マーケティングニュースまとめ(2025年10月8日〜10月14日)

マーケティングニュースまとめ(2025年10月8日〜10月14日)

生成AIやUGCを軸に、体験とデータをつなぐ動きが加速しました。中小企業経営者が押さえておくべき重要なニュースは、サイバーエージェントの「AI POS for Brand」提供開始ANAの“声で旅情を喚起する”縦型ムービーInstagram×プリ機の15周年コラボ、そして大阪・関西万博の閉幕にみる企業の実成果フェーズ別CM戦略の示唆です。販促と売上の因果を可視化する技術、感情を動かすクリエイティブ、共有したくなる体験設計――どれも小さな投資で効く実装が可能です。本文では、中小企業が明日から真似できる視点と手順に落として解説します。

目次

1. メーカーの販促と売上を一体で見える化──サイバーエージェント「AI POS for Brand」提供開始

概要

サイバーエージェントは10月7日、メーカー向けの新ツール「AI POS for Brand」の提供を開始しました。POSデータと広告データを統合し、生成AIエージェントがレポート作成や深掘り分析、資料化までを支援します。ブランド単位・流通単位で売上と広告効果を結び付け、ROIを可視化できるため、従来の属人的・分断的だった分析を効率化できる点が特徴です。さらに、チャット形式での加工・深掘り・資料化がワンストップで完結する点も現場運用に向いています。

中小企業への影響

自社製品を持つ中小メーカーにとっては、販促と売上の因果を素早く確かめられる点が大きなメリットです。小売の販促やリテールメディアと連携しやすくなり、小さな予算でも精度の高い配分が可能になります。サンプル配布や価格改定の影響、SNS広告の出稿タイミングなど、現場の意思決定が短期で回るようになります。一方で、データ連携やガバナンス整備(権限設計・運用ルール)には初期コストが発生します。

経営者の視点

まずは「主要SKU×主要販路×主要施策」の3点に絞り、“1枚のダッシュボード”で週次の売上・在庫・広告指標を同時に確認できる体制を作りましょう。営業・販促・ECのKPIを揃え、波形のズレ(出荷・店頭在庫・広告指標)を見つけ、“打ち手→結果→学習”のサイクルを明確化します。さらに『問いかけ型の分析』を現場に広げ、「ブランドAの売上増加要因は?」のような質問から、気温やトレンド等の外部データも含めた示唆を得て会議〜実行までを一気通貫に。短いスプリント(2〜4週間)で仮説検証を繰り返し、成果が出た型をレシピ化して横展開すると、少人数でも再現性のある成長が狙えます。導入前には、データ提供範囲と目的外利用の禁止、決裁権限の明文化、レポートの“真実の一次データ”の所在の定義など、小さく始めてリスクを制御する設計を忘れないでください。

参考リンク

MarkeZine:サイバーエージェント、メーカー向けマーケティングツール「AI POS for Brand」を提供

2. 大阪・関西万博が閉幕へ──出展企業の“リアルな成果”に学ぶ集客と共創設計

概要

大阪・関西万博は閉幕を前に累計来場者2682万人を突破し、運営費は黒字見込みと報じられました。記事では、花火を介した地域連携や新商品の実証、グローバル来場者を対象にした体験設計など、出展各社の取り組みと実際の反響が整理されています。単なる広告露出ではなく、現地での“参加”を生む仕掛けが成果を引き寄せたことが共通項でした。来場者の質・量がある“場”に合わせ、体験→語り→検証が循環したことが、ブランド周知から新商品開発までの恩恵につながっています。

中小企業への影響

リアルの場で話題化を起こし、オンラインのUGC(口コミ・SNS投稿)へ接続する設計が改めて重要になりました。小規模事業でも、商業施設やイベントの小さな枠で「体験→投稿→再訪」を回すと、広告費の効率が上がります。特に、地域資源や季節性(花火・祭り・収穫など)と結び付けると、“地域×ブランド”の共感軸が強化されます。一方で、来場動機を作る導線や現地オペレーションの失敗は、SNSで負の拡散に転びやすい点に要注意です。

経営者の視点

体験の最小単位を定義(30秒で驚きが生まれる・写真に撮りたくなる等)②共創相手を明確化(商店街、自治体、他社)③UGC誘発の設計(撮影スポット、ハッシュタグ、投稿インセンティブ)④アフター導線(クーポン、EC遷移)の4点をテンプレート化しましょう。成果評価は、現地参加数×投稿率×再訪率×購買率で“簡易LTV”を算出し、一度きりの話題作りから、定常的な収益設計へ。運営面の見える化として、行列・滞在時間・混雑箇所を受付のQRやフォトスポット前のカウントで把握し、順路やスタッフ配置を機動的に調整します。地方企業は、地域イベントに“協賛”ではなく仕掛け手として参画し、地元媒体・クリエイター・学生を巻き込んだ制作体制を組むと費用対効果が跳ねやすくなります。

参考リンク

AdverTimes:「大阪・関西万博」ついに閉幕へ 出展企業の成果まとめ

3. 万博CMに学ぶ“フェーズ別”戦略──開幕前・直前・会期中でメッセージを切り替える

概要

分析記事は、万博のテレビCMが開幕前の関心喚起直前の期待最大化会期中の来場促進と、フェーズに応じて訴求を切り替え、口コミやメディア露出と掛け合わせて反転攻勢を実現した点を整理しています。初期は“未来を自分ごと化”するメッセージ、直前は著名人の現地レポート、会期中は具体的体験の描写で参加のハードルを下げる構成でした。**“何を言うか”だけでなく“いつ言うか”を設計することが、同じ予算でも成果を左右するという示唆です。

中小企業への影響

限られた予算の企業こそ、時系列で役割の違うコミュニケーション設計が効きます。新店舗オープンなら、1)1〜2カ月前は“存在の知らせ”とベネフィット、2)2〜3週間前は比較検討中の人の背中を押す要素(レビュー、限定特典、近隣情報)、3)オープン後は来店体験の共有(短尺UGC、口コミ二次利用)へ。各フェーズでKPI(到達率→指名検索・予約→来店/購入)を切り分けると、ムダ打ちが減り、意思決定が速くなります。

経営者の視点

①フェーズごとに“人の気持ちの壁”(無関心/迷い/背中押し/共有)を定義し、広告表現・PR・店頭施策をマッピング。②既存顧客の声を直前期の広告素材に転用して比較検討層を動かす。③会期中は在庫と体験品質を最優先にし、追加投資は“行列→満足”に直結する箇所へ。④終了後は、来場者の写真・投稿を許諾の上で資産化し、次回企画の信用残高を積み増します。さらに媒体ごとの役割分担(広域認知=テレビ/OOH、比較検討=長尺動画/記事、来場促進=検索/地図/リマインド)を明確にし、2週間単位で素材差し替え・入札調整・在庫連動を回して、混雑や欠品のネガを未然に抑える運用を徹底しましょう。最後に、各フェーズの学習はポストモーテムで1枚に要約し、次のローンチへ引き継ぐ“作戦ノート”化を習慣にしてください。

参考リンク

AdverTimes:万博が示した「大逆転」のCM戦略

4. ANAが“声”で旅情を喚起──人気声優を夫婦役に起用した縦型SNSムービー

概要

ANAは、花江夏樹さん・鬼頭明里さんを夫婦役に起用し、主観視点の縦型動画シリーズをSNSで公開しました。本人の姿を映さず、音声と内面のつぶやきで「離陸の高揚」「機内食で迷う楽しさ」など搭乗体験そのものを描く構成。テレビCMとも連動し、旅先訴求ではなく“空の旅に出かけたくなる感情”の醸成を狙っています。縦型短尺が主流化する視聴環境に合わせた設計とも言えます。

中小企業への影響

商品を直接見せずに感情のスイッチを押す設計は、予算が限られる企業にも応用できます。外食なら“香りや音”、工房なら“手仕事の音”、観光なら“足音や環境音”を主役に据え、縦型×短尺で“自分ごと化”を促すのが有効です。人物を映さないことで制作コストや出演リスクを抑えつつ、音声アイデンティティ(SE・ジングル・声のトーン)を育てると、頻度高く配信しても飽きが来にくくなります。“音で想像させる”表現は、店舗や施設の実在感を補完し、地図検索や予約行動の前段で好意を積み上げる点でも有効です。

経営者の視点

音の設計書を作る(環境音・効果音・声・無音の間)②シリーズ化(5本構成で季節・シーンを変える)③CV導線は固定コメント・プロフィール・地図に集約④UGCを受け取る箱(ハッシュタグ・レビュー掲載)を整える、の4点が基本です。撮影はスマホ+ピンマイクで十分。台本は“情景→心の声→余韻”の3行から始め、反応の良いパターンをテンプレ化。運用では、視聴の最初の1秒で“音のフック”を置き、3秒・100%視聴率・保存率で評価。字幕必須(消音視聴対策)と権利整備(許諾/BGM)も忘れずに。オーガニックで反応の良い素材を少額ブーストで広げ、CVの“次の一歩”はリンク一箇所に集約。同一フォーマットの横展開で更新コストも抑えられます。小規模でも実装可能な再現性の高いフォーマットです。

参考リンク

AdverTimes:『鬼滅』声優が夫婦役で出演するANA動画

5. Instagram×プリ機コラボ──若年層の“共有したくなる体験”を設計する

概要

プリントシール機市場でシェア9割のフリューが、Instagram15周年を記念したコラボデザインを10月6日から搭載。筐体デザインや背景・落書きなど、SNS投稿を前提にしたUI/UXを強化し、若年層の撮影体験とシェア行動をつなぐ取り組みが紹介されました。長年、ユーザーインタビューに基づく開発とSNSトレンドの観察を重ね、“撮ってから見せる”だけでなく“見せるために撮る”潮流に合わせて進化してきた点がポイントです。

中小企業への影響

コラボの本質は、ユーザーの自己表現を“借景”にすることです。店舗やECでも、背景・フレーム・スタンプなど“共有の文法”を提供すれば、来店や購買のたびに自然発生的なUGCが増えます。例えば、ロゴよりブランドの意味が伝わる言葉(価値観・約束)を撮影小物に落とし込む、ARフィルターで季節演出を配布する、購入者限定のデジタル素材を同梱する等。体験の“編集権”をお客様に渡すと、広告費より低コストで認知が広がります。

経営者の視点

撮影・共有・再訪の導線を設計(店内フォトスポット→投稿→来店特典)②シェアしたくなる要素を分解(色・光・言葉・動き)③権利と安全(肖像・商標・著作・混雑対策)④効果計測(投稿数×到達×クーポン利用)をテンプレ化。店頭スタッフが“撮影体験の案内人”になるだけで投稿率は上がります。さらにオフライン×デジタルの往復を意識し、投稿をUGCギャラリーに集約→店頭サイネージに掲出→再来店時に自分の投稿が流れる体験を設計すると、“もう一度行きたい”動機が高まります。ECでは、発送箱や同梱物を“撮りたくなる素材”に変えるだけで投稿数が増え、レビュー獲得率も上昇します。A/Bテストは背景色→照明→テキストの順で行い、離脱と混雑のバランスを見ながら演出の濃度を調整しましょう。

参考リンク

AdverTimes:Instagramと歩んだプリントシール機 15周年記念コラボ

まとめ

生成AIでデータの洞察を早め、音や感情に寄り添う表現で関心を高め、共有の仕掛けで認知を広げる――今回のニュースは、限られた予算でも成果が伸びる“実装の型”を示しています。まずは①1枚ダッシュボードで販促×売上を同期、②縦型×音のフォーマットを1本作る、③店頭・ECに撮影導線を置く、の3点から着手してください。効果が出たらテンプレ化し、地域や商品へ横展開。継続こそ最大の差別化です。次回も、経営に直結するマーケティングの最新動向を分かりやすくお届けします。

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