マーケティングニュースまとめ(2025年4月23日〜29日)
中小企業の経営者の皆さま、2025年4月23日〜29日は、国内でマーケティングに関する注目すべきニュースがいくつも発表されました。インフルエンサーとの共創や生成AI時代の新戦略、驚きのブランディング手法、そして最新マーケティングソリューションの展示会など、いずれも中小企業の今後の施策にヒントを与えるものです。本記事では、それら5件のニュース概要とポイントを解説し、皆さまの戦略検討の材料としていただけるようまとめました。
味の素、インフルエンサーとの継続関係で「共創」マーケティングを推進
概要:
大手食品メーカーの味の素が、100人以上のインフルエンサーを招いた春夏新商品発表会を開催し、新たなマーケティング戦略を打ち出しました。
インフルエンサーを「25年新入生」と位置付け、社員が選んだ協力的なインフルエンサーを“あじふれんず”というコミュニティに認定。彼らとの継続的な関係づくりを通じて、商品PRや開発に関する意見交換を行い、生活者目線での共創マーケティングを目指すといいます。実際に、定番商品「ほんだし」の工場見学にインフルエンサーを招待し、その体験がSNSで話題になり売上増加につながる成果も出ています。背景には、インフルエンサーマーケティング市場規模が2024年に約860億円、5年後には約1.9倍の1645億円に拡大見込みという業界の成長があります。
中小企業への影響:
インフルエンサーの影響力は無視できないレベルに達しており、大企業のみならず中小企業にとっても有効なマーケ手法となっています。
特に広告予算が限られる小規模企業でも、ニッチな分野のインフルエンサーや地元で活躍する発信者と組むことで、費用対効果の高い宣伝が可能です。今回の味の素の事例が示すように、一度きりの投稿で終わらせず長期的な関係を築くことで、製品やブランドへの理解・愛着を深めてもらい、持続的な情報発信につなげることができます。中小企業でも自社の商品に共感してくれるファン層(いわば「アンバサダー」)を見つけ出し、継続的に関係を構築すれば、口コミに近い形で信頼性の高いプロモーション効果が期待できるでしょう。
経営者の視点:
経営者にとって重要なのは、インフルエンサーを単発の広告媒体ではなくパートナーとして捉えることです。
味の素の担当者が「インフルエンサーはほぼみんな友達だと思っている」と語ったように、商品理解の深い協力者として尊重し、双方向のコミュニケーションを図る姿勢が成果を生みます。中小企業の経営者も、自社の商品やサービスに共感して発信してくれる人々とは積極的に交流し、時には工場見学や商品開発の意見交換に招くなど体験を共有する取り組みを検討するとよいでしょう。それによって生まれたインフルエンサーとの信頼関係は、単なるPR以上に顧客との共感を呼ぶストーリーとなり、自社ブランドのファンを増やす原動力になります。
参考リンク:
〖インフルエンサーマーケティング〗味の素がインフルエンサーとの継続した関係づくりで共創へ…生活者目線のマーケ変革
ナイル、生成AI時代の「LLMマーケティング」最適化サービスを開始
概要:
デジタルマーケティング企業のナイル株式会社は、生成AIの普及を背景に「LLMマーケティング」支援サービスを新たに開始しました。
LLM(大規模言語モデル)を活用した次世代の検索環境に対応するもので、第一弾として「LLMO(大規模言語モデル最適化)コンサルティング」の提供を本格展開します。具体的には、企業のWebサイトがChatGPTのようなAIに正しく認識・引用される状態を構築する支援を行います。例えば、自社のサイト情報がAIの回答で優先的に紹介されるようコンテンツ構造を最適化したり、AIに学習させるためのデータ整備を支援したりするものです。ナイル社は、この「AIに選ばれるためのSEO」とも言える分野が今後急速に拡大すると見込み、自社のDX・マーケティング事業と親和性が高いことから新サービスとして展開したとしています。
中小企業への影響:
検索エンジンから生成AIへ ─ 情報入手手段の変化は、中小企業の集客戦略にも影響を及ぼします。
従来はGoogle検索で上位表示を狙うSEOが重視されてきましたが、今後はAIアシスタントがユーザーの質問に最適な回答を生成する時代です。小規模な企業でも、自社の情報がこうしたAIの回答に取り上げられるかどうかが、新たな集客のカギとなる可能性があります。例えば、地域の飲食店であれば「おすすめのランチは?」というAIの質問回答に店名が出てくるか、専門サービス業なら「○○の解決方法は?」という問いに自社コンテンツが引用されるか、といった点です。ナイルの提供するようなLLM最適化までは手が回らなくても、今から自社サイトの情報発信を見直しAIにとっても有益で信頼できるコンテンツを蓄積しておくことは、中小企業にも備えておいて損はないでしょう。
経営者の視点:
経営者として押さえておきたいのは、「AI時代の検索」で埋もれないための準備です。
具体的には、自社サイトのFAQ整備や専門情報の発信、スキーママークアップなど構造化データの活用によって、AIが情報を抽出しやすい土台を作ることが考えられます。ナイル社の動きは先進的ですが、将来的には中小企業向けの簡易ツールやサービスも登場するでしょう。それまでは自社でできる範囲として、公式サイトやブログで専門性・信頼性の高い情報を定期発信する、自治体や業界団体のデータベースに登録して権威性を高めるなど、AIの学習ソースになり得る情報発信を意識することが重要です。経営者は「顧客がAIに何を尋ねそうか」「その回答に自社がどう載るか」を想像し、次世代のSEO戦略を早めに検討し始めましょう。
参考リンク:
ナイル株式会社、生成AI時代のLLMマーケティング支援を開始
国内最大級のマーケティング展示会「営業・デジタルマーケティングWeek春 2025」開催
概要:
4月23日〜25日に東京ビッグサイトで、日本最大級のマーケティング&営業支援ソリューションの総合展示会「営業・デジタルマーケティングWeek【春】2025」が開催されました。
この展示会は「営業DX EXPO」と「デジタルマーケティングEXPO」の2つの専門展で構成されており、SFA(営業支援システム)やCRM、名刺管理、インサイドセールス、MA(マーケ自動化)ツール、SNS活用、AI解析、データ分析など営業活動とマーケティング活動を強化する様々な製品・サービスが一堂に会する場です。会期中は有名企業のトップによる無料セミナーも併催され、最新のIT・DX・AIトレンドをキャッチできる内容となりました。昨年(2024年)の同イベント実績では来場者約5.4万人、出展社数875社を記録しており、今回も多くの中小企業経営者・担当者が最新ソリューションを求めて訪れたようです。
中小企業への影響:
この展示会は、最新のマーケティングソリューションに直接触れられる貴重な機会です。
特に中小企業にとっては、自社の課題を解決してくれるツールやサービスを効率よく比較検討できる場として有益でしょう。例えば、「顧客管理に時間がかかっている」という課題に対しては低コストなCRMサービスを知るきっかけになりますし、「SNSでうまく集客できていない」場合はSNSマーケ支援ツールやノウハウ提供企業と出会えるかもしれません。また、会場で紹介された生成AIやデータ分析のソリューションは、大企業だけでなく中小企業でも活用可能なものが増えています。最近ではクラウド型で安価に使えるサービスも多いため、こうした最新技術をうまく取り入れることで人的リソース不足の補完や業務効率化に繋げられるでしょう。
経営者の視点:
経営者は「うちは小規模だから最新のマーケティングツールは関係ない」と考えず、積極的に新技術・新サービスにアンテナを張ることが大切です。
展示会に足を運べない場合でも、出展企業のウェブサイトや資料請求を通じて情報収集は可能です。ポイントは、自社の顧客獲得プロセスや営業活動を見直し、デジタル化できる部分を洗い出すことです。その上で、例えば「問い合わせ対応をチャットボットで自動化できないか」「顧客データを一元管理して既存客フォローに活かせないか」など課題を設定し、該当するソリューションを提供する企業を探してみましょう。幸い今回の展示会でも多様な選択肢が紹介されています。伴走型で支援してくれるサービスも増えていますので、経営者自らが最新動向を学び、自社に適したパートナーやツール導入を検討することで、競合に遅れないマーケティング施策を打てるはずです。
参考リンク:
デジタルの力で営業・マーケティングを進化させる総合展、4月23日から東京ビッグサイトで開催
ホテル業界驚きの「0日リブランド」戦略:the bホテルが実践
概要:
ビジネスホテルチェーン「the b(ザ・ビー)」が、閉店したホテルを翌日には自社ブランドとして再オープンさせるという前例のないリブランド手法を展開し、業界で話題となりました 。
通常、ホテルが別ブランドに変わる際には数週間〜数ヶ月の改装休業を伴いますが、the bではそれを一切休業日ゼロで実現しています。その秘密は徹底した事前準備と柔軟性にあります。具体的には、引き継ぐホテルのスタッフを事前に近隣のthe bホテルで研修し、運営ノウハウを習得させておきます。また、内装や家具も可能な限りそのまま活用し設備工事の手間を削減。さらに、旧ホテルの予約データを引き継いで宿泊客への影響をゼロに抑えています。ブランドとして最低限守るべき条件(立地やベッドの品質、朝食提供など)だけを統一し、それ以外は柔軟に対応するという「柔軟性前提のブランド」戦略で、驚異的なスピードリブランドを可能にしているのです。
中小企業への影響:
この「0日リブランド」から得られる教訓は、規模や業種を超えてビジネスの敏捷性(アジリティ)の重要性を示している点です。
中小企業でも、事業転換や新サービス開始の際にスピード感は武器になります。例えば店舗業であれば、改装やメニュー刷新を極力短期間で行うことで常連客離れを防ぎ、新規性と継続性を両立できるでしょう。the bのケースではブランドの統一感と現場対応の柔軟さを両立していますが、これは中小企業でも「ここだけは守る」という自社の強みやブランド要素を明確化しつつ、その他の部分では状況に応じて柔軟に最適解をとるという姿勢に通じます。特に、データの有効活用(予約情報の引き継ぎ等)や人材育成の工夫(事前研修)は、中小企業でも実践可能なポイントです。要するに、顧客に提供する価値を途切れさせない工夫こそが信頼を維持し、変化をスムーズに伝える鍵だといえます。
経営者の視点:
経営者は、変化の局面で「いかに顧客体験への影響を最小限に抑えるか」を最優先に考える必要があります。the bはリブランドによって看板は変わっても顧客は不便を感じないどころか、新ブランドのサービスを即座に享受できます。このように、事業承継やブランド変更、新システム導入などあらゆる変化において、事前準備(人的トレーニングやデータ移行)を徹底し、切り替えの瞬間をシームレスにする発想は非常に参考になります。中小企業の経営者も、たとえば新しい販売システム導入時には旧データとの連携やスタッフ教育を事前に行い、稼働日を止めないようにする、店舗改装でも仮店舗やオンライン対応で顧客との接点を切らさない…といった工夫が考えられます。スピードと顧客第一を両立する経営判断ができれば、変化を恐れず大胆な戦略を打ちながらも顧客の信頼を失わず、結果的に競争優位につながるでしょう。
参考リンク:
業界騒然『0日リブランド』の「the b」、脅威の柔軟性の深い狙い
SNS担当者1000人調査で見えた2025年SNSマーケのトレンド――Meltwaterが国内レポート公開
概要:
4月24日、ソーシャルリスニング大手 Meltwater Japan は、日本企業のSNS担当者を対象にしたアンケート結果をまとめた記事と、世界13 カ国1,700名超を網羅する『2025年ソーシャルメディアの最新状況』レポートを同時公開しました。
国内調査では「ブランディングに加え売上貢献も期待」が7割超、利用率トップはInstagram(47.8%)ですが「今後注力したいSNS」でTikTokが急伸。さらに、担当者の半数以上が 「AIツールをSNS運用に導入済み」 と回答するなど、生成AI活用と成果測定が今年の焦点であることが示されています。
中小企業への影響:
SNSは認知拡大だけでなく直接売上につながるチャネルへ進化しており、広告予算が限られる中小企業でも ショート動画×コマース の波に乗る余地が大きいです。また、AIによる投稿分析やクリエイティブ生成は少人数チームの工数を大幅に削減できます。
経営者の視点:
自社SNSを「集客と収益化の実験場」と位置づけ、まずはリール動画やTikTokで小規模テストを実施し、AI分析で反応の良いコンテンツパターンを把握しましょう。成果指標はフォロワー数より EC流入や問い合わせ件数などの直接効果 に置くことで投資対効果を判断しやすくなります。
参考リンク:
2025年のSNSマーケティングはどう変わる?Meltwater、日本のSNS担当者を対象にした最新調査記事を公開
まとめ
今回の5つのニュースに共通するキーワードは「変化に対する適応力」と言えるでしょう。
インフルエンサー活用にしろ、生成AI対応、スピードリブランド、新技術の導入にしろ、環境の変化や新しい波を捉えて素早く戦略に取り入れる柔軟性が光っています。これは大企業だけの話ではなく、中小企業こそ俊敏さで勝負できる分野です。ぜひ今回紹介した事例からヒントを得て、皆さまの会社でも何か一つ新しい施策を検討してみてください。例えば、気になったツールの資料請求をしてみる、身近なインフルエンサーに声を掛けてみる、といった小さな一歩でも構いません。大切なのは情報をキャッチアップし行動に移すことです。変化の激しい時代だからこそ、最新トレンドを味方につけて自社の成長に繋げていきましょう。