マーケティングニュースまとめ(2025年9月17日〜9月23日)

マーケティングニュースまとめ(2025年9月17日〜9月23日)

中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、「Google検索・マップに情報を最適表示する“ライトOMO”の登場」、「KARTEの新エディタとAIエージェントで施策運用が高速化」、「AI生成クリエイティブ『マーマレーション』のTikTok対応」、「博報堂がCX変革を支援する共通ワークプレイス開始」、「TikTok広告でPonta購買データを使った配信・効果計測が可能に」です。販促の現場に直結する“すぐ効く”施策が増えており、限られた予算でも成果を伸ばすチャンスが広がっています。この記事では、それぞれのニュースが中小企業にもたらす意味と実務での活かし方を、経営者目線で要点解説します。

目次

1. Google検索・マップに店情報を反映――movが「ライトOMOサービス」を提供開始

概要

movは9月22日、小売店舗やEC事業者向けに「ライトOMOサービス」を提供開始しました。本サービスは、Google検索やGoogleマップ上に自社の店舗情報や告知を分かりやすく表示させ、来店や問い合わせにつながる導線を整えることを目的としています。複雑な大規模システムの導入を前提とせず、まずは検索・地図上での発見性と利便性を高める“軽量なOMO”を実装できるのが特徴です。店舗の基本情報や写真、投稿、クーポンなどの情報発信を一元的に管理し、最新状態に保つ運用を支援します。

中小企業への影響

中小企業にとっては、限られた広告費でも“いま探している人”に確実に見つけてもらえるチャンスが広がります。検索結果から地図アプリへ、そして来店や電話に至るまでの“ラストワンマイル”の体験が整うため、紙のチラシや広域配信のディスプレイ広告に比べて、無駄打ちを抑えた集客が可能です。また、営業時間や混雑状況の告知、キャンペーンの短期訴求を柔軟に回せるので、在庫や人員の変動が大きい小規模店でもタイムリーに対応できます。口コミへの返信や写真の更新などの“見られ方”の改善は、採用や取引先への信頼形成にも波及します。

経営者の視点

経営者としては、まず「Googleビジネスプロフィール」を正確に整備し、名称・住所・電話(NAP)の表記を全媒体で統一しましょう。次に、投稿やクーポン配布などの更新を毎週の定例タスクにし、クリック先URLにはUTMパラメータを付与して流入と反応を可視化します。指名検索数、経路案内のタップ数、電話件数を主要KPIに据え、オフライン売上との相関を月次で確認。成果が見えたら、店舗周辺の屋外サイネージやチラシにも同じ訴求を載せ、オンライン×オフラインの一貫表現で効果を底上げしましょう。さらに、記載ミスの多い臨時休業・特別営業時間、支払い方法、駐車場の有無、バリアフリー情報なども公開情報として整えることで、離脱を防ぎ、来店体験の不満を減らせます。地域名や駅名を含む説明文の最適化、主要カテゴリ/補助カテゴリの選定、代表写真の差し替えと季節ごとの入れ替え、といった基本施策も検索面の表示率に効きます。施策の設計〜運用をベンダーに委ねつつ、社内では“最新情報の供給”に集中できる点が、少人数体制の企業には適しています。注意点は、オーナー権限の管理とガバナンスです。担当者の退職や委託先の変更で権限が不明確になると更新が止まります。管理者アカウントと編集者アカウントを分け、変更履歴と承認フローを残す運用設計を必ず行いましょう。

参考リンク

mov、小売店舗・EC向けに「ライトOMOサービス」提供開始 Google検索やマップ上に情報を表示

2. KARTEが「フレックスエディタ」とAIエージェントを実装、サイト内施策を高速回転へ

概要

プレイドは9月22日、CXプラットフォーム「KARTE」の施策作成機能を刷新し、新エディタ「フレックスエディタ」の提供を開始、あわせてAIエージェント機能も実装しました。Webやアプリ上に表示するバナー/モーダル/レコメンドなどのアクションを、ノーコードで柔軟に設計でき、ユーザー属性や行動データに基づく出し分け、表示条件、ABテストの設定を一画面で完結できるのが特長です。AIエージェントは、施策の文言案やデザインパターンの提案、セグメントの自動生成、学習に基づく最適化のヒント提示を担い、運用担当者の手作業を減らしながらPDCAの速度を上げます。

中小企業への影響

中小企業では、施策の“作る・試す・学ぶ”をスピード化できることが最大のメリットです。既存サイトを大きく改修せずに、離脱防止ポップアップ、カゴ落ち対策、会員向けクーポン表示、チャット誘導、FAQ提案などを短時間で立ち上げられます。CVRだけでなく、滞在時間、回遊、解約防止、チャーン抑止など“体験の質”もKPI化しやすくなり、広告依存からの脱却と、LTV起点の意思決定に移行する足がかりになります。一方、AIエージェントの提案に全面依存すると、文脈に合わない出し分けや過剰表示のリスクがあります。ブランドトーンと法令順守(薬機法・景表法・個人情報)の観点で、公開前チェックを必ず挟みましょう。

経営者の視点

経営者としては、まず“必勝シーン”を3つ定義しましょう(例:初回訪問者の資料DL、カゴ落ち再訪の購入完了、会員の2回目購入)。各シーンに対して、表示条件→訴求→計測→改善のテンプレートを用意し、週次でKPIを確認します。AIエージェントは“案出しと仮説整理”に限定し、公開判断は人が行うルールを徹底。計測は、施策IDをパラメータ化して広告・CRM・売上データと突合、原価(制作・媒体)まで含むROIで評価します。勝ちパターンが見えたら、メールやアプリPUSH、実店舗のPOPにも展開し、接点横断で一貫表現に統一しましょう。また、デザインコンポーネントの再利用や、過去の勝ちパターンの継承が容易になるため、属人化しがちな“担当者の勘と経験”から脱し、チームの標準装備として施策を回せます。導入初期は、実装タグの設置とデータ連携(会員ID・購入履歴・在庫など)の範囲を最小から始め、エンジニア負荷を抑えつつ段階的に高度化するのが現実的です。個人情報の取り扱いは、取得目的の明示、同意管理、保存期間、第三者提供の有無をプライバシーポリシーで明文化し、AIが生成した文面にも意図しない表現が含まれていないかを法務・薬事の観点で点検しましょう。

参考リンク

プレイド、KARTEのアクション機能を刷新し「フレックスエディタ」を提供 AIエージェント機能も実装

3. 生成AIクリエイティブ「マーマレーション」がTikTok対応、縦型動画の試行回数を一気に拡張

概要

オプトは9月19日、AIを活用した広告クリエイティブ制作ソリューション「Murmuration: Sequential Generator(マーマレーション)」がTikTokクリエイティブに対応したと発表しました。静止画・動画・テキストの組み合わせをAIが連続的に生成し、複数のバリアントを短時間で用意できる点が特長です。今回の対応により、縦型動画やUGC風素材、ネイティブな字幕・テロップなど、TikTokに最適化した表現の試行回数を一気に増やせます。ブランドのトンマナに合わせたテンプレートやルールを設定すれば、スピードと品質の両立も狙えます。

中小企業への影響

中小企業では、少人数で運用しているがゆえに“素材づくりがボトルネック”になりがちです。AIで初稿とバリエーションを量産し、人が最後に調整するワークフローに変えると、撮影や編集の固定費を抑えつつ、訴求切り口・尺・フックのABテストを高速化できます。特にTikTokは最初の1~3秒の掴みと、視聴完了率、クリック後の離脱までの体験が勝敗を左右します。UGC風の“生活感”とブランドの信頼性のバランスを取り、コメント誘発・保存・シェアを促す設計にすることで、広告だけでなく自然拡散も見込めます。一方で、安直な生成に頼るとプラットフォームの表現ガイドラインや広告ポリシーに抵触する恐れがあり、権利関係(音源・画像)の確認も必須です。

経営者の視点

経営者の打ち手としては、①商品ごとの“効く型”を3パターン作成(問題提起→解決、ビフォーアフター、口コミ引用)し、②各型で5〜10の短尺素材を一気に生成、③初速指標(視聴継続・クリック)でふるいにかけ、④勝ち素材に予算を集中、⑤勝ち筋をLPと店頭の訴求にも展開する、という流れが有効です。計測はTikTok Ads Managerのイベントと自社の計測タグを連携し、CPAやROASだけでなく、保存率・コメント率・UGC二次利用数も見ます。“生成→人の監修→法務チェック→公開”のゲートを設け、ブランド毀損を未然に防ぎましょう。制作体制は、社内で“構成台本”と“ブランドガイド”だけ用意し、生成と編集を外注・社内混合で回すのがおすすめです。冒頭のテロップは読みやすいサイズに固定し、音無し再生でも意味が通る設計にします。LP側は動画内のメッセージと同じ言葉を見出しに使い、体験の連続性を担保します。配信後は、コメント欄の反応から追加の反論処理やQ&Aをクリエイティブに反映し、週次で刷新。在庫・出荷能力に合わせて訴求地域と日予算を調整し、供給制約での機会損失を避けましょう。

参考リンク

オプト、AI活用の広告クリエイティブ制作ソリューション「マーマレーション」がTikTokに対応

4. 博報堂「CX AI STUDIO」提供開始、AIと人の共創で顧客体験を底上げ

概要

博報堂は9月17日、AIによるCX領域のプロセス変革を支援するワークプレイス「CX AI STUDIO」の提供を発表しました。同社の“生活者発想”とプランニング知見を組み込んだ複数の専門家AI(発想エージェントAI、バーチャル接客を行う顧客体験AI など)と企業の担当者が対話しながら、インサイト発見、ストーリー作成、施策の具体アウトプット生成までを一気通貫で進められる点が特長です。部門横断で共通の顧客像を共有し、データ連携(自社CDP・SFA等と博報堂の独自生活者データ)を前提に顧客接点の統合化を進めることで、従業員体験(EX)と顧客体験(CX)を同時に高め、ブランドの持続的成長を狙います。

中小企業への影響

中小企業にとっての価値は、属人的な“思いつき施策”からの脱却です。会議のたびにゼロから考えるのではなく、顧客課題→仮説→検証→学びの循環を、AIが伴走する形で標準化できます。提案資料やキャンペーン案のドラフト作成、顧客シナリオの分岐設計、チャネル別の表現最適化など、これまで代理店や外部制作に丸投げしていた工程の一部を内製化し、スピードと学習コストの低減が期待できます。ただし、データをまたいだ連携は“便利さ”と表裏一体でリスクも増します。個人情報と機微情報の取り扱い、AIが生み出す提案のバイアス、虚構(ハルシネーション)への対策、プロンプトや成果物の権利範囲など、ガバナンスの枠組みを最初に整えることが必須です。

経営者の視点

経営者の打ち手は、①最重要顧客セグメントを一つ決め、②“解決すれば売上に直結する課題”を一つ選び、③1〜2か月のスプリントでPoC(小規模実証)を走らせる、の三段構えです。KGIは実売と解約率、KPIはCVRやCS、回答リードタイムなど“顧客体験の質”も含めて設定します。成功例が出たら、ナレッジ化して他部署へ水平展開。失敗した場合も、仮説→施策→結果→学びを型として残し、AIの提案精度の向上に再投資するサイクルを回しましょう。外部パートナーとは、モデル更新・データ保全・セキュリティ事故時の対応をSLAで明記しておくと安心です。加えて、ナレッジの蓄積を“共通ワークプレイス”に集約できる点は、大きな資産になります。過去の施策と成果、使用したクリエイティブ、反応データ、会議メモをひも付けて検索可能にすることで、新任担当者でも短期間で戦力化できます。UI上で専門家AIと会議を行い、議事の自動要約や次アクションの提案まで自動化できれば、ミーティング時間の削減にも直結します。導入前には“何を自動化するか/しないか”の線引きを決め、顧客対応の最終判断を人が握る体制を崩さないことが肝要です。

参考リンク

博報堂、AIによるCX領域のプロセス変革を支援するワークプレイス「CX AI STUDIO」提供

5. TikTok広告×Pontaデータ連携開始、購買までつながる配信と効果計測が実現

概要

TikTok for Businessと共通ポイントサービス「Ponta」を運営するロイヤリティ マーケティングは9月18日、TikTok広告でPontaデータを活用するターゲティング配信・分析サービスの提供を開始しました。従来の閲覧履歴や年齢・性別などの属性に加え、Pontaの購買データや価値観クラスターなどのライフスタイル情報を組み合わせ、より細分化されたセグメントでの配信が可能になります。さらに、リアル店舗での購買行動をPontaデータで可視化し、広告接触者の購買率や、配信前後の行動変化、セグメント別の効果比較を計測できます。2025年12月までは、一定金額以上の広告出稿に限り、Pontaデータの利用費をTikTokが負担する特典も提供されます。

中小企業への影響

中小企業にとっては、“売れたかどうか”まで見える配信・分析が手に入ることが最大のメリットです。ECだけでなく店頭購買を含めた評価ができるため、動画視聴やクリックと売上のつながりを具体的に把握できます。たとえば、来店頻度の高い層に向けた新商品訴求、特定カテゴリーのヘビーユーザーへのアップセル、ブランド好意度の高い層への限定キャンペーンなど、セグメント別に“確度の高い一手”を打てます。一方で、データを活用したターゲティングは、表現が押しつけがましいと逆効果です。プライバシー配慮の表現と、説明責任のある訴求(なぜこの広告が届いたのかの納得感)を意識しましょう。

経営者の視点

経営者としては、まず販促カレンダーと在庫を踏まえ、“売りたいSKU”を明確にして配信設計に落とし込みます。次に、Pontaデータで定義したセグメントごとにクリエイティブを出し分け、LPでは来店予約や在庫確認につながる導線を用意。効果測定は、TikTok側の指標(視聴維持・クリック)とPontaの購買指標(購買率・客単価)を必ずセットで見て、CPAやROASに加えて“増分売上”で意思決定します。データ利用費の特典期間内に小規模テストを複数回回し、勝ち筋を年末商戦に向けてスケールしましょう。注意点は、セグメントの切りすぎによる配信ボリューム不足と学習の停滞です。最初は母数の大きい条件から始め、効果の良い切り口に徐々に絞り込む順序が安全です。また、表示回数の上限制定やクリエイティブリフレッシュの頻度を決め、疲弊と広告嫌悪を避けましょう。店頭での価格・在庫の変更が多い業態では、オファー文言と実売の齟齬が起きないよう、現場との連携体制も必須です。

参考リンク

TikTok広告においてPontaデータを活用したターゲティング配信・分析サービスが開始

まとめ

今回取り上げたトピックは、いずれも「見つけやすくする」「体験を整える」「成果を可視化する」という3つのテーマに収れんします。まずは検索・地図・SNSといった顧客の探索行動の“入口”を磨くこと。次に、サイト内や接客をノーコード×AIで素早く改善すること。そして、購買データや来店データまでつながる指標で意思決定すること。この順番で小さく試し、勝ち筋を標準化・横展開していけば、限られた予算でも売上の底上げが可能です。

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