生成AIニュースまとめ(2025年11月17日〜11月23日)

生成AIニュースまとめ(2025年11月17日〜11月23日)

 
生成AI(ジェネレーティブAI)をめぐり、日本国内では企業の人材育成や業務改革、自治体のDX、そして法律面まで、さまざまな動きが加速しています。中小企業の経営者にとっても、「どのように社員を育てるか」「どこまでAIに任せてよいのか」「法律やルールはどう変わっているのか」は避けて通れないテーマになりました。今回取り上げる重要なニュースは、大成建設による業界最大級の生成AIプロジェクト、日本IBMとセガXDのカードゲーム型研修、デジタルハリウッドの法人向け生成AI講座、自治体向けAIプラットフォームでの新モデル提供、そして生成AI画像に著作権が認められた事例の五つです。これらを通じて、「人とAIが一緒に働く時代」に経営者が押さえておきたいポイントを整理します。

目次

1. 建設業界最大規模、大成建設がOpenAIと全社的生成AIプロジェクトを開始

概要

大成建設がOpenAIと連携し、法人向けサービスであるChatGPT Enterpriseを活用した全社的な生成AIプロジェクトを始めました。2025年4月に約250人で始まった育成プログラムは、同年8月には約1,000人規模へ拡大しており、「生成AIを使いこなせる人材」を計画的に増やす取り組みです。リリースでは、一定期間の試算で1人あたり約5.5時間分の作業削減が確認され、250人分に換算すると年間約6.6万時間の業務削減効果が見込まれると説明されています。生成AIの研修だけでなく、各部門で業務専用のカスタムGPTをつくり、設計・施工、営業支援などさまざまな業務プロセスの改革につなげている点が特徴です。

中小企業への影響

大手ゼネコンがここまで踏み込んだプロジェクトを打ち出したことは、「生成AIは試しに触る段階から、業務基盤として組み込む段階に入った」というメッセージだと受け取れます。中小企業にとっても、AI活用はもはや一部の先進企業だけの話ではありません。例えば、見積書や提案書のたたき台作成、現場から上がってくる報告書の要約、社内マニュアルの検索性向上など、現在人手で行っている事務作業の多くは生成AIで効率化できます。一方で、人任せ、ツール任せにすると品質がばらつきやすく、「誰が責任を持つのか」があいまいになるリスクもあります。大成建設が「人材育成」とセットで取り組んでいるように、単なるツール導入ではなく、人とAIの役割分担を整理しながら使い方を決めていくことが重要です。

経営者の視点

経営者としては、「いきなり全社展開」は真似せず、まずは小さなプロジェクトから始めるのがおすすめです。具体的には、①生成AIを試す少人数のチームを決める、②守るべき情報ルール(個人情報を入れないなど)を簡潔に言語化する、③効果が出た活用例を社内で共有する、という三つのステップを意識すると進めやすくなります。また、社内に「AI推進リーダー」を置き、現場の相談役として活用事例を集めると、属人的な使い方から組織的な活用へと発展させやすくなります。大成建設のような大手の取り組みを、自社なりの規模感に落とし込んで真似していく姿勢が、これからの競争力につながります。

参考リンク

大成建設:建設業界最大規模の生成AIプロジェクトが始動


2. 日本IBMとセガXD、カードゲーム形式で学ぶ生成AI研修「バトルワーカーズ」

概要

日本IBMは、セガXD監修のもと、カードゲーム形式で生成AIを学べる研修サービス「Generative AI Card Game Training – バトルワーカーズ」を発表しました。参加者が自分の仕事内容を入力すると、生成AIがその内容を分析して「バトルカード」を自動生成し、そのカードを使って対戦しながら学ぶ仕組みです。ゲームの中では、プロンプトの工夫による結果の違い、ハルシネーション(もっともらしい誤回答)の扱い方、著作権や情報漏えいなどのリスク、AIと人の役割分担といったテーマも取り上げられます。知識を一方的に教え込むのではなく、遊びながら体験することで、社員の「AIは難しそう」という心理的なハードルを下げることをねらったサービスです。

中小企業への影響

このニュースが示しているのは、「生成AIの研修は、座学だけでは定着しにくい」という現場感です。中小企業でも、マニュアル読解や講義動画だけでは、社員が実際の業務で生成AIを使いこなせるようになりにくいという悩みが出ています。カードゲームのような本格的な仕組みを自社で用意する必要はありませんが、「自分の業務をAIに説明し、結果を比べてみる」「チームで一番良いプロンプトを競う」など、体験型で学ぶ工夫は取り入れやすいはずです。ゲーム性を取り入れた研修は、ITが苦手な社員や若手以外の層も巻き込みやすく、組織全体のAIリテラシー底上げに役立ちます。

経営者の視点

経営者として押さえておきたいのは、「生成AIは使い方次第で武器にもリスクにもなる」という点です。研修では、便利さだけでなく、情報漏えいや誤情報の扱い方、著作権などのリスクも必ずセットで伝える必要があります。その意味で、今回のような研修サービスを外部に委託する選択肢もありますし、自社で勉強会を行う場合でも、単に操作方法を説明するだけでなく、社内ルールとセットで教える構成にすると効果的です。「楽しく学びつつも、守るべきラインはきちんと共有する」ことが、生成AIを安全に活用するためのポイントになります。

参考リンク

IBM Japan:日本IBM、「ゲーム感覚で生成AIを学べる研修サービス」を提供開始


3. デジタルハリウッド、法人向け「生成AIビジネス活用講座」を提供開始

概要

デジタルハリウッドは、生成AI教育の第一人者である臼井拓水特任准教授と共同で、法人向けオンラインプログラム「生成AIビジネス活用講座」を開始しました。基礎編と応用編あわせて全16本の動画講座で構成されており、生成AIの仕組みや情報漏えい対策といったリтеラシーから、議事録作成、画像生成、営業資料やマーケティング資料の作成、Excel自動化、チャットボット構築まで、実務に直結する内容を幅広く扱います。企業側が抱えがちな「どの業務で使えばいいか分からない」「プロンプトの出し方が難しい」「学ぶ機会がない」といった課題に応える設計で、人材開発支援助成金の対象講座にも位置付けられています。

中小企業への影響

中小企業では、生成AIを学ばせたいと思っても、社内で教材を用意したり講師を確保したりするのが難しいケースが多くあります。今回のようなオンライン完結型の講座は、場所や時間の制約が少なく、複数拠点を持つ企業やパートタイムスタッフが多い職場でも導入しやすい点がメリットです。また、全社員が同じカリキュラムで学ぶことで、「誰は詳しいが、誰はまったく使えない」というばらつきを減らし、共通言語としてのAIリテラシーを整えることができます。助成金の活用が可能な場合は、教育コストを抑えつつ、本格的な研修を実施できる点も見逃せません。

経営者の視点

経営者としては、「誰にどのレベルまで生成AIを使えるようになってほしいのか」を先に決めておくと、外部講座の選び方がクリアになります。例えば、全社員には文章要約やメール文の作成までを必須とし、一部の担当者にはデータ分析やチャットボット構築まで担ってもらう、といった役割分担です。そのうえで、今回のような体系的な講座で土台を作り、社内勉強会や業務マニュアルの整備で自社ならではの活用ルールを上乗せしていくと、学びと実務がうまくつながります。「教育なしのツール導入」ではなく、「教育を前提にしたAI導入」という順番を意識することが、失敗しないポイントになります。

参考リンク

デジタルハリウッド:法人向け「生成AIビジネス活用講座」提供開始


4. 自治体向け「自治体AI zevo」がGPT-4.1-miniを国内リージョンで提供開始

概要

地方自治体向けに生成AIサービスを提供するシフトプラスは、「自治体AI zevo」でOpenAIのGPT-4.1-miniを新たな日本リージョンのモデルとして提供開始しました。自治体AI zevoは、ChatGPTやClaude、Geminiなど複数の生成AIを、LGWAN環境から安全に利用できるようにした仕組みで、今回の追加により選べるモデルがさらに拡充された形です。GPT-4.1-miniは、従来モデルより指示への追従性やコーディング性能が高く、文章の要約やFAQ対応などの業務に適しているとされています。日本リージョンで動作するため、データが国内で処理される点も強調されており、セキュリティや機密性に敏感な自治体にとって安心材料となる構成です。

中小企業への影響

自治体側の生成AI環境が整うことで、補助金申請、各種許認可、入札関連の情報提供など、行政手続きのデジタル化がさらに進む可能性があります。たとえば、自治体ホームページの問い合わせチャットが賢くなったり、説明資料や公募要領が読みやすく要約されて公開されたりすれば、中小企業にとっても情報収集や申請準備の負担が軽くなります。また、「日本リージョンで処理するモデルを採用している」という点は、自治体と取引する企業にとっても重要なメッセージです。今後は、業務委託先やシステムベンダーにも同等レベルのセキュリティやデータ取り扱いを求められる場面が増えていくと考えられます。

経営者の視点

自治体との取引が多い企業や、公共案件に挑戦したい企業にとっては、「自社の生成AI活用も、説明責任を果たせるレベルにしておく」ことが大切です。どのクラウドやモデルを使い、どのような情報は入力しないのか、といったルールを社内で文書化しておくと、入札や提案の場面で信頼感につながります。また、自治体側の生成AI活用が進むと、問い合わせのレスポンスが速くなる一方で、提出書類の質や論理性に対する期待値も上がっていきます。生成AIを使って申請書や提案書のたたき台を作り、人間が内容を精査する流れを整えておくと、こうした変化にも対応しやすくなります。

参考リンク

シフトプラス:自治体AI zevoにてGPT-4.1-miniが国内リージョンで利用可能に


5. 生成AI画像にも著作権、無断複製で書類送検された事例

概要

FNNの報道によると、他人が生成AIで作成した画像を無断でコピーし、電子書籍の表紙などに使ったとして、千葉県警が著作権法違反の疑いで27歳の男性を書類送検しました。問題となった画像は、被害者の男性が生成AIに具体的な指示を与えて作らせたもので、警察は「人間の創作性が反映された著作物にあたる」と判断したと伝えられています。「AIが作ったものだから権利はない」と考えるのは誤りであり、少なくとも今回の事例では、指示を行った人に著作権が認められた形です。生成AIの普及により、インターネット上にはAI画像が大量に出回っていますが、それらを勝手に保存・転用すると法的リスクがあることを示すニュースになりました。

中小企業への影響

自社のウェブサイトや広告、パンフレット、ECサイトの商品画像などに生成AI画像を使う企業は増えていますが、「どの画像を、どのような権利関係で使っているか」を把握していないケースも少なくありません。今回の事例は、他人が生成AIで作った画像を無断利用した場合でも、従来の写真やイラストと同様に、著作権侵害に問われる可能性があることを示しました。特に、SNSや画像共有サイトで見つけたAI画像を、出典や利用条件を確認せずにそのまま使う行為は非常に危険です。一方で、自社で生成した画像については、社内で誰がどのツールを使い、どのような条件で作ったのかを記録しておくことで、権利関係を説明しやすくなります。

経営者の視点

経営者としては、「AIだから特別」という考え方を捨て、クリエイティブ資産の管理という観点からルールを整えることが重要です。具体的には、①外部サイトで見つけた画像は、AI生成かどうかに関係なく無断利用しない、②社内で使う生成AIツールと、その利用規約を一覧化する、③重要な広告物や商品に使う画像は、ライセンスの取得状況や作成ログを残す、といった基本的な対策が考えられます。また、今回のような動きをきっかけに、顧問弁護士や専門家に自社のクリエイティブ運用ルールを一度チェックしてもらうのも有効です。生成AIは表現の幅を広げる一方で、法的責任の重さも変わらないことを意識しながら活用していきましょう。

参考リンク

FNNプライムオンライン:生成AIで作成の画像にも著作権 無断複製で書類送検


まとめ

 
生成AIをめぐる動きを振り返ると、技術そのものだけでなく、「どう人材を育成するか」「どのようなルールで使うか」「行政や社会インフラがどう変わるか」といった周辺環境が大きく動いていることが分かります。大成建設や日本IBMの事例のように、企業は単なるツール導入ではなく、研修や文化づくりを通じて生成AIを業務に組み込もうとしています。一方で、生成AI画像にも著作権が認められた事例が示すように、法的な責任からは逃れられません。

中小企業の経営者にとって大切なのは、「一気に大掛かりな投資をすること」ではなく、「小さく試しつつ、学びとルールづくりを並行して進めること」です。まずは自社の業務の中で、文章作成や情報整理、社内問い合わせ対応など、効果が出やすい領域から生成AIを実験的に導入し、その結果を踏まえて社内ルールや研修内容をアップデートしていくとよいでしょう。今後も生成AIに関する技術・政策・判例は次々と登場すると考えられます。変化を恐れるのではなく、最新情報をキャッチアップしながら、自社のビジネスに合ったかたちでAIとの共存戦略を描いていくことが、持続的な成長への近道になります。

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