生成AIニュースまとめ(2025年12月22日〜12月28日)

生成AIニュースまとめ(2025年12月22日〜12月28日)

生成AI(ジェネレーティブAI)をめぐっては、技術そのものだけでなく「根拠のある回答」「偽情報対策」「社内への定着」「計算コストと電力」といった、経営に直結するテーマが動いています。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、①政府支援で進む“根拠付きAI(RAG)”の基盤づくり、②AI生成動画を見分ける仕組みの進展、③社内AIエージェントで意思決定をそろえる取り組み、④AI需要に合わせたデータセンター運用の最適化、⑤大規模GPU基盤の国内拡充です。対象期間の5つのニュースを、経営判断に役立つ形で整理します。

目次

1. 政府支援「GENIAC」で“根拠付き生成AI”へ noteがRAGデータベース構築

概要

経済産業省とNEDOが進める生成AI支援プロジェクト「GENIAC」に、noteが採択されました。noteは出版社や学術団体、Webメディアなどが持つ信頼性の高い文章を、生成AIが参照できる「RAG(検索拡張生成)」用データベースとして整備し、回答の正確性を上げることを目指します。ポイントは「AIがどの文章を参照したか」を記録し、利用実績に応じて権利者へ対価を還元できる仕組みづくりまで含めている点です。対象コンテンツは、ニュース、辞書、実用書、新書、経済・ビジネス、マネー・投資などのファクト情報が中心で、物語のようなフィクション領域は含まない方針です。事業期間は1年、予算は15億円以内とされ、条件によって延長や拡大の余地もあるとされています。

中小企業への影響

中小企業が生成AIを業務に使うときの最大の壁は「回答の根拠が分からない」「誤情報が混じる」ことです。RAG基盤が整うと、AIが参照した情報源を示しやすくなり、社内の稟議やお客さまへの説明もしやすくなります。特に、法務・契約の確認、問い合わせ対応、補助金や制度の調査、業界レポートの要約など“間違えると痛い”業務で、安心して使えるサービスが増える可能性があります。一方で、コンテンツ利用には権利処理や費用が発生し得ます。無料のAIに慣れているほど、導入コストの見積もりと、社内で「何をAIに聞いてよいか/よくないか」を決める運用ルール作りが重要になります。

経営者の視点

経営者としては「AIの答え」ではなく「AIが参照する情報」をコントロールする発想が大切です。外部サービスを選ぶ際は、①参照元の種類(公的情報・出版社・自社データなど)、②参照履歴の保存(監査ログ)、③社内データの持ち込み可否と分離保管、④著作権や契約条項、の4点を最低限チェックしましょう。同時に、自社でもRAGを活かせるよう、社内規程、商品資料、FAQ、過去の提案書、クレーム対応記録などを整理し、最新版がどれかを明確にしておくと効果が出やすいです。小さく始めるなら「問い合わせ対応の一次回答+根拠提示」からが安全です。

参考リンク

Impress Watch:政府AI支援「GENIAC」で出版社らと連携してRAG構築 note

2. GeminiでAI生成動画をチェック SynthID検出で偽動画対策が前進

概要

Googleは対話型生成AI「Gemini」アプリに、動画が生成AIで作られた/編集されたものかを確認できる機能を追加しました。動画をアップロードして「これはGoogle AIで生成されたものですか?」とたずねると、音声と映像の両方をスキャンし、生成コンテンツに埋め込まれるデジタル透かし「SynthID」を探して結果を返します。たとえば「音声の10〜20秒にSynthIDを検出、映像では検出なし」のように、どの部分で反応したかも示されます。Google以外のモデルで作られた動画では透かしを検出できない場合がありますが、ロゴ透かしや動画の特徴などから、生成AI由来かどうかをある程度判断する補助にもなるとされています。利用できる国と言語はGemini対応範囲で、動画は最大90秒、ファイルは最大100MBです。

中小企業への影響

採用面接、取引先とのやり取り、SNSでの炎上対応など、動画が意思決定を左右する場面が増えています。生成AI動画が当たり前になるほど「本物かどうか」を確認する工程が必要になります。今回の機能は、動画を扱う中小企業にとって、社内のチェックコストを下げる“第一歩の検査ツール”になり得ます。たとえば、キャンペーン動画の素材がAI生成だった場合の権利・表現リスクの見極め、顧客から送られてきた動画の真偽確認、従業員をかたる偽動画による詐欺対策などに役立ちます。一方で、透かしの有無だけで真偽を断定すると危険です。検出できない=本物、ではありません。

経営者の視点

経営者としては「ツールで判定」より「運用で守る」を先に整えるべきです。具体的には、①公式発信に使う動画は必ず原本と制作履歴を保管、②外注・代理店から受け取る素材はAI生成の有無を申告してもらう、③AI生成の可能性がある素材は公開前に複数人で確認、④疑わしい動画は“事実確認が取れるまで拡散しない”、をルール化しましょう。その上で、SynthID検出のようなツールをチェックリストに組み込むと、現場が迷いにくくなります。

参考リンク

窓の杜:生成AIが作った・編集した動画を見破れる ~「Gemini」アプリに「SynthID」の検出機能

3. 三井不動産が「社長AIエージェント」 カスタムGPT500件で社内定着へ

概要

三井不動産は、社長の視点で全社戦略を理解できる「社長AIエージェント」など、社内向けの生成AI活用を発表しました。社長AIエージェントは、植田社長の公開情報や経歴・発信内容に加え、キャリアの転機となったプロジェクトやエピソードなどを取り込み、社長の「ものの見方・考え方」を再現する仕組みです。社員は質問を投げることで、社長の視点から市場環境や戦略の意図を把握し、日々の判断に活かせるとしています。背景として、同社は10月からChatGPT Enterpriseを全社員約2,000人に展開し、全社85部門から選ばれた150名の「AI推進リーダー」が現場主導でカスタムGPTを開発。約3カ月で500件のカスタムGPTが運用中で、業務削減時間10%以上を目指す方針も示しました。資料作成を支援する「資料自動生成AI」も全社利用を開始しています。

中小企業への影響

「生成AIは現場任せだと定着しない」という悩みは、規模が小さいほど深刻です。三井不動産の事例は、トップの考え方を“再現して共有する”ことで、判断基準をそろえ、現場の迷いを減らすアプローチとして参考になります。中小企業でも、社長の方針や商談の勝ちパターン、品質基準などを文章化し、AIに質問できる形にすると、教育コストの削減や属人化の解消につながります。また、資料自動生成のように「最初のたたき台」をAIに作らせ、最後は人が責任を持って直す運用は、少人数の組織に特に効きます。一方で、社長の言葉が“絶対解”として固定されると、現場が考えなくなるリスクもあります。

経営者の視点

成功の鍵は、ツールより「体制」と「使い方の型」です。中小企業なら、①業務別に“よくある質問”を10個だけ集める、②回答の正解例を用意する、③担当者を1人決めて改善を回す、の3点で十分スタートできます。さらに、社長の考え方を入れる場合は、発言の出どころ(いつの方針か)を分けて管理し、定期的に更新する仕組みを作りましょう。AIに任せる範囲と、最終判断は人が行う範囲を線引きしておくと、安心して社内展開できます。

参考リンク

Impress Watch:三井不動産が「社長AIエージェント」 社長視点で戦略理解

4. 富士通×東京大学、AI電力問題に挑む ワークロード移動でデータセンター最適化

概要

富士通と東京大学は、AI需要の高まりでデータセンターの電力消費が増える課題に対し、電力(ワット)と通信(ビット)を一体で最適化する「ワット・ビット連携」の社会実装に向けた実証を進めると発表しました。具体的には、データセンター間で計算処理の負荷を別拠点へ移動させる「ワークロードシフト」技術を検証します。東京大学柏キャンパスの計算環境と、富士通の国内データセンターで稼働するクラウド環境を、コンテナ技術で“場所に依存せず”使えるかを確かめる計画です。さらに電力会社とも連携し、系統負荷や電力市場価格などの状況と連動して、地域間で処理を移す有効性も検証するとしています。背景には、都市部集中による電力ひっ迫や災害リスク、再生可能エネルギーを活かした運用ニーズの高まりがあります。実証期間は2026年1月5日から3月31日までです。

中小企業への影響

生成AIを使うほど、裏側ではGPUなどの計算資源が動き、電力とコストが積み上がります。電力制約が強まると、クラウドの利用料金や提供条件(使える地域, 時間帯, 優先度)が変わる可能性があります。今回の取り組みは、AIを支えるインフラが「都市部集中」から「分散+電力に合わせた運用」へ向かう流れを示しています。中小企業にとっては、将来的に“重い処理は地域をまたいで動かす”“再エネが多い地域で安く回す”といったサービスが一般化し、コスト最適化の選択肢が増えるかもしれません。一方で、処理場所が変わるとデータの取り扱い(保管場所、法令、契約)も複雑になります。

経営者の視点

今のうちにやるべきは、AI活用を「電気代と一緒に管理する」ことです。具体的には、①AI利用の目的を3つに絞る(文章作成、社内検索、問い合わせ対応など)、②“常時使う処理”と“まとめて回す処理”を分ける、③外部クラウドに出してよいデータとダメなデータを決める、の3点を整えましょう。将来、ワークロードシフトが当たり前になれば、運用の上手い会社ほどコストとリスクを抑えられます。早めに利用ログを取り、どこにお金と時間が消えているか見える化しておくのが近道です。

参考リンク

TECH+:富士通×東京大学、ワット・ビット連携の実装に向けワークロードシフト技術の検証を開始

5. ソフトバンクがGB200搭載AI計算基盤を稼働 国産LLM「Sarashina」強化へ

概要

ソフトバンクは、NVIDIAの最新GPUシステム「GB200 NVL72」を搭載した新たなAI計算基盤が稼働開始したと発表しました。GB200 NVL72は、1ラックに36基の「Grace CPU」と72基の「Blackwell GPU」を搭載するラックスケールのAIコンピューティングシステムで、記事時点では1,224基のBlackwell GPUで稼働。将来的に4,000基超へ拡張し、10.6EFLOPS規模の演算性能を目指すとしています。冷却には液冷(Direct-to-Chip)構造を採用し、高密度なAI処理でも安定した性能と電力効率を狙います。この基盤は、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資クラウドプログラム」の認定も受けたとされ、国内のAI開発基盤強化につながると説明されています。用途としては、顧客向けのGPU計算リソース提供サービスや、SB Intuitionsによる国産LLM「Sarashina」の商用サービス開発などが挙げられています。

中小企業への影響

生成AIの活用が進むほど、裏側の“計算力の確保”が競争力になります。国内で大規模なGPU基盤が拡充されると、①必要なときに計算資源を借りやすくなる、②データを国内に置いたまま処理できる選択肢が増える、③国産LLMや業界特化モデルが育ちやすくなる、といったメリットが期待できます。中小企業でも、画像生成や文章生成だけでなく、社内データを使ったAI(社内検索、見積もり支援、問い合わせ自動化)を本格運用しやすくなる可能性があります。一方で、GPUは供給状況で価格が動きやすく、使い方が雑だとコストが膨らみます。

経営者の視点

経営者は「AI導入=ツール購入」で終わらせず、利用量と費用を管理する仕組みを先に作りましょう。具体的には、①用途ごとに上限予算を決める、②“試作は軽いモデル、運用は必要十分なモデル”と使い分ける、③外部に出せないデータは匿名化や要約で扱う、④ベンダーに依存し過ぎないようデータ形式やプロンプトを資産として残す、の4点が実務で効きます。計算基盤が強化されても、成果が出るかどうかは「目的の明確さ」と「運用の細かさ」で決まります。

参考リンク

TECH+:ソフトバンク、NVIDIA GPU搭載の新たなAI計算基盤 Sarashina開発などに活用

まとめ

生成AIは「使えるかどうか」ではなく、「安全に、継続的に成果を出せるか」の段階に入っています。今回のニュースから見えるポイントは、(1)AIの答えに根拠を持たせるRAGの重要性、(2)動画などコンテンツの真偽確認が必須になること、(3)社内で使い方の型を作る企業が強いこと、(4)AIは電力と計算資源に支えられていること、(5)国内の計算基盤が拡充して選択肢が増えること、の5つです。

中小企業が次に取るべき行動はシンプルです。まずは「使う目的を3つに絞る」→「社内データを整える」→「ルールとログで守る」の順に整備しましょう。特に、社内資料やFAQの整理、外部に出してよい情報の線引き、生成AIコンテンツのチェック手順は、早く整えるほど後で効いてきます。

生成AIはこれからも進化が速く、周辺環境(電力・計算基盤・権利処理)も同時に変わります。新しい発表に振り回されないために、基礎となる運用とデータ整備を固め、必要なところだけを小さく試しながら前に進めていきましょう。

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