マーケティングニュースまとめ(2026年1月14日〜1月20日)
マーケティング分野では、広告プラットフォーム統合に伴うデータ利用ルールの見直し、生活者データ×AIによるターゲティング高度化、店舗現場のAI活用、そしてリテールメディアの体験型広告など、実務に直結する動きが出ました。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、①LINEヤフー広告のデータ利用基準変更、②ファミリーマートのAI売場スコアリング、③電通の価値観クラスター分析ツール、④ファミマの体験型広告「まるごとメディア」、⑤広告・マーケ予算の増減見通し調査、の5つです。
1. ファミマ、防犯カメラ×AIで売場を点数化「AI売場スコアリング」実証へ
概要
ファミリーマートは、店舗にある防犯カメラの画像を使い、売場をAIで点数化する店舗運営支援システム「AI売場スコアリング」の実証実験を首都圏の一部店舗で始めると発表しました。あらかじめ決めた時間に売場を撮影して画像を蓄積し、曜日別・日別・時間帯別の3項目で売場ボリュームをスコア化。画像と点数を並べた定点観測レポートを作り、店長とスーパーバイザー(店舗指導員)が客観的に売場を見て、発注や売場づくりの改善につなげます。店長が不在でも画像で売場を把握でき、発注精度の向上にも役立てる想定です。将来的にはロボット「ポム」へのカメラ搭載や、AI発注・人型AIアシスタント「レイチェル」との連携も視野に入れ、分析や発注提案の自動化を進める考えです。個人情報が含まれる売場画像は利用しない方針も示しています。
中小企業への影響
中小企業にとっての示唆は「高価な仕組みを入れなくても、現場の見える化から改善は始められる」という点です。大規模チェーンは、売場の状態を“数字”にして意思決定のスピードを上げ、欠品や過剰在庫のムダを減らしに来ています。小規模の小売・飲食・サービスでも、①見る場所(棚・入口導線・待ち時間・作業台など)②見る頻度(毎日・曜日固定など)③評価の物差し(チェックリストや点数)を決めるだけで、改善の議論が一気に具体的になります。さらに、遠隔で複数拠点を見られると、オーナーが現場に張り付かなくても品質のばらつきを減らせます。
一方で、画像を扱う以上、プライバシー配慮や利用範囲の線引きは必須です。技術の導入より先に、撮影範囲・保存期間・閲覧権限を決めておくことがリスク低減になります。
経営者の視点
経営者としては、まず“1か所だけ”を選んで小さく試すのがおすすめです。例えば「主力商品の棚」「入口付近の導線」「レジ前の関連購買」「客席の回転に影響する片付け状況」など、売上に直結する地点を決め、同じ時間に写真を撮り、良い状態の基準(理想の陳列写真)と比べて点数化します。点数は最初は人が付けても構いません。重要なのは、点数が下がった日に何が起きたか(欠品・補充遅れ・混雑・人員不足)を原因とセットで記録し、発注やシフト、補充ルールに反映することです。慣れてきたら、点数と売上・廃棄・クレーム件数を並べて見て、どの指標が利益に効いているかを確認します。AIは“改善サイクル”が回り始めた後に導入すると、投資対効果が見えやすくなります。
参考リンク
Web担当者Forum:ファミリーマートが「AI売場スコアリング」で店舗運営を支援、首都圏で実証実験を開始
2. 電通、AIで48の価値観クラスターを可視化「コネクションプランナー」開発
概要
電通は、生活者の価値観と、メディア接触や広告効果、商品・サービスの利用意向を統合的に評価できるツール「コネクションプランナー」を開発したと発表しました。電通が保有する大規模な生活者データをAIで解析し、価値観が近い生活者を48のクラスターに分類。さらに、そのクラスターごとに「どんな商品・サービスに関心が強いか」「どんなメディアに触れているか」「どんな広告表現が効きやすいか」を横断的に可視化できるのが特徴です。分析対象として、270のポテンシャルターゲット、690のメディア接触、130カテゴリー4800以上の商品・サービス利用意向、30種類の広告効果との親和性を扱えるとしています。要するに、“誰に・どこで・何を言うと効くか”を、ひとつの地図にまとめる発想です。
中小企業への影響
中小企業にとって重要なのは、マーケティングの軸が「年齢・性別」だけでは足りなくなっていることです。価値観(何を大切にしているか)で顧客を捉えると、限られた予算でも“刺さる相手”に集中しやすくなります。例えば同じ30代でも、価格重視の人と、時短重視の人、安心重視の人では、響く言葉も選ぶチャネルも変わります。
大手はデータとAIでそれを高速化し、広告効果まで含めて一気通貫で判断しようとしています。小規模企業は大手ほどのデータ量はありませんが、逆に「顧客の声が近い」という強みがあります。商談メモ、問い合わせ内容、失注理由、レビューなどを“価値観”で整理するだけでも、広告文やLP、提案資料の改善ポイントが見えてきます。
経営者の視点
経営者の実務としては、まず自社の顧客を4〜6タイプに分け、「価値観ラベル」を付けてみてください(例:節約、安心、時短、自己投資、家族、体験)。次に、各タイプに対して①刺さる訴求(ベネフィット)②よく使う接点(検索、SNS、店頭、紹介など)③買う障壁(不安、価格、手間)を1枚に整理します。そこから、広告・コンテンツ・営業トークを同じ地図で整えると、発信がぶれにくくなります。さらに、最初は「48クラスター」のような細かさを目指さず、タイプ別に“最初の1本のメッセージ”を決めるのが効果的です。データが少ない段階では、完璧な分析よりも、小さな仮説→少額テスト→学びの蓄積が最短ルートです。価値観に沿った一貫した体験が作れると、価格競争から抜け出しやすくなります。最後に、指標は「クリック数」だけでなく、問い合わせの質や継続率など利益に近い指標とセットで見てください。
参考リンク
Web担当者Forum:電通が「コネクションプランナー」開発、AIで48の生活者価値観クラスターを分析
3. Yahoo!広告×LINE広告の統合に向け「広告データ利用基準」を改定へ
概要
LINEヤフーは、Yahoo!広告とLINE広告の広告プラットフォーム統合に関連して「広告データ利用基準」を変更すると告知しました。統合後は新たに「LINEヤフー広告」という名称で提供し、適用開始は2026年春頃の統合と同日予定としています。主な変更点は、①基準適用対象のサービス名称変更(Yahoo!広告→LINEヤフー広告)②「当社の不利益につながるデータ利用の禁止」の節名変更と禁止事項の追加③「広告主・広告代理店の不利益につながるデータ利用の禁止」で対象者の追加④「社会規範、公序良俗に反するデータ利用の禁止」の新設⑤構成・文言の見直し、の5つです。データの扱いをより明確にし、統合後のルールを揃える狙いが見えます。告知には、詳細をまとめた資料(PDF)や、適用開始日にヘルプページを更新する旨も記載されています。
中小企業への影響
中小企業でも、検索広告やディスプレイ広告を運用している場合は影響が出ます。理由はシンプルで、広告運用は「データの取得・加工・共有」で成り立っているからです。例えば、レポートを社内共有する、代理店に渡す、外部ツールに連携する、といった日常の作業が“基準に沿っているか”を確認する必要があります。違反すると配信停止やアカウント制限につながる可能性があり、売上への影響が大きくなります。
また、統合に伴い管理画面の表記や設定項目が変わることも想定されるため、担当者が少ない会社ほど「うっかりミス」を防ぐ仕組みづくりが重要です。特に、複数媒体で同じ顧客データを使い回している場合は、データの由来(どこで取得したか)と利用目的(何に使うか)を説明できる状態にしておくと安心です。広告配信の効率を上げたいほどデータ活用は増えますが、ルールの更新に追随できないと逆にリスクが増えます。
経営者の視点
経営者の視点では、まず自社が扱うデータを棚卸ししましょう。①顧客情報(メール、電話、購入履歴)②広告で使うデータ(コンバージョン、オーディエンス)③外部に渡すデータ(代理店、制作会社、分析ツール)を一覧にし、誰が・何の目的で・どこに保存しているかを見える化します。そのうえで、社内の運用ルールを「やってよいこと/やってはいけないこと」に分けて一枚にまとめ、担当者が変わっても守れる形にします。合わせて、代理店や外部パートナーとの契約・作業手順も見直し、データを扱う工程にチェックポイントを入れてください。ルールを先に整えるほど、統合後の変更にも落ち着いて対応できます。できれば、月に1回だけでも広告運用の棚卸し時間を取り、設定変更やガイドライン更新を確認する“定例”を作っておくと、トラブルの芽を早めに摘めます。
参考リンク
LINEヤフー for Business:広告データ利用基準変更のお知らせ(2026年春頃適用開始予定)
4. コンビニ店舗を“広告+体験”の場に「ファミマ まるごとメディア」開始
概要
ファミリーマートは、体験型の広告ソリューション「ファミマ まるごとメディア」を全国の店舗で1月から展開すると発表しました。店内デジタルサイネージ「FamilyMartVision」での配信動画と、店舗駐車場や店内イートインでのリアル体験を組み合わせ、広告主の認知拡大と実体験を同時に提供する仕組みです。運営面では、ファミリーマートが出資するゲート・ワン(サイネージのコンテンツ配信)と、データ・ワン(データ活用のデジタル広告配信)と連携します。購買データ付きの5000万広告IDを生かした、エリア別のデジタル広告配信と組み合わせられる点も特徴で、単なる「枠売り」から一歩進んだリテールメディアの形として注目されます。記事では、全国に販売拠点を持たない企業でも、必要な時期・エリアで体験型の販売促進を提供できるとしています。
中小企業への影響
中小企業にとってのメリットは、リアル拠点を持たなくても「体験」を設計できる可能性が広がることです。新商品やサービスは、説明だけでは伝わりにくく、実物に触れた瞬間に理解が進みます。しかし自社でイベントを開くのはコストも人手も重い。店舗網を使ったパッケージなら、必要な地域・時期に絞って試しやすくなります。特に、食品・日用品・サブスクのトライアル、アプリの利用体験など、体験と相性が良い商材はチャンスです。リテールメディアは大手だけのものと思われがちですが、地域性のある商品ほど“場所の力”を借りる価値があります。
一方で、接点が増えるほど「何をKPIにするか(認知、体験、購入、継続)」が曖昧だと、費用対効果が見えません。企画前に目的を一つに絞ることが重要です。
経営者の視点
経営者としては、まず“体験に変えると売れる要素”を洗い出してください。例えば「試食で味が伝わる」「触ると品質が分かる」「その場で設定して使えると不安が消える」などです。次に、体験を設計する導線を決めます。サイネージ動画で興味を持たせ、店内で試し、QRコードやクーポンで次の行動(購入・会員登録・資料請求など)につなげる、という形にすると測定しやすくなります。実施後は、実施エリアと非実施エリアで反応を比べるなど、できる範囲で検証を入れてください。体験型施策は当たると強い一方、準備不足だと現場が回りません。オペレーション(人・在庫・問い合わせ対応)まで含めて小さく始めるのが安全です。また、体験で得た学び(よく出る質問、反応が良い訴求)を、ECページや営業資料に反映すると、単発で終わりにくくなります。
参考リンク
Web担当者Forum:ファミリーマートが業界初の体験型広告ソリューション「ファミマ まるごとメディア」の展開開始
5. 2026年度の広告・マーケ予算「増加」が38.5% 注力はロイヤルティと自社チャネル
概要
コムエクスポジアム・ジャパンは、2026年のマーケティングの取り組みに関するアンケート調査結果を公表しました。調査対象は、同社が主催する国際カンファレンस「ad:tech tokyo」などに参加した企業の広告・マーケティング担当者111名です。2026年度の広告・マーケティング予算の増減予定では、50.5%が「2025年度と同程度」と回答。一方で「増加する」の合計は38.5%で、前年から6.2ポイント増えたとしています。注力施策としては「顧客ロイヤルティ向上」(33.9%)が最多で、「オウンドメディア・ECサイトの強化」(32.1%)、「ファンマーケティングの実践」(27.5%)が続きました。新規獲得だけでなく、既存顧客との関係づくりに予算が向かう流れが読み取れます。
中小企業への影響
中小企業にとっては、広告市場全体の“競争”が強まるサインです。予算を増やす企業が増えると、入札型広告では単価が上がりやすく、同じ費用でも獲得件数が伸びにくくなります。そのとき頼れるのが、自社でコントロールできるチャネルです。調査でも上位に入ったオウンドメディアやECの強化は、長期的に見れば広告依存を下げる施策です。また、ロイヤルティ(継続・推奨)が高まると、紹介やリピートが増え、獲得コストが下がります。逆に、リピート率が低いまま広告費だけを積み増すと、利益が薄い状態で疲弊しやすいので注意が必要です。
特にBtoBでは、初回受注までのリードタイムが長く、広告の即効性だけで判断すると見誤ります。自社サイトや資料、導入事例の整備は“後から効く資産”になるので、景気や単価変動の影響を受けにくくなります。
経営者の視点
経営者の視点では、まず「既存顧客がなぜ続けてくれているのか」を言語化してください。購入後アンケートや、解約理由の整理だけでも十分です。その上で、①再購入を促す仕組み(メール、LINE、同梱チラシ、会員特典)②体験を深めるコンテンツ(使い方、事例、比較)③ファン化の場(コミュニティ、イベント、SNS参加)を、無理のない範囲で組み合わせます。KPIは売上だけでなく、リピート率、継続率、紹介件数など“関係性”を測る指標も置くと、意思決定がぶれません。最後に、広告は「新規を増やすため」だけではなく、「良い顧客を増やすため」に使う、という発想に切り替えると、少額でも成果が安定します。投資配分に迷う場合は、まずは「既存顧客向けの改善に7割、獲得に3割」など、仮の比率を置き、数か月ごとに見直すと管理しやすいです。
参考リンク
Web担当者Forum:2026年の広告・マーケ予算は増加傾向。再注力施策は「顧客ロイヤルティ向上」
まとめ
今回のニュースを通して見えるのは、マーケティングが「勘」ではなくデータ・体験・ルールで固まってきたことです。
- 店舗や現場は、写真や点数で見える化し、改善のスピードを上げる
- 顧客理解は、属性だけでなく価値観で捉え、少額でも刺さる発信に寄せる
- 広告は、統合やルール変更を前提に、データの扱いを“先に”整える
- 体験型のリテールメディアは、目的と測定を決めて小さく検証する
- 予算競争が強まるほど、ロイヤルティと自社チャネルが効いてくる
やることは難しくありません。まずは「データの棚卸し」「顧客タイプ分け」「現場の見える化」の3つから着手してください。小さな整備でも、広告費のムダや施策のブレが減り、次の一手が打ちやすくなります。

