マーケティングニュースまとめ(2025年8月20日〜8月26日)

マーケティングニュースまとめ(2025年8月20日〜8月26日)

中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースはGoogleの不正広告トラフィック対策のAI強化電通による“プロダクト起点”の事業成長支援サービス開始Pinterestが示した秋の「スリフト」潮流コンテンツ支出の過去最高更新、そして自治体の逆転発想プロモーションです。どれも「限られた予算で成果を最大化する」「体験を軸にファンをつくる」ための具体的なヒントにつながります。以下で、経営判断に直結する要点と実践の視点をわかりやすく解説します。

目次

1. Googleが不正トラフィック検出をAIで強化、IVT最大40%削減へ

概要

Googleは広告の不正トラフィック(IVT)検出に生成AIを拡大適用し、LLMを活用した新システムで不正判定の精度を高めたと発表しました。従来のルールベースや指紋照合だけでは見抜きにくいボットや偽装サイトのパターンを横断的に学習し、実証ではIVTを最大40%削減。広告費の無駄打ち抑制と、適正な在庫・媒体への配分を同時に進める取り組みです。あわせて透明性強化のためのレポーティング改善や、広告主側の検証を支える情報提供の拡充も示されました。

中小企業への影響

少額予算でも「無駄クリックに吸われる比率」が下がる期待があります。検索広告やディスプレイ、動画を運用している企業は、同一CPAでも実購買や問い合わせの質が改善する可能性があります。地域ビジネスの電話計測や来店計測でも、誤検知の低減により評価のブレが小さくなる見込みです。一方で、AIの精度が上がるほどクリエイティブやターゲティングの粗さが露呈しやすくなります。クリックだけを追う配信は相対的に評価が下がるため、コンバージョン計測やファーストパーティデータの整備がより重要になります。自社のタグ設定やイベント計測が不正扱いされないよう、計測ルールの整備とドキュメント化も求められます。

経営者の視点

まずは現状のIVT率と無効トラフィックの返金・控除状況を媒体管理画面で確認しましょう。次に、広告管理の指標を「セッション」から収益やLTVに寄せ、除外リストや入札戦略を見直します。問い合わせフォームの不正送信対策(reCAPTCHAや二重確認)も並走させると投資効率が一段と安定します。あわせてクリエイティブは“誤クリックを誘わない設計”(明瞭なコピー、誇大表現回避、狙いの行動導線の一本化)を徹底。代理店に運用委託している場合は、実測値の改善目標(IVT率の推移、広告費の自己診断ログ、ブランドセーフティの監査結果)を四半期で合意するとよいでしょう。加えて、ディスプレイ配信のプレースメント監査や、YouTubeのチャンネル除外を月次運用に組み込むことで、検知強化の恩恵を最大化できます。

参考リンク

ITmediaビジネス:Google、AIによる不正広告トラフィック検出の拡大へ


2. 電通、8社横断で「Product Management For Growth」提供開始

概要

電通は国内グループ8社と連携し、デジタル事業の構想から開発、グロースまで一気通貫で伴走する新サービス「Product Management For Growth」を開始しました。アプリやWebサービスといったデジタルプロダクトを“顧客との接点”と捉え、AIを活用したアイデア創出「AIQQQ FLASH」や、仮想ペルソナモデル「People Model」などの独自ツールで、企画・検証・UX設計・運用の精度とスピードを両立させるのが特徴です。Cookie制限やAI普及といった環境変化に合わせ、マーケと開発を統合した体制づくりを支援します。

中小企業への影響

プロダクト起点のマーケティングに必要な機能(ユーザー調査、仮説検証、UI改善、グロース施策)がワンストップで手に入る選択肢が増えます。社内の分断(開発と販促の縦割り)による手戻りや、広告依存の集客の不安定さを軽減できる可能性があります。一方で、外部伴走はコストがかかるため、短期の売上だけをKPIにすると効果が見えづらい点に注意が必要です。自社に残すべきケイパビリティ(データ計測、プロダクトオーナーの意思決定)を定義することが重要になります。

経営者の視点

まずは自社の“成長を阻むボトルネック”を特定しましょう。流入不足なのか、体験品質の低さか、継続率の問題か。次に、プロダクト開発とマーケティングの共通KPI(例:アクティブ率、継続率、ARPU、LTV)を設定し、四半期ごとに施策と学習を回す運営設計を整えます。外部支援を使う場合は、成果物ではなくチームの学習を納品物に含める契約(ドキュメント共有、社内人材育成)を条件化すると再現性が高まります。段階的に内製比率を上げるロードマップも併せて描きましょう。さらに、実験文化を根付かせるために、週次で仮説・実装・計測・振り返りのリズムを固定化し、施策バックログの優先順位づけを公開するなど、属人化しない仕組みを整えると、外部支援の価値を余すことなく吸収できます。

参考リンク

電通ニュース:国内電通グループ8社、企業のデジタル事業成長を支援する「Product Management For Growth」を提供開始


3. Pinterest「2025年秋トレンド」—日本でもスリフト検索が前年比55%増

概要

Pinterestは「2025年秋トレンドレポート」を公表し、Z世代を中心にスリフト(古着・中古品)の関心が高まっていると発表しました。日本でもスリフト関連アイデアの検索が前年同期比55%増、90年代テイストの「グランジメイク」関連は37%増と伸長。世界全体でもヴィンテージ・リメイク・サステナビリティ志向のキーワードが上位化しており、秋の消費の潮流として中古・再活用が主流化しつつあることを示しています。

中小企業への影響

アパレル・小売・美容の実店舗やECにとって、「中古×体験」の組み合わせは集客の武器になります。買い取りや委託販売、アウトレット、修理サービス、リメイクワークショップなど、在庫リスクを抑えながら粗利を確保できるメニューの相性が良い潮流です。加えて、季節性のあるニット・デニム・ミリタリーなど、秋に強いカテゴリーの特集を早めに仕込むと、需要の前倒しを取り込めます。リペア・クリーニングの提携も付加価値になります。広告費を抑えつつ拡散が狙えるのは、ビフォー/アフターやコーディネート術など“見て分かる提案”。一方で、品質や衛生面の不安を払拭する表示・保証、著作権やブランド保護への配慮も欠かせません。ECの場合はサイズ計測の標準化や、寸法比較ツール、返品ポリシーの明確化が信頼形成に直結します。

経営者の視点

まずは既存顧客の不要品回収や下取りプログラムを試験導入し、来店・会員化の導線を作りましょう。次にPinterestやInstagramで、検索に強いピン(縦長画像+HowToテキスト)を週次で投下し、店頭・ECの回遊につなげます。美容室やコスメは“90s風の作り方”の短尺動画を量産し、メニュー連携で予約導線を明確化。価格は新品より“理由のあるお得感”を設計し、サステナブル消費の意義を伝えると共感を得やすくなります。回転率と粗利率で管理しましょう。また、地域ビジネスはGoogleビジネスプロフィールで“中古・リメイク・下取り”の属性を明記し、ローカル検索を強化。仕入れと販路の両輪でサーキュラーな収益モデルを育てることが肝心です。

参考リンク

MarkeZine:Z世代を中心に「スリフト(古着・中古品)」再熱 Pinterest「2025 年秋トレンドレポート」


4. 「コンテンツ支出」過去最高、体験×ファン消費が加速—博報堂DY調査

概要

博報堂DY・博報堂の「コンテンツファン消費行動調査2025」が発表され、生活者1人あたりのコンテンツ支出額は8万5,137円(前年比+6,034円)で過去最高を更新しました。支出増をけん引したのはリアルイベント(推定市場規模1兆2,596億円、前年比+22%)と音楽ジャンル(市場規模8,005億円)。デジタルコンテンツや関連グッズも高水準で、体験とファン消費の相乗が続いています。各カテゴリの伸長は“現地の熱狂→SNS拡散→EC購入”という導線を強化しており、リアルとデジタルの往復が平常化したことを示します。

中小企業への影響

「コンテンツ×地域・店舗」の連動は、規模の小さな事業でも成果を出しやすい打ち手です。ライブ・イベント開催日の周辺でのポップアップ、コラボメニュー、来店特典、スタンプラリー、限定ノベルティなど、体験価値を通じた来店動機づくりが有効です。ECは、公式とのライセンス連携が難しくても、二次創作やファン活動を応援する周辺商材(収納、保護、ディスプレイ)が伸びやすい領域です。注意点は、権利処理と景品表示法の遵守、過剰在庫を生まない設計です。限定企画はロット小さめ・受注生産・期間限定でリスクを抑え、配送遅延や欠品時の顧客対応フローも事前に準備します。

経営者の視点

まずは自社が狙う“ファンの動線”を把握し、カレンダーに合わせた集客計画を立てましょう。会場近接の飲食・物販は、開演前後の回遊を想定した時短提供・キャッシュレスの運用に更新を。予約制・事前決済・受け取り時間指定で混雑を平準化できます。遠隔でも、配信視聴と連動した限定セットやアーカイブ期間の特典で需要を上積み可能です。口コミはUGC施策(ハッシュタグ、フォトスポット、購入者の再投稿許諾)を整備し、熱量の可視化をKPI化しましょう。加えて、イベント主催者や近隣店舗との合同キャンペーンを仕掛けると、広告費を抑えながら商圏全体の送客を増やせます。データ連携が難しい場合でも、簡易クーポンや共通スタンプなど低コストの仕組みで十分効果が出ます。

参考リンク

MarkeZine:コンテンツ支出額が過去最高を更新 支出喚起力ランキング1位は櫻坂46【コンテンツビジネスラボ調査】


5. 「#じゃない方の千代田」—自治体の逆転プロモが話題化、都内で連動施策も

概要

群馬県千代田町が、東京都千代田区や千代田線と“名前が同じで目立たない”逆境を逆手に取ったシティプロモーション「#じゃない方の千代田」を開始しました。公式Xでの投稿・リポストによるSNSキャンペーン(群馬県産サントリー生ビール限定6缶セットが抽選で100名に当たる)、ショートドラマの公開、千代田線の駅ばりポスター、都内でのリアルイベントなど、多面的な施策で地元の魅力発信を図ります。応募期間は8月25日10:00〜9月30日23:59です。都内の千代田線8駅では対比コピーのポスター掲出、千代田区内の有楽町・東京駅ではふるさと納税や観光の魅力を伝えるイベントも実施予定で、“名前の勘違い”を話題のフックにしています。

中小企業への影響

地域発のユーモアと自虐ネタを“武器”に変える好例です。ローカル企業でも、地名・歴史・名物の文脈をうまく使えば、広告費を多くかけずに話題化できます。SNS懸賞は拡散力がある一方で、フォロワーの質が下がるリスクもあります。購入・来店とつながる導線(クーポン、回遊マップ、ECのセット販売)を同時に設計しておくことで、露出を売上に転換しやすくなります。景品表示法・酒類提供の年齢確認、ハッシュタグの明確化など運用面のルール作りも不可欠です。参加条件や当選連絡方法、転売防止の注意、二次利用の同意範囲などを告知に明記し、炎上やトラブルの芽を事前に摘みましょう。

経営者の視点

まずは「何者か」を一言で伝えるキャッチとビジュアルを決め、1カ月の短期集中で“物語”を走らせましょう。社内外の関係者(商工会、観光協会、近隣店舗)と連携し、スタンプラリーやタイアップ特典で回遊を促進。SNSは投稿数より参加数をKPIに置き、応募→来店→UGC化の一連の導線を可視化します。終了後は、獲得フォロワーの重複・休眠率を精査し、翌期に残す資産(メール許諾、再利用可能な素材、コラボ関係)を棚卸しして、単発で終わらない設計に更新しましょう。獲得した話題を常設の観光導線(特設サイト、地図、物産の定番セット)に受け皿としてつなぎ、季節催事への横展開でレガシー化すると効果が持続します。

参考リンク

AdverTimes:『#じゃない方の千代田』群馬県千代田町の逆転のシティプロモーション

まとめ

今回のポイントは、(1)媒体側AIの進化で“無駄”が減る(2)プロダクトを核に体験設計まで一体で磨く流れ(3)中古・リメイクなど“理由あるお得感”の潮流(4)体験×ファン消費の拡大(5)ローカルの物語化で話題をつくるの5つです。
経営者としては、①計測とガバナンスを整え投資効率を見える化、②商品・サービスの体験価値を磨き“長く使ってもらう仕組み”を設計、③トレンドの文脈(スリフト、推し活、地域性)に乗せた小さく試せる企画を積み重ねることが肝要です。次回も、売上に直結する視点で重要ニュースを噛み砕いてお届けします。

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