マーケティングニュースまとめ(2025年7月16日〜7月22日)

マーケティングニュースまとめ(2025年7月16日〜7月22日)

マーケティング分野では2025年7月16日から22日にかけて、業界動向を占う重要なニュースが相次ぎました。中小企業経営者が押さえておくべきニュースは、アマゾンプライムデー2025の過去最大規模の売上達成とAI活用による購買支援、新調査で明らかになった物価高時代のヒット商品動向、Yahoo!とLINEのビジネスID統合による広告運用環境の変化、SNSマーケティングにおける生成AI活用の新ツール登場、そして消費意欲指数が高水準を維持しているというデータの5つです。それぞれのポイントと中小企業への示唆を解説します。

目次

1. プライムデー2025:過去最大売上、4日間開催とAI支援が奏功

概要

アマゾンは7月8~11日に実施した有料会員向けセール「プライムデー2025」が過去最大の売上高を記録したと発表しました。例年2日間のセール期間を4日間に延長したことで、期間中に家電・食品・日用品など数百万点が購入され、会員の節約総額は数十億ドル規模に達しました。序盤2日間は買い控えや下見モードで前年同期比売上が落ち込みましたが、後半に割引強化とAIを活用した新たなショッピングアシスタント機能(音声AI「Alexa+」や対話型AI「ルーファス」)が消費者の購買を後押しし、最終的に記録的な売上につながりました。

中小企業への影響

この大規模セールの恩恵は大手だけでなく中小の出品事業者にも及び、ある中小ブランドは「プライムデー2025は当社が2019年にアマゾン出店以来、最も成功したイベントとなり、新規顧客の獲得にもつながった」と成果を語っています。中小企業にとって、巨大ECプラットフォームのセールに参加し限定割引を提供することは販路拡大と売上増につながる可能性があります。また、アマゾンが導入したAIによる商品検索サポート機能は顧客の購買意欲を高める有効な手段であり、自社ECサイトや店舗でもチャットボットによる商品提案などを取り入れるヒントとなるでしょう。

経営者の視点

経営者としては、大手ECが採用した戦略から学べる点があります。例えばセール期間を適度に延長して顧客に十分検討させつつ、後半に目玉割引を投入して購買を喚起する手法は、自社キャンペーン計画にも応用可能です。また、AIを活用した顧客サポート(チャットボットによる商品提案や問い合わせ対応など)を導入すれば、少人数でも顧客の購買促進と機会損失の削減が期待できます。最新テクノロジーと柔軟な販売戦略を組み合わせ、消費者の心をつかむ工夫をしていきましょう。

参考リンク

激流オンライン:米・アマゾンプライムデー2025は過去最大の売上高を達成──序盤の低調を覆した4日間

2. 2025年上半期ヒット商品:コメが売上84%増、食品・化粧品が上位に

概要

消費者の購買データを分析した調査によると、2025年上半期(1~5月)に前年より販売金額が伸びた商品カテゴリの1位は「コメ」でした。コメの売上は前年同期比で8割以上増加しており、2024年の記録的な米価格高騰(いわゆる「令和の米騒動」)による買いだめ需要が大きく影響しています。第8位にもパックご飯などの米飯類が入り約2割増となりました。また、2位には日焼け対策で人気が高まった「おしろい(フェイスパウダー)」、3位には高価格帯商品の貢献で伸びた「美容液」がランクインし、2位から4位を化粧品が占めています。食品・飲料カテゴリーから計8商品がトップ15に入っており、物価高でも生活必需品の需要が底堅いことや、一部商品の売上増には訪日観光客(インバウンド)需要やファン消費(「推し活」)も寄与したと分析されています。

中小企業への影響

このランキング結果から、中小企業は消費者ニーズの変化を読み取ることができます。例えば、食料品では物価高による駆け込み需要が顕著なため、食品関連事業者は価格動向に注意し在庫や仕入れを調整する必要があります。一方で化粧品など高付加価値商品の需要も堅調であることから、品質や独自性を訴求した高価格帯商品で勝負する戦略も有効と言えるでしょう。さらに、インバウンド需要や熱心なファン層によって売上が伸びるケースも示唆されています。地域の中小企業でも、訪日客向けの商品開発や特定コミュニティに刺さるサービスを打ち出すことで、新たな需要を開拓できる可能性があります。

経営者の視点

経営者は、市場データを定期的にチェックし消費動向を把握する姿勢が求められます。今回の結果から自社の扱う商材がインフレやトレンドの波をどう受けているか分析し、タイムリーにマーケティング戦略を見直すことが重要です。例えば、価格上昇が続く生活必需品を扱う場合、値上げ前のまとめ買い需要を見越したキャンペーンや代替商品の提案によって顧客離れを防ぐ工夫が必要でしょう。逆に、美容や嗜好品で需要が伸びているなら、その機会を逃さずプロモーションを強化したり関連商品を投入する判断も求められます。データに基づく俊敏な意思決定こそが、中小企業が競合に打ち勝ち市場で存在感を示すカギとなります。

参考リンク

FNNプライムオンライン:2025年上半期に売れたもの1位は「コメ」で販売金額前年比8割増

3. LINEとYahoo!のビジネスID統合、広告管理を一元化へ

概要

LINEヤフー(旧Zホールディングス)は、法人向けサービスで用いるログインIDを統合し、新たに共通の「ビジネスID」に移行すると発表しました。従来別々だった「Yahoo! JAPANビジネスID」と「LINEビジネスID」を一本化し、2025年6月30日に名称を「ビジネスID」に変更しています。これによりYahoo!広告など複数の法人向けサービスに共通のログイン画面からアクセスできるようになり、企業は一つのIDでLINE公式アカウント、広告、CRM、データ分析等をシームレスに管理できる環境が提供されます。2025年7月23日以降、従来Yahoo!ビジネスIDを利用していた企業は設定画面からLINEビジネスIDとの統合作業が可能になり、広告サービスから順次ID統合が進められる予定です。

中小企業への影響

Yahoo!広告やLINE公式アカウント等を活用している中小企業にとって、このID統合は管理業務の効率化につながります。従来はYahoo!とLINEで別々にアカウント運用やログイン管理を行っていたものが、今後は一つの「ビジネスID」で両方のサービスを扱えるため、担当者の負担軽減やミス防止に役立つでしょう。特に少人数で複数のデジタルチャネルを運用する企業では、アカウント統合によって広告効果の横断的な分析や予算配分の最適化が容易になることが期待できます。また、7月23日以降に必要となるYahoo!ID側での統合作業を忘れずに行い、統合後の新機能やサービス拡充にもアンテナを張ることが重要です。

経営者の視点

経営者としては、主要プラットフォームの仕様変更や統合情報を見逃さず、自社のマーケティング基盤を常に最新状態に保つことが大切です。ID統合によって「LINEは使っていたがYahoo!広告は未活用」といったケースでも、新たな共通IDを機にYahoo!での広告出稿に挑戦しやすくなるメリットがあります。両プラットフォームのユーザーデータを横断的に活用できる展開も予想されるため、統合後に提供される新サービスや分析機能にも注目しましょう。なお、一つのIDで複数サービスを管理できる反面、権限管理やセキュリティ対策もより重要になります。パスワード管理のルール整備やアクセス権限の見直しを行い、安全かつ効率的にデジタルマーケティングを推進できる体制を整えることが求められます。

参考リンク

MarkeZine:LINEヤフー、法人向けログインIDを「ビジネスID」に統合 7月23日以降企業側で統合作業が必要に

4. SNSマーケに生成AIエージェント登場、インフルエンサー選定を効率化

概要

SNSマーケティング支援ツールを提供するA社(A Inc.)は、生成AIを活用してインフルエンサーマーケティング戦略を支援する新機能「Astream AIサーチ・エージェント」の開発に着手したと発表しました。A社のサービス「Astream」は国内200万・世界2億のインフルエンサーデータを有していますが、新エージェントはその膨大なデータを生成AIが学習し、対話形式で戦略立案から最適なインフルエンサー選定、投稿内容の提案まで一貫して支援するソリューションとなります。SNSプロモーションにおけるプラットフォーム選択や起用インフルエンサーの選定は従来担当者の経験に頼りがちでしたが、本機能により客観データに基づく精度の高い戦略策定が可能になると期待されています。提供開始は2025年秋が予定されています。

中小企業への影響

このようなAI支援ツールは、リソースの限られた中小企業にとってマーケティング業務の効率化と高度化に寄与する可能性があります。SNSを使った宣伝の重要性が増す一方で、どの媒体に予算を配分し誰を起用するかといった戦略立案は中小企業にはハードルが高いものです。しかし、生成AIが膨大なデータを分析して最適なプランを提案してくれることで、専門のマーケターが少ない企業でもエビデンスに基づいた判断がしやすくなります。例えば、AIが自社商品の特徴に合ったインフルエンサー候補をリストアップし、その投稿傾向やフォロワー層を分析・要約してくれれば、担当者は効果的な人選に集中できます。また、コンテンツ作成や結果分析もAIがサポートするため、マーケティングサイクル全体のスピードアップが期待できるでしょう。中小企業にとって、こうした最新ツールを積極的に試すことは、大企業に劣らないデータドリブンなマーケティングを実現する一歩となります。

経営者の視点

経営層としては、新しいマーケティング技術への高い感度を持ち、自社で活用可能なツールは積極的に導入を検討すべきです。生成AIによるプランニング支援はまだ新しい領域ですが、うまく活用できれば企画立案にかかる時間とコストを大幅に削減し、浮いたリソースを他の課題解決に振り向けることも可能です。ただし、AIが提示する内容を鵜呑みにせず、最終的な判断やクリエイティブな発想は人間が担うというバランスも重要となります。導入にあたっては社員教育を行い、AIからの示唆を正しく解釈して活用できる体制を整えましょう。テクノロジーの力を借りつつ、自社の強みや経験を掛け合わせることで、より効果的で独自性のあるマーケティング戦略を打ち出せるはずです。

参考リンク

PR TIMES:生成AIで感覚頼りのSNSマーケティングから脱却 「Astream AIサーチ・エージェント」2025年秋提供開始予定

5. 電通調査:消費意欲指数が高水準、探求心の高まりが牽引

概要

電通の消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN」が公表した最新の「欲望未来指数」によれば、日本の消費者の購買意欲は引き続き高い水準を維持しています。前回(2024年12月公表)の指数が示した消費意欲活発化の兆しがそのまま継続しており、特に知的好奇心や創造意欲に起因する「腕試し」(何かに挑戦したい)欲望の増加が顕著で、こうした探求・創造の欲求が消費意欲をけん引していることが分かりました。例えば、新しい体験や自己表現の機会を求める気持ちが高まっており、それが旅行・趣味・学習サービスなどへの支出意向を押し上げる傾向が見られます。消費者は物価高の下でも自分の興味・関心を満たすことには前向きであることが示唆されました。

中小企業への影響

この結果は、中小企業にとって顧客の「購買意欲の源泉」を捉えたマーケティングの重要性を示しています。価格競争に走るだけでなく、消費者の探求心や自己成長欲求、共感やつながりを求める気持ちに応える商品・サービスを提供できれば、景気や物価の逆風下でも選ばれる可能性があります。例えば、小規模店舗でも体験型のイベントやワークショップを開催して「新しい発見」を提供したり、商品の開発ストーリーを発信して顧客と共感を共有することで、単なる物売り以上の価値を感じてもらう工夫が考えられます。また、顧客コミュニティを育てることも有効です。SNSやファンクラブを通じてユーザー同士が交流できる場を作れば、ブランドへの愛着が高まりリピート購入につながるでしょう。消費者の内なる欲求に寄り添った施策こそが、中長期的な顧客獲得とロイヤル顧客育成のカギとなります。

経営者の視点

経営層にとって、消費マインドが底堅い今こそ攻めの戦略を検討する好機と言えます。物価上昇や景気の不透明感に過度に萎縮するのではなく、自社商品・サービスが提供できる体験価値を再点検し、積極的に打ち出していきましょう。例えば、新サービスの開発や既存サービスへの付加価値提供に投資することで、好奇心旺盛な顧客層のニーズを取り込めるかもしれません。また、この種の調査結果は経営判断の指針としても活用できます。自社の売上が伸び悩んでいても、市場全体で消費意欲が高いのなら潜在需要を掘り起こす余地があると捉え、悲観に陥らず前向きに施策を検討すべきです。消費者の潜在的な「欲望」を刺激するマーケティングによって需要を創造していく姿勢が、中小企業の成長につながるでしょう。

参考リンク

電通ニュースリリース:「欲望未来指数」で消費意欲が引き続き高いという結果に

まとめ

2025年7月中旬のマーケティング関連ニュースからは、物価高時代においても消費者の購買意欲は依然旺盛である一方、データとデジタル技術の活用がマーケティング成功のカギを握ることが浮き彫りになりました。過去最大の売上を記録した大型セールやヒット商品ランキングの分析から、消費者は価格以上に体験価値や新しさに魅力を感じており、AIアシスタント導入やサービス統合などマーケティング手法のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速していることが分かります。中小企業の経営者は、こうした動向をキャッチアップしつつ、自社の強みを軸に柔軟に戦略をアップデートしていく姿勢が求められます。最新技術を味方につけ、消費者のニーズと欲求を的確に捉えることで、変化の激しい市場環境をチャンスに転換し、自社の成長に結び付けていきましょう。

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