まれていたことを、日本ファクトチェックセンター(JFC)が指摘しています。例えば高層ビルが倒壊する様子の動画や、地震前後を比較した動画などが投稿されましたが、専門家が精査したところ不自然な映像の挙動(例:水の流れ方や建物の曲がり方)が確認され、投稿者自身もTikTok上で「AIで作成」というラベルを付与していたことが判明しました。災害時は人々の不安に乗じて虚偽情報が広がりやすく、「命に関わる局面で誤情報は危険」として専門家らが強く注意を呼び掛けています。

中小企業への影響
生成AIの発展はフェイクコンテンツの精巧化も招いています。
中小企業も他人事ではなく、例えば自社の商品画像や社名が入った偽のニュース、災害時のデマ情報などに巻き込まれるリスクがあります。特に地方で事業を展開する企業は、災害時に地域の顧客へ正確な情報発信を行う責務がありますが、悪意ある第三者がAI生成の偽情報を流布すると混乱を招きかねません。また、社員や取引先を装ったAI生成のなりすましメール偽音声による電話詐欺など、企業活動に直接被害を及ぼす手口も現実味を帯びています。つまり、生成AIの活用メリットと同時に、情報の真偽を見極めるリテラシー緊急時の広報対応力がより一層重要になっています。

経営者の視点
経営者は、まず社内外への情報発信ルートの信頼性確保に努めるべきです。
公式サイトや公式SNSで発信する情報には認証マークを取得し、デマが出回った際には速やかに否定・訂正情報を発信する体制を整えましょう。また、従業員にもフェイク動画・画像の存在と見抜き方について教育し、疑わしい情報に直面した際は安易に共有しないよう指導します。具体的には、「不自然な映像や音声がないかチェックする」「情報源を複数確認する」「公的機関の発表と突き合わせる」といった基本的な対策を周知徹底します。さらに、平時から地元自治体や業界団体とも連携し、災害や事件時に正確な情報を入手・拡散できるネットワークを築いておくと安心です。生成AIそのものは脅威ではなく使い方次第ですが、悪用事例に学びリスクマネジメント策を講じることも経営の責任だと肝に銘じておきましょう。

参考リンク
日本ファクトチェックセンター:「ミャンマー地震の被害の映像?」ディープフェイクに要注意

まとめ

今週取り上げたニュースから浮かび上がるのは、生成AIの進化と普及に伴う「機会」と「リスク」の拡大です。OpenAIのモデル刷新や海外企業の競争激化は、より便利で強力なAIツールが登場するチャンスを示しています。一方、法整備の動きやフェイク情報の問題は、技術を安心・安全に活用する土台作りの重要性を物語っています。中小企業の経営者は、この両面を踏まえて次のアクションを検討しましょう。

まず、「機会」への対応として、最新の生成AIソリューションを試験導入し、自社業務への適合性を評価してみてください。社員へのトレーニングや社内PoC(概念実証)を通じて、新技術のメリットを具体的に洗い出すことで、競合他社に先駆けたDX推進が可能になります。

次に、「リスク」への備えも忘れずに。社内の情報セキュリティポリシーやコンプライアンス規定を見直し、AIに関する項目をアップデートしましょう。あわせて、従業員にはフェイク情報やデータ漏えいのリスクについて定期的に教育し、緊急時の対応手順(例えばデマ拡散時の広報フローなど)も策定しておくことが望ましいです。

政府や大手企業の動向から目を離さないことも重要です。法制度や業界標準、プラットフォームのルールが変化した際には速やかにキャッチアップし、自社のルールや戦略を適宜修正できるようにアンテナを張りましょう。今回成立見込みのAI推進法をはじめ、公的支援策が出てきた際には積極的に活用することで、中小企業ならではのリソース不足を補うことができます。

最後に、生成AIはあくまで経営目標達成のための「手段」です。ツールに振り回されるのではなく、自社のビジョンや顧客価値の向上という「目的」から逆算して技術を選択・活用する姿勢が今後ますます求められます。このニュースを糸口に、ぜひ自社の経営戦略に生成AIを取り入れる次の一手を考えてみてください。新たな技術とともに歩む中小企業こそが、これからの時代におけるイノベーションの主役となり得るのです。

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