マーケティングニュースまとめ(2026-03-04〜2026-03-10)

2026年3月4日から3月10日にかけて発表された、中小企業の経営者やマーケティング担当者にとって見逃せないニュースを5本厳選しました。インターネット広告費が初めて過半数を超えた電通の広告費調査、ChatGPTへの広告配信開始、KFCの大規模ブランド刷新、生成AIが購買行動を変える調査結果、そしてワークマン新社長の戦略まで、幅広いトピックをお届けします。それぞれのニュースについて、概要だけでなく中小企業への影響や経営者が取るべきアクションも整理していますので、ぜひ日々の経営判断にお役立てください。

目次

1. インターネット広告費が初の過半数超え──電通「2025年 日本の広告費」を発表

概要

電通が発表した「2025年 日本の広告費」によると、2025年の日本の総広告費は8兆623億円(前年比105.1%)となり、5年連続の増加かつ4年連続で過去最高を更新しました。なかでも注目すべきはインターネット広告費が4兆459億円(前年比110.8%)に到達し、初めて4兆円の大台を突破した点です。総広告費に占める構成比は50.2%となり、推計開始以来初めて過半数に達しました。一方、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのマスコミ四媒体広告費は2兆2,980億円(前年比98.4%)とほぼ前年並みを維持しています。成長のけん引役は動画広告で、SNSやOTT、コネクテッドテレビ(CTV)での需要拡大が大きく寄与しました。テレビメディア関連動画広告は805億円(前年比123.3%)と急伸しており、従来型のテレビ視聴からデジタル動画視聴への移行が加速していることがわかります。

中小企業への影響

インターネット広告が主流となったことで、中小企業にとっても少額の予算からデジタル広告に参入しやすい環境が整いつつあります。特に動画広告の成長は、スマートフォンで撮影・編集したショート動画でも十分な訴求力を発揮できることを示しており、大きな制作費をかけられない企業にとって追い風です。コネクテッドテレビ広告は地域を限定した配信が可能なため、商圏が限られる地元密着型の事業者にも新たな選択肢となります。マス広告の比率が下がり続ける中、デジタル領域での存在感を高めることが集客力を維持・拡大するうえでますます重要になっています。プロモーションメディア広告費が3年連続で増加している点は、展示会やイベント出展を重視する企業にとっても好材料といえるでしょう。

経営者の視点

まず取り組むべきは、自社の広告予算配分の見直しです。紙媒体やテレビ中心の構成であれば、デジタル広告の比率を段階的に引き上げることを検討しましょう。動画広告はSNSのショート動画から小さく始めるのが低リスクです。15秒〜60秒程度の短い動画で商品の魅力を伝え、反応を見ながら改善を繰り返す方法が効果的です。また、コネクテッドテレビ広告は今後普及が見込まれるため、情報収集を開始しておくと早期に活用できます。展示会やイベントへの出展も積極化し、オンラインとオフラインの両面で顧客接点を増やす戦略を描きましょう。あわせて広告効果の測定をデジタル化し、投資対効果を可視化する体制を整えることが大切です。

参考リンク

MarkeZine:電通「2025年 日本の広告費」を発表 インターネット広告費が構成比で初の過半数に

2. ChatGPTに広告が登場──Criteoがパートナーとして参画、CVRは約1.5倍

概要

アドテク大手のCriteoが、2026年3月3日にOpenAIのChatGPTにおける広告配信にアドテクパートナーとして参画することを発表しました。対象はChatGPTの無料プランおよびGoプランのユーザーで、会話型AIの画面上に広告が表示される仕組みです。注目すべきデータとして、LLM(大規模言語モデル)プラットフォーム経由のユーザーは、他のチャネルと比較してコンバージョン率が約1.5倍高いという調査結果が示されました。この調査は2026年2月に米国の小売業者500社を対象に実施されたものです。Criteoは年間40億ドル以上のメディア支出を支援し、世界1万7,000社以上の広告主と協働しています。今後数段階に分けて米国から順次提供が開始される予定です。

中小企業への影響

ChatGPT上での広告配信が本格化すれば、中小企業にとっても新たな顧客獲得チャネルが生まれます。コンバージョン率が約1.5倍という数字は、限られた広告予算でも効率的に成果を出せる可能性を示唆しています。これまでGoogle広告やSNS広告に依存してきた企業にとっては、リスク分散と新規顧客層へのリーチという二つの面でメリットがあります。現時点では米国先行ですが、日本への展開も視野に入れておく必要があるでしょう。AI広告の仕組みを早い段階で理解し、自社の商品情報をAIが扱いやすい形で整備している企業ほど、導入初期の先行者利益を享受できる可能性が高まります。特に、検索連動型広告の入札単価が高騰している業界では、新たなチャネルの出現は歓迎すべき変化です。

経営者の視点

まずはChatGPT広告の動向を定期的にウォッチし、日本展開の時期や参入条件についての情報を把握しておきましょう。並行して、LLM経由で自社サイトへ流入しているトラフィックをアナリティクスで計測する体制を構築することが重要です。リファラ情報などを確認し、AI経由の訪問者がどの程度いるかを把握してください。また、Google広告だけに頼らない多チャネル戦略を組み立てておくと、新たな広告プラットフォームが登場した際にも柔軟に対応できます。さらに、AIが自社の製品やサービスを推奨しやすいよう、商品情報や企業情報を構造化して整備しておくことをおすすめします。LLMO(LLM最適化)という新しい概念についても学び、自社サイトのコンテンツをAIフレンドリーにする取り組みを始めましょう。

参考リンク

MarkeZine:Criteo、ChatGPTの広告パイロットに参画 LLMからの流入はコンバージョン率が約1.5倍

3. KFCが「第二創業」でブランド刷新──新タグライン「しあわせに、ガブッ。」を発表

概要

日本KFCホールディングスは2026年3月9日、大規模なブランドリニューアルを「第二創業」と位置づけて発表しました。新たなタグラインは「しあわせに、ガブッ。」で、ブランドアンバサダーには佐藤栞里さんが起用されます。成長戦略として掲げられたのは、メニュー拡大・店舗体験の進化・デジタル化推進の3本柱です。2030年までに全国1,700店舗体制を目指すという具体的な数値目標も示されました。2026年4月には相模原市に次世代モデル店舗がオープンする予定です。デジタル面では、KFCアプリを中核に据え、AI活用や購買データの分析強化を推進します。特別な日のごちそうという従来イメージから、日常的に楽しめるブランドへと変革を図る姿勢が明確に打ち出されました。

中小企業への影響

大手飲食チェーンのブランド刷新事例は、規模を問わずリブランディングを検討する際の格好の教材になります。「しあわせに、ガブッ。」のようにシンプルで感情に訴えるタグラインを設定する手法は、中小企業でも十分に応用可能です。自社の提供価値をひと言で伝えられるかどうかは、広告やSNS運用においても大きな差を生みます。また、KFCがアプリを顧客接点の中核に据えたデジタル戦略は、中小企業であればLINE公式アカウントやメール配信ツールを活用することで近い効果が期待できます。日常利用シーンへの拡大によって客単価と来店頻度の双方を向上させるという考え方は、飲食業に限らず物販やサービス業全般に通じる成長のヒントです。自社が「特別な時だけ」選ばれる存在になっていないか、改めて見直す機会としてください。

経営者の視点

最初に着手すべきは、自社のタグラインやミッションステートメントの見直しです。社内外に向けてブランドの価値を端的に伝える言葉を持っているか、あるいはその言葉が現在の事業実態としっかり合致しているかを確認しましょう。次に、デジタルツールを活用した顧客データの収集と分析に取り組んでください。LINE公式アカウントやPOSデータ、ECサイトの購買履歴など、手元にあるデータを統合し、顧客の行動パターンを把握することが的確な施策立案につながります。さらに、自社の商品やサービスが利用されるシーンの拡大を検討してみましょう。新しい用途や利用場面を積極的に提案することで、既存顧客の購入頻度を高められます。ロイヤルティプログラムの導入や見直しも、リピート率向上に有効な一手です。

参考リンク

AdverTimes:KFCが第二創業でブランド刷新 新タグラインのもとアンバサダーに佐藤栞里起用

4. AIが勧めた商品を約半数が購入──生成AIがマーケティングファネルを変える

概要

サイバーエージェントが2026年2月に9,278人を対象として実施した調査により、生成AIが消費者の購買行動に大きな影響を与えている実態が明らかになりました。検索行動に生成AIを使用する割合は37.0%に上り、前回調査から5.9ポイント増加しています。わずか9カ月で15.7ポイントも上昇しており、急速な普及が読み取れます。利用サービス別ではChatGPTが29.1%で最多、Geminiが15.6%(前回比+5.2ポイント)で続きます。特に10代ではGeminiが24.5%(+8.2ポイント)と大幅に伸びているのが特徴的です。AIに勧められた商品を購入した経験がある人は47.5%に達し、AI回答内のURLをクリックした経験がある人は54.4%に上りました。Google AIモードの利用率は21.0%、10代では33.5%と高い数値を示しています。

中小企業への影響

約半数がAI推奨商品を購入しているという結果は、AI検索経由の売上機会がすでに現実のものとなっていることを意味します。中小企業にとって最も重要なのは、AIが自社の製品やサービスを正しく認識し、適切な場面で推奨できるよう情報を整備することです。これはAIO(AI最適化)と呼ばれる新しいマーケティング手法であり、従来のSEOに加えて取り組むべき領域として急速に注目されています。構造化データ(JSON-LDなど)を使って商品情報を正確に公開することで、AIに推奨されやすくなります。10代を中心に若年層の利用が急増しているため、若い顧客層をターゲットとする企業は対応の優先度を上げるべきです。中高年層にも浸透が進んでおり、BtoB領域への影響も無視できなくなっています。

経営者の視点

最優先で取り組むべきは、自社サイトの構造化データ整備です。JSON-LDを用いて商品名・価格・在庫状況・レビュー評価などをマークアップし、AIが正確に情報を取得できる状態を作りましょう。次に、ChatGPTやGeminiに自社の製品名やサービス名を入力して、どのような回答が返ってくるかを定期的に確認してください。不正確な情報や競合優位に偏った回答がある場合は、自社サイトのコンテンツを充実させることで改善を図れます。従来のSEO施策にAIO観点を加え、検索エンジンとAIの双方から評価されるコンテンツ作りを目指しましょう。第三者によるレビューや専門メディアへの掲載も、AIの推奨精度に影響を与えます。口コミやレビューの獲得施策を強化し、信頼性の高い情報源を増やしていくことが効果的です。

参考リンク

AdverTimes:AIが勧めた商品を約半数が購入 生成AIによるマーケティングファネル地殻変動

5. ワークマン新社長が語る成功と反省──「第二の創業」路線の誤算と勝算

概要

ワークマンは2026年4月1日付で大内康二氏が社長に就任することを発表しました。大内氏のもとで推進されてきたWorkman Colorsなどのカジュアル化・マス化製品戦略は、売上を2018年の797億円から2020年の1,220億円へとわずか3年で1.5倍に成長させる原動力となりました。2028年3月期には売上の5割を重点5製品で占める計画を掲げています。機能性に優れたリカバリーウェア「メディヒール」は販売開始からわずか20日で完売するなど、新カテゴリーの開拓にも成功しています。一方で、アウトドアギア事業は1年半で撤退を決めるなど、すべてが順調だったわけではありません。新社長自らが成功と失敗の両方を語り、次の成長に向けた戦略を明確に示した点が注目されます。

中小企業への影響

ワークマンの事例から中小企業が学べるポイントは数多くあります。まず「機能性×低価格」という明確な差別化軸を持つことの強さです。大手と正面から価格競争をするのではなく、自社ならではの付加価値で勝負する戦略は、経営資源が限られる中小企業にこそ適しています。重点5製品に経営資源を集中させる方針も参考になります。あれもこれもと手を広げるのではなく、勝てる領域に絞り込むことで利益率を高める考え方です。アウトドアギア事業を1年半で撤退した判断力も見逃せません。中小企業は大企業と比べて意思決定のスピードが速いという強みがあり、うまくいかない事業からの早期撤退は損失を最小限に抑えるための合理的な経営判断です。既存事業の強みを別の顧客層に応用する多角化の成功モデルとしても示唆に富んでいます。

経営者の視点

最初のステップとして、自社の強みを改めて棚卸ししましょう。技術力・品質・価格・顧客基盤など、何が競争優位の源泉になっているかを明確にしたうえで、その強みを活かせる新たな顧客層やマーケットがないか検討してください。次に、需要予測の仕組みをできる範囲で導入することが重要です。過去の販売データやトレンド情報を活用し、在庫の適正化と機会損失の削減を図りましょう。新規事業に挑戦する際は、小さく始めて成果を検証し、撤退基準を事前に定めておくことが不可欠です。撤退は失敗ではなく、限られた資源を最も有望な分野に振り向けるための戦略的判断です。重点商品を絞り込んで集中的にリソースを投下する方針も取り入れてください。失敗事例を含めて社内で共有し、組織として学習する文化を育てることが持続的な成長の基盤になります。

参考リンク

AdverTimes:新生ワークマンを築いた大内路線の成功と反省 次期社長が語った誤算と勝算

まとめ

今回ご紹介した5本のニュースに共通するのは、デジタル化とAIの進展がマーケティングの常識を大きく塗り替えつつあるという点です。インターネット広告費が過半数を超え、ChatGPTに広告が登場し、生成AIの推奨で商品が購入される時代が到来しています。こうした変化は大企業だけのものではなく、中小企業にとってもチャンスです。KFCのようにブランドの再定義に挑み、ワークマンのように自社の強みに集中する姿勢は、規模に関係なく取り入れられます。重要なのは、変化を傍観するのではなく、小さくてもよいので具体的な一歩を踏み出すことです。まずは自社の商品情報の構造化データ整備やSNS動画広告のテスト配信など、すぐに始められることから着手してみてはいかがでしょうか。

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