2026年2月18日から2月24日にかけて発表された、中小企業の経営者が押さえておきたいマーケティング関連ニュースを5本厳選してお届けします。バレンタイン商戦と春需要の購買データ、GoogleのAIエージェントによる新しい購買体験、マーケティング予算の投資先トレンド、LINEミニアプリタブの大幅刷新、そしてリテールメディア市場の急成長予測まで、幅広いテーマを取り上げています。それぞれのニュースについて、概要・中小企業への影響・経営者としての視点の3つの切り口で解説いたします。
1. バレンタイン商戦+春需要の購買動向──チョコレート前月比144%増、アウトドアテント394%増
概要
Shopify Japanが国内利用事業者の販売データを分析し、2026年バレンタイン商戦期間(1月中旬〜2月中旬)の購買動向を発表しました。チョコレートの売上は前月比144.2%増、チョコレートがけフルーツも142.7%増と大幅に伸長しています。フラワー全体では前月比77.6%増、なかでもバラは60%増となり、ギフト需要の拡大が数字にはっきりと表れました。さらに注目すべきは、ビューティーカテゴリでチーク・ブロンザーが前月比143.6%増、フレグランスオイルが73.3%増と急伸している点です。バレンタインが菓子だけでなく美容やライフスタイル全般に消費を波及させていることがわかります。加えてホーム・アウトドア関連ではドーム型テントが前月比394%増という驚異的な伸びを記録し、プランターが162.8%増、釣り竿が133.2%増と春のレジャーへの先取り消費が顕在化しています。
中小企業への影響
このデータが示すのは、バレンタインがもはやチョコレートだけのイベントではなく、ライフスタイル全体に関わる消費機会へと拡大していることです。菓子・スイーツ系のEC事業者にとっては年間最大の売上機会であることに変わりありませんが、ビューティーやフレグランスといった商材を扱う中小EC事業者にもギフト需要の恩恵が広がっています。ニッチな商材であってもギフト訴求を強化すれば売上拡大の余地は十分にあります。また、園芸用品やアウトドア用品を取り扱う事業者は、春需要を先取りしたキャンペーンによって大きな売上増が見込めます。Shopifyなどのプラットフォームが提供する分析ツールを活用し、カテゴリ別の売上トレンドを把握したうえで販促施策を組み立てることが重要です。
経営者の視点
経営者としてまず取り組みたいのは、自社EC商材のギフト需要を棚卸しし、バレンタインからホワイトデー、さらに卒入学シーズンへと切れ目なく接続する販売施策を設計することです。売上データを定期的に分析し、自社にとっての季節商戦のピークタイミングを正確に把握しましょう。ビューティーやライフスタイル商材を扱う場合は、他者へのギフトだけでなく「自分へのご褒美」という訴求軸も広告クリエイティブに取り入れると効果的です。アウトドアや園芸系の商品は2月後半から露出を強化することで、需要の立ち上がりを確実に捉えられます。また年度末に向けた広告予算の前倒し確保も検討し、商機を逃さない体制を整えておくことが大切です。
参考リンク
ネットショップ担当者フォーラム:2026年バレンタイン商戦+春需要の購買動向、チョコレートは前月比144%増・フラワーは77%増
2. Google「エージェントコマース」──AIが商品比較から決済まで代行する時代へ
概要
GoogleがNRF 2026の場で「エージェントコマース」構想を発表しました。これはAIエージェントがユーザーに代わって商品の発見・比較・決済までを自律的に行う新しいEC取引の形態です。その中核を担うのがUniversal Commerce Protocol(UCP)で、AIエージェントとEC事業者が共通の言語で情報をやり取りするためのオープン標準として設計されています。すでにEtsyやWayfairといったパートナーと連携し、GoogleのAIモデルであるGeminiが商品を提案する仕組みが構築されています。さらにDirect Offers機能では、AIエージェントがユーザーとの会話中に関連する特典やオファーを直接提示します。Asset StudioやVeo 3を活用した動画広告の自動生成ツールも実用段階に入っており、広告制作のあり方が根本から変わりつつあります。
中小企業への影響
エージェントコマースの到来は、中小EC事業者にとって大きなチャンスであると同時に、対応の遅れがリスクになり得ます。UCPに対応すれば、大手ECプラットフォームと同じ土俵でGoogleのAIエージェントに自社商品を発見・推薦してもらえる可能性が広がります。そのためには商品情報の構造化と正確な属性データの整備が不可欠です。また、動画広告のAI自動生成ツールにより、制作予算が限られる中小企業でもプロ品質の広告素材を低コストで用意できるようになります。AIが比較・推薦する仕組みでは、価格だけでなく商品の独自性やブランドストーリーが差別化の重要な要因になります。従来のSEO対策に加え、AIに見つけてもらうための「AIビジビリティ」が新たな課題として浮上しています。
経営者の視点
経営者が今すぐ着手すべきことは、自社ECサイトの商品データを構造化し、AIエージェントが正確に読み取れる形式に整備することです。GoogleのUCPに関する最新情報を継続的にウォッチし、対応の準備を段階的に進めましょう。Asset StudioなどのAI生成クリエイティブツールの活用を検討し、広告制作の効率化を図ることも重要です。中長期の経営計画には、従来のSEO・リスティング広告戦略に加えて、AIビジビリティへの対応を組み込むことをお勧めします。AIエージェントに選ばれるための商品の差別化ポイントやストーリーを明確にし、データとして整理しておくことが競争優位につながります。
参考リンク
ITmedia NEWS:Google広告責任者、「エージェントコマース」は2026年に実働段階に移行と語る
3. 2026年マーケ予算調査──BtoC企業の6割超が予算増加、生成AIツールへの投資が急拡大
概要
Macbee Planetが実施した「2026年投資シフトマップ調査」の結果が発表されました。マーケティング従事者1,086名が回答したこの調査によると、BtoC企業の61.3%が2026年のマーケティング予算増加を見込んでいます。投資先の上位を見ると、デジタル広告が36.3%、生成AIツールが35.8%とほぼ拮抗しており、生成AIへの投資がデジタル広告と同水準にまで急上昇していることがわかります。BtoB企業では生成AIツール25.7%と自社Webサイト・アプリ改善25.3%が上位に並びました。一方で予算削減の対象としては、BtoC企業ではイベント・展示会が42.9%、CRM・リテンション施策が40.7%と高い割合を示しています。注力テーマとしては、生成AIによるクリエイティブ・業務高度化と顧客データ統合活用が44.8%で同率1位となりました。
中小企業への影響
予算規模が限られる中小企業にとって、この調査結果は示唆に富んでいます。生成AIツールの導入は大企業だけの話ではなく、むしろ人手やリソースが不足しがちな中小企業こそ、AIによる業務効率化で大きな競争力を得られます。たとえば広告バナーやSNS投稿素材の自動生成により、デザイナーへの外注費を大幅に削減しつつ制作スピードを向上させることが可能です。ただし、CRM・リテンション施策からの予算削減傾向には注意が必要です。中小企業にとって既存顧客の維持は売上安定の要であり、新規獲得に偏りすぎると長期的な収益基盤が揺らぎかねません。デジタル広告のROI改善も業界全体の課題であり、限られた予算を最大限活かすためには精度の高い運用と効果測定の仕組みが求められます。
経営者の視点
経営者としてまず検討いただきたいのは、2026年度のマーケティング予算配分において生成AIツールへの投資枠を確保することです。いきなり大きな投資をする必要はなく、クリエイティブ制作やレポート作成など特定の業務から小さく始めて効果を検証するアプローチが有効です。デジタル広告に関しては、ROIを正確に測定したうえで成果が出ている施策へ集中投資する判断が重要になります。また、イベントや展示会への投資は費用対効果を厳密に検証し、デジタル施策とのバランスを最適化しましょう。顧客データの一元管理基盤の導入を中長期計画に組み込み、データに基づいたマーケティング戦略を構築することが、今後の競争力の鍵となります。
参考リンク
Web担当者Forum:2026年のマーケ予算、BtoC企業の6割超が増加見込み 生成AIツールへの投資が拡大
4. LINEミニアプリタブ刷新──月間4,700万ユーザーの接点が大きく変わる
概要
LINEヤフーは2026年2月頃より、LINEアプリ内の「ウォレットタブ」を「ミニアプリタブ」へと大幅に刷新します。月間約4,700万人が利用するこのタブが生まれ変わることで、LINEミニアプリの認知と利用が大きく拡大する見込みです。新しいタブにはユーザーの利用履歴に基づくおすすめ表示、カテゴリ別のサービス一覧、キャンペーンバナー枠が搭載されます。さらにお気に入り登録機能が新設され、頻繁に使うミニアプリへのアクセスが格段に容易になります。特集欄の新設とおすすめ欄の強化により、ユーザーが新しいサービスを発見しやすい環境が整います。これはLINEのスーパーアプリ化を加速させる重要な一手であり、決済・金融中心だった従来のウォレットタブから、より広範なサービスをカバーするプラットフォームへの進化を意味しています。
中小企業への影響
この刷新は、特に実店舗を持つ中小企業にとって大きな意味を持ちます。LINEミニアプリをすでに導入している企業は、タブ刷新によるユーザー流入増の恩恵を直接受けられます。飲食店であれば予約やモバイルオーダー、小売店であれば会員証やクーポン配布、美容室であれば予約管理といった機能をLINEミニアプリで一元化でき、自社アプリの開発・維持コストに比べて圧倒的に低コストで顧客接点を構築できます。まだ未導入の事業者にとっては、このタブ刷新のタイミングが導入を検討する絶好の機会です。またLINE公式アカウントとミニアプリを連携させることで、メッセージ配信からサービス利用への導線をシームレスに設計でき、顧客との関係性をより深めることが可能になります。
経営者の視点
経営者としてまず確認すべきは、自社のLINEミニアプリの導入状況です。未導入であれば、今回のタブ刷新を好機と捉えて導入を前向きに検討しましょう。すでに運用中であれば、タブ刷新に合わせてコンテンツやキャンペーンの内容を強化し、おすすめ表示での露出を高める施策を立てることが重要です。LINE公式アカウントとの連携施策を改めて見直し、メッセージ配信からサービス利用への顧客導線の最適化を図りましょう。ただし、LINEプラットフォームへの依存度が高まりすぎると仕様変更やアルゴリズム変更時のリスクが大きくなるため、自社独自のチャネルも並行して維持することが賢明です。新たに設けられるバナー枠やキャンペーン枠への広告出稿も、費用対効果を見極めながら積極的に検討してみてください。
参考リンク
MarkeZine:LINE「ウォレットタブ」を「ミニアプリタブ」へ刷新、月間4700万ユーザーの接点が変わる
5. リテールメディア市場──2035年に1兆円規模へ急成長、店舗DXの原資に
概要
GoogleとBCGの共同調査により、実店舗事業者のリテールメディア市場規模の予測が発表されました。2025年の1,190億円から2035年には約1兆900億円へと、およそ9倍の成長が見込まれています。リテールメディアとは、小売業者が保有する購買データや店舗・ECの顧客接点を活用して広告事業を展開するモデルです。調査では販促支出の9つの領域が広告予算の移行元として特定されており、その合計は約2.2兆円にのぼります。既存の広告予算と合わせると、対象となる市場規模は約3.8兆円に達します。すでにイオンやセブン-イレブン、楽天、Amazonといった大手がリテールメディア事業を拡大しており、セブン-イレブンのリテールメディアは設立からわずか2年で売上が10倍に成長し、約100社が広告を出稿するまでになりました。
中小企業への影響
リテールメディア市場の急成長は、中小企業にとって「広告を出す側」と「メディアを運営する側」の両面で影響があります。まず広告主としては、大手小売のリテールメディアに出稿することで、実購買データに基づいた精度の高いターゲティング広告が可能になります。従来のチラシや店頭POP予算をリテールメディア広告に振り替えれば、効果測定も容易になります。一方、小売事業者としては、自社が保有する顧客データを活用して新たな広告収益源を確保できる可能性があります。地域密着型の中小小売であれば、ローカルな購買データを活かしたニッチなリテールメディアで大手との差別化を図ることもできます。第三者Cookieの規制強化により、小売業者が持つファーストパーティデータの価値は今後さらに高まっていきます。
経営者の視点
経営者としてまず取り組むべきは、自社が保有する顧客データの種類と量を棚卸しし、リテールメディアとして活用できる可能性を評価することです。小売事業者であれば、POSデータや会員データの分析体制を構築し、広告主にとって価値のあるデータを提供できる基盤を整えましょう。メーカーや卸売業の場合は、大手小売のリテールメディアへの広告出稿を検討し、既存の販促費との費用対効果を比較してみてください。デジタルサイネージの段階的な導入も、将来的なリテールメディア事業の基盤づくりとして有効です。ただし、顧客データの活用にはプライバシー保護への十分な配慮が不可欠であり、データ管理のセキュリティ対応を万全にしたうえで取り組むことが信頼性を高める鍵となります。
参考リンク
ネットショップ担当者フォーラム:実店舗事業者のリテールメディア市場は2035年に1兆円規模へ、収益を店舗DXや人材確保へ再投資する攻めのサイクル
まとめ
今回取り上げた5つのニュースに共通するのは、「データ活用」と「AI技術の実装」がマーケティングの前提条件になりつつあるという点です。バレンタイン商戦のデータからは消費の多様化とECプラットフォームの分析力の重要性が見えてきました。Googleのエージェントコマースは購買行動そのものをAIが変えていく未来を示しており、マーケ予算調査では生成AIへの投資がデジタル広告と肩を並べるほどに成長しています。LINEミニアプリタブの刷新は、月間4,700万人の接点を活かすプラットフォーム戦略の重要性を改めて浮き彫りにしました。そしてリテールメディア市場は2035年に1兆円規模という予測が示すとおり、小売業の収益構造を根本から変える可能性を秘めています。中小企業の経営者の皆さまにおかれましては、これらのトレンドを自社の経営判断に活かしていただければ幸いです。まずは自社に最も関連の深いテーマから情報収集と小さな実践を始めてみてください。

