マーケティングニュースまとめ(2026年1月28日〜2月3日)
マーケティングは「広告を打てば売れる」時代から、「信頼を積み上げ、買いやすい導線を整え、データで改善する」時代へ進んでいます。2026年1月28日〜2月3日に公開された国内ニュースの中でも、中小企業経営者が押さえておくべき重要な話題は①ブランド価値の伸び方、②購買保証型の販促、③ECにおけるAI活用の本格化、④AIでリサーチを短時間化する動き、⑤大型コラボによる話題化の設計です。自社に当てはめながら読むと、「どこに投資し、何を小さく試すか」が見えてきます。
1. 日本ブランド価値が2年で27%増——“信頼の資産化”が進む
概要
カンター(Kantar)が「Kantar BrandZ 2026 日本ブランドランキング トップ50」を発表し、上位50ブランドの価値が過去2年で27%伸び、総額が2,860億ドルに達したとしました。首位はトヨタが維持し、ユニクロが順位を上げたほか、アシックスが成長率で大きく伸びた点も示されています。ランキングは「消費者がそのブランドをどう感じているか(好意・信頼・選ぶ理由)」と「事業の実績」の両面から価値を算出する考え方で、単なる売上ランキングとは違います。つまり、目先の販売施策だけでなく、顧客体験や発信の積み重ねが、数字として評価される時代だと言えます。
中小企業への影響
中小企業にとって「ブランド=大企業の話」と感じやすいですが、実際は逆です。価格競争に巻き込まれやすい小規模ほど、選ばれる理由がないと利益が残りません。ブランド価値はロゴの話ではなく、「この会社なら安心」「次もここで買おう」という信頼の総和です。信頼が積み上がると、①値引きに頼らず売れる、②紹介が増える、③採用でも有利になる、④トラブル時に許容されやすい、という効果が出ます。一方で、短期の売上だけを追ってメッセージがブレると、広告費だけが増え、ファンが育ちにくい点には注意が必要です。
経営者の視点
経営者としては、まず自社の“ブランドの体温”を数値で把握しましょう。難しい指標でなくて構いません。例えば、指名検索(社名検索)の推移、リピート率、口コミの量と質、問い合わせ時の第一声(何で知ったか)、キャンセル理由などを毎月記録するだけでも変化が見えます。次に、顧客が評価するポイントを1つに絞ります。製造業なら「納期の正確さ」、士業なら「説明の分かりやすさ」、飲食なら「待ち時間の気持ちよさ」のように、勝ち筋を明文化するのがコツです。そして、Webサイトの見出し、営業トーク、現場オペレーションを同じ言葉でそろえる。派手さよりも「一貫性」が、長期的に強い武器になります。
最後に、すぐに着手できる打ち手を3つだけ挙げます。①自社の強みを一文で言い切る(例:「小ロットでも翌日回答」)。②その強みを裏付ける証拠を用意する(事例、数字、写真、工程)。③接点ごとに同じ体験を提供する(見積返信の速さ、梱包、フォロー連絡)。この3点がそろうと、広告を増やす前に“効く土台”ができます。ブランドは費用ではなく資産です。投資先を迷ったときほど、土台づくりに戻るのが安全です。
参考リンク
共同通信PR:カンターブランドZ 日本ブランドランキング発表
2. レシート撮影でポイント付与——購買保証型プロモーションが身近に
概要
ギフティが、購買保証型のプロモーションプラットフォーム「Performance Media Network(PMN)」のメディアパートナーとして、CCCMKホールディングスの「Vポイントアプリ」との連携を開始しました。これに合わせて、2026年2月1日から、対象商品を買ったレシートをアプリで撮影・アップロードするとVポイントがもらえる新サービス「レシタメ」も始まっています。レシートはAIで読み取り、購入条件を満たしたかを判定する仕組みです。クリック数や表示回数ではなく、「実際に買ったか」を軸に販促を設計する流れが、より強くなっています。
中小企業への影響
中小企業への影響は二つあります。ひとつは、メーカー・卸など“商品を売りたい側”にとって、販促の無駄打ちを減らしやすい点です。Web広告は成果が見えにくく、「結局いくら売れたのか」が曖昧になりがちです。購買証明が取れる仕組みなら、費用対効果の議論がしやすくなります。もうひとつは、小売・店舗側です。ポイント還元系の施策が動くと、対象商品が動きやすくなります。売り場づくりや在庫が追いつかないと、機会損失やクレームにつながる可能性があります。
経営者の視点
経営者の視点では、こうした“購買保証型”を「短期の売上アップ」だけで終わらせない設計が重要です。例えば、①リピートにつながる商品(継続購入される消耗品など)を選ぶ、②初回だけでなく2回目の購入導線を用意する(同梱チラシ、LINE登録など)、③対象客層を決めてメッセージを合わせる、の3点を意識すると投資回収が早くなります。また、レシート投稿型は不正対策や事務対応も発生します。自社で取り組む場合は、ルールを簡潔にし、問い合わせ窓口と現場の説明をそろえることが大切です。
もう少し踏み込むと、今回の連携は「アプリ横断で販促を回す」方向性を示しています。Vポイントは提携先が多く、生活者側は“いつものアプリ”で参加できるのが強みです。中小企業にとっては、広告媒体を増やすというより、参加のハードルを下げた仕組みをどう作るかが学びになります。自社でも、紙の応募用紙をやめてQRで登録→購入証明はレシート写真、という流れにするだけで参加率が上がることがあります。
実務では、開始前に「数字の置き方」を決めておくと判断が早くなります。最低限、①獲得単価(1件売るのにいくらかかったか)、②粗利(値引き・ポイント原資込み)、③再購入率、の3つです。ここが見えていれば、キャンペーンを“当てる”より“育てる”運用ができます。
参考リンク
株式会社ギフティ:PMNのメディアパートナーとしてVポイントアプリと連携開始
3. ECの検索と接客がAI前提へ——“商品情報の質”が勝敗を分ける
概要
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が、楽天市場の出店店舗向けカンファレンスで「AI×モバイル」戦略を説明し、楽天市場を「世界で最もAIを使うECプラットフォーム」へ進化させる方針を示しました。楽天はEC、金融、旅行などのサービスデータに加え、楽天モバイル回線を通じた行動データも持つ点を強みとして挙げ、「データは金鉱」と表現しています。具体例として、会話型で商品探しを助ける「AIコンシェルジュ」、キーワード一致だけに頼らず意図を理解する「意味検索(セマンティック検索)」、次々に商品を表示する「発見」タブなどを紹介しました。店舗向けには「RMS AIアシスタント」で問い合わせ対応や商品画像作成の時間を大きく減らした事例も示されています。
記事では成果指標も示されています。AIコンシェルジュは購入決定までの時間を43%短縮し、平均購入単価は約40%上がったとされます。意味検索は2025年度の流通総額に450億円規模で貢献したという説明もあり、AI機能が“実売上”に直結している点が重要です。出店側は「広告を増やす」より先に、AIが理解できる商品情報と体験を整えることが、これからの基本戦略になります。
中小企業への影響
中小企業への影響は、楽天市場に限らず「検索と接客のルールが変わる」ことです。これまでのECは、タイトルにキーワードを詰める、広告で上位に出す、といった技が効きました。しかしAIが“文脈”で選ぶようになると、商品情報の正確さ(素材、用途、サイズ感、注意点)やレビューの質、返品対応など、地道な要素が強く効きます。逆に言えば、誠実に情報を整えている店舗ほど評価されやすくなります。一方、AIが推薦を担う分、価格だけでなく「理由のある強み」がないと埋もれやすい点はリスクです。
経営者の視点
経営者としては、まず「商品データの棚卸し」をしてください。写真が暗い、説明が短い、スペックが抜けている、といった欠けはAI時代に致命傷になります。次に、AIツールで浮いた時間を、利益につながる仕事に振り向けます。例えば、問い合わせ対応のテンプレを整える、レビュー依頼の導線を作る、同梱物を改善する、です。最後に、“AIに任せない部分”も決めておきましょう。ブランドの語り口、クレーム時の判断、常連への対応など、人の温度が価値になる領域は残ります。AIで効率化しつつ、最後は人で差を付ける。これが小規模店舗の勝ち筋になります。
参考リンク
ネットショップ担当者フォーラム:楽天・三木谷社長「世界で最もAIを使うECプラットフォーム」へ進化
4. アンケート結果を“対話”で深掘り——AIリサーチが意思決定を加速
概要
楽天インサイトが、アンケート結果からターゲットの人物像を自動生成するAIツール「楽楽プロファイル」において、生成したプロファイルをAIで擬人化し、対話できる「インタビュー機能」の試験運用を2026年1月30日に開始しました。アンケートの数値だけでは見えにくい「なぜその選択をしたのか」「何に不安を感じるのか」といった背景を、会話形式で深掘りする狙いです。本格提供は2月中旬予定とされ、試験運用は無料(ただし過去に楽天インサイトのインターネットリサーチを実施した企業・団体が対象)と案内されています。
中小企業への影響
中小企業にとっての価値は、リサーチの“次の一手”を速く出せることです。多くの会社は、アンケートを取っても「結果を見て終わり」になりがちです。AI対話が入ると、結果を材料にして、①仮説を作る(なぜ買った/買わないのか)、②訴求軸を絞る(刺さる言葉を選ぶ)、③広告やLPの案を出す、という工程が短縮されます。少人数で回す中小企業ほど、分析に時間をかけず、意思決定の速度を上げられるのは大きいメリットです。
経営者の視点
ただし注意点もあります。AIが話す内容は“それっぽい”ため、実データに根拠がない推測が混ざる恐れがあります。経営者としては、AIの発言を結論にせず、仮説の候補として扱う姿勢が安全です。おすすめは、(1)アンケートの自由記述や実際の顧客の声と照合する、(2)営業・CSが持つ現場感と突き合わせる、(3)重要な論点だけは少数の電話ヒアリングで確認する、の三段階です。AIを「顧客の代わり」ではなく「考える補助輪」として使うと、限られた予算でも精度の高い打ち手に近づけます。
実務での使いどころは、次のように整理すると分かりやすいです。①新商品の企画:想定顧客に「買う理由/買わない理由」を何度も聞き、企画書の弱点を洗い出す。②Web改善:サイトの文章を見せ、「どこで迷うか」を質問して離脱ポイントを推測する。③営業資料:相手の業種別に質問を変え、よくある反論への答え(FAQ)を先に作る。ここまでできると、マーケティングが“勘”から“検証”に寄ります。
一方で、AIは入力したアンケート設計の影響を強く受けます。質問が曖昧だと、出てくる人物像も曖昧になります。経営者が押さえるべきは、アンケートの設計(選択肢、比較軸、自由記述の取り方)を雑にしないことです。小さく始めるなら、既存顧客に3〜5問だけ聞くミニ調査でも十分です。その結果をAI対話で深掘りし、打ち手を1つ決めて実行→数字で確認。このサイクルを回すことが、最短距離になります。
参考リンク
楽天グループ:楽天インサイト、AIツール「楽楽プロファイル」の「インタビュー機能」試験運用開始
5. 楽曲コラボでブランドメッセージを拡張——“話題の仕組み”を設計する
概要
花王が、日焼け止めブランド「ビオレUV」のグローバルキャンペーン「SUNLIGHT IS YOUR SPOTLIGHT.」の2年目施策として、Stray Kidsとの“楽曲コラボ”を行うと発表しました。メンバー自身が作詞・作曲・プロデュースするオリジナルのアンセムソングを制作し、2026年3月末に世界同時公開する予定です。1月30日にティザーサイトとムービーを公開し、日本国内では2月2日〜4月30日に購入者向けの限定グッズキャンペーンも実施するとされています。記事では、1年目の施策でSNS上の話題量が前年比約15倍に伸びた点や、国・地域ごとに30以上の動画バリエーションを展開した点も紹介されています。
中小企業への影響
中小企業への影響は、「コラボは派手な企画」ではなく、メッセージを記憶に残す手段だと再確認できることです。大切なのは、有名人の起用そのものではなく、①誰に、②何を感じてもらい、③どんな行動につなげるか、を一貫して設計している点です。ビオレUVは“太陽の下で自分らしく輝く”という解釈を明確にし、音楽という感情に届く表現で広げようとしています。小規模でも、地域のスポーツチームや近隣の人気店、クリエイターとの共同企画で、同じ発想を取り入れられます。
経営者の視点
経営者の視点では、コラボを成功させる3つの条件を押さえると失敗が減ります。第一に「相性」です。相手の世界観が自社の価値とつながっているか。第二に「素材の量」です。1本の動画で終わらせず、短尺・長尺・写真・裏側ストーリーなど、使い回せる素材を最初から設計する。第三に「測り方」です。フォロワー数より、指名検索の増加、来店理由、問い合わせ内容の変化など、事業に近い指標で見ます。コラボは一発勝負ではありません。小さく試し、反応が良かった型を育てると、広告費に頼らず“話題の仕組み”を自社に蓄積できます。
実行のステップもシンプルにできます。①まず自社の“ひと言メッセージ”を作る(例:「初めてでも迷わない」)。②そのメッセージを体現できる相手を選ぶ(ファン層が近い、価値観が近い)。③共同で1つの体験を作る(限定メニュー、コラボ講座、共同ライブ配信など)。④反応が良かった接点だけ残す。これで十分に検証できます。
注意点として、権利や炎上リスクは事前に整理しましょう。素材の使用範囲、期間、二次利用、クレーム対応、投稿ルールを簡単でよいので文書化すること。ここを押さえると、コラボは“怖い挑戦”から“再現できる投資”に変わります。
参考リンク
AdverTimes.:Stray Kids×花王ビオレUV、アンセムソongを3月末に発表
まとめ
今回取り上げたニュースから見えてくるのは、マーケティングの主戦場が「派手な広告」から「信頼の積み上げ+データで改善」へ移っていることです。ブランド価値の伸びは、一貫した体験が資産になることを示しています。購買保証型の販促は、成果が見える形に近づいています。ECではAIが検索と接客を変え、リサーチでもAIが意思決定を速めます。さらに、コラボは話題化の偶然を減らし、再現性を高める設計が鍵になります。
すべてを同時にやる必要はありません。まずは、(1)自社の強みを一文で言い切る、(2)商品・サービス情報を整える、(3)小さな施策を1つ実行して数字で確認する――この3つだけ始めてください。次の投資判断が、驚くほど楽になります。

