マーケティングニュースまとめ(2025年11月12日〜11月18日)

マーケティングニュースまとめ(2025年11月12日〜11月18日)

生成AIやデータ活用が進む中、マーケティングの現場では「勘と経験」から「データと仕組み」へのシフトが加速しています。2025年11月12日から18日にかけて、日本のマーケティング分野では、中小企業にも影響が広がりそうな発表が相次ぎました。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、電通のAIリサーチツール「People Research」、リテールメディアに特化した「リテールマーケティング局」新設、Hakuhodo DY ONEによるMetaアワード最優秀賞の受賞、NTTの1to1マーケティングAI「LAM」、そしてライブ配信マーケティング『SCOP』の正式版ローンチです。この記事では、それぞれのニュースが何を意味し、中小企業のマーケティングや営業にどのようなヒントを与えてくれるのかを、できるだけ分かりやすく解説します。


目次

1. AIペルソナを活用した電通の新リサーチツール「People Research」

概要

電通が独自の「People Model」を基盤にしたリサーチツール「People Research」の本格運用を開始しました。1億人規模の仮想ペルソナに対してアンケートやインタビューができる仕組みで、生活者の深層心理や行動背景を素早く把握できることが特徴です。従来は一部の担当者だけが使えていたAIペルソナを、社内の多くのメンバーが簡単に活用できるようにしたことで、商品開発やコミュニケーション設計のスピードと精度を高める狙いがあります。AIによる自動分析を組み合わせることで、多数のコンセプト案やクリエイティブ案を短期間で検証し、効果の高い施策に絞り込める環境づくりが進められています。

中小企業への影響

生活者の価値観が細分化し、広告やキャンペーンの「勘頼み」が通用しにくくなる中で、こうした大手のリサーチ基盤は、市場全体のマーケティング精度を底上げしていきます。電通が大企業向けに培ったノウハウやツールは、時間差はあっても中小企業向けの簡易サービスや共同調査メニューとして提供されることが多く、将来的には「ペルソナに聞きながら施策を考える」スタイルが一般化する可能性があります。また、AIリサーチが普及すると、アンケート設計や分析の外注コストが下がり、少ない予算でも仮説検証を回しやすい環境が整っていきます。

経営者の視点

経営者として意識したいポイントは二つあります。第一に、「データに基づく顧客理解」を自社のマーケティング文化として根付かせることです。今のうちから、自社でもアンケートツールや簡易なユーザーインタビューを活用し、「お客さまの声を集めてから施策を決める」流れをつくっておくと、将来AIリサーチサービスを導入した際の効果が高まります。第二に、自社のターゲット像を言語化し、社内で共有しておくことです。年齢や性別だけでなく、「どんな悩みがあり、どんな場面で自社商品を思い出してほしいのか」まで整理しておくことで、高度なツールがなくても、日々の販促や営業トークの質を上げることができます。

参考リンク

電通:独自のPeople Modelを基盤にしたリサーチツール「People Research」の本格運用を開始


2. 小売×広告を一体で支援する「リテールマーケティング局」新設

概要

電通は、小売企業のリテールメディア開発とメーカー向けの活用支援を一体で担う新組織「リテールマーケティング局」を2026年1月に新設すると発表しました。リテールメディアとは、スーパーやドラッグストアなどの店舗やECサイトが持つ広告枠や購買データを活用する仕組みで、来店客に近い場所で商品情報を伝えられるのが特徴です。今回の組織では、テレビCMやデジタル広告と店舗の購買データ(ID-POS)をひも付けて分析しながら、広告から購買までの顧客体験を設計・改善していく体制を整えます。60名以上の専門人材が所属し、メディア開発からプランニング、効果検証までを一気通貫で提供することで、リテールメディア領域のビジネスを本格的に拡大していく方針です。

中小企業への影響

大手小売やメーカーを中心にリテールメディアの高度化が進むと、「店舗や自社ECを広告媒体としてどう活用するか」という発想が、より当たり前になっていきます。たとえば、レシートや会員アプリ、LINE公式アカウントなど、これまで情報発信が十分でなかった接点にもデジタル広告の考え方が入り、店頭販促とオンライン広告の一体運用が進んでいくと考えられます。中小の小売・メーカーにとっては、大手が整えた仕組みに広告主として参加したり、地域密着の小規模リテールメディアとして連携したりするチャンスが広がります。また、購買データに基づいた検証が当たり前になることで、「どの施策がどの売上に効いたのか」を数字で説明するプレッシャーも高まり、マーケティング投資の選び方がよりシビアになると想定されます。

経営者の視点

経営者としては、自社が「どの顧客接点をメディアとして持っているか」を棚卸しすることが重要です。店舗、ECサイト、SNS、チラシ、POP、ニュースレターなどを一覧化し、それぞれで「誰に、どんな情報を、どのタイミングで届けたいか」を整理してみましょう。そのうえで、大手流通のリテールメディアメニューやポイントアプリ、外部モールの広告枠などを活用し、自社の商品情報を継続的に届ける設計を考えると、限られた予算でも売り場での存在感を高めることができます。あわせて、簡単な売上データやPOSデータの集計だけでも構わないので、「施策前後で何が変わったのか」を定期的に確認する習慣をつくると、リテールメディア時代に対応しやすくなります。

参考リンク

電通:リテールメディアの開発・活用に取り組む専門組織「リテールマーケティング局」を新設


3. Hakuhodo DY ONEがMeta最優秀パートナーに SNS広告運用の評価が加速

概要

デジタルマーケティング会社Hakuhodo DY ONEは、博報堂とともに、Meta日本法人が主催する「Meta Agency First Awards Japan 2025」で最優秀賞「Agency of the Year」を初受賞しました。この賞は、Metaが推奨する広告ソリューションをどれだけ活用し、年間を通じて売上や成果に貢献したかを総合的に評価するものです。Hakuhodo DY ONEと博報堂は、営業・クリエイティブ・マーケティング部門が連携し、Meta独自の広告ソリューションを開発・運用する体制を整えた点が高く評価されました。国内の大手エージェンシーが、SNS広告の運用力と提案力を競う中で、日本発のチームがトップ評価を得たことは、SNSマーケティングの重要性がさらに高まっていることを示しています。

中со企業への影響

この受賞自体は大手広告会社のトピックですが、背景には「MetaをはじめとしたSNS広告が、企業の成長に直結するチャネルとして成熟してきた」という流れがあります。アルゴリズムの高度化により、予算が小さくても精度の高いターゲティングが可能になり、クリエイティブと運用の工夫次第で、地域ビジネスやニッチなBtoB商材でも成果を出しやすくなっています。また、大手エージェンシーが蓄積したノウハウは、セミナーや書籍、オンライン講座などを通じて徐々に一般化していくため、中小企業もそれらを学ぶことで、一定水準の運用スキルを身につけやすくなります。

経営者の視点

経営者としては、まず自社のSNS広告活用レベルを客観的に見直すことが大切です。「なんとなく出稿している状態」から、「明確な目的とKPIを持ち、毎月改善する状態」に変えられているかを確認してみましょう。もし社内に運用担当者がいない場合でも、小さくテスト出稿をしながら、成果が出るパターンを学ぶことは可能です。また、すべてを外注に任せるのではなく、「誰に、どんな価値を、どの投稿や広告で伝えるのか」といった戦略部分だけは経営者自身が握ることで、限られた広告費でもブランドづくりと売上の両立を図りやすくなります。

参考リンク

Hakuhodo DY ONE:Meta Agency First Awards Japan 2025において最優秀賞「Agency of the Year」を初受賞


4. NTTの大規模行動モデルLAMで1to1マーケティングの受注率が最大2倍

概要

NTTとNTTドコモは、多様な顧客接点から得られる行動データを学習し、一人ひとりの「どうしたいか」を予測するAI技術「大規模行動モデル(LAM:Large Action Model)」を確立したと発表しました。オンラインや店舗での接点データを「誰が・いつ・どこで・何を・どうした」という形式に整理して分析し、最適なタイミングや内容で販促施策を行うことで、テレマーケティングの受注率が従来比最大2倍に向上したとしています。LAMは大規模言語モデルと似た構造を持つ生成AIで、行動データに特化して将来の行動を予測できる点が特徴です。GPUサーバー1日分未満の計算でモデル構築が可能とされており、実務に乗せやすい技術として今後の展開が期待されています。

中小企業への影響

現時点では大手通信会社の取り組みですが、「行動データをもとにした1to1マーケティング」が実際に成果を上げている事例として、マーケティング業界全体に影響を与えます。将来的には、クラウド型のマーケティングツールやMA(マーケティングオートメーション)サービスにLAMのような技術が組み込まれ、メールやSMS、アプリ内メッセージなどの配信タイミングや内容が自動で最適化される可能性があります。その結果、中小企業でも「誰に、いつ、どの商品を提案するのが良いか」をデータに基づき判断しやすくなり、休眠顧客の掘り起こしや解約防止などの施策が取りやすくなります。

経営者の視点

経営者として今から準備できることは、顧客接点ごとのデータを「バラバラにためない」ことです。顧客名簿、購買履歴、問い合わせ履歴、メルマガの反応、来店履歴などを、少なくとも同じ顧客IDやメールアドレスでひも付けて保存しておくと、将来こうした高度なツールを導入したときにすぐ活用できます。また、大がかりなシステム投資をしなくても、「購入後◯日でフォローメールを送る」「休眠顧客にだけ限定オファーを出す」など、簡単なルールベースの1to1施策から着手することで、自社の顧客に合ったコミュニケーションパターンを学ぶことができます。

参考リンク

NTT:1to1マーケティングを加速するAI技術「大規模行動モデル(LAM)」を確立


5. ライブ配信×ファンマーケティング『SCOP』正式版ローンチ

概要

eスポーツ・ゲーム領域に強みを持つGLOEは、ライブ配信を活用したマーケティングソリューション『SCOP(スコップ)』の正式版をローンチしたと発表しました。SCOPは、配信者である「ストリーマー」が自ら共感したブランドを能動的に応援し、ファンと一緒に商品やサービスを紹介する仕組みを持つプラットフォームです。導入企業では、出稿後の指名検索数が最大3.6倍に増加するなどの効果が確認されており、味の素の「スープDELI」やGMOペパボの「ロリポップ! for Gamers」などの事例も紹介されています。ライブ配信内のバナーやコメント欄のURL経由で成果を計測できるほか、広告主とストリーマーが双方向にやりとりできる機能も備えた、ファンコミュニティ型の新しい広告モデルです。

中小企業への影響

動画配信やゲームコミュニティは若年層だけの世界と思われがちですが、実際には幅広い年代が視聴しており、特定の興味関心を持つファンが集まる場として成長しています。中小企業にとっては、大規模なテレビCMや純広告ではなく、「自社商品と親和性の高いコミュニティで、少額から試せるプロモーション手段」として、ライブ配信を活用したインフルエンサーマーケティングが現実的な選択肢になりつつあります。特に、食品、日用品、サブスクサービス、ゲーム関連商材など、日常の会話の中で自然に話題にしやすい商品とは相性が良く、口コミと合わせて中長期的なブランドづくりに役立ちます。

経営者の視点

経営者としては、「フォロワー数の多さ」だけでなく、「商品との相性」や「ファンとの距離感」を重視してパートナーを選ぶことが重要です。まずは自社と相性の良さそうなジャンルの配信者をリストアップし、実際の配信を視聴して、視聴者とのやりとりや商品の紹介の仕方を確認してみましょう。そのうえで、提供する商品数やキャンペーン期間、成果指標をシンプルに決め、小さくテストする形から始めると、失敗コストを抑えながら学びを得ることができます。また、自社のSNSやオンラインショップとも連携し、「配信を見た人だけの特典」など分かりやすい導線を用意することで、ライブ配信の熱量を売上につなげやすくなります。

参考リンク

GLOE:マーケティングソリューション『SCOP』正式版をローンチ


まとめ

マーケティングニュースを振り返ると、「生活者理解の高度化」「顧客接点のメディア化」「SNS・コミュニティの活用」「1to1マーケティング」「ライブ配信を軸にしたファンづくり」という五つの流れが、確実に進んでいることが分かります。どれも一気に真似をする必要はありませんが、方向性としては同じゴールを目指しています。それは、「お客さま一人ひとりをよく理解し、適切な接点で、適切なメッセージを届ける」というシンプルな考え方です。

中小企業の経営者にとって大切なのは、高度なツールをいきなり導入することではなく、自社のデータや顧客接点を整理し、小さく試しながら学びを重ねていく姿勢です。アンケートやインタビューで顧客の声を集める、店舗やECをメディアとして意識する、SNS広告やライブ配信との相性を探る、といった取り組みを少しずつ進めるだけでも、見える景色は大きく変わります。

今回ご紹介したニュースをきっかけに、「自社のマーケティングをもう一段レベルアップさせるには何から始めるか?」を考えてみてください。社内での情報共有や、パートナー企業・専門家との相談の材料としても、ぜひ活用していただければと思います。

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