マーケティングニュースまとめ(2025年12月24日〜12月30日)

マーケティングニュースまとめ(2025年12月24日〜12月30日)

 
マーケティング分野では、AIが情報を要約して提示する流れや、インフルエンサー施策のデータ化、ファンづくりの仕組み化など、意思決定に直結する変化が重なっています。
中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、リアル接点のデータ活用(RX)データ起点のインフルエンサー広告AI検索最適化(AIO)会員向け施策の安全な運用駅・空港など“感情が動く場所”での広告設計の5つです。
限られた予算でも成果につながるように、ポイントをかみ砕いて解説します。

目次

1. TOPPAN、リアル接点のデータ活用で「RX」支援サービスを開始――店舗・営業の改善をデータで回す

概要

TOPPANは、店舗や営業拠点など「リアルの接点」で生まれるデータを統合・可視化・分析する「RXデータ基盤」を開発し、これを核にした「リアル・トランスフォーメーション(RX)」化支援サービスの提供を開始しました。接客ログ、店内回遊や滞在といった行動履歴、商品データなどを集約し、リアル拠点をデータドリブンに改善できる点が特徴です。さらにAIで分析し、「どの顧客が、どの商品を、どの従業員の接客で、どんな体験を得たか」を一貫した指標で捉え、LTV(顧客生涯価値)向上や業務効率化につなげる構想も示しています。AIが比較・提案まで担う時代ほど、最後に差が出るのは“リアルな体験”だ、という問題意識が背景にあります。サービスは2025年12月下旬から提供開始とされ、データ基盤にはTreasure Data CDPを活用する方針や、導入支援は1,500万円からという目安も示されています。

中小企業への影響

「リアルの強み」を活かした差別化が、より重要になる流れが加速します。ECやSNSが当たり前になった今、店舗や営業の現場こそがブランド体験の勝負どころです。一方で中小企業では、現場改善が「勘と経験」に寄りがちで、数字で語れないことが課題になりやすいです。たとえば、

  • 来店〜購入のどこで迷うのか(滞在時間、声かけ回数)
  • 接客の良し悪しが売上にどう効くのか(成約率、追加購入率)
  • 売れる店舗と伸びない店舗の違いは何か(導線、陳列、説明の順番)
    こうした問いを「見える化」できれば、少人数でも再現性の高い改善が進みます。逆に、データが取れない・整理できない会社は、AIが作る“平均的な体験”に埋もれやすくなります。多店舗や複数営業の業種ほど、やり方のばらつきを抑える効果が出ます。

経営者の視点

大規模な基盤導入に飛びつく前に、まずは“取れるデータ”を決めて小さく回すのが現実的です。おすすめは、①POSや予約、問い合わせ履歴の整理、②現場の接客メモや商談メモを共通フォーマットで残す、③月1回だけでも「数字+現場の声」で振り返る、の3点です。加えて、改善のテーマは「待ち時間を減らす」「説明の順番を統一する」など、現場が動ける粒度に落とすと続きます。リアル接点の価値は、言語化と記録で伸びます。データ活用はIT投資ではなく、現場の勝ちパターンを増やす経営の仕組みづくりだ、と捉えるのが成功の近道です。注意点として、行動データや会話データを扱う場合は、目的を明確にし、取得範囲を必要最小限にすることが欠かせません。

参考リンク

TOPPAN:リアル・トランスフォーメーション(RX)化支援サービスの提供開始

2. Hakuhodo DY ONE、Google Insights Finder活用のインフルエンサー広告サービスを提供開始

概要

Hakuhodo DY ONEは、YouTube施策を中心に、Google Insights Finderの分析データを活用したインフルエンサーマーケティング支援の広告サービスを提供開始しました。特徴は、データにもとづく「界隈(コミュニティ)」分析で、ブランドと相性が良い層を特定し、その層と親和性の高いクリエイターを選ぶ点です。選定だけでなく、メディアプランニングから広告配信・運用までを一気通貫で支援し、配信後はブランドリフト(検索の増減などの変化)とエンゲージメント指標の両面で効果を測り、改善につなげる流れも示されています。コメントの感情判定や、コメント投稿者のペルソナ像生成など、機械学習・生成AIを使った分析も盛り込まれています。要するに「当てる人を探す」から「当てる仕組みを作る」へ、インフルエンサー施策を進化させる提案です。

中小企業への影響

インフルエンサー起用は、知名度や雰囲気で決めると失敗しやすい施策です。中小企業は予算が限られるため、外したときのダメージが大きくなります。今回のニュースが示す本質は、「誰に届けるか」と「誰が語るか」をデータで近づける発想です。中小企業でも、次のような形で応用できます。

  • “界隈”を仮説で言語化する(例:育児時短、アウトドア、地元志向)
  • その界隈で信頼される語り手を探す(フォロワー数より反応の質)
  • 1本で当てにいかず、複数パターンで小さく検証する
    注意点は、ステマ(広告であることを隠す表現)や景品表示法など、ルール面の事故です。炎上は中小企業ほど痛いので、契約書と表記ルールは先に整えておくべきです。加えて、制作物の確認フロー(事前チェックの範囲、修正の回数、公開後の対応)を決めておくと、関係者のストレスが減ります。

経営者の視点

経営者が握るべきは「起用の基準」です。おすすめは、①誰に何を感じてほしいか(認知・信頼・行動)を先に決める、②候補者ごとに“刺さる理由”を一行で説明できる状態にする、③投稿後に見る指標を2つだけ決める(例:保存数、指名検索の増減)、④次の改善案を必ず1つ書く、です。インフルエンサーマーケは、感性も大事ですが、判断軸がないと属人化します。基準と振り返りテンプレを社内に残せば、施策の立ち上げが速くなり、外注に頼りきりにならずに済みます。さらに、クリエイター起用は“単発の広告枠”ではなく、顧客の声を集める仕組みとして設計すると強いです。コメントや質問を次のFAQや商品改良に回せれば、投資対効果は一段上がります。

参考リンク

Hakuhodo DY ONE:Google Insights Finderを活用したインフルエンサーマーケティング支援サービス提供開始

3. オロ、AI検索最適化「Semrush Enterprise AIO」を国内販売――AI要約時代の検索対策へ

概要

オロは、AI検索最適化(AIO)プラットフォーム「Semrush Enterprise AIO」の国内販売を開始しました。検索エンジンのAI要約(AIによる概要)や、生成AI(ChatGPTやGeminiなど)での参照が広がる中、AI検索における自社ブランドの現状を可視化し、改善のための具体的アクションを提案することを狙っています。日本向けデータに対応し、従来のSEOだけでは追いにくい「AIがどう取り上げるか」という観点を扱う点が注目ポイントです。検索結果の“青いリンク”だけでなく、要約や比較文の中に自社がどう登場するかが、意思決定に直結する時代が来ています。たとえば、AI要約で「おすすめ3社」に入るかどうか、比較表で“強み”として何が書かれるかは、クリック前に勝負が決まることもあります。

中小企業への影響

これからは「検索で上位」だけでは十分でなく、「AIに要点として拾われる」ことが集客の入口になりやすくなります。中小企業にとって怖いのは、情報が少ない・古い・分散しているせいで、AIが誤った理解をしてしまうことです。例えば、強みや料金、対応エリアが曖昧だと、比較検討の段階で不利になります。逆に言えば、情報設計がきれいな会社は規模に関係なく有利です。AIは“よく整理された説明”を好むため、価格表、対応範囲、導入手順、実績、よくある質問が揃っているだけで、選択肢として残りやすくなります。逆に、SNS投稿だけで情報が散らばっていると、AIが断片を拾って誤解しやすいので注意が必要です。

経営者の視点

最初にやるべきは、難しいテクニックより「情報の整備」です。チェックリストとして、①サービス内容・対象・提供エリア・価格帯・納期を一枚で説明、②よくある質問で迷いどころを先回り、③事例は“課題→手段→結果”の順で短く、④専門用語は言い換えを併記、⑤会社情報(理念、体制、問い合わせ導線)を最新に保つ、を押さえましょう。AI検索対策は、SEOの延長というより「営業資料をWebに置く」発想に近いです。営業が強い会社ほど、サイトの説明も強くできます。外部ツールを使うかどうかより、まず自社の“説明責任”を果たせているかが勝負になります。加えて、競合と比べた“選ばれる理由”を言語化し、同じ言葉で繰り返し伝えることが重要です。AIは一貫した表現を学びやすいので、強みの言い回しを社内で統一しておくと、サイト・営業・SNSが同じ方向を向きます。

参考リンク

Web担当者Forum:オロが「Semrush Enterprise AIO」の国内販売を開始

4. ナインアウト「Fan Fan Fan」、会員基盤認証を提供開始――ファン施策の“安全な限定化”を後押し

概要

ナインアウトは、ブランドとファンをつなぐAIインターフェース「Fan Fan Fan」において、企業の会員基盤と連携できる「会員基盤認証」の提供を開始しました。ログイン状態を判別し、ログイン済み会員だけが限定コンテンツにアクセスできるようにすることで、会員IDの露出や不正応募を防ぎ、セキュリティ要件を満たしたファン施策を実行しやすくします。会員向け体験を“安全に、ブランドらしく”提供できる環境づくりに踏み込んだ点がポイントです。ファンが快く提供してくれる情報(ゼロパーティデータ)を、無理なく集めて活かす土台にもなります。会員限定でコンテンツを出せると、「誰がどこまで見たか」「どんな反応が出たか」を次の施策に活かしやすくなる点も、マーケティングとして大きいです。

中小企業への影響

ファンマーケティングは、派手なキャンペーンより「続く仕組み」が勝ちます。ところが中小企業では、会員限定ページやポイント制度などを作ろうとしても、運用コストや個人情報の扱いが壁になりがちです。今回のニュースが示すのは、ファン施策は“セキュリティと運用”までセットで設計しないと続かない、という現実です。中小企業でも、完全な会員基盤がなくても、

  • 既存顧客リストを整理して「常連」を定義する
  • 限定情報は配信チャネルを絞って届ける(メール、LINEなど)
  • 参加条件を明確にし、トラブルを未然に防ぐ
    といった工夫で、近い考え方を実装できます。逆に、ルールが曖昧なまま限定企画をすると、不満や不正が起きて信頼を落とします。とくに抽選や特典は「対象者」「期限」「条件」を明文化しないと、問い合わせ対応だけで手が回らなくなります。

経営者の視点

まず決めるべきは「ファンに何を提供するか」です。割引よりも、①裏側のストーリー、②先行案内、③相談できる窓口、④限定の体験イベントなど、“関係性が深まる体験”のほうが長続きします。その上で、運用を軽くするために、月1本でも出せるコンテンツ形式を固定し、担当者が替わっても回る手順書を作りましょう。さらに、個人情報の扱い(保存場所、権限、退会時の対応)を紙一枚で良いので決めておくと、社内の不安が減ります。ファン施策は、売上づくりというより信頼の積み立てです。小さく始め、守るべきルールを先に決める会社ほど、結果的に強くなります。最初のKPIは売上よりも、会員登録率や継続率、反応率など“関係性の指標”に置くと、施策の良し悪しが判断しやすくなります。

参考リンク

PR TIMES:Fan Fan Fan、「会員基盤認証」を提供開始

5. 新幹線駅・空港の広告は“心の切り替わり”を狙う――JR浜松駅×うなぎパイに学ぶOOH設計

概要

新幹線駅や空港といった交通の要所に、地元銘菓や地場企業が広告を出す動きが注目されています。宣伝会議(AdverTimes)の記事では、JR浜松駅での春華堂「うなぎパイ」の広告事例を通じて、駅や空港が「人の気持ちが切り替わる場所」であり、帰省や旅立ちなどの感情が交差する瞬間に、あえて広告を置く意味を掘り下げています。強い訴求で目を奪うより、地域の記憶に寄り添い、見る人の受け止め方に委ねるコミュニケーションが価値になる、という視点が特徴的です。広告=即売ではなく、ブランド想起(思い出されやすさ)を育てる投資として捉えています。記事では「おかえりなさい」「いってらっしゃい」といった言葉が持つ力にも触れており、地域に根付いた商品ほど、感情のスイッチに寄り添うほど強いことが示唆されます。

中小企業への影響

中小企業のマーケティングは、短期の反応だけを追うと疲弊します。駅・空港の広告は、すぐの購入を狙うより「思い出される確率」を上げる投資です。特に地域性が強い商材や、手土産・観光・飲食のように“場面”で選ばれる商品は相性が良いです。また、これはOOH(屋外広告)に限りません。ポイントは「心が動くタイミング」を押さえることです。例として、

  • 初来店の直後(安心を与える)
  • 受注後の待ち時間(期待を育てる)
  • 納品・提供の瞬間(共有したくなる)
  • 使い終わった直後(次の行動を促す)
    こうした瞬間にメッセージを置ける企業は、指名されやすくなります。広告費が少なくても、体験設計で勝てます。たとえば、年末年始や卒業・入学、引っ越しなど、生活が切り替わる季節に合わせてメッセージを変えるだけでも、受け取られ方は変わります。

経営者の視点

予算が大きくなくても、設計は真似できます。①お客様の“切り替わり”が起きる場面を洗い出す(来店、発注、受け取り、帰宅など)、②その瞬間に一言で伝えるメッセージを決める(歓迎、感謝、背中押し)、③メッセージの置き場所を決める(店頭ポップ、同梱カード、LINE自動返信など)。そして④「言葉が伝わったか」を確かめる仕組みを入れる(簡単なアンケート、口コミの増減、再来店率)。さらに⑤“次の一歩”だけ案内する(地図、予約、保存用のQRなど)と、行動につながりやすくなります。派手な広告より、思い出される言葉が強いです。売り込みではなく、気持ちに寄り添う設計にすると、口コミや再来店のきっかけが増え、価格競争からも抜けやすくなります。

参考リンク

AdverTimes:新幹線駅・空港に広告掲出する理由――お出迎え戦略

まとめ


この期間の動きから見えてくるのは、マーケティングが「勘」から「再現性」へ移っていることです。AIやデータを使う話が増えていますが、結局はお客様にどう説明し、どう体験してもらうかが強い会社が伸びます。
 
すぐに始めやすい行動は、次の5つです。

  • 自社サイトの基本情報(提供内容・価格帯・手順・FAQ)を整えて、AIにも人にも誤解されない状態にする
  • 顧客が集まる“界隈”を言語化し、語り手(社員・顧客・クリエイター)を設計する
  • 店舗・営業の現場で「残すべき記録」を決め、月1回の振り返りで勝ちパターンを増やす
  • ファン向け施策は「何を提供するか」と「守るルール」を先に決め、運用負荷を抑えて続ける
  • お客様の気持ちが切り替わる瞬間に、売り込みではなく“寄り添う一言”を置く
     
    小さく始めて、数字と現場の声で改善を回せば、マーケティングは確実に強くなります。
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